はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">「i feel」35号(2006年冬号)。</font>

2006-02-06 23:57:26 | 佐藤雅彦
紀伊国屋書店の発行している広報誌「i feel」35号(2006年冬号)を購入しました。
特集は「脳と心を読み解く」。対談やエッセイ、そしてブックレビューなどがA5版96ページの中にぎっしり掲載されています。
*R*graffiti**のざらえもんさまに、佐藤雅彦氏の短編が掲載されていると教えていただいたのが購入のきっかけです。
しかし頁をめくってみると、佐藤氏の作品もさることながら、茂木健一郎氏と布施英利氏の対談と、山形浩生氏のブックレビュー、という思わぬ伏兵に感服させられました。
とくに印象に残った言葉がふたつあります。
まず、茂木氏と布施氏の対談「脳を脱構築する。その先に、脳科学の未来がある。」中の茂木氏の言葉。
『科学のトレーニングを受けた人は、何か重要なことをステートメントする時に、必ず何らかの自己懐疑を含んだ形で言います。つまり、あることを言う時は仮説として言っているわけで、それが百パーセント正しいという押し付けはしないという態度を徹底的に叩き込まれます。でも昨今の脳ブームではそういう言い方はされていませんね。そのまま信じられて、まさに宗教的な機能を果たすようになってしまうんですね。』(p10-11, vol.35, 2006, winter,「i feel」紀伊国屋書店)
この部分を読んで、思わず膝を打ちました。
ここ最近私が感じていた違和感の原因を見事に言葉にしてくださっています。
誰かが何かを語る時の、主観と事実と推論をごっちゃにした記述の多さが気になっていた私にとって、まさに根本を思い出させてくれるような言葉に思えました。
そう、科学の徒たるもの、本来は根拠のない断言などしちゃいけないのです。わからない部分は『わからない』と断った上で推論をしなければならないはずなのです。
もちろんこれは個人的エッセイなどに当てはまるものではありませんが、世の中の文化人と称される方々にも、少しはこの姿勢を見習ってほしいものだと心底思いました。
なにが争点になっているのかすらわからなくなるような不毛な議論を避けるためにも、この科学的スタンスは重要な手法なのではないかと思います。


印象に残ったふたつめの言葉は、山形浩生氏のブックレビュー「トンネルの先の光明」の導入部分。以下、1段落を引用。
三菱自動車のリコール事件から、スペースシャトルの爆発、福知山線の脱線/横転など、世の中に事故はたくさんある。通常それらは、しばらくニュースをにぎわして、その期間だけ原因は何だとかだれが悪いとか、いろいろな人が勝手なことを言いあう。われわれ外野はそれを断片的に新聞紙上で見聞きするけれど、結局何が原因だったのか筋の通った説明を得られることはほとんどない。新聞やテレビは、とにかく目先で見つけた断片的な情報を、ろくに真偽も確認せずに(というより確認する能力がそもそもない)垂れ流し、何かといえばお涙ちょうだいの人間ドラマばかりをクローズアップする。そして、自分たちの流した情報のどれが正しく、どれは誤報で、それにもとづきどの説が蓋然性を持ち、どの説は見当ちがいだったのかをきちんとまとめることは決してない。みなさん、結局あの福知山線の事故は何が原因だったかすぐに言えますか? 人々は、断片的に見た断片的な情報(それも往々にして誤報やガセネタ)だけを抱え込む。そしてそれが時に変な陰謀論の温床にもなったりする。
 この本は、各種の事故をじっくりと調べて、結局何がいけなかったのかを工学的にきちんと教えてくれる、得難い本だ。
 (p72, vol.35, 2006, winter,「i feel」紀伊国屋書店)
これは、『重大事故の舞台裏』という本の紹介文冒頭。
見事な導入。いっきに引き込まれました。
冷静な分析と思わず頷いてしまう論展開、文章はこび。
山形氏の文章はいつも、私たちが薄々感じていたことを冷静かつ明確かつ論理的かつスマートに提示してくれるように思います。
マスメディアに嫌気がさし、いろいろなことが嫌になってしまったときでも、この方の冷静な物言いを見ていると、『この国はまだ大丈夫』という気になれるような気がするのです。
とかくいろいろな物事をごっちゃに論じてしまいがちな私たちに、立ち止まって良く見ることの重要性を思い出させてくれるとでもいいましょうか。
私の知る限りでいちばん頭の良い人なんじゃなかろうかという印象すら受けます。
思わぬところで何だか少し元気の出る心地がした「i feel」読後でした。



