阿部ブログ

日々思うこと

原子力発電における使用済核燃料問題と我が国における研究開発

2011年04月13日 | 日記
福島第一原発事故は、国際評価尺度(INES)で、最悪のレベル7であるとの報道がなされているが、今だ事態収束の目処が立っていない。そもそも福島原発事故がなくとも、我が国の原子力発電には「使用済核燃料」と言う大きな課題が存在している。

今回の事故でも「使用済核燃料」を貯蔵するプールが地震で破壊され、放射能漏れを引き起こしているが、このプールは、縦29メートル、横12メートル、深さ11メートルで、燃料集合体を6840本収容できる。但し既に6375本の燃料集合体で埋め尽くされており、貯蔵の余地がほぼ無い状況。

東京電力は打開策として、青森県むつ市に中間貯蔵施設を建設中であるが、現行の原発敷地内に貯蔵施設を併設するやり方が限界に来てい証左。これは東京電力以外の原発でも同様で、脱原発を推進するにしても最終的にはこの「使用済核燃料」と言う、半減期数千年から数百年と言う放射性核種を安全確実に冷却し続けなければならないと言う難事業が待ち構え、これからも核汚染事故のリスクが長期間に亘り付きまとう。

311以前の試算であるが、100万kw級原発が60年運転し、その稼働率80%と仮定すると、23トンの使用済核燃料が発生する。これを全電力会社の原子力発電を合算すると合計124200トンとなる。但しこの一部はフランスにおいて5630トン程度再処理され、さらに東海村の再処理施設で950トン処理されるので、最終的には117620トンとなる。

今後も累積する「使用済核燃料」と言う問題の抜本的解決策はまだ提示されていないが、現状では軽水炉、高速炉、未臨界炉を用いて核廃棄物自体を核変換する方法が研究されている。特に東京電力で核燃料サイクルの研究をし、現在は東海大学の教授に転身している高木氏の取組みは、トリウムとプルトニウムを軽水炉に装荷して燃焼させて消滅処理すると言う取り組みであり、世界に存在するプルトニウムの約10%を保有するという我が国にとっては、注目すべき研究である。

この他、、日立製作所などが平成13年から研究されている溶融塩炉による「使用済核燃料」の減量化と言う研究がある。これは米国オークリッジ国立研究所で進められた第四世代に属する原子炉の研究成果を、更に発展させたもので、軽水炉から出る「使用済核燃料」をフッ化溶融塩に移して、燃料として再利用するもので、これにより80%程度の減量が可能と計算されている。
この研究が注目されるのは、溶融塩炉において、レアアースと共に産出するトリウムを燃料とする原子力発電への展開が可能である点で、固体核燃料から液体核燃料への転換を図る事で、より安全性を重視した原子炉の開発と、使用済核燃料の減量化と言う観点から、福島の事故を乗り越えて、これからも継続して研究開発を進める必要がある。

中国のスマートグリッド

2011年04月13日 | 日記
中国におけるスマートグリッドの推進主体は国家電網である。国家電網のスマートグリッド分野への投資は2009年から2020年で4兆元と言われ、

①第1段階(2009年~2010年)スマートグリッドの計画策定、実証実験の実施:投資額5500億元。
 ・2縦2横の特別高圧交流送電線の後続プロジェクトを開始。連係区域をまたがった直流総電網プロジェクトの実施規模は1,290万キロワット。配電網建設の投資を拡大し、基幹となる電力技術の研究と設備を充実させスマートグリッドの標準規格の策定を行なう。

 ②第2段階(2011年~2015年)スマートグリッドの建設:投資額2兆元。
 ・全面的スマートグリッド網の建設に着手し、UHV直流送電ルートを中心としたグリッドの構築、都市及び農村部の配電ネットワークの整備充実、地域グリッド間連係容量を2.4億kWへ引き上げる。
  ・配電網の電力供給能力、品質、信頼性を高め、都市配電網の電力供給の信頼性を99.915%以上、総合的な電圧合格率は99.5%以上を目指す。農村配電網の電力信頼性は99.73%以上、総合的な電圧合格率は98.45%が目標。

 ③第3段階(2016年~2020年)スマートグリッドの拡張と安定化:投資額1.7兆元。
 ・ストロングスマートグリッドの基盤を完成させ運用を開始。3華(華北、華東、華中)を最終供給地とするUHVの同期総電網を受け手とし、東北地域の特別高圧総電網と西北の750万kWを送電する。また各大規模火力、水力、原子力、再生可能エネルギーの電源地帯を相互連係させた連係網を構築しUHV及び区域間の送電能力を4億kW以上にする事が目標。
 
スマートグリッドと言っても中国のそれは、経済成長を支える旺盛な電力需要に応えるべく新規電力網の構築、特にUHV直流総電網建設がメインで、これはストロングスマートグリッドと国家電網は呼称している。
中国版スマートグリッド構築に先立ち2009年1月からUHV640km送電の実証実験を開始。今後2000kmまで拡張する。国家電網は当該UHVプロジェクトに対し2012年までに2000億元を投資するとしている。この国家電網によるUHV網は、最終的に「東縦」:内モンゴル~南京、「西縦」:陜西~長沙、「北横」:内モンゴル西部~山東、「南横」:四川~上海、の所謂「2縦2横」の構築が主体。

 UHV構築の背景には電力源と消費地が地理的に離間している為、「西電東送」、「北電南送」と言われる通り、遠距離・大容量・低損失のUHV構築が必須である。このような背景もあり国家電網は2009年世界初となる±800kVや1000kVのUHV直流送電網の商用化を実現している。このUHVにより石炭、火力、水力、原子力など電力エネルギーを集約的に管理・制御することが中国におけるスマートグリッドの大きく目指すところである。
 
中国におけるスマートグリッド関連のプロジェクトは、所謂、発展途上国における電力インフラの新設拡充がポイントであり、前節の「西電東送」など如何に電力網を早急に整備するかが大きな課題である。
スマートグリッドと言いながら現状では単なるインフラ整備の域を超えていない。