はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

2006年総覧。

2006-12-31 12:34:43 | さもないこと
観たもの、体験したもの。
手帳によれば、2006年は34の舞台と6つの講演、55のアートイベント、13のフィルム上映会を観た勘定になります。
書籍や雑誌、論文等は もはや数えきれません。

そのなかで印象的だったもの。大ざっぱなマイベスト10。

1 「オラファー・エリアソン 影の光」@原美術館(1月8日)
 8年前のジェームズ・タレル『夢の中の光はどこからくるのか』展 以来の衝撃でした。美と科学と自然とアートが一体となった驚異。忘れ難い体験です。

2 「三の丸尚蔵館第40回展 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」@三の丸尚蔵館(6月11日、7月30日、8月21日)
 伊藤若冲の『動植綵絵』30幅のうち18幅を目の当たりにし、その尋常ならざる迫力にノックアウト。プライスコレクションが霞んでしまうくらいの感動でした。こちらも、おそらく一生忘れられない体験です。

3 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」@新潟十日町市近辺(9月2日)
 土地と分ち難く結びついたアートと、人々のつなぐ心に感銘を受けました。アートとは『なにかしら人を変えるもの』なのではないかと考えさせられました。3年後には絶対にまた参加したいです。

4 「OPEN STUDIO Vol.2 / Vol.3」@東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻(7月22、29日、12月2日)
 アートが開かれたものであると実感させてくれたラボ公開。非常に大切なインスピレーションと気付きと出会いを与えてくれた、私にとっては記念すべきイベントです。

5 コンドルズ「Top of the World 独眼竜スペシャル」仙台公演(2月4日)
近藤良平氏の魔王と、終演後の開かれた情熱に感銘。純粋に楽しくて嬉しい体験。忘れられません。

6 岩井俊雄氏公開講義@東京工芸大学(5月14日)
 たっぷり4時間もの講義。『岩井俊雄のすべて』とでもいえそうな惜しみないトークとパフォーマンス。今でも鮮明に記憶に焼き付いています。

7 (番外編)茂木健一郎×佐藤雅彦 対談「ひらめきのくらくら」(4月23日)
 茂木氏がブログにアップした対談の音声ファイルを聴いたもの。現場を生で体験したわけではないのですが、インパクトでは他の舞台等に負けず劣らずの内容。面白すぎて何度も聴いています。

8 小林賢太郎ソロコントライブ「ポツネン『○-maru-』」
 オープニング映像と最後のコントが音楽含め麻薬的に好きで、何度も通い詰めました。ただ、芝居が次第に緩くなっていったのが残念。

9 イメージの庭Vol.2「脳の中の鼓動」@せんだいメディアテーク(2月10日~12日)
 児玉裕一氏や、teevee graphicsの小島淳二氏と谷篤氏のトークイベントが印象深い。池田泰敦氏などショートフィルム作家の方々と交流できたことも深く記憶に刻まれています。そして私にとっては何より、谷篤氏の作る映像が自分の嗜好をピンポイント爆撃していると気付いた記念すべきイベント。

10 フキコシソロアクトライブ『XVIII』仙台公演(12月6日)
 もはやインスタレーションアートだと思います。ゾクゾクしました。

他にもたくさん印象深いイベントがありました。「ベアリングアート展」や「OpenSky 2.0」も私の中ではかなり上位にランクインしています。しかし、最近観たものは敢えて点を辛く考えてこんな感じにしてみました(笑)。
かなりいいかげんなランキングですが、今年のマイベストは やはりアートに大きく偏った結果となりました。
振り返れば、圧倒的な存在感を持った作品、そして、人々との交流や出会いをもたらすような自由でオープンなイベントに より惹かれたことがうかがえます。
これは最近、舞台作品が少々窮屈に感じられてきたことと無関係ではなさそう。
そういう意味では、アートイベントの他では今後、個人的にはpiperとコンドルズに大きな期待を寄せてゆきそうな予感がします。