<font size="-3">佐藤雅彦×茂木健一郎対談@「Dictionary」107号。</font>

2005-12-23 23:48:12 | 佐藤雅彦
フリーペーパー「Dictionary」の107号に、佐藤雅彦氏と×茂木健一郎氏の対談が掲載されています。
テーマは「人間が生き生きとしている状態を『ステゥディオス』状態とします」。
発行元のmedia CLUBKING→こちら のサイトから一部を閲覧することが出来ます。
また、対談の音声をpodCASTで聴くことも出来ます。
ただし、対談を聴くにはiTune6.0以上が必要。
わが家ではOSの関係でiTune6.0を入れることができなかったので、ネットカフェから対談を聴きました。
たった30分程度の音声なのですが、佐藤氏の語りが琴線に触れること多々。
出先なのに聴きながら思わず2度ほど涙ぐんでしまいました。
佐藤氏の話を聴くたびに私は「ああ、こんな人がいてくれたんだ!」という幸福感を覚えます。
今回の対談も例に漏れず、聴いていてとても幸せな気分になりました。
Dictionary に掲載されている対談文章も良いのですが、佐藤氏の言葉の意図を正確に知るには、やはり対談を実際に耳で聴くことをおすすめします。
ちなみにわたくし、対談があまりに良かったので、OSをバージョンアップまでしてiTunes6.0を導入してしまいました(笑)。
音声をダウンロードして何度も聴いています(^^。



<font size="-3">ピタゴラ装置の番号と名前。</font>

2005-08-27 23:51:32 | 佐藤雅彦
2005年8月29日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催の「佐藤雅彦研究室展」では、1日1回のピタゴラ装置特集映像が上映されています。
私は13日にこの上映を見て参ったのですが、このとき、面白いことにピタゴラ装置には全部に番号と名前がついていることを知りました。
とっさにメモをとり、後に記憶がはっきりしているうちにポイントを書き足しました。
せっかくですので、こちらにも備忘録としてピタゴラ装置一覧をアップしてみたいと思います。


