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カラオケ 【連載】腹ふくるるわざ㊽

2023-03-01 11:18:14 | 【連載】腹ふくるるわざ

【連載】腹ふくるるわざ㊽

カラオケ

桑原玉樹(まちづくり家) 

 

 

高校時代~歌声喫茶

 高校時代、私は新聞部にいた。放課後、古くて暗い部室に部員が集まってはみんなでよく歌っていた。歌が好きで声がきれいでかわいい女子部員がいたのも一因だ。フォークソング、ロシア民謡、みんなで歌うことに快感を感じていた。
 
 このころ部員そろって歌声喫茶にもたびたび行った。新宿歌舞伎町の「灯(ともしび)」だ。歌声喫茶は、集団就職で移住してきた若い労働者が集まる場所というイメージがあるが、サラリーマン、学生・生徒も多かった。一つの歌を皆で一緒に歌う。青春歌謡、ロシア民謡、そして労働歌。○○党のうたごえ運動の影響もあるので「あぁインタナショナ~ル 我~らが~もの~」というのも覚えた。政治的思惑とは無関係に、皆で大声を出すことが快感だった。


▲歌声喫茶~みんなで歌う

 

 三島由紀夫も歌声喫茶に行っているとのことだ。昭和32(1957)年、新宿の「どん底」に行き、朝日新聞に次の訪問記を書いた。
「『どん底』では『どん底歌集』というものを売っていて、ある歌を一人が歌いだすと、期せずして若人の大合唱となる。喚声と音楽がいっしょになって、なまなましいエネルギーとなって、一種のハーモニイを作り上げる。何ともいえぬハリ切った健康な享楽場である。ワビだのサビいっていた日本人が、集団的な享楽の仕方を学び、とにかくも一夕の歓楽の渦巻きを作りうるようになった」
 左翼嫌いの三島由紀夫がほめているのは意外だ。三島は労働歌を歌ったのだろうか?

大学時代~コンパ

 大学ではホッケー部に入った。「コンパ」をよくやった。歓迎コンパに送別コンパ。一部復帰コンパに二部転落コンパ。諸先輩の長い訓示が30分続いた後は大騒ぎ。今の学生もやっているのだろうか? 青春歌から「青」がとれて春歌も多かった。「一つ出たほいの……」「一つとせ……」などなど。最後に応援歌。誰かが応援団風に「第ジューハチ回記念祭寮歌~。年早や既に~。アインス、ツヴァイ、ドライ!」。皆で肩を組んで、酔っぱ
らって大声でがなり立てる。「青春だな~」と感じ入っていた。


▲コンパ

 

就職~お国民謡

 就職したら「懇親会」「宴会」になった。もっぱら座敷だ。ひとしきり飲んだところで「え~ではこの辺でご自慢の喉を…」と順番に歌のご披露となる。お国自慢の民謡、詩吟、軍歌、女性がいないときは春歌。「秋田名物八森ハタハタ…」(秋田音頭)、「何の因果~で…」(貝殻節)、「甲斐の山々~」(武田節)。
 私が就職した組織はどちらかというと東北や九州など地方出身が多かったのでたくさんの民謡を覚えた。順番に指名されて歌い始めると、全員が声を合わせて手拍子と合いの手を入れる。気持ちよく酔いが進んだ。


▲お国民謡

 

カラオケ出現

 カラオケが出てきたのはいつの頃だろうか。1970年以前にも8トラック磁気テープ式ジュークボックスがあったようだが、1971年に8トラックテープ再生機が発明されたという。
 このころは歌声喫茶と同様に「歌本」や歌詞カードを見ながら歌っていた。歌う人は音頭をとるが、全員で声を合わせて歌うのが主力だった。

通信採点カラオケ

 カラオケの技術革新が続いた。コンパクトカセット、レーザーディスク、VHD、ビデオCD、DVDなどを経て、1990年代以降は通信カラオケが主流となった。
 レーザーディスク普及後はモニターに歌詞が表示さるようになった。通信カラオケになるとさらに採点が出るようになった。


▲採点カラオケ


 このあたりが変化点だろうか。カラオケを歌っても虚しさを感じるようになった。宴会やカラオケボックスでは誰かがカラオケを歌っていても、他の皆はうつむいて分厚い本(2020年3月で作成をやめたそうだ)や曲ナビで曲探しをするのに忙しくて、ほとんど聴いていない。 歌っていても誰もこちらを見てもいないし、聴いてもいない。曲が終わって得点が表示されるとおざなりの拍手と一応の誉め言葉。気持ちが萎える。
 TVでもカラオケ番組の人気は高い。カラオケ得点機を使った「THEカラオケ★バトル」は2006年にスタートした元祖カラオケ採点番組だ。堺正章がオーナーを務める。一流のプロたちや、全国の「歌うま」シンガーたちが集結。カラオケマシンの採点で自慢の歌声を競い合う。


▲「THEカラオケ★バトル」


 同じようにカラオケボックスで点数を競う上手な人もいる。「ガチプロカラオケ」というらしい。「レリビー~ レリビー~(Let it be)」ときれいな伸びのある声で歌っても、「うまいなー」とは思うし、「すごーい!」と誉めるが、一緒に歌えず、あまり楽しくない。

一緒に歌って、スッキリ発散

 さてさて、そうは言っても、進化した機能でキーを調節するなどして誰でもが歌えるようになることは素晴らしい。できることなら歌の巧拙はともかく、皆で声を合わせて大声で歌いたい。スッキリと発散したい。

 

 

【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】

昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。

 


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