水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <57>  予知(よち)

2019年01月26日 00時00分00秒 | #小説

 すべてのことに言えるのだが、生きる上で未来が予知(よち)出来れば、こんな便利なことはない。悪いことが起こる…と分かれば、予(あらかじ)め、そうならないように策や手段を講じることが出来るからだ。起こる場合でも、最小限に起こるに違いない悪いことを未然(みぜん)に防ぐ策や手段などを講じられる訳だ。孰(いず)れにしろ、先が分かれば私達が助かることに変わりはない。
 とある繁華街の人通りが少ない一角で、椅子と机を置いて座る一人の辻占いがいる。辺(あた)りはすでに夕方近くで、歩道を歩く通行人も少なくなっていた。
「どれどれ、そろそろ灯(あか)りを…」
 そう独(ひと)りごち、辻占いは机の角(かど)に置かれた行灯(あんどん)の蝋燭(ろうそく)に火を灯(とも)した。そのときである。一人のしがない中年男が、前を横切ろうとして立ち止まった。
「見ていただけますか?」
 男はポツリと短く言った。
「… ああ、どうぞどうぞっ! お手を…」
 男が椅子に座ると、辻占いは男の掌(てのひら)を天眼鏡(てんがんきょう)でマジマジと見始めた。
「ほう! これはこれは…」
「どうかしましたか?」
「どうもこうも! この手相(てそう)はっ!」
「はあ?」
「あなたの家へUFOが飛び来たり、あなたを星へ誘(いざな)うと・・出ておりますっ!」
「そ、そんなメロンっ![馬鹿なっ!→バナナっ!→さらに強い驚きを表(あらわ)すメロンっ!となる]」
「はあ? …まあとにかく、私はあなたの未来を、はっきりと予知できるのですっ!」
「ははは…いや、もういいです。これ、お代です…」
 男は見てもらうんじゃなかった…と後悔(こうかい)しながら紙幣を置き、立ち去った。
 その数日後、男の姿は忽然(こつぜん)と世の中から消えた。警察その他の捜査、捜索にもかかわらず、男の消息(しょうそく)は今なお分かってはいない。ただ、辻占いだけには男の行方(ゆくえ)がはっきりと分かっていた。
『ははは…いくら探したって無駄さっ! だって、あの方はTP102星雲の地球で暮らしているんだから…』
 これが本当なのかどうか、私は知らない。^^ ただ、分析の結果、3次元科学をもってしても、予知の能力を完全否定することは出来ないようだ。^^

                                


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