1番 洗濯板 洗濯板を下るシンプルなもの
2番 分銅 上皿天秤からスタートする装置
3番 レンゲA 螺旋状に配置されたレンゲを玉が落下する装置
4番 磁石 U字磁石とL型磁石を巧みに使った装置
5番 万国旗 「ピタゴラスイッチ」と1文字づつ書かれた旗がパッと架かる装置
6番 洗濯バサミ 洗濯バサミの道をビー玉がジグザグに進んでゆく装置
7番 レンゲB レンゲから落ちた玉が走ると「ピタゴラスイッチ」と1文字づつ小さなカードが飛び上がる装置
8番 我が道を行く 箸箱が独創的な動きをする装置
9番 レコードプレイヤー キッチンスケールで始まり、レコードプレーヤーで終わる、番組ラストに使われている装置
10番 フライパン 「ピタゴラスイッチ」のオープニング映像につかわれている装置
11番 鉄琴 鉄琴でサウンドロゴが奏でられる装置
12番 るつぼ 小さなるつぼの中から「ピタゴラスイッチ」のミニ垂れ幕が登場する装置
13番 電池 乾電池が落下して豆電球が点灯する装置
14番 カプセル虫 カプセルが転がってゆき、試験管に落ちる装置
15番 孫亀
16番 ドミノ 緑のカッティングマットの上をドミノとビー玉が動いてゆく装置
17番 絵の具箱 木の絵の具箱を使った装置
18番 スーパーボール 2枚のまな板のあいだをスーパーボールが弾んでゆく装置
19番 ボビン 金属製のボビンが螺旋を転がってゆく装置
20番 音階 水の入ったコップでサウンドロゴが奏でられる装置
21番 イーゼル 木のスプーンを多用した装置
22番 アコーディオン 冒頭でアコーディオンが使用される装置
23番 ロゴカー 1文字づつロゴの入ったミニカーが下りてきて「ピタゴラスイッチ」と配置される装置
24番 ドライヤー ドライヤーの風にピンポン球が浮かぶ装置
25番 虫メガネ 虫眼鏡でロゴが拡大されてフィニッシュする装置
26番 射的 飛ばされたピンポン球が刺繍枠の的を見事打ち抜く装置
27番 呼び鈴 ハンマーで呼び鈴が鳴らされる装置
28番 矢文 吸盤つきの矢がバケツに命中する装置
29番 ブラックホール 黒い布で覆われた箱にボールが落ちて、布ごと穴に消える→ロゴが登場する 装置
30番 トランポリン ボールが太鼓で見事に飛び跳ねる装置
31番 ティッシュ 5色のビー玉が洗濯板上のゲートから登場する装置(途中ボールが上下するところでティッシュ箱がつかわれています)
32番 ハンマー ボールがハンマーで打ち上げられ金網のゴールに入る装置
33番 いつか来た道 鉛筆の橋など、一度通った道が違う方法で使われる装置
34番 ロープウェイ ミニカップカーがS字のレールを追い越してビー玉をキャッチ→フィニッシュする装置
35番 風車 風車の風でピンポン球が牛乳瓶に落ちる装置
36番 パズル タイルが割れて「ピ」と書かれた文字が現れる装置
37番 バスケット ボールがU字形のレールを走って見事バスケットに入ってフィニッシュする装置
38番 ロータリー 
39番 だるま落とし そのまんま、だるま落としの装置
40番 象嵌 「ピ」と書かれた箱が、ぴったりの穴に落ちて嵌る装置
41番 有名な「ピタゴラ装置41番の歌」の装置。歌をつけるために作られた、ピタゴラ装置の中で一番長いものだそうです。
42番 カウントダウン 数字の書かれたカードが一枚づつめくられてゆく装置
43番 けん玉 その名の通り、けん玉を使った装置
44番 桃太郎 落下した玉が「ピ」と書かれた発泡スチロールのカプセルに入る装置
45番 スラローム でこぼこの坂をミニカップカーが倒れそうになりながら下ってゆく装置
46番 クロール
47番 バンジー ゴムのついたロゴがジャンプして磁石で壁にくっつく装置
48番 ハンコ ハンコが押されてフィニッシュする装置
49番 カンバン ロゴの入った看板がスライドして、見事にフックに掛かってフィニッシュする装置
50番 アナグラムマシーン ゴライチピッタス→ピタゴラスイッチ と文字が組み替えられる装置
51番 プロッター 「佐藤雅彦研究室展」に実物が展示されていた装置。(二本の棒で木のボールがプロットされます。)
52番 走る路
53番 紙コップ 紙コップが走る装置
54番 車リボン ロゴがプリントされたロール紙を搭載したミニカーが走る装置
55番 三段トレイ 3段のトレイが1段づつ飛び出してくる装置


「音階」「乾電池」「桃太郎」「バンジー」で会場に笑いが起こっていたのが印象的でした。
現在55の装置があるようです。
番号は製作順なのでしょうか。
解説を入れていないものは私の記憶が曖昧な部分。
どなたか補完をお願いします(笑)。



<font size="-3">佐藤雅彦「子供の仕事」「トゥーチカと飴」。</font>

2005-07-29 23:59:42 | 佐藤雅彦
紀伊国屋書店から部数限定で発行されている佐藤雅彦氏の小説「子供の仕事」と「トゥーチカと飴」を購入しました。
小さくさもないけれど、とても幸せな物語です。
映画「kino」の世界にとても近いものを感じます。
「子供の仕事」はどちらかといえば映像寄りの記述。ドラマ化して「kino」の中にそっと混ぜて欲しい作品です(笑)。
そして「トゥーチカと飴」。これには本気で感動してしまいました。
ものづくりに接してこられた佐藤氏の心意気に触れたような気がします。
この2冊、装幀もシンプルな私家版といった風情。
デザインや版組などの見た目もひっくるめて、佐藤氏の紡ぐこの世界、大好きです。
紀伊国屋書店の該当新刊情報は→こちら



