━ 男は度胸(どきょう)! 女は愛嬌(あいきょう)! 坊さんお経(きょう)! ━ という、誰が言ったか分からないような決め台詞(ぜりふ)がある。^^ この決め台詞を分析すれば、[きょう]を共通にしたダジャレであることが分かるが、その言おうとする内容の奥には、なるほど! と得心(とくしん)出来る深い意味合いがあることにも気づかされるのである。確かに男性は、ここぞっ! というときに度胸は必要だし、女性だって愛嬌がなければ付き合えたもんじゃないだろう。当然、お坊さんも、お経の真意が分からず、世俗(せぞく)に塗(まみ)れるようなお方は、ただの人・・に違いない。^^ このように、それぞれあるべき姿を暗(あん)に堂々と言って退(の)けるのが決め台詞・・である。決め台詞は千差万別(せんさばんべつ)で、歌舞伎の口上(こうじょう)から映画のトラさんが売り言葉にするいい決め台詞など、いろいろだ。^^
とある秋近い田舎道(いなかみち)を、畑帰りの婆さんがヨロヨロと歩いている。同じ村に住む男がその姿を見て、決め台詞のように、ひと声、投げた。
「婆さんっ!! …そろそろ茄子(なすび)どきですなっ!!」
「…? はあ?」
婆さんは耳が遠く、その声が聴こえなかった。
「茄子どきですよっ!! 茄子どきっ!!」
「ああ、茄子ですかいのう。茄子は、もう萎(しお)れる頃ですかのう…」
「ははは…、いや、まだまだっ! もうひと花っ! 二度なりの今の時期、美味(うま)いですからなあ~!」
「ご冗談をっ!」
婆さんは、どういう訳かスンナリと聴こえ、小笑いした。
分析の結果、決め台詞は本人に都合がいいと聴こえるようである。^^
完