■1982年8月19日
PM3時頃、伊予市Gマンション703号室において、知人を殺害し、事情を知らない夫、他1名と共に知人所有の現金、預金通帳、家財道具(時価合計約956万円)などを搬出して奪い、夫に指示し、伊予市山林に遺体を埋めて遺棄し15年間逃亡
1997年7月29日(時効まで後21日)
逃亡先の越前署に逮捕された
♦️1998年1月19日
午前10時
第四回公判
■検察側証人・(前)夫
最初に話を聞いたのは1982年8月5日か6日
店が終わって迎えに来てくれと言われ、迎えに行った車中で
「悪い男から逃げる女友達がおるけん、逃げる際は家財道具の引っ越しを手伝って欲しい」と言われた
この頃から、和子は誰かの荷物を運び出す計画をしていたのだと思う
家財道具を搬出する際に和子は、部屋にあった紙袋から軍手を取り出して、手袋をしてやってと言った
遺体を埋めたスコップは山道にさしかかる所で、和子が車を停めてと言い、車から降りて後ろに走って行き、スコップを2本持って帰り、後部座席にそのスコップを入れた
★辰巳検事
「この事件をどう思いますか?」
このバカのおかげで、私も子供も外に出られません!被害者のお墓参りに行きたくても行けません!
★奥田弁護人
「仕事で軍手を使いませんか?」
使いません
「和子は夕食をどうしていましたか?」
大体作っていました
「事件当日の19日の夕食は、あなたがインスタントラーメンを作って、子供達に食べさせたとありますが?」
作らない時もありました
「犬を飼っていましたね。その犬の糞の始末にスコップを使っていましたね。被害者を埋めたスコップは、それを持って行ったんじゃありませんか?」
違います!
「暗い山道でスコップを見つけることは難しいんじゃないんですか?」
道路工事現場ならあります!
「事件の日、自宅に帰った時、和子は何か持っていましたか?」
ええ、、持っていたような気がします
「逃亡先の和子から、電話がありましたね。どんなことを言っていましたか?」
警察には言わんといてぇ
【和子心中、、嘘、、】
★児玉弁護人
「和子から頼まれた引っ越しは、どんな引っ越しだと思いましたか?」
暴力をふるう、、男から逃げる女の引っ越し、、
「では、あなたの調書にある、刑務所からパトロンが出てくるから、逃げる女の引っ越しとは違ってきますが、どうですか?」
わかりません
「刑務所から出てくる、という引っ越しの話しなら、事前に逃げる話しになり、被害者の引っ越しとは全然違ってきますが?」
もう、わかりません!忘れました
「両方の話しがごちゃまぜになっているんじゃないんですか?」
もう気が動転して、わかりません
★被告人(前夫の右斜めに立つ)
「日曜・祭日などはよく山に連れて行ってくれましたね。あなたのお母さんも一緒に、木の芽や野生の花をとりに」
あったかもしれません、もう忘れました!
★児玉弁護人
「その時あなたは素手でしたか?」
軍手をしていました
「その軍手はどこに入れていましたか?」
車です
「助手席のダッシュボードに入れていませんでしたか?」
そうだったかもしれません、、
「家に、玄関から台所まで廊下があったでしょう?」
廊下なんかゆうもんあったかぁ!
(和子を振り返り、憎悪の目で)
【和子心中、あったでしょう、、】
もう、忘れました!
「廊下のところで、紙袋の中から果物ナイフを『どうしようか』と和子が見せると、あなたは『捨ててしまえ!』と言ったでしょう」
忘れました!
★奥田弁護人
「軍手は従姉妹の夫は、古かったと言っていましたが、どうですか?」
いいえ、新品でした
「事件当時、被害者の遺体が、非情階段の6階と7階の踊り場に置いてあったことは間違いありませんか?」
はい
【和子心中、、パパ、刑事さんと現場に行くと、刑事さんも不自然やゆうてたよぉ】
★辰巳検事
「和子からナイフを見せられ『捨ててしまえ』と言ったのか、記憶していないのか、忘れたのか、重要なことなのではっきり言って下さい」
気が動転していたので、ちょっと、、わかりません
「どちらかと言えば?」
なかったと思います
「事件の前に頼まれた引っ越しの話しは、従姉妹夫婦の夫にも頼んでいたことを聞きましたね?」
えーえーそうです。従姉妹の夫にも前もって引っ越しを頼んでいたことを警察で聞きました、、
逮捕されてから初めて計画的だとわかりました
【和子心中、、そう、、警察で聞いたの、、】
★裁判長
「今の被告人に対する気持ちは?」
この世から消えて欲しい。わしのためにも、、、子供のためにも、、
【和子心中、、この人の人生を変えたのも私。恨まれ、憎まれるのは当然だ。私はこれで想いでからふっ切れたような気がした、、】
■論告
被告人は
前夫に対しても引っ越しの依頼などしたことがなく、1981年の暮れ被告人の知り合いで、スナックの2階に住んでいたホステスの引っ越しの話はしたことがあると、すり替える主張をしている
前夫は
被告人と夫婦関係であり、かばいこそすれ、あえて虚偽の供述をなす事情は全く存在せず、付随事情や当時の心情は具体的かつ詳細なもので、迫真に富んでいる
(つまり、前夫は嘘をついていない。被告人は嘘をついている)
■弁論
8月に入って被告人を迎えに行った車の中で、運搬依頼を受けた旨の供述をしているが、被告人は8月は夫に迎えに来て貰った可能性がない旨、具体的根拠を挙げて明確に供述している。夫の供述自体を吟味する必要がある
夫は被告人が逃亡後、警察に厳しい取調べを受け、8月27日自白するまで、被害者の遺体を山中に埋めたことも一貫して否定していた
本来真面目で嘘などつかない夫も、時と場合によれば嘘をつくこともあるのである
1、2週間前に引っ越しを頼まれたという記載が8月25日の調書にあるが、この時点では、被告人が逃亡したことも否認していたのであって、あるいは自分が被告人に頼まれた家財道具の運搬の手伝いを正当化するために、嘘を言ったのかもしれないし、従姉妹の夫が運搬依頼を供述している旨、誘導されてそのような供述をしたのかもしれない
これ以外にも、自ら持参したスコップを被告人が見つけたと言ったり、6階と7階の中間の踊り場に死体が置いてあった旨供述した、という具合に、不合理極まりない供述を繰り返しており、事前の運搬依頼についても、前夫の供述を鵜呑みにするわけにはいかない
(前夫は嘘をついている)