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グリーンレンジャー 始まりの物語(上) 【連載】腹ふくるるわざ⑪ グリーンレンジャー 始まりの物語(上)

2021-06-18 18:01:58 | 【連載】腹ふくるるわざ

【連載】腹ふくるるわざ⑪

グリーンレンジャー  始まりの物語(上)

桑原玉樹(まちづくり家) 

 

 このブログでも既に3回掲載されている葛退治。白井市にある南山公園(法目川防災調節池)や国道464沿道にはびこる葛を退治する、高齢者ばかりの団体、その名も「グリーンレンジャー」と命名して活動をスタートしたことは5月6日号で紹介された。
 ここで改めて葛退治論争から「グリーンレンジャー」発足までのいきさつ、そして現状を3回(上・中・下)に分けてお知らせしよう。この記事がもとで会員が増え、そして美しい景観を取り戻せることを期待したい。

 

始まりは「ダーツの会」から
 
 毎週木曜日の夕方になると、あるマンションの集会所にぞろぞろと人が集まる。「ダーツの会」のメンバーたちだ。ダーツに興じながら美味しい食事とお酒を楽しむ。高齢者ばかりだが、みんな気持ちだけは若い。

 令和2(2020)年秋のダーツの会で、今はグリーンレンジャーの会長をしている藤原雄介さんからこんな話があった。
「実は、私は近くの南山公園を散歩していますが、その道すがら、外来種であるヒメジオンやハルジオンを抜いているんです。『貧乏草』ともいうんですよ」

 ふむふむ、昭和天皇が皇居を散策されていたときに抜かれていたという、あのヒメジオンやハルジオンねー。

▲海洋生物・植物の分類研究を続けられた昭和天皇

 

 ウィキペディアによると、ヒメジオンは1865年に、ハルジオンは1920年代に、いずれも観賞用として北米から持ち込まれた。しかし、今では全国に広がり、在来植物の生育を邪魔すとして法律により「要注意外来生物」に指定され、また日本生態学会からは「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されているという。

▲ハルジオン(左)とヒメジオン


 藤原さんはさらに続けた。
「いや実は、貧乏草だけでなくて葛もはびこっている。駆除しているんだけど、私のアーミーナイフだけではなかなか多勢に無勢。そこで皆さん、葛退治をしませんか?」

 

葛に覆われた南山公園の法目川防災調節池の法面(斜面)

▲葛と笹竹が繁茂する南山公園の水辺

 

 そう言われても、「ダーツの会」のメンバーはすぐに付和雷同する人達ではない。当然、次のような反論も。

〈反論1〉葛は古来愛でられてきた! 

 「いやいや、葛でしょ。花はきれいだし、外来種でもなく、日本では昔から秋の七草として愛でられてきた。退治していいんだろうか」

▲なぜか美しい葛の花


 確かに山上憶良が万葉集で秋の七草のひとつとして詠んでいる。さらにさかのぼって古事記では八幡様と言われている応神天皇の「山の上から葛が繁る平野を眺めると、満ち足りた住戸も素晴らしい国も見える」という意味の歌が詠まれている。
 つまり、葛は日本では古来豊かさの象徴だったので、除去するまではないのではないか。

▲山上憶良(万葉集)

 

▲応神天皇(万葉集)

 

〈反論2〉「千葉」「葛飾」の地名も葛からだ! 

 葛飾郡は、律令時代に定められた郡名で、北は現在の埼玉県久喜市、茨城県古河市、西は隅田川、東は船橋市まで至る広大な地域だった。また千葉郡は、万葉集にもその名が見られ、千葉市、八千代市、習志野市、船橋市の北部にわたる地域だ。

 明治38(1905)年に発行された『下総国旧事考』では、千葉と葛飾の地名の由来について説明している。口語文ならこうなる。

「葛(くず)はその葉が茂っているものなので、(*応神天皇の歌にある「千葉」は)その枕詞である。下総国の千葉郡もその意味で名づけられたもの。本州(*下総国)に葛飾郡があるが、飾は借り字であり、繁の意味だ。『飾(シカ)』と『繁(シゲ)』は相通じるところがある。だから、千葉郡を建てる時にその発語を取って名としたのではないか。千葉葛飾両郡とも、とりわけ原野が多く、葛の繁茂していることによってその名をつけたものだろう」
 葛は、この地域の地名の由来だったのだ。その葛を除去しようというのか。

 

▲『下総国旧事考』より

 

〈反論3〉葛は有用な植物だ! 

 葛は、葛切りや葛餅などの食用、あるいは葛根湯などの薬用として、さらに近年ではバイオエタノールにして燃料にも使われているなど有用な植物だ。それでも除去しようというのか。

 以上のような反論に、葛退治を主張する人たちも黙ってはいなかった。(つづく)

 

 

【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】

昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。


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