今年出会えた多くの方々に感謝を。
出会いをもたらした偶然に感謝を。
そして、このサイトにお越しくださった方々に感謝を。

来年も、できる限りのものごとに触れ、いろいろなことを体験し、たくさんのクラクラや『うわぁ!』に出会えたらいいなと思います。
そして、多様な表現を吸収して、より多くの、あるいはより濃密なアウトプットをしてゆけたらと願ってやみません。

ところでさきほど、昨年「一個人」のイベントで参加した『時間差郵便』が届きました。
一年前の自分からのメッセージ。
その中の一文。
「・創造性をもったオリジナルハンコを作りたい。人を楽しくするハンコ、人を幸せにするハンコを作りたい。」
今もこの気持ちは変わっていません。
今年は助走。
来年はどこまで行けるでしょうか。
のんびりコツコツ進んでゆきたいです。

おまけ:私にとって大きな出来事web編。
1  岩井俊雄さんのブログ「TENORI-ON 開発日誌」が開設された
 サービス精神に感服。TENORI-ONの楽譜とTシャツにドキドキ。
2 同じく岩井俊雄さんのブログ「いわいさんちweb」が開設された
 父娘の理想的なコミュニケーション。岩井さんの素敵パパっぷりが微笑ましくて、毎日拝見するたびに頬が緩みます。
3 The Japanese Society of Rahmensiology(架空法人 日本ラーメンズ学会)を開設した
 まだまだ模索中。どれだけ多くの解釈を能動的に面白がれるか。今後が楽しみです。夢は学術集会。


きどころ寝脱却。

2006-12-29 22:41:57 | ことば
宮城県北部の方言に、『きどころ寝』という便利な単語があります。
これ、コタツなど、布団以外のところで寝てしまうことを表す言葉。
「昨日きどころ寝してや~」
「風邪ひかねのすか?」
という感じで使われます。

先週あたりから諸事情で忙殺されていて、電気毛布を羽織りながら机でパソコンに向かっていつの間にか寝てしまう、というきどころ寝の日が続いていたのですが、休み突入をいいことに今朝はようやく布団で2度寝。
布団で体をのばして横になれるって素晴らしい。

たまになら良いものですが、やはりなるたけ脱却したいきどころ寝です。


東京遠征12/24。

2006-12-24 23:58:33 | アートなど
12月24日は、昨日に引き続き東京で展示会を2つ観て参りました。

本当は、銀座のINAXギャラリーで開催中の「世界のあやとり」を見たかったのですが、行ってみると日曜祝日は休館とのこと。
が~ん。
気を取り直し、月光荘と品川経由で友人と合流し新宿初台の東京オペラシティーへ。

まずはインター・コミュニケーション・センター(ICC)で開催中の企画展「OPEN SKY 2.0」。
アーティストの八谷和彦氏のOpenSkyプロジェクトを総覧した展覧会です。
OpenSkyプロジェクトとは、『個人的に飛行機を作って実際に飛べることを証明する』というアートプロジェクト。2004年の『愛・地球博』でも機体が展示され、話題となりました。ロマンを感じる飛行機として『風の谷のナウシカ』に登場するメーヴェに着想を得たため、実作機はメーヴェのように美しい海鳥のような無尾翼機となっています。しかし、常に人身事故の危険を伴うプロジェクトゆえ、着想元への迷惑がかからぬように八谷氏は『宮崎氏やジブリとは無関係』というスタンスをとっています。
元々はオープンソースでのプロジェクトを考えていたようですが、安易な模倣による危険を避けるために今は設計公開はしていないようです。
そのかわり、テストフライトを一般に公開し、見学者との交流を行うなど『開かれたプロジェクト』の姿勢はつらぬいてらっしゃいます。
それを象徴するかのように、今回の展示スペースの入口には左写真のような注意書きがありました。
Alart01・写真撮影OK
・メモ/スケッチOK
・乳幼児の入場歓迎
・介助犬OK
・コスプレ入場OK
 
 
 