<font size="-3">佐藤雅彦 新刊情報。</font>

2005-07-25 23:31:37 | 佐藤雅彦
佐藤雅彦氏の小説新刊が出版されるようです。
刊行されるのは
「トゥーチカと飴」
「子供の仕事」
の二冊。
既刊の「砂浜」同様、早乙女道春氏による挿絵のついた絵本的な書物のようです。
現在、紀伊國屋書店 新宿本店4Fの紀伊國屋画廊で「早乙女道春展」が開催されているらしく、そこで、この『トゥーチカと飴』と『子供の仕事』を限定先行発売しているそうです。


なお、一般発売は7月27日とのこと。
詳細は佐藤雅彦氏のオフィスTOPICSのHP→こちら  をどうぞ。




<font size="-3">いそもの の味。</font>

2005-07-20 22:51:44 | 佐藤雅彦
isonomo02先日の「いそもの」が届きました。
店頭で聞いた話によると、すでに茹でてあるので自然解凍するだけで食べられるとのこと。
さっそく解凍して食べてみました。
身を取り出すのに苦労するかと思っていたのですが、以外にも簡単。
蓋をつまんで巻き方向にねじりながら引っぱると、身がきれいに取れます。
味は、ツブ貝を凝縮したような素朴なおいしさでした。
写真の通り、大中小さまざまな大きさの貝があったのですが、小さいもののほうが味が濃く、かつ口当たりが良くておいしく思えました。
そして、おいしいだけでなく、裏側にきれいな緑の模様と銀虹色の光沢があって、とても綺麗です。
非常に愛すべき貝に思えます。

isomono03ところで、たくさんの いそもの の中にひとつだけ違う貝が混じっていました。「しったか」という貝のようです。いそもの を買ったときに売り場でレジの方が一瞬間違え、「しったか・・・じゃなくって いそもの ね。しったか はもうちょっと尖ってるから・・・」とおっしゃっていたように、いそもの に良く似ています。
isomono04いそもの(写真右)が波状の凸凹があって少し平たく、内側にアワビのような光沢を持っているのに対し、しったか(写真左)は、いそもの よりも色が黒く、表面が滑沢。味もざりっとした触感があって、あきらかに別物でした。
両方味わえてちょっと得した気分です(笑)。



<font size="-3">「佐藤雅彦研究室展」開催情報。</font>

2005-07-20 21:09:18 | 佐藤雅彦
ふと、アップしていなかったことに気付きましたので早速掲載。

東京銀座で「佐藤雅彦研究室展 -課題とその解答-」が開催されるそうです。
会期:8月4日(木)~8月29日(月)
会場:DNP銀座ビル ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
開館時間:11時~19時(土曜日は18時まで)
     日曜祝日は休館
料金:入場無料


内容は、佐藤雅彦研究室の仕事を総括的に紹介する展示のようです。
研究室の映像作品(未公開映像含む)上映もある模様。
また、会期中には佐藤雅彦氏と茂木健一郎氏の対談イベントもあります。
佐藤雅彦ファンはもちろんのこと、1月の佐藤研の特集番組に興味を持たれた方にはおすすめの展覧会です。


・「佐藤雅彦研究室展」詳細情報はこちら→ggg Next Exhibition

じつは、なんとわたくし、上記の対談イベントの予約を取ることができました(^^。
念願叶って佐藤氏ご本人から生でお話を聞くことができそうです。
しかも、最近私が注目している茂木健一郎氏との対談。
いったいどのような話が展開するのか、今から非常に楽しみです。



<font size="-3">そうだ、戸田へ行こう。</font>

2005-07-18 00:48:30 | 佐藤雅彦
hedagyokyou静岡県の戸田村(現在は沼津市)に来ています。
知る人ぞ知る、佐藤雅彦氏の故郷です。
昨年出版された佐藤氏の小説「砂浜」の舞台でもあります。
以前は、佐藤氏の故郷には若干の興味があったものの、わざわざ行こうとまでは思っていませんでした。
しかし、この小説を読んでからというもの、どうしても行ってみたくてたまらなくなってしまったのです。
いわば佐藤氏と「砂浜」を辿る旅。
3連休の初めに東京まで出たついで、ここぞとばかりに足を運びました。


