あえのことは、農耕儀礼の一つとして古くから奥能登の農家に伝えられてきた
年の暮れに田の神を迎えて、あたかも姿ある人に接するかのように主人が厳粛にねぎらい
翌春には再び田んぼに丁重に送り出すという一連の素朴な行事である
12月5日
まず念入りに家の清掃をし
午後3時頃家長が裃をつけ
鍬を肩にして苗代田のあぜに立つ
鍬を田に打ち込み2拍手して
「田の神さま、お迎えにあがりました。今年もご苦労さまでございました」と案内し、
玄関口、居間のあがり口、茶の間、座敷まで順次案内する
座敷で2拍手して
「長らくご苦労さまでございました。お休み下さいませ」
と唱えて拝礼する
日が暮れてから、田の神を風呂場に案内する。祭主である家長は台所の炉端の上座に着座し、田の神の湯上がりを20分ほど待つ。その間にお膳をすえる
田の神は夫婦神で、お膳は二膳準備する。輪島塗の和膳に椀が5個
1・飯椀
白米にして12ヶ月に見立てた12かい盛りにする(しゃもじを12回使ってこんもりと盛る)
盛り方が悪いと来年、穂のつき方が悪いといわれる
2・汁椀
椎茸の味噌汁
3・煮物椀
大根の輪切り
にんじん
ごぼう
里芋
山ふき
豆腐
ぜんまい
など7種を煮込んだものをつける
4・向付け椀
豆腐の田楽
大根なます
5・皿
尾頭つきは、はちめ(めばる)の生のもの
6・膳の横に酒を盛る椀
手前に銚子を1本置き
中央に陶製の酒瓶を置く
漆塗りの銚子には甘酒が入れてある
配膳が終わると肩衣姿の家長が神前に座し、2拍手拝礼の後
「田の神さま、今年も長らくご苦労さまでした。ごちそうは十分つくってございます。ごゆっくりおあがり下さいませ」とあいさつし、
お神酒を三献
次に陶性の酒瓶を三献注ぎ
ひとまず下がる
しばらくして再び神前に進み
配膳時と同様にあいさつし、盛ってあるごちそうの品々を1つ1つ申し上げ、再びあいさつして下がる
30分くらい待って、家族の夕食になると、このお膳を下げる。祭主は一膳分当たる権利がある。後の一膳は家族みなで食べるが、家長の分のご飯は多すぎるので家族に分ける
祭りが終わると種籾を床の間にあげておく。神さまは春まで種籾俵にこもってござる
翌年2月9日
田の神を田へ送る
神座を整え、風呂の案内をして、お膳をすえる。ごちそうの中身や甘酒は迎えるときと同じもので、田へ送ったあとのお下がりを食べる
「田の神さま、ご苦労さまながら、今年も雨にも負けず、風にも負けず、虫にも負けず、照りにも負けず、豊作をお祈り申してお送りします」と唱えて拝礼する
これらは真言宗の家で行われる