これを見た瞬間、『なんて素敵なんだろう。八谷さん大好きだー!』 と思いました。
おかげですっかり嬉しくなってしまって、鑑賞前からテンションアップ。
最良のメンタルコンディションで展示に臨みました。
内容は、プロジェクトを支える設計図の展示、OpenSkyプロジェクトで制作された歴代テスト機の実物展示、テストフライトを記録したコメントつき写真展示、プロジェクトの背景を解説したスライドショー、テストフライトを疑似体験できるかもコーナー、OpenSkyプロジェクト記録映画、フライトシミュレーション体験できるかもコーナー、Q&Aコーナー、秘密の小部屋、などなど。
たいそう盛りだくさんで、予想を遥かに上回るボリュームでした。
何かを作り出そうとする人間の開かれた情熱に触れることで、勇気をもらえたような気がします。
八谷氏が好きな方はもちろんのこと、ナウシカが好きな方、飛行機が好きな方、グライダーが好きな方、実現し難い何かを実行しようとしている方、面白いモノが好きな方、そして空を愛するすべての人にはおすすめの企画展です。
ちなみに、私にとっての今日のベストワードは
『ロマンとエンジニアリングさえあれば、人間は空を飛べる。 by土佐信道』
八谷氏の友人の言葉として紹介されていたフレーズ。
不意打ちにノックアウトされました(笑)。

なお、この企画展は2007年3月11日まで。
一度足を運ぶと、会期中は1日だけ再入場できるとのこと。嬉しい配慮です。
興味のある方はぜひ。おすすめです。


さて、次に同じく新宿初台のオペラシティーアートギャラリーで開催されていた「伊東豊雄 建築|新しいリアル」を見て参りました。
会期終了日とあって、たいへんな人出。
建築家の展覧会にこれだけの人が集まることに驚くとともに、東京という場所の文化層の厚みを感じました。
伊東豊雄氏は、せんだいメディアテークの設計者として認識している程度だったのですが、氏の仕事を模型や型枠提示で拝見してみると、ひとつの方向性のようなものがみとめられ、たいへん興味深く思いました。
氏の設計もすごいのですが、それ以上に感心してしまったのが、日本の型枠工や建築に携わる技術者の持つ能力の素晴らしさ。
木枠を組んだり、鉄骨で曲線を成形したり、コンクリートを流し込んだりして、設計者の構想したおそろしく不規則な曲面を具現化してしまうその腕に、感動を覚えました。
作る人も使う人もたいへんではありますが、できあがった建物の象徴する非凡さは、単なる実利では語れない精神性を宿しているような気がします。
鑑賞者が靴を脱いで歩く、曲面構成を再現した展示室があったり、コンセプトを解説しつつ実際に竣工した建物を紹介する映像があったり、模型があったり、実物大図面が一部壁面に描かれていたり、氏の仕事が時系列順に解説されていたり、こちらもなかなか盛りだくさんの内容でした。
中北の芸術センターなど、実際に行ってみたいと思わせる楽しさにあふれた建築物でもあると思います。
各務原市営の斎場などは、屋根に上ってみたくてしかたありません(笑)。
荒川修作の養老天命反転地公園を彷彿とさせるような気もしましたが、型破りで非線形のモチーフを再現すると、どうしてもそうなってしまうものなのかもしれません。
intarestの対象としての建築、という意味で伊東氏の仕事は非常に興味深いです。
会期は24日で終了してしまいましたが、いずれ各地のアートショップで図録が出回るかと思いますので、興味のある向きはそちらを待たれてはいかがでしょうか。

