科学の進歩が目覚ましい今の世相である。車が勝手に運転したりブレーキをかけたりするのだから空恐ろしい時代になったものだ。そのうち、運転席がいらなくなるんじゃないか? などと思ったりもする。
西暦2100年のとある家庭である。
『ゴシュジンサマ、イツデモ、デカケラレマス…』
「そうか…。あと一時間ほどしたら出るから、よろしく頼む。暖かくしておいてくれ…」
『ハイ…』
自家用飛行車と会話を交わした天川は、家屋の駐車場から室内へと姿を消した。キッチンでは妻が自動調理器のボタンをゴチャゴチャとテレビゲームのように器用に弄(いじく)っている。
「…もう食えるのか?」
「えっ? ええ…。これでOKだわ」
妻が最終ボタンを押すと、調理機械達はシャカシャカと自動で調理を始めた。
「もう五分ほどで出来るから…」
「そうか…」
天川は眠そうな声でそう言うと、大型スクリーン新聞に片手の指を向けた。すると今朝の新聞がパッ! と現れ、大映しになった。
「なになに…民自党が民新党に負けたって…。どぉ~~でもいいや。どうせ罵り合いをするだけだろ…」
天川はスクリーン新聞に向けた指を右方向へ振った。すると、画面が変わり四コマ漫画が映し出された。
「これこれっ! これが楽しみなんだよ。ははは…今日も面白いぞ」
そのとき、妻がまたボタンを押した。運搬機械達がセカセカとキッチン・テーブルへ料理を運び始める。辺りに美味そうないい匂いが立ち込める。
ここまで未来の科学が発達していいのかどうか? の論議は別として、平和に暮らせる世相が存続していることを望むばかりです。^^
完