水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (34)満足度

2020年02月07日 00時00分00秒 | #小説

 生活が苦しければ、それなりに工夫して人は満足度を得(う)る。だが、生活が向上することにより人の満足度は高まりを見せ、変化する。今まで満足出来たものが満足出来なくなるのだから困ったものだ。^^ もちろん個人差はあるだろうが、少なからず人は生活の向上で満足度が高まりを見せる。今日、ここに挙(あ)げるのは、そんな一例のお話である。
 小春日和(こはるびより)の一日、ご隠居が二人、ポカポカと暖かな日差しを浴(あ)び、縁側で寛(くつろ)ぎながら話をしている。そこへ、家の息子の嫁が茶を淹(い)れて運んできた。
「お義父さま、ここへ置いておきます…」
 息子の嫁はそう言うと、少し品を作り、楚々(そそ)と去った。
「どうぞ…」
「ああ、これはどうも…」
 お盆の上には急須(きゅうす)、湯呑み、そして、お茶菓子が置かれている。
「一つ、摘まんでみてください。大して美味(うま)い菓子でもございませんが…」
「どうも…」
 言われたご隠居は茶を啜(すす)りながら、菓子に手をつけた。
「おっ! どうしてどうして、なかなか、いけます…」
「いやぁ~、そう言っていただくと…」
「それにしても、随分、贅沢(ぜいたく)な時代になりましたな…昔は、茶菓子代わりに柿や焼き芋を齧(かじ)っとりましたが…」
「そうそう! いつの間にか、そういうものでは満足できんようになりましたな…」
「ははは…コレといって贅沢しておるつもりはございませんが゜な」
「そうそう! 知らず知らず、世の中がそうさせます」
「すると、今まででは満足できなくなる…」
「そうそう! 菓子に限らず、すべてに言えることですが…」
「疑問ですなっ!」
「そうそう! 疑問です」
 満足の程度がどのように変化するのか? は疑問だが、文明化とともにスゥ~~っと忍び寄るのは確かだ。^^

                                


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