狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

『ばしゃ馬さんとビッグマウス』

2018年11月25日 21時56分44秒 | 映画・ドラマに関する日記
 








 昨日の夜は、映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』のDVDを観ていました。

 主人公の馬淵みち代はプロのシナリオライターを目指して懸命にシナリオを書き続けている。
 人脈作りの為にシナリオスクールに通うことにした馬淵は、そのシナリオスクールでシナリオを一度も書いたことがなのに大口を叩く自信満々の男・天童義美と出会う。
 学生の頃からプロのシナリオライターを目指してコンクールに応募しているが一度も当選したことが無く日の目を見ない馬淵はビッグマウスの天童を毛嫌いするのだが、天童は馬淵を一目惚れをしたようで……。

 監督は、吉田恵輔。
 出演者は、麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、清水優、秋野暢子、松金よね子、井上順、など。

 コメディです。
 でもって夢見ることを拗らせた女が敗北をきちんと認めるまでの物語です。





 夢が叶う人は極稀であって大半の夢は叶わずに朽ち果てます。
 でも、当人にとっては夢が叶わないと認めることはとても辛い。
 自分の存在そのものを否定されてしまうような気分になります。
 辛くて悔しくて悲しくて惨めで絶望的な孤独感に苛まれて無能感に襲われます。
 それはとてもとても怖いことなので、ついつい自分に才能がないと分かっても、頑張ればもしかすると……と思ってずるずると夢を拗らせてしまう。
 しかしきちんと敗北を認めて良い負け方をしないと、その上で頑張るにしても別の道に進むにしても駄目駄目になってしまう。
 この映画はそんな女性が未練はあるけれども敗北を認めて夢を諦めるお話です。




 悶絶しました。
 私は私の過去のトラウマを抉るようなお話を時々わざわざ味わって悶絶するという悪い癖があるのですが、このお話は私の過去のトラウマの中心部を抉るようなお話。
 七転八倒しながら観ていました。
 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。

 でもこの映画のような経験は(どストライクではないにしても)多くの人が経験しているのではないかなぁ?



 機微の部分が絶妙で苦笑させられたり恥ずかしくさせられたりします。
 楽しくて恥ずかしくて晴れ晴れとした悲しみが漂う映画です。

 面白かったですよ。
 夢を拗らせたことがあるお方や夢を追いかけているお方は必見です。悶絶したまへ。


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喉奥流し込んで 躊躇いなど捨てて すぐさましてほら たった一口 これで終わらせないで

2018年11月25日 21時41分54秒 | 知人、友人に関する日記






 或る夜の事。

 狐は先輩と一緒に或るパブリック・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えずミルクを舐めてゐた。
 狐は余り口をきかなかつた。
 しかし先輩の言葉には熱心に耳を傾けてゐた。

 「御酒には媚薬効果があるというけれども媚薬効果ではなく脳内の様々なリミッターを酒精で麻痺させているに過ぎない。酒精によって人は普段は抑えられている欲望が剥き出しになつてしまふだけなの」
 先輩は頬杖をした儘、極めて無造作に私に述べた。
 「つまり、人は基本的にはすけべえであるといふこと」
 左様でございますか。
 「うむ。一年中発情している動物なんてとても珍しいの」
 そうなのですか?
 「うむ。ところで私はお水が欲しいの。君、マスターに頼んでお水を貰つてきてくれ給へよ」

 狐は、マスターにチェイサーを頼み、ついでに自分用にカルーアを注文した。

 「うむ。此処にお水が入つた割賦がある。私は大変に酔つている。お水を飲もうにも零してしまいそう。君、私にお水を飲ませておくれ」と先輩は目を潤ませて云つた。
 そんなに酔つているやうには見えませんが?
 「む。君は私の言葉を疑うのかね?」
 否ですよ。疑つたりはしません。
 「では私にお水を飲ませ給へ」

 狐は割賦を捧げ持つて先輩の口元に寄せた。

 「違う違う違う! 口移しで頂きたいの! 口移しで!」
 む。酔つているふりをすれば何でも要求が通ると思つていませんか?
 「ちよつと思つておりまする」先輩はにへらと笑つた。「口移し! 口移し!」
 断固拒否します!

 狐は、割賦の中でカルーアとホットミルクと混ぜ合わせてカルーア・ミルクを作り、舐めた。
 私の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。

 先輩は言つた。「いけず。私のことが好きなくせに」




 先輩は勘違いしている。それとも勘違いをしているのは私なのか?
 狐は何か痛みを感じた。が、同時に又歓びも感じた。
 人の考えとはわからぬものであるな。面白ひものだ。




 其のパブリック・ハウスは極小さかつた。
 然しパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。



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