水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <42>  甘(あま)い

2019年01月11日 00時00分00秒 | #小説

 甘(あま)い・・という言葉を分析してみよう。分析などしなくてもいい。甘いのは苦(にが)くないことだろ? と僻目(ひがめ)で思われる方は、美味(おい)しい牡蠣鍋(かきなべ)でも突(つつ)いて一杯やっていて下さればいい。^^
 甘いは、なにも味覚(みかく)だけに使われる言葉ではない。考えが甘い・・などと、十分に整っていない、あるいは行き届(とど)いていない場合にも使われる言葉なのである。
 ポカポカ陽気の昼下がり、とある二人のご隠居が、退屈(たいくつ)を紛(まぎ)らわそうと将棋を指(さ)している。
「いや! その手は流石(さす)に甘いでしょうなっ! この角(かく)が成って竜馬が行けば、明治維新となりますからなっ!」
「はあ?」
「いや、甘いのですよっ、その手はっ! 昨日(きのう)の美味しかったお汁粉(しるこ)より甘いっ! 実に甘いっ!」
「甘い、甘いって、そんなに?」
「ははは…そんなに、です。そう指されるなら当然、コレで必死がかかります。と、なれば、コレをコウ指す他なく、コレコレでチィ~~~ン! あの世ですな」
「あの世? そんな大げさなっ!」
「いいえ、甘過ぎる卵焼きは食べられたもんじゃないっ!」
「はあ、そらまあ、そうでしょうが…」
「そういや、先だっての出汁(だし)巻きはいい味でしたなっ!」
「ああ、確かに…。アノ店はなかな評判がいいようですなっ!」
「そうそう! また近いうちに参りましょう!」
「はあ、是非(ぜひ)!」
 いつの間にか将棋は忘れ去られていた。
 分析の結果、甘い話題は話が弾(はず)み、上手(うま)く纏(まと)まる効果があるようだ。^^

                                


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