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【連載】腹ふくるるわざ(62)
ヒゲもいろいろ
桑原玉樹(まちづくり家)
ヒゲソリ拝借Me Too
前回「ヒゲソリ」について書いた。
すると複数の人から「私もゴルフ場から無断で拝借しているよ」とのご意見が寄せられた。良かった。私だけではないようだ。そして、使い捨てカミソリの品質が向上していることは皆さん認めていらっしゃった。その中で、F氏からこんな意見が寄せられた。そのまま引用しよう。
日本の使い捨てカミソリの品質は素晴らしいようですね。しかし、ヒゲソリの道具やシャボンにまでこだわるのが英国紳士。添付写真は、ジェームス・ボンド御用達で知られるロンドン・ジャーミンストリートで購入したカミソリ、泡立てブラシ、昔ながらのサンダルウッド(白檀)の香りのシェービングクリーム。そして、ハムステッドののみの市で見つけたスピットファイアを描いたシェービングクリームの泡立て容器です。このクリームに濡らしたブラシをこすりつけて、泡立て容器でフワフワの泡を造り、蒸しタオルを当てた顔に泡を馴染ませておもむろに髭を当たる…のが現役時代の休日の楽しい儀式でした。不思議に優雅な気分になったものです。ブログを見て、久し振りにこの儀式を思い出しました。今の無精髭を剃る時には、これらの道具に再登場して貰いましょう。
▲至福の儀式に欠かせないF氏のヒゲソリ道具
ネアンデルタール人もヒゲソリ!
ひげそりの歴史は今から10万年以上もさかのぼる。
ネアンデルタール人の時代の洞窟壁画には、2枚の貝殻でヒゲを引き抜く様が描かれているそうだ。「へー」と思って検索したが、残念ながら画像は見つからなかった。
古代エジプト人はツルツル
古代エジプト人はヘアレス(つるつる)に執着していたらしい。囚人と区別をするために目に見える体毛はすべて剃り落としたとも、またヒゲがあるのは衛生感の乏しい表れであると思っていたとも言われている。まさに映画「十戒」でファラオ、ラムセス2世(紀元前1303年?~紀元前1213年?)として登場するユル・ブリンナーは適役だったわけだ。
▲ユル・ブリンナー(『十戒』)
ファラオの付けヒゲ
しかし、ファラオは威厳を見せなくてはならない。人前ではオシリス神の姿に倣って付けヒゲを付ける義務があった。もちろん剃った頭にはウィッグをかぶった。ツタンカーメン(紀元前1341年~紀元前1323年)もそうだったのだろう。
▲ツタンカーメン黄金のマスク
ネットではツタンカーメンの付けヒゲのイミテーションと称して1万7000円程度で販売されている。物好きな方はお買い求めいただいたらどうだろう。
▲ツタンカーメンの付けヒゲ(イミテーション)
なんと女性ファラオ、ハトシェプスト(紀元前1508~1458年頃)すら付けヒゲをしていたというから驚いた。
▲付けヒゲの女性ファラオ、ハトシェプストは付けヒゲをしていた
アレキサンダー大王の東方遠征
アジアでの戦い(東方遠征)を目前にしたマケドニアのアレキサンダー大王(アレクサンドロス3世、紀元前356年~紀元前323年)は、自分の軍隊の規模が敵の5分の1以下であることに気づいた。そこで王は、兵士の不安を和らげるため、ヒゲを剃るよう命令を出した。長いヒゲは、戦いの際に敵につかまれやすいからというのが、その理由だった。
アレキサンダー大王の軍はこの戦いで予想外の勝利を収めた。これをきっかけとして、古代ギリシャとローマの男性の間でヒゲ剃りが流行し、その傾向は400年も続いたと、米オハイオ州にあるライト州立大学の名誉講師で『ヒゲの文化史:男性性/男らしさのシンボルはいかにして生まれたか』(ミネルヴァ書房)の著者である歴史家のクリストファー・オールドストーン・ムーア氏は言う。(なおヤクザが短髪なのも白兵戦に備えて、とのことだが真偽は定かでない。)
▲アレキサンダー大王
またまた「へー」と思って検索した。アレキサンダー大王より前のソクラテス(紀元前470年~紀元前399年)やアリストテレス(紀元前384年~紀元前322年。アレキサンダー大王の先生でもあった)はふさふさしたヒゲ面だった。
▲ソクラテス
▲アリストテレス
確かにジュリアス・シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル。紀元前100年~紀元前44年)にはヒゲがない。しかし、カナダのデザイナーVoshart氏がAIと資料を基に復元した54人のローマ皇帝の写真を見ると30人くらいにはヒゲが見える。ということで皆がヒゲを剃っていたわけではなさそうだ。
▲ジュリアス・シーザー
▲AIを使いVoshart氏(カナダ)が復元したローマ皇帝54人。30人程度がヒゲを蓄えている
大相撲でヒゲは禁止?
アレキサンダーは戦いのために「ヒゲをそれ」と言ったが、大相撲ではどうだろう?
髷をつかむと反則負け(髷つかみ)になる。ヒゲを生やしていれば張り手を受けても反則勝ちになるかもしれない。検索したら2019年2月27日日刊スポーツにこんな記事があった。
〈日本相撲協会の尾車事業部長(61=元大関琴風)は26日、大阪市内で行われた力士会に出席後、力士(競技者)規定が今月8日の理事会で改定され「過度な験担ぎによる髭(ひげ)などは禁止である」といった条文が加えられたことを明かした。
これまで「力士は、身体を清潔に保たなければならない」としか明記されていなかったが、今回は他に伸びた爪、入れ墨なども禁止。〉
次の黒海の写真は無精ヒゲだが、許されるようだ。
▲富山・魚津巡業の朝げいこに現れた黒海(2006年10月21日、日刊スポーツ撮影)
ヒゲも色々
さて、我らが「しろいダーツの会」(会長は筆者)ではヒゲを生やす仲間が多い。半分を超える。その種類も様々だ。ヒゲには呼び名があるようだ。大阪の男性向け美容室では次のように紹介している。また外国では呼び名も多少異なる。さてダーツ仲間のヒゲはなんという呼び名だろう。
▲ヒゲも色々(メンズ美容室「レ・オム/大阪」のHPより。ただし顔の上部をトリミング)
▲ヒゲもいろいろ(外国)
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシア総理府のクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、南山小学校区まちづくり協議会会長、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員、「しろいダーツの会」会長。