4/4(火)に、神山健治監督、脚本のアニメ映画「ひるね姫」を観てきました。
ひとまず予告編はこんな感じです。
で、感想なんですが、まず最初に良かったところは、高畑充希さんや江口洋介さんの声優としての活躍は良かったです。
高畑充希さんが主演の「森川ココネ」として歌う、エンディングの、ザ・タイマーズ「デイ・ドリーム・ビリーバー」も良かったです。と言うか、高畑さん、歌上手いですね・・・
キャラデザインというか、あの絵ですね、賛否両論あるようですが、僕は嫌いじゃないです。
まあ、そのくらいなんですよね、正直良かったと思うところが・・・(あくまで個人の感想です)
じゃあ肝心のストーリーがどうだったかと言うと、個人的にはそこが一番がっかりしましたね。
軽く説明しますと、主人公の森川ココネはよく夢を見るという設定なんですが、現実の物語と夢の中の物語を交互に描きながら、徐々にその二つがリンクしながら物語が進んでいくという映画です。
現実の世界のことは、最初はのどかな田舎町が舞台なのですが、ある日突然事件が起きて、サスペンスフルな逃走劇が始まり、舞台は東京へと移っていきます。
それに平行して、夢の中の世界は、魔法やロボットが登場する、ファンタジー的、と言うか、典型的なアニメ的な世界になっていて、こっちでも現実とリンクするかのように事件が起きていきます。
まず現実世界について書いていきますけど、最初のうちは、田舎町で父親と暮らしている森川ココネでしたが、ある日突然父が消え、続いて謎の怪しい男達に狙われて、事件の謎を解き父を救うための逃走劇が始まるんですけど、最初のうちはちょっと「おや?これはハラハラドキドキする楽しいアニメになるのかな?」っていう気持ちにさせられるんですよね。
しかし、怪しい男達というか事件の黒幕が狙っていたものは、実は森川ココネの母親にその秘密があるもので、父もその秘密を知っていて…みたいなことが段々分かってくるわけです。
こう書くと、謎解きが盛り上がる面白い話みたいな感じがすると思うんですけど、最終的に明かされる母が隠していた秘密というのが、正直、えっ…それってそんなに命懸けで奪い合うようなものなのかな…?って思ってしまうくらいインパクトの薄いものなのだったので、必死でそれを奪ったり守ったりしようとする人間達の行動にまったく感情移入できなかったというのが、正直な気持ちです。
ついでに、その秘密が2020年の東京オリンピックに関係あるものだって聞かされても、正直、東京オリンピックに対してまったく一つも思い入れがないので、まったく危機感が伝わってこないどころか、だからどうしたの?っていう気持ちでした。(寧ろ僕は2020年の東京オリンピックに反対しているような人間なので、どうせ東京オリンピックが出てくるなら「アキラ」みたいに何もかもめちゃくちゃに破壊して欲しかったんですが、まあこれは余談ですね)
そんな感じで、現実世界の描かれ方が面白くなかったのに対して、夢の世界の描かれ方がどうだったかと言うと、やっぱりこっちも退屈だったなあという印象です。
夢の中の世界は、ちょっとスチームパンク的なメカやロボットと魔法が渾然一体となったような世界なんですが、何て言うか、その世界にまったくと言っていいほどワクワクしないんですよね。
どうせ夢なら、夢のある世界に、想像力が広がっていくような世界を作って欲しかったんですけど、何て言うか、色々なロボットアニメやファンタジーアニメで見たことがあるような、まったく新鮮味のない世界だったのが、僕は本当にがっかりしました。
いや本当に「ひるね姫」っていうタイトルで、夢がキーワードのタイトルの映画で、夢の世界が面白くないのは、本当に致命的だと思うんですよ…
僕、夢が出てくる好きなアニメ映画ってたくさんあって、例えばアニメ映画だと杉井ギサブロー監督の「銀河鉄道の夜」も夢と言えば夢ですし、押井守監督の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」も、近敏監督の「パプリカ」も、夢の世界を描いた映画でした。
で、夢の描き方や扱い方はそれぞれ違いますが、どの映画も夢の中の表現が本当に秀逸で、まさにアニメだから出来るような「こんな映像表現初めて見た!」と思わせてくれるような新鮮な感動がたくさんありました。
