阿部ブログ

日々思うこと

ロシア主導によるシリア内戦終息に向けた取り組み

2019年05月06日 | 雑感
ロシアは、4月27日、イスラエルとシリア、イランの3者間で、信頼醸成措置に関する letters of good will が、ロシアの仲介・調停で交換された。
この信頼性醸成措置により、イランは、ゴラン高地の停戦ラインから80㎞地点までで革命防衛隊部隊を退げる。しかし、ロシアはイランへの圧力を強めている。特に、ダマスカスの軍用空港、スウェイダのkhalkhala、ダマスカス南東のbeit sahamから、革命防衛隊の撤収と、防空兵器、ドローンを撤去させようとしている。イランのドローンは、米軍から奪取した最新鋭のステルス無人偵察機のコピー機al saiqaである。
ロシアは、以前はラタキアへの海軍基地建設を支持していたが、今では建設計画を妨害している。また、ロシアは、イランによるアラブ人の民兵勧誘を止めるように警告しているし、革命防衛隊やイラン系民兵部隊への浸透工作を行っている。諜報工作に長けたロシアならではだ。

プーチンは、イドリブ・アレッポ地域に対する全面軍事行動を否定していないが、ロシア空軍機が、シリア政府軍と連携して激しい空爆を行っている。攻撃地域は、telmlaとal habit、al howeija、ghaba、kafar nabida、al lataminaなどで、地上軍によるロケット攻撃と、攻撃ヘリが地上を掃射し、樽爆弾などを投下し地上攻撃を支援している。ロシア軍は、アレッポ北西のハマに戦力を移動している。そしてロシア軍とシリア軍の攻撃を受け、イドリブから住民が避難している。
ロシアは、硬軟交えた取り組みから、シリア内戦終息後の枠組みを、ロシアの権益を確実にする政治工作を展開しており、今後動きにも注目である。

さて、米軍は、相変わらず、クルドYPGを保護・監視下においているが、シリア民主軍のマズルーム・コバネ総司令官は、シリア部族会合で、シリア内戦前の2011年の状況に戻ることはないと、断言している。シリア民主軍がシリアを統一すると。また、シリア政府は、最終的に民主化され、クルド人の自治権利を新生シリア憲法に明記し、議会で承認される必要があるとも語っている。更に、トルコと間接に交渉を行っていることも明かしている。

何れにせよ、ロシアは、シリアからのイラン勢を駆逐する努力を継続し、クルドは、米軍庇護の下で、民族自治を確実にするための、軍事的、政治的な取り組みを先鋭化させるだろう。