水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <58>  成功と失敗

2019年01月27日 00時00分00秒 | #小説

 物事をすれば当然、結果が出る。そのとき、しようとしたことが首尾(しゅび)よくいけば、人は成功した・・と表現して喜ぶ。逆に、結果が思い通りにならなければ、人は失敗した・・と思えて嘆(なげ)く。この成功と失敗という結果を分析してみるのも面白い。^^
 成功したとは思うが、ある意味、失敗したとも考えられる曖昧(あいまい)な結果の場合はどうなのか? ということになるが、この場合でも上手(うま)い言葉があり、成敗(せいばい)・・という言葉が使われる。この言葉は現代ではいろいろな意味へと分岐(ぶんき)し、政治を行う場合の日本史に登場する御成敗式目とかの成敗、裁決をする神の成敗とかの成敗、政治を行う場合の日本史に登場する御成敗式目とかの成敗、処置する意味の成敗、処罰する喧嘩(けんか)両成敗やテレビ時代劇でよく耳にする「成敗っ!」とかの成敗などがある。^^
 二人の男が、とあるうどん屋のカウンター席で口喧嘩(くちげんか)をしている。この店はうどん専門店で、いろいろな種類のうどんを客に提供する店だ。常連客の二人は、いつも開店とともに現れ、決めにしているカウンター席へ座るのが常だった。
「どう見ても、お前の方が量が多いぜっ!」
「そんなこたぁ~ないだろっ! なあ、親父さんっ!」
「はあ…。いつもと同(おんな)じにお出ししたつもりなんですがねぇ~」
 そうは言ったものの、店の親父は内心で、しまった! 向こうの客を見ていたからな…と量を見ずに出しことを悔(くや)やんだ。
「いや、俺の方は汁(しる)の嵩(かさ)が1cmは低いぜっ!」
 言った男には美味(うま)い汁を足してもらおう…というセコい魂胆(こんたん)があった。店の親父は、細かい人だなぁ~…とは思ったが、常連客にそうとも言えず、笑顔で暈(ぼか)かした。
「まあまあ、今日は私の失敗ということで、もう一杯づつサービスいたしましょう、無料でっ! 常連さんですからなっ! ははは…」
「いやぁ~、そりゃ悪いよ、親父さんっ!」
「ははは…いいんですよっ!」
 細かい男は、言ってみるもんだ…と、汁だけのつもりが一杯サービスという予想外の成功となり、喜んだ。店の親父は失敗を痛感した。
 分析の結果、成功と失敗は紙一重(かみひとえ)ということになる。^^

                                


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする