はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

御礼と事務連絡。

2008-02-28 20:02:56 | お知らせ
たいへん嬉しい贈り物をいただきました。
ところが、送り主の名前がないため、どなたがくださったのか不明な状態です。
つきましては、お心当たりの方はご一報いただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。


東京遠征2/26。(東京都現代美術館「川俣正『通路』」「解きほぐすとき」「[通路]講座:桂英史『アー

2008-02-28 01:26:13 | アートなど
一昨日、2月26日(火)は、東京で3つの展示と2つのトークイベントを見て参りました。

とりあえずリストと概要のみ。時間があればレポを書き足します。

・東京都現代美術館「川俣正『通路』」
 アートディレクター川俣正氏による企画展。美術館の展示室内にベニヤのついたてや進行中のプロジェクトラボ、川俣氏のプロジェクト記録、カフェ、レクチャースペース等を配し、美術館自体を「通路」として位置付け、プロジェクト自体を生成過程含めて提示してしまおうという意欲的な展示プロジェクト。
 今回の展示はその性格上、会期中常に内容が変化してゆくためパスポート券も発売されていました。「通路」会場内で行われるトークイベントはもちろん、他の企画展示や常設展も併せて会期中何度でも見られるので、現代美術館へよく行く方にとってはとてもお得だと思います。
 私にとって印象的だったのが横浜トリエンナーレの会場模型。川俣正氏ディレクションによる横浜トリエンナーレ2005の会場模型が展示されており、非常に懐かしく感じるとともに、模型を観ることで展示内容を如実に思い出すことができ、記録は非体験者よりも体験者にとってよりいっそう強い意味をもつものなのだなと気付きました。
 ベニヤに覆われた会場はまるで迷路や文化祭のよう。いわゆる一般的な美術展を思い描いて行くと拍子抜けするかもしれません。何度も足を運ぶことによって真価を発揮する企画展だと思いました。お近くの方はぜひ。4月13日まで。


・MOTアニュアル2008「解きほぐすとき」
東京都現代美術館が注目する5人の若手作家に焦点をあてた展示。自らの視点で世界を解きほぐして再構築した、強烈な個性を放つ作品群が圧巻。ボリュームこそそれほど多くはありませんが、どこかで遭遇すれば必ずそれとわかるような作家性を具備した作品が揃っていました。濃密。観ておいて損はなさそうです。


・「[通路]講座:桂英史『アート・アクティヴィティとアーカイブ』」
「川俣正『通路』」の一イベントして開催されたレクチャー。講師は東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授である桂英史氏。アーカイブ論をめぐるもろもろを雑談交え展開。内容、話術、桂氏のパーソナリティ、すべてにおいて非常に面白いレクチャーでした。旧知の仲らしき川俣氏との丁々発止も楽しく。
 興味深いトピックスはたくさんあったのですが、『アーカイブの本質は強烈な個にあり』という話、そして、『資料提供を目的とした主体は公開する前提で資料を蒐集すべきであって、いったん所蔵してしまった資料を公開するかどうか迷うなどもってのほか』という話、関連して、『入れる段階でフィルタリングし、いったん入れたものは捨てない』という桂氏のアーカイブポリシーの話、さらに『データ整理をくふうしすぎると見れなくなったり無くなったりする』という話、『文化資料の散逸を防げない状況をつくっている日本社会は、その意識のありようという点において危機的な状況にある』という話、『形がのこらない作品をつくる作家、メディアアートなどはアーカイブがすべてなのでドキュメントの展示のしかたを考えなければならない』という話、『優れたアーティストとは、鋭利なアクティビストであると同時に誠実なアーカイビストである。』という言葉などが特に印象に残っています。
 川俣正氏の今回の展示をアーカイブとして俯瞰することによってはじめて見えてくることもあり、そういった視点を与えてくれたという意味でもこのレクチャーは非常にエキサイティングなものでした。
 16時から延々2時間近く続いた講義と質疑応答は研究室の延長といった感じで楽しかったです。
 桂氏の話は始めて拝聴したのですが、あっけらかんと鋭利な言葉を放つ様子、そして記録と向き合う姿勢の真剣さがとても印象的でした。機会があったらぜひまた講義を拝聴してみたいと思います。


・クリエイションギャラリーG8「第86回ニューヨークADC展」
 新橋駅近くにあるリクルートビル1階のギャラリーG8で開催中の展示。国際的な広告賞ニューヨークADCの入賞作品を紹介展示したもの。

・「クリエイティブサロン:佐藤雅彦+ユーフラテス『新しい表現を生むための方法論』」
 上記展示会の関連イベントとして開催されたトークイベント。映像2作品でニューヨークADCの賞を受賞した佐藤雅彦氏と氏の研究室の卒業生から成るクリエイティブ集団ユーフラテスのメンバーを招き、受賞作を支える表現手法の根底にある知見や現象の研究事例とその手法がブラッシュアップされる過程、そして、最近の佐藤雅彦研究室周辺で取り組んでいるテーマ、これらについて実例を挙げつつ紹介がなされました。
 ユーフラテスからは山本晃士ロバート氏と うえ田みお氏、そして拡張ユーフラテスとしてフレキシブルに参入するTOPICSの石川将也氏、の3人が発表者として参加していました。
概要としては、
1、金賞を取った「ISSEI MIYAKE A-POC INSIDE」については、ロトスコーピングや奥行認知のワークショップ(山口情報芸術センターで高校生を対象に行われたもの)を介した技術蓄積の話、先行習作としての「TOKYO STRUT」の話、ディレクション担当のうえ田みお氏の話や映像制作用に山本晃士ロバート氏がつくったプログラムの話、など。
2、入選の「イデアの工場」 については、アイデアの元になった石川将也氏の「仮想工場」や、さらにその着想の元になった工場のハンドリング映像(佐藤氏がゼミで学生さんたちに紹介した)と、それがきっかけでメンバーが実際の工場見学や技術展示会に行くようになった経緯、それらの経験から捨象という手法にたどりついた話、など。
3、最近の佐藤研周辺話題としては、慶応大学の佐藤研1年生時田氏の共時性をテーマにした課題映像(折り紙)、同じく2年生の映像(ステープラー)、そして、東京芸大メディア映像専攻の藤幡研越田乃梨子氏の習作映像および修了制作「壁・部屋・箱 - 破れのなかのできごと」から「部屋」を、佐藤研重田祐介氏の「ルールする運動」から「道具する回転」を紹介。
4、最後に質疑応答で会場からの質問に回答。
といった流れでした。

トークイベントながら、話に登場する専門用語をまとめた持ち帰り用資料を用意するなど、完全な講義形式だったのが佐藤氏らしくてたいへん微笑ましく思えました。佐藤氏の関わるプレゼンテーションを拝見していつも思うのは、『伝えよう』とする姿勢が尋常でないほど徹底しているなあ、ということ。苦労話や雑談でお茶を濁すのではなく、『これはこうしてつくりました』と考え方をすべて正確に伝えようとする姿勢と、実際にそれを可能にする伝達手法は、見ていていつもたいへん感心させられます。
そして、気になっていたユーフラテスの面々(特に始めて姿を拝見した うえ田みお氏)のお話を聞き、わずかながらでも人物像を拝見できたのは大きな収穫でした。山本晃士のシャープな印象そのままの所作、石川将也氏の落ち着いた受け答えと成長ぶりも微笑ましく。佐藤匡氏が登壇していなかったのが残念でしたが、またの機会に期待。
メンバー個々の活動にも期待したいところ。ユーフラテスの動向には今後とも注目してゆきたいと思います。


TENORI-ONの日本でのイベント。

2008-02-22 23:05:53 | アートなど
メディアアーティスト岩井俊雄さんのTENORI-ON開発日誌2月22日付けエントリより。

YAMAHAと岩井さんがまったく新しい概念から開発している、光の楽器TENORI-ON。
日本でもなにやら魅惑的なイベントが開催されるようです。
http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/event/index.html

ラウンチイベントは4月25日@青山スパイラルホール。
ということは、つまり、日本でもこの日付近でとうとう発売されるということなのでしょうか。
昨年の9月4日にイギリスのみで先行発売されていたTENORI-ON。
この異例の販売戦略は、音楽先進国のイギリスでマーケット調査を兼ねた販売なのかなと踏んでいたので、その売れ行きが気になっていたところですが、ビョークが5台まとめて買って行ってしかもライブに使っていただの、いろいろ朗報が聞こえていたため、日本での発売も時間の問題かなと思っておりました。
発売となれば店頭展示もされるでしょうし、とにかく実機を触ってみたい私には実にわくわくする情報です。

イベント詳細は上のリンクからどうぞ。
TENORI-ONのライブもあるようですので、
岩井氏や音楽、新しいモノに興味のある向きにはおすすめです。

ところで、ふと思い至って数えてみたら岩井俊雄さん関連エントリがすでに41件もありました。
そろそろ「岩井俊雄」というカテゴリを追加したほうが良いのかもしれません(笑)。


東京遠征2/17。(国立新美術館「文化庁メディア芸術祭」、アニメーション部門受賞者シンポジウム、上映

2008-02-20 23:20:50 | アートなど
先日、2月17日(日)は、東京で1つの展示イベントと、それに関連したトークイベント1つ、そして2つの作品上映を観て参りました。

行ったのは、東京六本木にある国立新美術館で開催されている「第11回文化庁メディア芸術祭」です。
いわゆるメディアアートや映像作品、インスタレーション、デジタル技術を介した作品はもとより、製品化されたデバイス、デジタルガジェット、ゲーム、書籍、ウェブコンテンツ、マンガ、アニメーションなど、幅広い作品を広義のメディア芸術ととらえ、公募された作品群の中から優れたものを選んで展示した、年に一度のいわば大規模な文化祭のようなイベントです。
昨年までは恵比寿にある東京都写真美術館が会場となっていたのですが、なぜか今年からはこの国立新美術館へ移行しての開催となりました。

私は2006年にこのメディア芸術祭の存在を知ってから、さまざまな表現形態に触れることのできる面白さが好きで毎年欠かさず観てきましたので、今回もぜひにと足を運びました。
しかしながら今年の印象は、あまり良いものではありませんでした。
『作品の内容以前に、展示環境が悪すぎる』というのが率直な感想です。
今回の会場は国立新美術館の2階E展示室。天井の高いワンフロアを使用しています。その中に6つの部門が併存し、映像上映やゲーム機実演などがあちこちで同時に行われます。上映ブースなどには一応のしきり等があるものの、天井が開放されているので音がだだ漏れ。さまざまな音がごちゃまぜになって目的の音が聞き取れません。
以前も音の混じり合いはありましたが、地下1階から3階までの4フロアを部門ごとに区切って会場としていましたので、ここまでひどい状況ではありませんでした。
これではせっかくの作品とその作者たちが気の毒でしかたありません。

また、アート部門が縮小されていたように感じられ、残念でした。
作品の実機展示がずいぶん少なかったような気がします。
高すぎる天井や電源確保がネックになったのでしょうか。
対してアニメーション部門ではブースを3つも設けるなど、以前より手厚い扱いになっていたように思います。
エンタテインメント部門とアート部門の映像作品が2部門合わせて1つのブースという少々気の毒な扱いを受けていたことを思うと、イベントの力点が変わったのかなという印象も受けます。

私見では、いっそのこと入口近くの大きな上映スペースは省き、ジャンルごとの個別上映スペースをもっと充実させたほうが良いのではないかと思えました。
音の混じり合いも何とかしたほうがいいのではないかと。どこに行っても鑑賞にストレスを感じるような状況でしたので、来年もこのような状態が続くのだとしたらわざわざ宮城くんだりからは行きたくないなと思ってしまいそうです。
パンフレットが値上がりしていたのも痛い。
展示方法に不満を抱いていたところ、去年の2倍の価格とあって食指が動きませんでした。
来年度以降の改善に期待。

以下、印象に残っている作品を順不同で。
・アート部門
「20万の亡霊」広島の原爆ドームが映り込んでいる古今の写真を、ドームが中心となるよう配置しながら時代順にひたすら重層していった映像作品。戦前の生活空間の中に溶け込んだ建物が、原爆被災を経て、復興してゆく街並みとともに象徴的意味合いを強めてゆく様子が生々しい。この作品で原爆ドームが何度も修復されていたことを初めて知りました。
公的な記録写真と思われるものから個人のスナップと思われる写真まで、じつに様々な写真が使用されていました。こんなにも多くの写真が残っていたものだと感心するいっぽうで、これらの写真の先には写真を撮った人間と、その人間たちの『これを撮ろう』という意思と建物を見つめていた視点が確実に存在しているのだという事実に想いを馳せて非常に感慨深いものを感じました。
「SUPER SMILE」カメラ目線で常時極上のスマイルを浮かべている女性のなにげない日常を描いた映像作品。非言語コミュニケーションのもつ多層性に気付かされる。インパクト絶大。ある意味恐い。

・エンタテインメント部門
「WINING ELEVEN」社会人の遭遇するさまざまな場面をサッカー用語に喩えて提示したショートドラマ仕立てのCMシリーズ。絶妙の可笑しさ。次々と繰り出される解説に思わず声を出して笑ってしまいました。もう一度まとめて見てみたいものです。
「フェイスバンク」シリコン製の顔がついた貯金箱。口にコインを入れると妙にリアルな口の動きで咀嚼し、飲み込んでしまう。非常に生き物ちっく。何度もコインを入れて魅入ってしまいました。
「匂いをかがれるかぐや姫」日本の民話を翻訳ソフトにかけ、その結果文をふたたび日本語へと翻訳した文章から成る書籍。おおむねのストーリーはなんとなく合っているものの、ディティールや想起される風景が大きく変化しており、内容も、より荒唐無稽になっていたのが印象的。バカバカしくて思わず笑ってしまうと同時に、民話が伝搬する過程でヴァリエーションが出来上がってゆくしくみを垣間見たような気がしてとても興味深い。

・学生CGコンテスト
「邂逅 わくらば」インスタレーション作品。玉石の敷きつめられた箱型の通路があり、その上を歩くと数歩遅れて後を追うように足跡どおりに玉砂利が動く。その様子はまるで目に見えない生きものが歩いているかのよう。口碑伝承に残る妖怪現象を連想しました。また、同時に、前を向いて歩いている限りこの追跡は自分では見ることができないわけで、知らぬ間に自分の痕跡を置き忘れているようでもあり、いろいろと示唆的で面白い。
「とりかげ」インタラクティブ作品。実物ではなくデモ映像のみ。鑑賞者がスクリーンに自分の影を写し、枝のように腕を差し出してじっとしていると鳥の影が飛んできて腕の影に留まる、という作品。私の個人的嗜好にヒット。鷹匠の気分になれそう。

・先端技術ショーケース
「感情音声のモーフィング」喜怒哀の3感情を音声的にモーフィングして提示するシステムのデモ展示。タッチパネルに触れることで同じ言葉を感情配合を変えて再生できる。抑揚の調整で微妙な感情が再現される様子が面白い。また、いろいろ試した後で感情負荷のない平坦な語調(アナウンサー口調?)を聞くと、その冷静度合いが妙に可笑しく感じられたのが印象的。



「アニメーション部門受賞者シンポジウム」
メディア芸術祭の関連イベント。アニメーション部門の大賞「河童のクゥと夏休み」制作者である原恵一氏、短編アニメーション優秀賞「カフカ 田舎医者」の制作者である山村浩二氏、功労賞受賞者のアニメ脚本家 辻真先氏の3氏を迎え、司会者の鈴木伸一氏が各氏の仕事についてインタビューしたもの。
司会の鈴木氏が名乗らなかったうえに席からテーブル上の名前プレートが見えなかったので状況を把握するのにしばらくかかってしまいました。
話の内容としては、昔話と苦労話に終始してしまった感が。もう少し作品・制作に係るロジックや手法、目指すもの、展望などについて聞いてみたかったので残念。
アニメーションについては門外漢なので、外野的視点で見ていたせいか、4氏の話を聞きながら妙な感覚にとらわれました。いわゆるアニメ業界というのは流通量が多い作品の制作者ほど『閉じている』ような印象を受けたのです。辻氏や鈴木氏、原氏の話を聞くにつけ、アニメーション制作の現場が限られた業界内でのみ再生産された価値観で動いているように思えてしまいました。広く世に発信され、多くの受け手に伝達される作品をつくっている主体が、その敷衍性とは裏腹に『外』を見ていない状況があるのではないか、それゆえに多様な作品が生まれ難く、そればかりか流通側が流通経路に乗り難い作品を評して『商業アニメ vs アートアニメ』という構図を描きたがっているのではないかと思えてしまってしかたありません。なんとも不思議で釈然としない気持ちになりました。