Tree01帰りに見たオペラシティー中庭の巨大電飾ツリー。
 
Tree_and_singingmanそして「シンギング・マン」との競演。
強烈です(笑)。

バラエティに満ちた創作物に触れた東京遠征。
非常に有意義な2日間だったと思います。


東京遠征12/23。

2006-12-23 00:00:00 | さもないこと
本日23日は、東京で芝居を2本観て参りました。

まずは、渋谷のパルコ劇場で上演中の、パルコ劇場プロデュース(脚本 後藤ひろひと)「みんな昔はリーだった」昼公演。
大王の新作ということで足を運びました。
内容は、ブルース・リーを軸に、かつて中学時代を共に過ごした5人の少年と1人の少女をめぐる物語。
ダメダメな感じで話を進めておきつつ、見る側が釈然としない気分になっているところへ、それらがある瞬間のための周到なお膳立てだったと気付かせる、という構成には毎度のことながら『大王さすが!』と舌を巻きました。
中学生男子のどうしようもないバカさ加減ときらめきを、独特の視点で優しく描いた作品だなと思います。
喩えて言えば、B級映画に宿る輝きへの讃歌。
あんな台詞で?!という台詞で泣かされたのは少し悔しくもありますが、むしろその点が快感に。大王マジックです(笑)。
芝居そのものは満足でしたが、少々気になったのが役者陣のコンディション。
この日は調子が悪かったのでしょうか? それとも毎回こんな具合だったのでしょうか?
台詞回しや言い間違いで『あれっ?』と思わせる部分が多く、気になりました。
ところで余談ですが、昔、大阪朝日放送のテレビ番組「探偵ナイトスクープ」で『ある年代の男性は皆ブルース・リーの物真似ができると夫が言うので本当かどうか調べてください』という依頼があって、その調査の結果、インタビューされた通行人のほぼ全員がブルース・リーを熱演していたので、その光景に唖然としながらも妙に感動的な気分になって大笑いしたことがありました。
その時の記憶を彷彿とさせる舞台。かつてのリーたちには特におすすめかもしれません。

つぎに、新宿シアターモリエールで上演中の「あ・うん」夜公演。
向田邦子の原作を、立川志らくが脚色・演出した舞台です。
片桐仁氏が出演というので足を運びました。
戦前昭和10年代を舞台にした、とある夫婦と親友をめぐるほのぼのとした人間模様。
シーン切り替えと暗転が多く、ちょっと冗長かな、といった感も否めませんでしたが、独特の悠長な流れは昭和初期日本の風情を見事に描き出していたかと思います。
落語的要素を取り込んでいたり、軽口問答シーンを盛り込んだりと随所に工夫がみとめられるのも楽しい。
こちらは役者陣が皆すばらしく、2時間半の長尺ながら、安定感に満ちた舞台は安心して観ることができました。
客入れと客出しの誘導や前説もよかったです。
公演全体が醸し出す雰囲気が暖かく、小さな劇場でぎゅうぎゅう詰めになって観る舞台にふさわしいような気がしました。
28日まで上演されているようですので、興味のある向きにはおすすめです。


ダジャレアーティスト高田明日路氏。

2006-12-22 22:05:59 | お知らせ
過日こちらのブログ記事(こちら)でも紹介していた、ダジャレアーティストの高田明日路氏がホームページを開設されたようです。

高田明日路氏HPトップ→こちら

9月の「GEISAI#10」で氏の「名磨絵」作品に触れ、すっかり感銘を受けてしまったわたくし。
「名磨絵」とは、客の依頼した言葉で その言葉を表す絵を書く即興絵画。高田氏独特の手法です。
『どんなものでも文字で描画できてしまう』という現実の提示と、その方法論に出会った時の驚き、衝撃は今でも忘れられません。
氏の活動はライブ制作が主なため、紹介したくともできないという非常にもどかしい思いを続けて参りましたが、このたびようやく紹介が容易になりました。
サイト上で公開されている作品は氏の才能のごくごく一部ではありますが、少しでも興味のある向きは どんな案配なのか様子をうかがってみてはいかがでしょうか。
おすすめです。


ノロウイルス対策と落とし穴。

2006-12-21 00:06:55 | 役にたたない獣医学ひとくちメモ
よくお邪魔するサイトで、予想以上にみなさま戦々恐々としてらっしゃる様子なので、せっかくなので情報提供。