実際に訪れてみてわかったのは、小説が戸田村の記憶をじつに忠実に描いているということです。
定期船も、としちゃんが渡船と競争した御浜から大浦への道すじも、海金魚と呼ばれる青い魚の群れも、ロシア水兵のお墓も、御浜の外洋も、牡蠣殻のついたブイも、すべてが小説世界そのままに実在しており、不思議な懐かしさすら感じました。もちろん若干の違いはあります。しかしそれも、きっと時間経過による変化。おそらく、限りなくノンフィクションに近い小説なのでしょう。佐藤氏の戸田村への想いが具象を得ていきいきと甦るような、なんとも言えず暖かな心持ちになりました。
「砂浜」出版時のインタビュー記事で佐藤氏は「御浜の砂は特別で、その砂をイメージした装幀にしてもらった」と述べていました。いったい何が特別なのか、この記事を読んだときにはピンとこなかったのですが、御浜を実際に訪れてみて砂浜を観た瞬間に「!」となりました。たしかに独特の風合いを持った砂質だったのです。即座に「砂浜」の外カバーが頭に浮かびました。
suna
sunahama02
ところで、宿泊先のご主人がたまたま佐藤氏と同級生だったそうで、ご主人曰く、「小さい頃から頭が良かった」「ここからすぐ近くのところに住んでいた」「あっちのコンビニの名前は佐藤さんが手がけた」等々。貴重な情報を教えていただきました(笑)。
umitakeyamatake02コンビニの看板はさっそく確認。「海竹山竹ストア」という印象的な名前です。看板はあのかわいらしい文字。そしてしっかりロゴキャラクターまで配置している周到さ。控え目ながら佐藤雅彦カラーは存分に発揮されていました(笑)。


今回は造船資料館と深海生物館、御浜の外洋・内海、大浦、宝泉寺、道龍川、戸田小学校、などを巡ったわけなのですが、途中立ち寄った戸田図書館で思わぬ発見がありました。
地元の図書館です。著作本がないかと探してみると、日本文学の棚に紛れるようにしてひっそりと「砂浜」がありました。図書館所蔵書籍の宿命として外カバーは外されています。せっかくなので手にとって開いてみるとそこには・・・・・ なんと、佐藤氏直筆のメッセージがあるではありませんか。
見開きの扉絵、水中眼鏡のイラストがある頁の余白にブルーグレーのインクでこうありました。
「戸田村のみなさんへ
  戸田は 僕にとって どこにも
  かえがたい場所です。
  未来の人たちに こんな素晴らしい
  ところがあったことを 伝えたくて
  この物語を書きました。
     平成十六年八月十五日
       口南にて 佐藤雅彦 」
他でもない、佐藤氏から戸田図書館への寄贈本だったのです。
佐藤氏の心の底にはきっと、ここ、戸田の風景が深く刻み込まれているのでしょう。
遠く離れていても風景は常に共にある、きっとそんな存在なのでしょう。
佐藤氏の戸田への想いがいかに深いかを垣間見たような気がしました。
決してメディアには現れない、そんな佐藤氏の素顔になぜだかむしょうに嬉しくなってしまいました。
何とも形容し難い幸福感という思わぬ収穫があった今回の戸田訪問です。

irihama



<font size="-3">「考える人」13号。</font>

2005-07-07 22:06:00 | 佐藤雅彦
新潮社から出版されている季刊「考える人」の13号(2005年夏号)を購入しました。
特集は「『心と脳』をおさらいする」。
私が最近注目している脳科学者、茂木健一郎氏の寄稿「私たちの心は美しい」(p22-27)、「茂木健一郎氏への10の質問」(p28-31)、「茂木健一郎 ケンブリッジ、オックスフォード巡礼」(p36-60)に加え、佐藤雅彦氏へのインタビュー記事「脳とタスク・アニメーション」(p63-66)など、私にとっては盛りだくさんの内容でした。
殊に、佐藤雅彦氏のインタビューでは、NHK教育で1月に放映された「『考え方』が動きだす~佐藤雅彦研究室のアニメーション・スタディ~」でも話題にのぼったタスク・アニメーションについて、より詳細な内容が語られており、たいへん興味深い記事になっています。
人間の知覚や意識、認識方法について興味のある向きにはオススメです。