「上映会『河童のクゥと夏休み』『カフカ 田舎医者』」
前述の受賞2作の上映会。以下、簡単な感想。

山村浩二『カフカ 田舎医者』 短編アニメーション映画。カフカの同名原作を映像化したもの。雪の晩に急病の報を受けた田舎医者を巡る内省と不条理あふれる奇妙な世界を描く。奇妙な人物と予兆に満ちた画面構成。どこか空恐ろしく、禍々しくて落ち着かなくなるような作品に仕上がっていました。インパクトは絶大。好悪の分かれる作品かと思います。

原恵一『河童のクゥと夏休み』 長編アニメーション映画。小暮正夫氏の原作「かっぱ大さわぎ」等を大幅にアレンジして映像化したもの。長い眠りから甦った河童の子供クゥと小学生コウイチやその家族との一夏の交流を描く。一言でいえば『面白い』作品。おそらく幅広い世代に受け入れられること間違い無し。内容や設定としては荒唐無稽ながら、登場する面々のディティールが作品としてのリアリティを支えているのが特徴かと。
最大の難点は、これだけいろいろ考えているらしき作品なのに、あくまで都市の理論でものごとが描かれているということ。ある意味『今の時代』に特化し寄り添った作品のように思えます。そのため普遍性という意味ではいまひとつ。ゆえに私の心にはあまり響きませんでした。この場合、舞台が田舎でなければテーマに説得力が欠けるように思えます。僻地在住の目から見ると興醒めしてしまいそうな部分が散見されました。
いっぽうで、子供たちと彼らを取り巻く家族の描きかたは文句なく素晴らしい。非常に丁寧かつ説得力にあふれており、思わず笑いながら頷いてしまう場面も多々。人間を描く手際はお見事としか言いようがありません。
総じて良質の王道作品かと思います。機会があれば見ておいて損はないかと。おすすめです。
ちなみに作中にちょろっと登場する遠野は個人的によく馬に乗りに行っていたところなので私としては馴染みの深い場所。作中の遠野の風景からは非常によく取材をしたことがうかがえますが、半端にドキュメントめいているため、そのぶんかえってリアリティが削がれているように感じられて残念でした。



作品はいいとしても、イベントとして色々と残念だったので今回は敢えて辛口に。
来年度以降のメディア芸術祭運営者(特に文化庁)には改善点を整理してくださるようぜひ期待したいところです。


東京遠征2/16。(森美術館「UBSコレクション展:アートは心のためにある」)

2008-02-17 00:29:55 | アートなど
昨日2月16日(土)は、東京でひとつの展覧会を見て参りました。

本当は朝一で東京都現代美術館→メディア芸術祭→21_21 Design Site→森美術館、と回る予定だったのですが、体調がすぐれず、出発が夕方にずれ込んだため1か所だけの鑑賞となりました。

観てきたのは六本木にある森美術館の企画展「UBSコレクション展:アートは心のためにある」です。
スイスに拠点を置くUBSという金融機関が半世紀にわたって蒐集してきた現代美術のコレクションを、森美術館なりの解釈によって現代世界の潮流を写し出すキーワードでまとめた展示。
「ポートレートから身体へ」「造られた世界」「ランドスケープから宇宙へ」という3部構成。
なかなかよくまとまっています。
ただ、いつもより作品数は少なめで、ちょっと物足りないかなとも思えましたが、それを補う要素として特筆すべきはインテリアの配置です。"生活空間の中に配されたアート" というコンセプトで、展示室の各所に居室のようなインテリア空間が配置されていました。ソファーとテーブルはもとより、オフィスや書斎を思わせるデスクスペースも。それらの空間にはそれぞれiBookやMacG5が設置され、くつろぎながら展示情報やUBSサイトを閲覧できるようになっていました。家具のデザインも面白いものばかりで、おそらく家具好きなら、このインテリアゾーンだけでもかなり楽しめるはず。少し直島のベネッセハウスを連想しました。
展示自体は2時間あれば充分といった感じですが、敢えて展示会場でゆっくりしたい人にはおすすめです。