そういう名作と呼ばれる映画と並べるのは酷なのかも知れませんが、でもどうせ夢をアニメでやるなら、何か一つでいいから現実では絶対出来ないようなアニメだから出来るような新鮮な感動が欲しかったです。
まあでも考えてみれば、アニメとは「何でも出来ちゃう世界」なので、逆に「何でも出来てしまう能力」を使って、「誰も思い付かないこと」をやるのは、本当に難しいことなのかも知れませんねえ…
でもとにかくですねえ、本当に新鮮味がないんですよ…「あ、これラピュタっぽい」とか「あ、これエヴァっぽい」とか思いながら見るくらいしか楽しみ方が無かったんですよねえ…
もしかしたら、そういう過去のアニメ作品へのパロディ満載の夢表現だったのだとしたら、人によっては面白かったのかなあ…なんて思ったりはしますが、でもパロディを楽しむというのは、あくまでストレートに物語を楽しんだ上でおまけで楽しむものだと思うので、仮にパロディが豊富だとしても面白くないものは面白くないと思います。
そして、夢の中で色んな事件が起きたり冒険したりするんですけど、「どうせ夢なんでしょ?」っていう気持ちにしかならなかったので、まったくハラハラドキドキできなかったというのも残念なところでしたね。
これは、この映画では、夢に関してどういうルールや目的があるのか(例えば夢の中で死んではいけないとか、夢から抜け出したいのか、夢の中に何か現実に関係する謎を解く鍵があって、それを見付けたいのかなど)が、はっきり提示できていなくて、ふわっとしていたことが原因だったと思うんですよね。
一応この映画の中では「夢の登場人物と、現実の登場人物は対応している」「夢の中で起きたことは現実にも対応している」というルールがあるので、夢の中で何かが起きると、現実でもそれに対応した何かが起きる、ことにはなっていて、主人公が途中でそのことに気付いたりもします。
しかし「どういう理屈で夢と現実がリンクするのか」というメカニズムみたいなものは特に存在しないので、「何かよく分からないけど何となく寝て夢の中で何かしている」という、わざわざ夢の中で行動することに何の必然性もない(要するに、夢はいいから現実でその問題解決しろよとしか思えないような)物語になってしまっていたなあと思います。
で、ここまで僕が書いてきたようなことは全部気にしないにしても、夢の世界と現実の世界が、リンクしているという物語が面白ければ、まあそれなりに面白いと思うんですけど、僕が一番この映画で許せないのは、一番大事なクライマックスで、夢の中の出来事はずっと描かれるんですけど、その間現実では何が行われていたのかが、ほぼまったくと言っていいくらい描かれていなかったんですよね。
夢の中で冒険をして目が覚めたら現実でも問題が解決していました、っていう、非常に盛り上がりに欠ける話運びになっていまして、いやいやいや、そこはせめて「夢の中でこんなことが起きている間、現実ではこんなことが起きていました」って部分を見せなきゃダメだろ!そこが一番大事なところなのに!って思いました。
…と言う訳で、どんな映画を観ても「面白くなかった」と言うことはほとんどない自分ですが、「ひるね姫」は面白くなかったです。
敢えて言うなら、最後に高畑充希さんが歌う主題歌「デイ・ドリーム・ビリーバー」の歌詞が、物語の内容と対応しているようなエンディングは、なかなか上手い選曲なのかなって思いましたが、肝心の物語が面白くなかったので特に感動しなくて残念でした。
ただまあ、高畑充希さんの歌が上手かったのだけは収穫だったと思います!
そんな感じでした!!あくまで個人の感想です!!好きな人いたらゴメンよ!!
ちなみに、僕のブログなんかより、この映画について分かりやすく批評しているブログを発見しました!
「【ネタバレあり】「ひるね姫」が勿体なくて残念だった理由を考える(辛口感想・レビュー) 」
最後に、完全に余談なんですけど、神山健治監督に関して、オムニバス映画「真・女立喰師列伝」の中に登場する神山健治さんが監督、脚本、そして主演を務めた「Dandelion 学食のマブ」はかなり好きだったりしますので監督が嫌いとかじゃないから絶対!