<font size="-3">5/25放送「ピタゴラスイッチ」。</font>

2005-05-26 00:56:13 | 佐藤雅彦
録画しておいた、5/25放送ぶんの「ピタゴラスイッチ」をみました。
冒頭の人形劇は「えからできたもじ」と称して表象文字の概念を解説。漢字の成り立ちを例に、絵から文字ができてゆく様子がアニメーションの手法を活かしながら示されていました。
「おとうさんスイッチ おじいちゃんも可」は「た行」。「て」「と」のお題はある意味新境地です。
ピタゴラ装置新作も今までにないタイプの作品。プログラムの概念が組み込まれていたように思います。
「ポキポキアニメ」は前回同様鶏、かとおもいきや、まさかの二本立て。三本の線で構成される追加のお題には思わず笑ってしまいました。
「なにしてるひと?」は2題。ふだんあまり見かけない動作なのに、限られた点の動きをほんの数秒見ただけで何の動作かがわかってしまうことに新鮮な驚きを感じます。
「アルゴリズム行進」は基本バージョン。
そして、つながり歌「もりのおく」は続投。
模索しているらしい、新しい試みの方向性が垣間見えたような気がした今回でした。



<font size="-3">5/11放映「ピタゴラスイッチ」。</font>

2005-05-20 21:47:54 | 佐藤雅彦
同じく録画しておいた、5月11日放映ぶんの「ピタゴラスイッチ」を見ました。
17年度第3作目です。
冒頭の人形劇は「じかんがみえる」と題して時間経過を可視化する方法を解説。砂時計やお香による数分~数十分単位の計測法の紹介だけかと思いきや、年輪や耳垢をつかった数十年単位のマクロな時間計測までも紹介する抜かりなさ。まったくもって、あなどれません(笑)。
「おとうさんスイッチ おじいちゃんも可」は「す行」。おじいちゃんが挑む「す」のお題には爆笑。
「フレーミ-」はフレーミーの留守番。
「ポキポキアニメ」は鶏。いさぎよい動きと意表をつく構成がクセになりそうです。
「アルゴリズム行進」は基本バージョン。
そして、つながり歌「もりのおく」。なにくわぬ様子で淡々と歌い上げていながら、じつは歌詞が完璧なしりとりになっているという驚異的な歌です。意識しなければまったく気付かないほど言葉が巧みに配置されており、聞きながら思わず感動で鳥肌が立ちました。桜井秀俊氏の歌声とメロディ、そして人形を用いたアニメーション映像、すべてがあいまって独特のほんわかしたトーンが形成されています。素晴らしいです。ついつい何度も見返したおかげで歌が耳について離れません(笑)。
ピタゴラ装置新作には感動。重力にいかに逆らうか、その命題への果敢な挑戦にはいつも感心させられます。
佐藤研の学生さんたちは本当にすばらしい。
今後とも飛翔を期待しています(^^。