ちょっとした落とし穴について。
アルコール消毒は、ノロウイルスには効きません。
ノロウイルスの完全不活化には200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムか85℃以上1分の加熱が必要です。
エタノールのスプレーだけでは、ノロウイルスがその場に生き残ってしまうのでおすすめできません。
ウイルスを洗い流すという意味で、石けんでの手洗いとうがいがおすすめ。
擦り込み式ならヨード系が若干効果あり、でしょうか。
ノロウイルスの感染力には凄まじいものがありますので、もしも身近に患者さんが現れたなら、用心しすぎるくらいに注意したほうがよろしいかと思います。
なお、具体的な対策は、厚生労働省の→「ノロウイルスに関するQ&A」(PDFファイル)に詳しく掲載されています。
その他の情報もまとまっている「ノロウイルスに関するQ&Aについて」ページもおすすめ。

皆様どうぞこの冬を無事に乗り切って、それぞれの予定へ順調に臨めますように!


【提言】人手が足りない場合の形容について。

2006-12-20 23:38:58 | さもないこと
職場でふと思ったこと。

「○○さんが産休で、あと、そのまま育休に入っちゃうのでたいへんなんですよ。」
という言葉を耳にしました。
しかし、この形容は良くない。非常に良くないと思います。
これではまるで産休や育休で休むのが悪いことのように聞こえてしまいます。
たいへんなのは、『産休や育休の人がいる』からではなくて、『欠員の補充がない』からです。
病休も同様。
そこで提案。
このような場合、
「○○さんの補充がないのでたいへんなんですよ。」
とアピールしてはいかがかと。
これならきっと人事の不備を指摘することにもつながります。
言葉の選び方は、ときに意識の根底に影響を与えるもの。
上記の形容を、こっそり広めてゆきたいと思います(笑)。


仙台遠征12月16日-17日。

2006-12-20 23:25:26 | アートなど
先週の土曜、12月16日は仙台で芝居ひとつと展示会3つを観て参りました。
以下、簡単に。

まずは、OCT/PASS と きらく企画 の共同企画公演「ザウエル」。
じつは、今回の観劇はかなりのギャンブルでした。 
OCT/PASS の2000年公演「又三郎」がトラウマになって、私の観劇人生には空白の3年間が生じたという過去があります。
しかし、ラーメンズ効果で再び劇場に足を運ぶようになり、サモアリや猫のホテル、ペンギンプルペイルパイルズやpiper、コンドルズや水と油など、多様で個性豊かな舞台表現に触れ、観劇の楽しさを思い出したこの数年。
アート経験値も積んだ今なら大丈夫かな、と、半ば興味本位で足を運びました。
が、結果惨敗。
人によってはぴったり嗜好にはまるのかもしれませんが、私には許容しかねる世界でした。
4つの点で私の逆鱗に触れてしまうという驚きの内容。
ある意味レアな作品だと思います。
悪意に満ちた痛さが好きな方にはおすすめかもしれません。
舞台装置や効果、照明や空間の使い方はよく工夫されていて秀逸。
役者陣には、魅力的な個性を備えた方も大勢いらっしゃいました。
ただし、大事なところで言い淀みが生じるのが勿体ないなあと残念に思いました。

ところで、この日は終演後にトークイベントがあって、劇団代表と某施設管理者との対談が行われたのですが、そこで、何と言いますか、非常に『閉じた』感じの印象を受けました。
観客と対峙し客席に向かって開かれているはずの舞台芸術なのに、ともすると観客から離れて閉じてしまう危険性が高いのではないかと、そんな気がします。
作家自身が見えないアートのほうが、鑑賞者に対して開かれている場合が多いような気がして不思議でなりません。
仙台の演劇事情はハード、ソフトともに予想以上に厳しそうだなと感じ、残念で遣る瀬無い気分になりました。
バランス感覚優れた若い才能の発掘が期待されます。


