過去ブログでも述べているトリチウムについて。
トリチウムは、リチウム6に中性子を照射して生産する。リチウム6は、リチウム7の7.5%しか存在しない希少な資源である。
この希少で貴重なリチウム6から得られたトリチウムはベータ線を放出する放射性物質で、半減期が12.3年、年間消耗率は5.5%。
水素爆弾の寿命は、このトリチウムが消耗することによる。水素爆弾をアクティブにしておくためには、減衰したトリチウムを補充しなくてはならない。この為、米国では、トリチウムを年間7キロを生産し続けている。因みに軍用プルトニュウムの生産も続けており年間の生産量は約2トン。
しかし、これ以外の軍用核物質、即ち
①核分裂物質:ウラン235、ウラン238
②核融合物質:デュテリウム(重水素)、リチウム6
これら①②の生産は現在は行われていない。
①の核分裂物質、②の核融合物質のストックの大部分は1960年代半ばまでに生産されており新規の生産の必要が無いからである。
リチウム6は1960年代に早々に生産を終了し、ウラン235は1964年、デュテリウムは1982年に生産を停止している。
①②の核物質が必要な場合には、待機生産施設での生産、貯蔵ストックや退役核弾頭の核物質のリサイクルでまかなわれる。
さて、現在の核兵器にはトリチウムが用いられている。それは核爆弾の小型化と最大効率化を得る為に必須な核心物質である事による。
このトリチウムはプルトニュウムの1000分の1の量が使用されているが、このトリチウムは代替の効かない、しかも減衰する期限付きのこの物質が、現在プルトニュウムと並ぶ最重要物質であるのだ。
このトリチウムが、日本に核融合実験施設ITERの誘致が行われない最大の理由であり、日本の核武装推進派からすればITERの誘致が成功すれば、トリチウムを公に保持する正当性を得る事が出来る。しかしこれは阻止された。核武装したい人達には残念なことだったろう。
もし、日本に核融合実験施設ITERが誘致されれば、年間数キログラムのトリチウムを使用するので、トリチウムが日本国内に輸送される事となる。1回の実験には、25kgのトリチウムが必要となり、非核国である日本に核保有国から、トリチウムを格納した50g入り容器が必要量と予備を含め輸送されることとなる。
日本にとっては、既に十分な軍用プルトニウムの備蓄があるので、トリチウムを国内に保持する事と成れば、トリチウムで強化した核兵器を製造する能力をついに持つこととなる。
もし日本にITER設置が決まっていれば、優秀な我が国の技術者諸君は、トリチウムに関する技術を極め、既に備蓄されているプルトニュウムによる、より強力で小型化した第4世代核兵器を、核実験なしに簡単に作ってしまうだろう。既に世界最高速を誇るスーパーコンピューター「京」を保有しており、必ずしも核実験は必要ではない能力を保有している。
世界が日本を準核武装国としている理由は、この辺りが根拠となっている。
核融合の研究開発が、核兵器拡散をもたらす事が一般には理解されていない。特に北東アジアにおいては、日本や韓国が多数の軽水炉を持ち、しかも核廃棄物の減量/消滅に関する核変換の研究がなされている。またこれを理由にして高エネルギー陽子加速器の開発が進められているが、これはトリチウム生産につながるものだ。
この極めて危険な核物質であるトリチウムは、福島第一原発事故でトリチウムが検出されたと東京電力が報告している。
軽水炉の炉心は普通の水で満たされるが、放射線の反応によりトリチウムが生まれる。このトリチウムは酸素と結合して重水となり、地下水や海水に混じって周囲に放射能汚染を引き起こす。
トリチウムをなめてならない。2kgのトリチウムの放射線量はチェルノブイリ事故時に放出された放射線量に匹敵するのだ、
トリチウムが地球環境や我々人&動物の健康に直結する極めて「水」を根底から汚染する。