舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

万代島美術館「ヨシタケシンスケ展 かもしれない」見に行ってきました。

2023-09-17 22:48:13 | Weblog


9/17(日)、万代島美術館「ヨシタケシンスケ展 かもしれない」を見に行ってきました。
個人的にヨシタケシンスケさんのことは、ここ、万代島美術館で2019年開催された「MOE 40th Anniversary 人気絵本のひみつ展」で知りました。

ヨシタケさんの絵本はどれも、子供のような自由な発想をコミカルに描きつつ、読み進めるごとに次第にそのアイディアが広がり、最後にはまさかの哲学的な発想にまで深まっていく。
そして読み終わると少しだけ世界の視野が広がり豊かな気持ちになれる、そんなヨシタケシンスケさんの絵本が僕は好きです。





そんな「ヨシタケシンスケ展 かもしれない」は、絵本の原画の他に、大量のアイディアのメモ、さらに美大生時代の立体作品や、ヨシタケさんの好きな本などの個人的な趣味、さらに画材まで(コピックを買ったのに色塗りが下手過ぎてスタッフさんに任せたからまったく使ってないという付箋のメモに笑う)。
ベニヤ板をあえて剥き出しにした展示会場の内装も印象的で、普通の絵画などの展示ではなく、ヨシタケさんの頭の中にあるアイディアを具現化した倉庫のような展示でした。

僕は芸術や表現活動の面白さって、作品そのもの以外にも作者のアイディアを具現化するその行為そのものが面白い、と普段から考えている人間なので、この展示会場の雰囲気はとても楽しかったです。
ヨシタケさんはいないのに、まるで会場でお客さん達がヨシタケさんと遊んでいるような雰囲気がありました。

僕自身、自分の展示を行う際は、ただ作品だけでなく思い付いたアイディアを実験的に展示したり、自分が会場に在廊して作品を作ったりお客さんと交流したりすることを大切にしているので、こういうことを自分もやってみたいと思わされました。
そして、その気持ちはこの展示会場の最後で感じることになるのですが…それは最後に話すとして、まずは展示作品を見ていきましょう。





展示会場に入ると、まずはヨシタケさんの美大生時代の作品群。
どんな作品かというと…

被ると前が見えなくなり、手探りで電源をコンセントに繋ぐと目の前が開いて外が見えるマスク。
スイッチを入れると顔の周りが回転するので、ジャイロ効果できっと独楽のように安定できるはずのマスク。
前ではなく後ろの音だけが聞こえるから、後ろでこっそり話す人の本音や陰口だけが聞こえるマスク。
二人で被って会話をすると声にノイズがかかってどっちの声か分からないから、自分の発言に責任を持たずに会話したい人のためのマスク。
左右からケチャップとマヨネーズを入れると顔がオーロラソースまみれになり、オーロラの世界を体験できるマスク。
背負ったまま部屋の片隅でうずくまると、全身を隠すことができる天使の翼。

…などなど、学生時代から変な発想の作品ばかり!
ヨシタケさんの絵本の面白さは、変な発想、アイディアにこそあると思っていましたが、学生時代から絵画とかではなく変な発想の作品ばかり作っていたんだなあ。





その先の展示会場では、ヨシタケさんの絵本の世界を具現化したような面白作品が並ぶ。
例えば「じごくのトゲトゲイス」と「てんごくのふかふかみち」などの面白アイディアは、完全に学生時代の変な発想を受け継いでいますよね。





そんなヨシタケさんの変なアイディアの数々は、日常的なとりとめもない思い付きの数々を、小さなメモに書き留めることから生まれているとのこと。
壁一面に貼られたメモはとてもじゃないけれどすべては見切れませんでしたが、実際にこの中から絵本になるアイディアはごく一部で、それ以外は自分でもよく分からないそうです。

こういう小さな思い付きを、言葉だけではなくイラストでも記録に残しておけるのもまた、一つの才能だと思いました。
そして、そんな小さな思い付きの積み重ねから面白い絵本が生まれるんだなあと、地道な努力って大事だなあって思わされました。





また、ヨシタケさんの作風っていわゆる絵画ではなく、イラストや挿絵みたいな文脈だよなあと思っていたら、やっぱりそういうデザイン系の仕事をしていた方だったんですね。
でも、そういう仕事をしながらも、人とは違う自分だけのアイディアや経験、自分の得意な分野をずっと大切にしてきたからこそ、30代でイラスト集、40代で絵本をついに出版できたヨシタケさんの人生、希望は捨てちゃいけないなという気持ちになりました。











そんな「ヨシタケシンスケ展 かもしれない」、全体的に広々とした展示室の中にたくさんの面白作品が点在している感じなのですが、帰り道だけは布で仕切られた迷路みたいになっていて、曲がり角ごとにヨシタケさんのメッセージが書いてありました。
一枚ずつ読んでいくと、ヨシタケさんの絵本を読んだあとのような、ちょっとだけ豊かな気持ちになって心が軽くなるあの感じが、道を歩く体感とともに展示会の最後に味わえました。





そして最後の曲がり角にヨシタケさんからの感謝の言葉が書いてあり、そのあとに紹介されている「カッコいいヨシタケ」とは一体何なのだろうか…?





…と思ったら、なんとドラゴンから身を挺して守ってくれる巨大ヨシタケさんの下をくぐって会場の外へ出ていくという、渾身の爆笑アイディア!





最後に「あなたのみらいはこれかもしれない」カードをランダムに一枚だけ引けるようになっていました。





僕は何かなと思ったら「ネコとはなせるひと」でした。やったね!ネコと話したい!







さらに最後の最後に、「いつかあなたもここで展覧会をするかもしれない」「いつかこの日をおもいだすかもしれない」というヨシタケさんからのメッセージ。
僕自身も自分の展示会などを企画している人間の一人として、今回の展示会のアイディアにはかなり刺激をもらい、自分もまた展示をしたいなあ、いつか美術館でできるかもしれないなあ、という夢や目標も最後の最後に感じることができました。

ところで、個人的にこの日はちょっと落ち込んでいたのですが、ヨシタケさんの展示を見ていたら、未来にはいいことがあるかもしれないなと前向きな気持ちになれました。
本当に来られて良かったです。美術館には夢がある!
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