8/28(金)、シネ・ウインドで「戦争と一人の女」を観てきました。
2013年の映画ですが、8月の戦争映画特集上映ということで、シネ・ウインドで1日限定で上映されました。
予告編はこちら。
坂口安吾の小説の映画化で、そもそも原作が戦争で全部ぶっ壊れちまえみたいな破壊衝動を抱えた女性のパンクな話なんだけど、映画はそこに坂口安吾の他の小説の要素やポルノ映画の要素や戦争加害や天皇の問題まで加えていてすごい意欲作でした。
元女郎の女が坂口安吾自身がモデルと思われる男と一緒になり戦争中にセックスをしまくるという原作の要素以外に、中国で侵略・虐殺を行って幅員した片腕の男が女をレイプして回るという映画オリジナルの要素もあり、戦争の闇が際立つというか、戦争中に生きた人間達を多面的に描いてる感じがしました。
上映前には永瀬正敏さんのビデオメッセージがあり、「短距離走で作ったけど気持ちがこもった映画」と語られていました。
そして上映後には井上淳一監督、脚本の荒井晴彦さん中野太さんの舞台挨拶もあり、ポルノ映画で戦争を描こうと思った経緯や、予算も撮影日数も限られた中での撮影秘話など、映画を作る人達の情熱を感じるトークを聞くことができました。
上映後に「戦争と一人の女」のパンフレットも買ったんだけど、そこに坂口安吾の原作の「戦争と一人の女」「続 戦争と一人の女」が載っていたのでさっそく読んでみました。
「戦争と一人の女」って、戦争でもう何もかも終わるからどうでもいいやと思っている男と、元女郎で浮気しまくるけどセックスではまったく感じなくなってしまったのに戦争にだけは快感を見出だしている女が、戦争中にセックスしまくるという凄まじくパンクな昭和の文学で、映画も面白かったけど、小説もすごく良かったです。
これはあとから知ったんですが、坂口安吾ってもともと男を主人公に「戦争と一人の女」を書いたけど検閲で話の大部分が消されてしまったから、今度は同じ話を女を主人公に「続 戦争と一人の女」を書いたら普通に出版され、今ではそっちの方が「戦争と一人の女」と呼ばれるようになったそうです。
だから、このパンフレットには両方載っているので、合わせて読むことで坂口安吾の世界をより深く味わうことができたし、さらにどこが検閲で消されたかも分かるようになっていて当時の検閲の事情も知ることができるという、非常にディープに「戦争と一人の女」を味わう体験ができました。