「ナルサスに相違ない、が当方が名乗ったからには、そちらも身分を明らかになさるべきではないか?」「失礼致した。我らはエーラーン(大将軍)カーラーン様の旗下の者」天井裏で、アルスラーンは困惑した。エーラーンとはヴァフリーズただ一人であるはずだった。「エーラーンカーラーンとは韻を踏んだ良き呼称です。しかし、この国の大将軍はヴァフリーズ老であった。老は引退でもなさったのか?」「ヴァフリーズ老人は死んだ」ダリューンとアルスラーンは衝撃を受けた!
「今頃、首はエクバターナの城門の前に晒されて、ひび割れた口で城内の者に降伏を勧めておろうよ」「ぐぅッ!」カーラーンの部下の言い様にダリューンの全身に力が入り、天井が軋んだ。「んん?」カーラーンの部下達は不審に思った。「野鼠でしょう。ところで、朝からの御来訪は何が目的ですか?」「敗軍の将、アルスラーンとダリューンがこの山に逃げ込んだとの証言がござる」ナルサスはトボけた。「敗軍の将と仰るが、ダリューンが負けるはずがない。余程卑劣な裏切りにでも遭わぬ限り」ナルサスの皮肉にカーラーンの部下の一人がいきり立ったが、上官らしい者が止めた。
「どうですかな? あの足手纏いな王子を庇って、戦局を見謝ったかも知れませんぞ? 実はもう一つ用件がございましてな、我らがエーラーン、カーラーン公はナルサス卿を旗下に加えたくお考えです」「もし、旗下となったあかつきには何を保障してくださるのかな?」「イアルダボート教の信徒としての権利の全て、返上なさったダイラム領主権の回復を、御返答はいかに?」カーラーンの部下は薄ら笑いを浮かべた。ナルサスは足で軽く床を叩いた。「この場で返答せねばならぬか?」「是非とも」「では帰って! カーラーンの犬めに伝えてもらおう!!」
7に続く
「今頃、首はエクバターナの城門の前に晒されて、ひび割れた口で城内の者に降伏を勧めておろうよ」「ぐぅッ!」カーラーンの部下の言い様にダリューンの全身に力が入り、天井が軋んだ。「んん?」カーラーンの部下達は不審に思った。「野鼠でしょう。ところで、朝からの御来訪は何が目的ですか?」「敗軍の将、アルスラーンとダリューンがこの山に逃げ込んだとの証言がござる」ナルサスはトボけた。「敗軍の将と仰るが、ダリューンが負けるはずがない。余程卑劣な裏切りにでも遭わぬ限り」ナルサスの皮肉にカーラーンの部下の一人がいきり立ったが、上官らしい者が止めた。
「どうですかな? あの足手纏いな王子を庇って、戦局を見謝ったかも知れませんぞ? 実はもう一つ用件がございましてな、我らがエーラーン、カーラーン公はナルサス卿を旗下に加えたくお考えです」「もし、旗下となったあかつきには何を保障してくださるのかな?」「イアルダボート教の信徒としての権利の全て、返上なさったダイラム領主権の回復を、御返答はいかに?」カーラーンの部下は薄ら笑いを浮かべた。ナルサスは足で軽く床を叩いた。「この場で返答せねばならぬか?」「是非とも」「では帰って! カーラーンの犬めに伝えてもらおう!!」
7に続く