羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 6

2015-04-29 19:58:16 | 日記
「ナルサスに相違ない、が当方が名乗ったからには、そちらも身分を明らかになさるべきではないか?」「失礼致した。我らはエーラーン(大将軍)カーラーン様の旗下の者」天井裏で、アルスラーンは困惑した。エーラーンとはヴァフリーズただ一人であるはずだった。「エーラーンカーラーンとは韻を踏んだ良き呼称です。しかし、この国の大将軍はヴァフリーズ老であった。老は引退でもなさったのか?」「ヴァフリーズ老人は死んだ」ダリューンとアルスラーンは衝撃を受けた!
「今頃、首はエクバターナの城門の前に晒されて、ひび割れた口で城内の者に降伏を勧めておろうよ」「ぐぅッ!」カーラーンの部下の言い様にダリューンの全身に力が入り、天井が軋んだ。「んん?」カーラーンの部下達は不審に思った。「野鼠でしょう。ところで、朝からの御来訪は何が目的ですか?」「敗軍の将、アルスラーンとダリューンがこの山に逃げ込んだとの証言がござる」ナルサスはトボけた。「敗軍の将と仰るが、ダリューンが負けるはずがない。余程卑劣な裏切りにでも遭わぬ限り」ナルサスの皮肉にカーラーンの部下の一人がいきり立ったが、上官らしい者が止めた。
「どうですかな? あの足手纏いな王子を庇って、戦局を見謝ったかも知れませんぞ? 実はもう一つ用件がございましてな、我らがエーラーン、カーラーン公はナルサス卿を旗下に加えたくお考えです」「もし、旗下となったあかつきには何を保障してくださるのかな?」「イアルダボート教の信徒としての権利の全て、返上なさったダイラム領主権の回復を、御返答はいかに?」カーラーンの部下は薄ら笑いを浮かべた。ナルサスは足で軽く床を叩いた。「この場で返答せねばならぬか?」「是非とも」「では帰って! カーラーンの犬めに伝えてもらおう!!」
     7に続く

アルスラーン戦記 7

2015-04-29 19:58:05 | 日記
「腐肉は一人で喰え、ナルサスには不味過ぎるとな!!」言い放つナルサス!「貴様ッ!」カーラーンの部下達は剣を抜いてナルサスに襲い掛かった! ナルサスは今度は思い切り床の一点を踏み、仕掛けを作動させ、カーラーンの部下達を落とし穴に落とした!!「馬鹿め」すっきり顔のナルサスだった。
降りてきたアルスラーンとダリューン。ダリューンは鋭い顔で穴の下で騒ぐカーラーンの部下達を見下ろしていた。「殺気を飛ばし過ぎだ」「すまん」「いつも、稽古を付けてくれたのだ。鍛えてくれなければ私は死んでいた」アルスラーンは泣いた。「いや、忘れていた! 朝食だ。まずは腹拵えといきましょう」ナルサスは急に陽気な声を出して場を取り成した。
(結局、私は他人の助けや奉仕を受けるばかりで誰の役にも立っていない)シチューを食べながらアルスラーンは考えた。「ナルサス! ダリューンと共に私を助けてくれ!」「ありがたい御言葉ですが」頑ななナルサス。「こうしよう、私は『代償』を支払う!」「代償? 金貨でも下さると?」「いや、私が国王になったあかつきには、お主を宮廷画家として迎えよう!!」度肝を抜かれたナルサス! 驚くエラム、ダリューン!「フフフッ、気に入った! 中々どうして。聞いたかダリューン! 殿下の度量!」「殿下、パルスの文化に汚点を遺すことになりますぞ!!」「ルシタニアの画家に死んだ顔を描かれるより、ナルサスに生きた姿を描いてもらいたい」「殿下が(父王に)御不興を被ることもあり得ますが、よろしいですか?」「無論!」目を逸らさないアルスラーン。ナルサスは膝を突いた。「わかりました。このナルサス、アルスラーン殿下にお仕え致します」画家が仲間になったッ!!!
・・・ナルサスの家から出られないとは! 丁寧だがスロー!