はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

TENORI-ON実機。

2008-05-23 00:38:08 | アートなど
先日、5月18日(日)に、せんだいメディアテークで展示されているTENORI-ON実機を触って参りました。
「TENORI-ON」とは、まったく新しい考え方で作られた光の楽器です。
メディアアーティスト岩井俊雄さんの長年の構想を、YAMAHAの西堀さんが実現させたもの。
昨年11月の英国でのプレ発売を経て、この5月ようやく日本でも正式発売されました。

(下の写真は岩井俊雄さんのブログ「TENORI-ON開発日誌」からの引用です。)
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上の写真を見てもわかるように、TENORI-ONは、一見しただけではこれが楽器とは思えないほど独特のフォルムをそなえています。16行×16列、256個のLEDボタン(裏表があるので、じつは512個)と、レイヤーを操る左右のサイドボタン、そして下部のダイヤルを操作することによって音楽を演奏してゆくのですが、操作にともなって音と同期した光が発せられるので、まるで光と音と戯れているかのような感覚を得ることができます。
具体的には、ボタンの配置された面をひとつのレイヤーとして、計16のレイヤーを操ることで音楽を構成してゆきます。それぞれのレイヤーには固有の機能があり、ボタンの配置上に音を『置く』ことで一種のプログラミングをするスコアモードのレイヤー1~7、配置した音の間を光が飛び交って音を奏でるランダムモードのレイヤー8~11、触れた形のとおりに繰り返し音が再生されるドローモードのレイヤー12~13、配置した音から光が落ちて跳ね返るバウンスモードのレイヤー14、配置した音から環状に音が広がってゆくプッシュモードのレイヤー15、そして、ボタンを押している間だけ繰り返し音が鳴るソロモードのレイヤー16。これらのレイヤー操作はもちろんのこと、音色も256とおりに変化させることができます。

実際に触れてみて、うまく組み合わせれば、まさに無限の可能性をもった音楽が展開するのではないかという印象を受けました。エレクトロプランクトンに込められた機能を踏襲しているらしきレイヤー機能もあって、まさにこれが岩井さんの集大成なのだなあと感慨深いものを感じます。
また、何も知らずに触っても、非常に音楽的な音が醸成されるようになっていて驚きました。
触れていてとにかく楽しいことこの上ない。展示機の占有時間が長いわけがわかります(笑)。
エレクトロプランクトンしかり、ブルームバーグショールームしかり、floating musicしかり、このあたりが岩井さんの作るもののすごいところなのではないかと思います。

第1次予約はあっという間に終了即売してしまったようです。
好調な売れ行きに嬉しくもあり、入手し難く悔しくもあり(笑)。
ぜひともメジャーな楽器になってほしいものです。
私は少し様子をみつつ、メディアテークで遊びながらじっくり購入を検討しようかと思います。


横浜遠征5/10。(東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻3期生「OPEN STUDIO MAY 2008」)

2008-05-22 23:56:55 | アートなど
もう10日以上も経ってしまいましたが、5月10日(土)は、横浜で展示をひとつ観て参りました。

観てきたのは、一昨年から私が個人的に注目している東京藝術大学大学院映像研究科のメディア映像専攻において定期的に開催されている「OPEN STUDIO」という催しです。大学院の校舎をそのまま展示スペースとして講義課題の概要や学生さんたちの作品を紹介した、言わば展覧会兼ラボ公開のようなもの。
今回は、この春入学したばかりの第3期生が展示・運営する初のイベントで、「OPEN STUDIO MAY 2008」と銘打たれています。
3週間のあいだに演習で作成した課題作品15作が展示されており、主に藤幡正樹氏の授業と、外部講師として招かれたジャン=ルイ・ボワシエ氏およびジャン=シャルル・フィトゥーシ氏の特別講義におけるワークショプ作品が主体となっていました。
グループワークの成果としての作品が多くを占め、ほとんどが独立した「作品」というより、あくまで「習作」といった位置づけであるため、作家性が汲み取れるような作品は見当たらなかったものの、かすかな現象から思わぬ面白さを抽出する意識の方向性は期待どおりのもので、たいへん興味深く拝見しました。また、強烈な個性こそ備わっていないものの、展示作品たちのその完成度の高さには非常に驚かされました。
第3期生の最初期の作品を拝見したわけなのですが、今回提示されていた各個の表現の中の問題意識が今後どのように個人の表現として進化・発露してゆくのかがとても楽しみです。
以下、作品毎の解釈覚え書きメモおよび短評雑感。
(とりあえず半分だけ。少しづつ書き足します)