さて、次に、せんだいメディアテーク6Fで開催中の「Re: search オーストラリアと日本のアート・コラボレーション」。
オーストラリアと日本の作家が、交換留学のような形で作品制作を行った成果を展示した企画展。
仙台という都市を視座に据えた作品がテーマとなって、東京などの中央都市では味わえない独特の統一感が立ち現れていたと思います。
作品数こそ多くはありませんが、ここ数年横浜や東京で見かけたことのある作品の発展型に出会えたり、思わずニヤリとしてしまう作品に出会えたりと、予想以上に楽しめました。
芝居から受けた毒をすっかり洗い流してもらったような形。
アートの力は偉大です。
印象に残った作品をいくつか。
Alex Davies「会話」: 雑踏を記録したビデオ映像。何気ない風景が延々流れる中、通行人の視線がカメラを向いたその瞬間だけがスローモーションになる、という映像を大画面で映写した作品。とてもシンプルだけれど強烈なインパクト。生物学的な認識特性に依拠した非言語コミュニケーションの可能性の大きさを痛感しました。秀逸です。
志賀理恵子「角隠し」: 多重に露光した写真のプリント作品。現実と空想のあわいのような、形容し難い写真世界が独特。中ほどにあった、眠りにつく男女が緑青を背景に中空で対面している風景が静謐で印象的でした。
Alex Davies「群衆」: 鑑賞者の姿が取り込まれ、蓄積された過去の映像と合成されて再生されるインスタレーション作品。立ち止まって注視すればするほど自己の姿も記録されてしまうというのが何とも皮肉。
クレイグ・ウォルシュ「BIG IN JAPAN」: 仙台を舞台にした広告アート。そのずば抜けたローカルさに思わず素笑い。フェイクも含め、素敵です。これはぜひ明るいうちに行くことをおすすめします。
Haines/Hinterding「建物と植物と星々のための電磁的構成2006」: メディアテークを支える柱のチューブに銅線を巻き付けて電磁波受信アンテナ化し、受信波をノイズ音声として提示したインスタレーション作品。携帯電話を時報にかけてかざしてみたら、心持ちノイズがにぎやかになったのが面白かったです。
The SINE WAVE ORCHESTRA: サインウェーブオーケストラの進化版。空間に配置された8つの柱。そのひとつひとつに音程調節ツマミがついていて、鑑賞者は自由に『演奏』することができます。そしてその演奏された内容が、そのままアーカイヴとして記録されて、今まで記録された内容と共にリピート再生される、という作品。ICCや横浜トリエンナーレ2005で見たものと比べて、自分が残した音の痕跡が直感的に伝わるので、今回のほうがより洗練されている印象を受けました。
平川紀道「compath」: 仙台視点の上空ナビゲーション。知っている街が対象になっているのが新鮮で面白い。

同じくせんだいメディアテークの5Fで開催されていた「村岡由梨 yuRi=paRadox 眠りは覚醒である」。
せんだいアートアニュアル2005 smt賞受賞記念の村岡由梨氏個展。
強烈な個性の発露としての映像作品と、その制作に関連するマテリアル実物が展示されていました。
とにかく独特で強烈な世界観と個性が圧巻。一度見たら忘れられない表現だと思いました。

関連して、同じく5Fの展示「せんだいアートアニュアルの5年間」。
創設から5年間の受賞作について、概要と審査員のコメントがパネル展示されていました。
せんだいアートアニュアルの紹介を兼ねた総覧的展示といったところでしょうか。
せんだいアートアニュアルの実物展示はまだ未見。
展示開催期間が短すぎるのが主な敗因。
次回展示はなんとか都合をつけて行ってみたいなと思いました。

この後、温泉へ行き、それから車で移動して友人宅に宿泊。
そのまま翌日は、旧知の友人たちと久々のホームパーティ。
たいへん盛りだくさんの週末でした。


「MAC POWER 」2007年1月号。

2006-12-18 23:50:00 | ことば
雑誌「MAC POWER 」の2007年1月号を購入しました。
ほんとうは立ち読みで済ます予定だったのですが、茂木健一郎氏へのインタビュー記事(p80-81)を読んでレジへ直行してしまいました。
かっこいいぞ! 茂木さん!

