第8波における死亡者数の増加に関する分析と考察が、アドバイザリーボードの公表資料で公開されています。
”オミクロン株による第8波における死亡者数の増加に関する考察” 2023 年 2 月 22 日
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001062650.pdf
➀第8波における死亡者数増加
1)変異株
・第7波は BA.5 系統が流行の主体であり、
・第8波についても 2022 年第 52 週時点で BA.5 系統が約 7 割を占めており、BQ.1 系統、BA.2.75 系統は合わせて 3 割程度
・急激な死亡者数の増加につながるような変化が起きているという報告はない
2)第8波においては、感染報告のうち 80 歳以上の占める割合が、第7波の約 1.3 倍に増加
・2022 年 9 月 26 日より、高齢者は継続して報告されているが、その他の陽性者については年齢層別の人数だけの簡易報告
・2023 年 1 月第 3 週以降、65 歳以上発生届出数に占める届出時入院数の割合の上昇傾向
⇒第 6 波及び第 7 波においても、感染の減少局面において同様の傾向がみられることから、第 8 波に特徴的な現象ではない可能性があるが、今後の動向を注視していく必要
青 :65歳以上の発生届数
紺 :65歳以上の要入院数
赤線:65歳以上の要入院割合
②高齢者における死亡者数の増加要因
1)オミクロン株においては、ウイルス感染が直接の原因となる肺炎が減少した一方で、
ウイルス感染をきっかけとする併発疾患や合併症の増悪により死亡する高齢者が増加
2)感染者数の増加にともなう施設等における高齢者の感染
3)ワクチン接種や第6波よりも前に感染して免疫を獲得していた場合においても、その後の時間経過に伴って獲得された免疫は低下、また接種後 8 ヵ月以降には重症化阻止効果も低下
4)オミクロン株の流行となって以後、通常救急医療も含めた救急搬送への負荷増大の長期化による治療介入の遅れによる影響
5)大都市圏から全国への地域的な拡大による影響
その他、統計上の扱いを指摘、
・自治体や地域による死亡者報告基準の違い
・併発疾患や合併症の増悪による死亡者の増加に伴い、デルタ株までの病態よりも死亡までの期間が遷延していることから、報告基準とする期間の長短が死亡者数に影響
・特に在宅や介護施設における看取りにおいては、新型コロナウイルスの感染との因果関係を明らかにすることは難しく、医療者の判断にも相違
・保健所からの健康観察期間後の死亡の場合や直接死因との関連性が低い場合等で、保健所の積極的疫学調査により死亡が把握されていない可能性
・特に医療機関以外での、施設や自宅における高齢者の死亡例については、新型コロナウイルスの検査が行われていない例も多く存在していることが予想され、超過死亡における死亡者数と、報告されている死亡者数との乖離の原因
現時点で、ウイルス変異による重症度が悪化しているという報告はなく、
それ以外に死亡者数が多くなっている原因については、上記のような複数の理由
として、
今後の感染状況を把握するためのさらなるサーベイランスの必要性、
高齢者における日常的な感染予防対策やワクチン接種体制の維持、
高齢者が集団で生活をしている医療施設外の高齢者施設等における感染対策強化への支援、
そして必要な治療を受けられる医療提供の継続的な確保
を求めています。
様々な要因が重なり、こういった状況が出現していると予想されますが、定量的な分析が進め、的確な対応策を実施し、高齢者の死亡例が減ることに繋がるよう期待します。