阿部ブログ

日々思うこと

「原子力潜水艦・原子力動力装置計画計算書」なる文書

2012年07月14日 | 日記
「原子力潜水艦・原子力動力装置計画計算書」と言う79ページの文書がある。
作成されたのは1958年5月、作成したのは川崎重工業。
当該文書は、(1)原子炉、(2)原子炉関係補機、(3)原子炉遮蔽、(4)二次系統、(5)重量で構成される。

この文書では、熱出力35MWの加圧水型原子炉、4000SHP(軸馬力)の蒸気タービン2基、基準排水量2500トン、水中での巡航速度18ノット、連続航行260日間と言う性能を持つ原子力潜水艦を検討している。

検討する為の設計目標は、原子炉、及び推進機関の総重量は、軸系、プロペラ、蓄電池及び操舵装置を除く重量を1000トン以下に抑える事。

原子炉区画は直径8.2m、長さ12m。機械室は直径6.5m、長さ18m。原子炉の炉型は加圧水型(PWR)。当該文書では、炉型として沸騰水型(BWR)も検討するとしているが、フクイチ(福島第1原子力発電所)を経験しなくてもBWRを原子力潜水艦の炉型に採用する事は無い。

潜水艦の場合、容積に制約を受けるので、原子炉関係機器の最適配置、放射線の遮蔽の有効性を確実にする為原子力関係機器は、原子炉区画に全て納める。また他の潜水艦区画への放射線の影響を限定、隔離する為に原子炉区画の隔壁は50mmの鉛板を張るとしている。

この文書において2500トン、8000SHPの原子力潜水艦の設計検討の結果は、原子炉系、二次系を含めた際の容積重量は、設計目標である1000トン以下に抑える事が可能で、原子力潜水艦としての現実的な製造が可能との結果を得ている。

さて何故、川崎重工業が原子力潜水艦の研究を行うのか?
戦前、川崎重工業は、航空母艦「加賀」や「瑞鶴」などの戦闘艦艇を建造し、最大の建造件数を誇るのが、実は潜水艦であった。なんと61隻の潜水艦を建造している。
戦後も、再軍備最初の潜水艦である「おやしお」は川崎重工業が建造して就役させているのだ。

さて、「原子力潜水艦の原子燃料の交換は如何に?」でも書いているが、艦番号501の非大気依存推進 (Air-Independent Propulsion:AIP)の「そうりゅう」が就役しているので原子力潜水艦は不要と意見もあるようだが、自主防衛能力、特に核抑止力を得る為には、原子力潜水艦の開発と建造は必須である。6隻は就役させる必要があり、弾道ミサイルに核弾頭を搭載して排他的経済水域を越えて遊弋しつつ、我が国の専守防衛を確実にする事が重要である。

対米従属を是とする自衛隊に、我が国の安全保障を任せる程、日本国民は単純ではない。
自衛隊の対米従属は、ナイーブであり、無責任である。今本当に自主防衛を担える真の軍隊、国防軍が必要である。

リバースイノベーションと性比不均衡

2012年07月14日 | 日記

リバース・イノベーションとは、商品やサービスを新興国で開発し、先進国を含む世界各国に持ち込み新市場を開拓することで、従来であれば先進国で製品開発した製品を、新興国や途上国で販売してきたが、リバースイノベーションは、それとは反対のアプローチである。

リバース・イノベーションには、製品を構成する部品の現地調達や製品構造の単純化によって、低価格の製品を開発する、所謂「Frugal Engineering」が重要。また途上国の求めるニーズを取り込む事が、これまた重要である。

リバース・イノベーションの成功例で有名なのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)がインドで開発した「超音波診断装置」である。GEは、インド以外でも中国の病院のニーズに合わせた、低価格の「超音波診断装置」を開発し、当初の病院据え置き型から、改善を施して今では、携帯型で簡易な超音波診断装置の開発に成功している。またパソコンに接続して正確に診断する為の製品を開発した。価格は従来製品の1/6だと言う。圧倒的な価格性能比を誇り、GEの中国における超音波ビジネスを拡大する事に貢献している。しかも米国でもヒット商品となった。

一方、インドにおけるGEの超音波ビジネスは、ウィプロとの合弁事業でインド市場を席巻している。少々古いデータだが、2006年にはGEメディカル・システムズとウィプロの超音波診断装置の売り上げは2億5000万ドルに達している。

リバース・イノベーションの典型的な事例である超音波診断装置は何故、インドや中国の市場で成功する事になったのか?
意外に思われるかも知れないが、アジア特有の「女の子」よりも跡継ぎや労働力になる「男の子」を欲しがる傾向にある。これは過去ブログでも書いている性比不均衡である。

アジアで拡大する性比不均衡

性比不均衡を生んでいるのはリバース・イノベーションで生み出された「超音波診断装置」による胎児の性別判定が、正確に行われるようになったこと。胎児が女の子とわかると「堕胎」するのだ。

通常、妊娠20週で胎児のアナトミー・サーベイ(解剖学的検分)が行われる。母親のお腹にトランスデューサーを当てて性器の形で性別を判定するのだ。インドや中国では、超音波による診断においては、性別の判定しか学ばない事が大半だと言う。
ただし、超音波装置などによる胎児の性別判定は、インド、中国、韓国では違法である。だから怪しげな業者が誤った判定を下してトラブルに発展する事も珍しくない。

この為、GEは同社の超音波診断装置を産み分けに使わない事を誓約させているが、一度売ってしまえば、その後の使途など知り得る訳がない。

リバース・イノベーションが性比不均衡を引き起こしていると言う話しでした。