■時効まで後23日
7月27日(日)
福田和子が美容整形を受けた病院が、逃亡を手助けしたと疑われたから、伊予警察署が賭けた懸賞金100万円に400万円をプラスした
日曜日はおでん屋が休みだから、ママと顔を会わすこともないだろうと、近くを通りかかると
「麗子ちゃ~ん」と八百屋から、機関銃のようなママの声が聞こえた
30分ほどママと立ち話をした
「明日必ず来てよぉ、竹ちゃんも待っとるんよぉ」とママは言う
不自然や!ヤバイ!
竹ちゃん?
あの男と組んだ?
あの男ならもう通報してるやろ
【この時すでに、ママは越前署の知り合いの刑事に、竹中は伊予東署に通報していた】
竹中は
口を開けば猥談ばかり
頭が薄くなりかけた60過ぎ
おでん屋が開店する昼過ぎには毎日のように顔を出し、指定席の1番奥の止り木で猜疑心の塊のような目をして飲んでいる
■時効まで22日
7月28日(月)
昼過ぎにおでん屋の暖簾をくぐるとまだ客は誰もいなかった
竹中がきた
「竹ちゃん、麗子ちゃんが来とるよ」とママ
竹中はいつもの指定席には座らず、私の左隣に腰を下ろした
おかしい
こんなことは一度もなかった
ママは、、涼しい顔である
竹中の目が、チラッチラッと私の横顔に注がれる
間違いない
よりによってこんな男に
通報されるなんて!
「ママ、私にもお酒!」
こうなったら、竹中とママがつぶれるまで飲ませてやる
竹中のコップにお酒をなみなみと注ぐ、竹中はあふれるコップに口をつけ、緩んだ顔で目を細めた
「ママは?」
「ごめん、今日は体調が悪くてぇ」
嘘つき!いつもなら急いでコップを持ってくるくせに
竹中はカラオケを歌う
ママが私にマラカスを差し出して聞く「麗子ちゃん、明日も来る?」
「明日はわからんけど、明後日には来るわ」
竹中は手帳に自分の携帯番号を書き、私に握らせた。ママは見て見ぬふりをして横を向いた
役者やねぇ
竹中はふらつく足で出ていった
私はその後ろ姿を見ながら
一気にコップ酒をあおった
間違いなく竹中は警察に行く
時間がすぎるが警察は来ない
なんだ、今日の逮捕はないのか!
「ママ、もう一本お酒をちょうだい」
竹中と二人で一升は空けていた
ママが銚子を持って、私の隣に腰を下ろした
「ママ、麗子ねぇ、美容整形逃亡犯と似とるって言われたことあるんよ。似とる?懸賞金500万だってぇ、すごいねぇ、もし麗子がもらったら恵まれない子の施設に寄付するんだけどねぇ、ねぇ、ママぁ」
私は酔いと、激情に心が揺さぶられ、大粒の涙を流していた
何よ、自首もすすめてくれないの
「帰るわママ、お勘定してぇ」
今なら逃げれる
私がホテル住まいだとは
ママも竹中も知らない
今なら逃げられる
今なら、、、