茶室の外に飾る扁額の文字を依頼されていたのですが、昨日書き上げました。
古くからの書式にのっとり制作しました。
書式を箇条書きにすると、?と思うところもあるのですが、よくよく考えて見ると納得いくことばかりです。
例えば、天地の空け具合は、天よりも地を空けるようにせよ。
作品としては天を空けたほうが落ち着くのですが、扁額を下から見上げた時、地を空けてあるほうがバランスがよいからなのです。
床の間に飾る条幅作品なども、扁額同様に空けるよう言われるのですが、洋式の建築と生活になってきた現代の日本ではどうもしっくりきません。
展覧会では立って見る鑑賞者の為に、高いところから吊り下げるようにしてあるところもありますが、天井高の関係でそれができないギャラリーなども多く、古式にのっとった作品を正面から見ると、バランスがイマイチに感じる事もあったりするのです。
先日お教室にみなさんの書初め作品を天井から三段にして吊り下げましたので、正座してみた時と立ってみた時の違いを感じていただけると思います。
今回の扁額は建物入口の上部に飾る為、誰もが見上げる事になりますから、天よりも地を空ける書式が正解となります。
絵画で言えば遠近法にあたるのかもしれませんね。
このほかの書式としては、本文の頭は揃えるが、下の部分は揃えずともよい、とか、落款や落款印の位置にも細かい指示があるのです。
その他にも様々な事に言及されていますが、一番大切なことは、書き手の気持ちであることに間違いないところです。
扁額について様々な本が出ていますし、ネットでも扁額制作をしている看板屋さんの情報なども多く参考になります。
しかし今回は、和翠塾の源流となる小野鵞堂先生が起こされた鵞堂流の、二代目と言ってよい中村春堂先生の残された書籍を基本としました。
今回の扁額作品制作では色々と学ぶことができましたし、納得いくまで書き込むことが出来る時間を与えてくださったクライアントさんに感謝いたします。
クライアントさんに作品のOKをいただきましたので、これから刻字の先生と打ち合わせをする流れになります。
二月後半には茶室も出来上がるとのこと。
扁額の出来上がりも楽しみですが、茶室の外に飾られた状態を想像すると、さらに楽しくなってくるのです。