『リーガルとイリーガルの境界を再定義してゆく必要があると思います』(p81, c1)
『誰がどう見ても、著作権って単に使い勝手の悪い概念になっている。』(p81, c2)
『個人的にすでに実践しているのは、参加した講演とか講義の音声ファイルを自分のブログにアップすること。(中略)知識とかそういうものは、どこかに閉ざされている時代ではなく、フリーなものだという意味で。』(p81, c2)

この言葉。氏の実践している試みと考えあわせると、とても大きな共感を覚えます。
ちょっとドキドキしてしまいました。
さいきん氏が「クオリア日記」で言及しているキーワード、『白魔術』という比喩概念にも通じる部分がありそうです。
もう、なんという人なんでしょう。この方は。
この精神性が大好きです。
深く、高く、軽やかに。自己批判と諧謔を。ラディカルかつ確信犯的に。
ますますもって、茂木健一郎氏、目が離せません。

なお、MAC POWERの茂木氏インタビュー掲載号は↓こちら。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000LE0RU8&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>


【情報】NAMIKIBASHI「The Japanese Tradition - 日本の形 -」発売情報。

2006-12-15 06:47:24 | アートなど
既に出ていた情報ですが、amazonでの取り扱いが始まったようなので挙げておきます。
teevee graphics の小島淳二氏とラーメンズの小林賢太郎氏からなる映像制作ユニット「NAMIKIBASHI」の新作が、「The Japanese Tradition」シリーズとしてDVD化されるそうです。

<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000LP66C0&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

ちなみに、私にとって最たる関心事は、「谷篤さんは制作に参加しているのか否か?」ということ(笑)。
谷篤氏はteevee graphicsのアニメーター/ディレクター スタッフのひとり。
砂原良徳「LOVE BEAT」のミュージックビデオや、スターフライヤー就航記念CMを手がけられた方です。
NAMIKIBASHI関連ではFPMのPV「Tell Me」や「SAKURA WONDERFUL JET」のアニメーションを担当しています。
じつはわたくし、この方の作る映像の動きがものすごく好きで、好みのツボをピンポイント爆撃され続けております。
今年2月にせんだいメディアテークで行われたショートフィルム上映会&トークイベントで、心惹かれる映像がことごとく谷氏の担当作だと知って以来、氏のことがとても気になっていました。
先日のRESFEST2006にエントリーしていた「折り紙」のスタッフ情報に谷篤氏の名前がないのを知って、私はものすごくがっかりしてしまったわけなのですが、そのあまりのがっかり具合に自分でも驚きました。
どうやら私は自分が思っている以上に谷氏の作品が好きなようです(笑)。

そういうわけで、「折り紙」などの「Japanese Tradition」新作に対してはモチベーションが下がっておりましたわたくし。
しかしここにきて、DVD収録作品の多さに谷さん登場の新たな期待を抱いています。
3月が楽しみです。


命と向き合う。

2006-12-14 23:32:15 | さもないこと
さきほどNHK総合で放映されていた「プロフェッショナル」を見ました。
特集は海獣医師の勝俣悦子氏。
未知部分の多い海棲哺乳類臨床の第一線で活躍している女性獣医師を取材した内容でした。

見ていて印象的だったのが、冒頭の胃カテで強制給餌治療中のシーンで、勝俣氏がカメラに向かって言い放った言葉。
「(間違えば)殺しちゃうから。気をつかいますね。」
さらりと出たその言葉に、臨戦態勢の覚悟を痛感しました。
『助けられない』でもなく、『死なせてしまう』でもなく、『殺しちゃう』という言葉を使っている、その覚悟。
自分の治療行為がそのまま動物の死に結びつく可能性を肌で感じているからこそ、はじめて出てくる言葉だと思います。
自分が能動的に動物を殺す可能性を常に持っていることを自覚している、とても潔い姿勢。
そして、殺してしまうかもしれないという立ち位置にいるからこそ生まれる、『あきらめずに救おう』というモチベーション。
実践者だからこそ、真に命と向き合っている。その見本のような例です。
自らは手を染めず安全圏に居ながら動物の生死を論じたり、動物を殺すことをただ闇雲に非難したりするスタンスとは真逆の、どこまでも真摯な姿勢だと思います。
番組を見ながら、自分の臨床時代の、救えた命と殺した命のこと、たくさんの命のことを思い出しました。
時として、救う命よりも殺す命のほうが多いため、『死のライセンス』とも形容されることのある獣医師免許。
それでもなお、命と向き合うことに真剣でありたい。そう思いました。


人間の創造性。

2006-12-10 20:12:47 | さもないこと
Jobsのスピーチを聴いていて、William Brakeの詩を思い出したので挙げておきます。

To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an hour.