ところで、kaliさまのblogで「つながりうた もりのおく」についての面白い記事がアップされています。
興味のある方は→こちら



<font size="-3">4/20放映「ピタゴラスイッチ」。</font>

2005-05-20 21:45:35 | 佐藤雅彦
録画しておいた、4月20日放映ぶんの「ピタゴラスイッチ」を見ました。
この放映が17年度第2作目。
冒頭の人形劇は「まるはころがる」と題して轆(コロ)の原理を解説。コロの原理から車輪が生まれたことまで説明されており、ひそかに高度な概念を扱う手法には毎度ながら感心させられました。コロを「ころがるまる」と形容していることにも脱帽。いつもやさしい言葉遣いを意識させてくれるのでとても勉強になります。
「おとうさんスイッチ おじいちゃんも可」は「か行」。
「10本アニメ」は新境地の9行方不明事件。今までにない長尺、ドラマ性を前面に押し出した展開には初めから終わりまで興味津々でした。物語の展開もさることながら、私が特に感銘を受けたのは携帯電話の表現です。本体と手の取り合わせでまず唸り、つぎにダイヤルの場面でノックアウト。たったの3プッシュなのに、「9の家っと・・・」という台詞とプッシュ音を重ねることで違和感のないリアルなダイヤルとして成立させていたのには驚きました。
「ポキポキアニメ」と「10本アニメ」が同じスタッフでつくられているのだとすると、「ポキポキアニメ」が短いぶん「10本アニメ」を長篇化してゆく方向になるのでしょうか。今後の展開から目が離せません。
「かぞえてみよう」は7。
「アルゴリズム体操」は基本。練習は山田バージョン。
新しいピタゴラ装置も加わり、今年度も楽しみです。



<font size="-3">4/5放送ピタゴラスイッチ。</font>

2005-04-05 21:46:20 | 佐藤雅彦
録画しておいた4/5放送ぶんのピタゴラスイッチを見ました。
新年度第1弾から飛ばしてくれます。
冒頭の人形劇は「スイッチをいれていないのに のまき」と題してセンサーの役割を解説。
毎度ながらのみごとな解説ぶりもさることながら、解説映像の中の「センサーというかんじるそうち」「いつもちょうどよいあたたかさにする」このふたつの言い回しに感動を覚えました。
専門的に言い換えるならば、それぞれ「検知システム」「一定温度に保持」ということになるのでしょうが、そういった特別な言葉を使わなくても概念をわかりやすく伝えることができるのだと実感。毎回勉強になります。
「おとうさんスイッチ おじいちゃんも可」は続行。
「フレーミー」は公園のすべり台。
ピタゴラ装置は新作あり。
新コーナー「なにしてるひと?」は、「なにしてる点?」の人物バージョン。お題がなかなかに小粋です。
もうひとつの新コーナー「ポキポキアニメ」は、長さの決まった1本の線だけで構成するアニメーション。予期せぬ展開とラストのナレーション(声:草薙剛)に爆笑してしまいました。どうやら10本アニメと同じスタッフで製作されているようです。まだまだ発展途上といった感はありましたが、10本アニメの系譜を引きつつ新たな制約をどう活かしてくるのか目が離せません。
「アルゴリズム体操」はいつもここからのお二人による基本バージョン。
今後どのような発展を遂げるのか、ピタゴラスイッチ、今年も楽しみです。



<font size="-3">3/9放送ピタゴラスイッチ。</font>

2005-03-15 23:55:37 | 佐藤雅彦
録画しておいた3/9放送ぶんのピタゴラスイッチをみました。
今回は、年度末恒例の「おとうさんスイッチ(おじいちゃんも可)」特集。
一年間に放映されたおとうさん/おじいちゃんたちのパフォーマンスが「あ」から「ろ」、そして「が」から「じょ」まで順番に、ひとつづつテンポ良くプレイバックされました。
フルバージョンだと出演ご家族の醸し出す雰囲気をじっくり味わえますが、こうしてコンパクトに全編をまとめてみるのもまたひと味違った楽しさ。
短く刈り込まれ音声さえ取り払われても、画面の中のおとうさんやおじいちゃんからは驚くほどに素敵な個性が滲み出しているのがわかります。
こどもたちに操作される時のおとうさんやおじいちゃんたちが見せる、あの楽しそうな表情。
それが矢継早に繰り出されるのですから、知らずのうちに見ているこっちまでニコニコしてしまいます。
映像で綴った愛情のパッチワークとでも形容したくなるフィルムでした(笑)。
「フレーミ-」は小鳥と風の話。
「はしって文字」は新作。リプレイ前は見ていて「ん?」となり、リプレイ後のはじめの文字で「!」となった、新要素のあるお題でした。
「アルゴリズム行進」は消防署のみなさんと一緒。
ピタゴラ装置新作がなかったのが少しだけ寂しかったけれど、なかなかに素敵な放映回でした。