水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -32- 緻密(ちみつ)

2024年12月23日 00時00分00秒 | #小説

 最近の世相は一瞬の隙(スキ)も許されないほど殺伐感が増している。外へ出るのも緻密(ちみつ)な先読みが必要となる。本人は緻密に考えたつもりでも、世相はその緻密な読みを崩すのである。
 竹林はスーパーでいつものように食品の買物をしていた。紙にメモ書きして出たから、書かれたものを買うだけだった。ところが、である。メモ書きした食品がその日に限って棚に並んでいなかった。どうも、先に買われてしまったか…と竹林はガックリとした。だが、竹林の緻密な先読みは、すでにその結果を読み、緻密な対応を考えていたのである。流石(さすが)は竹林名人っ! とでも声をかけたくなる緻密さだった。竹林は、その空になった食品棚をチラ見して、ひと言、呟いた。
「なんだ、売り切れか…」
 竹林は慌てることなく、その隣の類似品を手に取ると買物かごへ躊躇(ちゅうちょ)することなく入れた。そして、徐(おもむろ)にメモ書きの買い忘れがないかを確認し、レジへと向かった。こうして、竹林のその日の買物は平穏に終了したのである。
 まあ、買物が平穏に終わるのは当然と言えば当然ですが、買う品がなかったとしても、緻密な先読みでその対応を考えておけば、別に何の問題もない訳です。この緻密な先読みは、世相の中の行動すべてに言えるようです。^^

                   完


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