 ひと粒の砂に世界を見て
 野の花に天国を見る
 あなたの手のひらに無限を
 ひとときの中に永遠を。
(aiwendil抄訳)


大好きな詩のひとつ。
ウィリアム・ブレイクの詩「Auguries of Innocence」のはじめの4行です。
はじめて目にした時は衝撃を受けました。
世界と同等、いや、それ以上に豊かな可能性が個人の中に宿っているということを
高らかに歌い上げた、人間の想像力・創造性への讃歌だと思います。

人間の持つ創造性はそれぞれ無二であり平等です。
誰かの創造性だけを擁護するために他の誰かの創造性が阻害されるのは正しくないと思います。
それが違法でない限り、すべての表現は否定されるべきでない。そう思います。
オリジナルと派生、創作と批評、新しさと再発見、それらは一体となって繰り返され、そのたびに創造性は深度と豊かさを増してゆきます。
アートが開かれたものであるように、あらゆる芸術文化が開かれたものであり続けるよう願ってやみません。


愚者でありたい。

2006-12-10 18:00:07 | さもないこと
Steve Jobsがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ「Stay hungry, stay foolish.」。
茂木健一郎氏のブログ「クオリア日記」の12月9日付エントリで紹介されていたので興味を持って聞いて(読んで)みました。

スピーチ映像→こちら
スタンフォード大学の公式ページ→こちら
(各国語への翻訳サイトもあるようですが、我が家のマシンからアクセスしようとするとなぜかsafariがダウンしてしまうので内容は未確認。興味のある方は茂木氏のブログ経由で確認してみてください。)

たしかに素晴らしい。
不覚にも後半数分でぐっときて泣きそうになりました。
"Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma ? which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary."
     ( Stanford Report, June 14, 2005 より引用)


とても強いメッセージ。
見通せない将来だからこそ宿る輝き。
自分の好きなことを愛し没頭することの素晴らしさ。
一度きりの人生、思い切りの飛翔を。

愚者たることを許されない日本の現代社会と、そこに住まう若者にこそ必要なメッセージではないかと感じました。
ここ数年触れてきた様々なクリエイターの言葉に共通していた『普通そんなことはやらないだろう、というようなことを突き詰めてやることに価値がある』という趣旨の主張と通じるものがあるような気がします。

たとえ足下に深淵が広がろうと、高みを目指してふらふら歩みたい。
分類し難い様々なものごとを観察・記述する愚者でありたい。
そんな想いを新たにしたスピーチ拝聴でした。


やかましい鳥たち。

2006-12-09 23:57:20 | さもないこと
Swan02
はるかシベリアから近郊にいらっしゃったオオハクチョウの方々です。
傍若無人にして喧々囂々。
↓やかましさをご体験ください。
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やかましい方々。
by aiwendil


あまり好きではない・・・と言いたいところですが、悔しいけれどやはり美しい。
思わず魅入ってしまいます。
↓パ・ド・ドゥ。 これぞ本物の白鳥の湖? 

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大型水鳥特有のフォルムも面白です。
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群れる風情は「群鶏図」ならぬ「群白鳥図」。若冲が北国の人ならよかったのに・・・。
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個人的には雁、マガンのほうが好きなのですが、それでもやはり白鳥には惹かれます。
餌付けには賛成できませんけれど、近隣の水田で普通に見られるのはちょっと嬉しい。
過密にならない程度に、適度な分布を保って欲しいものです。