写真課題
1 深石圭祐氏『自分』: 写真。二人組になって、相手を通して「自己」を表現するという課題の成果。首、側頭部、頭頂部など人物の一部を大写しでフレームカットし、そのパネルを恣意的に配置した作品。個というとらえ難い概念をアウトプットすることの難しさをうかがわせながら、イメージ的な訴求力をそなえているのが印象的。
2 荒木悠氏『Moving Stills』: 静止画を連ねた動画。男性の顔の中央を丸い鏡が隠している。鏡を持つ手や男性の頭部は不随意的に少しづつ位置を変えてゆくが、鏡の位置だけが変わらず定位置を保つ。

ジャン=ルイ・ボワシエ ワークショップ課題
3 細谷宏昌氏『tease』:インタラクティブ作品。モニタに写し出された黒い画像の中に、かすかに白い部分がある。マウスポインタでその部分を長押しすると、ほのかに赤らんで、さらにぱっと明るくなり、今まで見えていたものは大型電灯の芯であったことが知れる、というもの。ガス台やストーブの点火を彷彿とさせる動作関連性が面白い。
4 田村友一郎氏『冷静と情熱のあいだ』:インタラクティブ作品。モニタに、「びんのフタを開けようとして開けない」「練り歯磨き粉チューブから歯ブラシにペーストを出そうとして出さない」等、何らかの動作をしつつ完遂できない手作業の映像が繰り返し現れる。その画面中、行為の目的を担う核とおぼしき部分をマウスポインタで触れると、動作の未遂と完遂を分かつターニングポイントで小刻みに動画がループする。また、いっぽうで、インタラクティブを装いつつ何ら操作が及ばない映像も混じっている。操作性と面白さの焦点と意識の誘導を問題意識として内包いるようで興味深い。
5 渡邉一史氏『Untitled』:インタラクティブ作品。モニタに白い画面が流れており、壁の傷のような細かいまだら模様がついている。流れてゆく画面をじっと見ていると、模様が次第に形を帯びて具象の風景画となってゆく。マウスポインタで画面に触れると流れる画像の速度が変化する、という作品。無意味から意味を担う具象への移行が面白い。また、画像の元となった素材実物(漆喰にスクラッチングしたもの?)がとなりに展示してあるのも面白い。
6 内村真以子氏『pom』:インタラクティブ作品。海を背景にし、メラミン樹脂の白いスポンジを揉みながら保持する手の映像が流れており、デフォルトではスポンジを揉む手は小刻みにリピートしている。マウスを動かすと、モニタ下部にあるポインタを動かすことができるが、常に一定の速度で下へ向かうようになっており、結局は自然に下へ落ちてしまう。落ちてゆくポインタがちょうど映像の上にかかっている間だけスポンジを揉むサイクルがゆっくりになる。個人的にとても好きな作品。ゆっくりになったスポンジの動きと落下するポインタの速度が同期しているのが面白い。さながら呼吸する生物のように感じられるから不思議。

(以下休筆。のちほど書き足します。)



忙。

2008-05-22 23:47:14 | お知らせ
4月に異動してからというもの、その日のうちに帰れるほうが稀というよろしくない日々を送っております。
マシンに向かう時間自体が少なくなっているため、書きたいことや作りたいことが実現できないもどかしさよ。

そんな中でも行くところへはきっちり行っておりますので、とりあえずメモを。
今後、エントリだけ上げて後日ちまちま書き足すことが増えるかと思いますがご容赦を。