【連載】腹ふくるるわざ㊱
ガンバレ日本!
桑原玉樹(まちづくり家)
強豪ドイツ、スペインを撃破!
いやー、サッカーワールドカップ2022の日本には感動した。誰も予想しなかった結果に、日本中が沸いている。
対ドイツ戦の勝利に驚喜したかと思えば、コスタリカに敗戦したことで落ち込んだ。ところが対スペイン戦では無敵艦隊を撃破してグループリーグ1位通過! しかもドイツ戦、スペイン戦とも前半0-1で負けているのを後半になって、絵に書いたような逆転劇。アニメでもこんなストーリーは嘘っぽくて書けまい。
このグループリーグで日本は2つのワールドカップ記録を樹立したそうだ。
一つは「最低ボール支配率での勝利」。スペイン戦でのボール支配率は国際サッカー連盟(FIFA)発表によるとスペイン78%、日本14%、中立8%(スペイン82.3%、日本17.7%とも報道されている)。ワールドカップの詳細記録が始まった1966年以降、最低のボール保持率での勝利だそうだ。
もう一つの記録は「700回以上パスを回されての勝利」。FIFA発表によるパス本数は、対ドイツ戦では日本261本、ドイツ820本。対スペイン戦では日本237本、スペイン1059本だった。
日本が敗れた対コスタリカ戦ではどうだったのか。日本575本に対してコスタリカは444本。この数字を見ても、試合の勝敗はパスの数やボール支配率ではないことが、よく分かる。
それにしても対スペイン戦での三苫薫の粘りはすごかった。ラインを越えたかどうかハラハラ、日本中が祈るばかりだったが、今大会から採用されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によってゴールが認められた。
日本を救ったビデオ判定
VARとは、ピッチ外で映像を見ながらビデオ判定を行う審判員のことで、主審の判定を補助するというわけだ。テニスの試合などでも、会場に設置されたカメラの映像によって判断する「ホークアイシステム」が用いられているが、それに加えて今回は公式球にチップを埋め込んでの「トラッキングシステム」を使っているらしい。
チップには加速度センサー、ジャイロセンサーを搭載し、観客席最前列に張り巡らせたアンテナと連動して3次元の慣性運動、並進運動、回転運動を検出し、10分の1ミリ単位でボール位置を計測できるそうだ。どういうことかサッパリ分からないが、すごいものだ。日本中が開発者に感謝していることだろう。
▲三苫の折り返し。左がVAR画像。右がTV放送の映像)
ちなみに国際サッカー評議会(IFAB)によって制定された「サッカー競技規則2022/23」の第9条(「ボールインプレーおよびボールアウトオブプレー」)を見てみよう。その第1項では「ボールアウトオブプレー」を次のように定めている。
ボールは、次のときにアウトオブプレーとなる。
・グラウンド上または空中で、ボールがゴールラインまたはタッチラインを完全に越えた。(以下、略)
つまり、上から見て1ミリでもラインにかかっていればインプレ―というわけだ。
ところで、世界中のサッカーの話題を取り上げるツイッター・アカウント「Out Of Context Football」が、この試合後に日本国旗に縦線1本を入れた画像を投稿した。「日の丸」をボールに例え、縦線がギリギリ「日の丸」に被っているイラストである。このイラストで三笘のアシストがゴールラインを割っていなかったのを示唆したので、賞賛の声が多数寄せられているそうだ。
▲日の丸が変わる?
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。