電光石火。

2008-02-16 10:50:40 | さもないこと
アップし忘れていた動画を上げておきます。
12月23日、東京オペラシティーの中庭で遭遇した場面。

<script type="text/javascript" src="http://www.flipclip.net/js/7eadeb406693fb6aa70b6256317de491" ></script><noscript>電光石火。
Powered by FlipClip</noscript>
[]
電光石火。
by aiwendil


足下のパン屑に、近寄るときはじりじり。去るときは電光石火。
したたかなたくましさ。
微笑ましい。


「距離感の窓」を公開。

2008-02-14 02:36:34 | お知らせ
Photo

本日、「距離感の窓」というプロジェクトを公開しました。
・こちら→http://homepage.mac.com/aiwendil/senseofdistance/top0.html
興味のある方はどうぞご笑覧ください。

構想から1年3ヶ月。ようやくといった感じの完成です。
コンセプトとグラフィックについては自分で担当していますが、技術知識不足のため、システムは盟友H-I-D-Eさんにお願いしました。

なお、内容解説は畳んでおきますので、ご覧になりたい方はどうぞ。

「距離感の窓」は、別々の場所を自由に重ねて見られるシステムです。
大人になってから子供の頃に暮らしていた場所へ行ってみて驚いたり、はじめて行く場所がひどく遠く感じたり、逆に遠いはずの場所がとても近く感じた経験はないでしょうか。
私の場合、以前から、車で移動する田舎と、自分の足で歩く市街地とでは距離感が変わってしまうような気がしておりました。それであるとき、地元と仙台駅周辺の地図を重ねてみたのです。するとどうでしょう、意外な場所どうしが同じ距離だったり、いつも歩いている道が思わぬ長距離だったりと、数字としてはわかっていたはずの距離が地図上で意外な一面を見せるではありませんか。
どうやら主観上の距離は状況によって微妙にゆらいでしまうようです。
この距離感のゆらぎが面白く思えたため、各人のよく知っている場所でこの現象を再現できないかと作ったのが「距離感の窓」です。

このように、私たちが身体感覚として持っている距離感は、じつは案外不確かなものです。「距離感の窓」で直接地図を重ねてみることでそのズレをあきらかにし、身の回りの現実と身体の新たな一面を楽しんでいただければ幸いです。

*なお、感想や不具合情報をお寄せいただけると助かります。

行きたい催し2~3月篇。

2008-02-14 01:22:07 | アートなど
備忘録的に。
2月から3月あたりをメモ。

1 六本木 国立新美術館「文化庁メディア芸術祭2007」2月6日(水)~2月17日(日)
 日本のメディア芸術を紹介する毎年恒例の大規模展示。公募作品および市場流通作品の中から優れたものが表彰・展示される。いわゆるアート作品のみならず、アニメやマンガ、CMやPV、WEBコンテンツ等も審査対象になるのが大きな特徴。会期中は上映会やシンポジウムもあり。入場無料。体験型の作品が多いのでおすすめ。
昨年までは恵比寿の東京都写真美術館が会場であったが、今年度からは国立新美術館での開催となる。


2 水戸芸術館現代美術ギャラリー「宮島達男|Art in You 」2月16日(土)~5月11日(日)
カウントダウン電光のインスタレーションで知られる宮島達男氏の大型企画展。
いつも心憎い企画を繰り出してくれる水戸芸術館。今回こそ行ってみたい。

3 木場 東京都現代美術館「川俣正 [通路] 」2月9日(土)~4月13日(日)
 アーティストにしてアートディレクターの川俣正氏の企画展。
 川俣氏といえば、2005年の横浜トリエンナーレが記憶に新しいところ。
 今回の企画は美術館を通路に見立てた構成とのこと。これはぜひ行ってみたい。

4 六本木 森美術館「アートは心のためにある:UBSアートコレクション」2月2日(土)~4月6日(日)
 スイス拠点の金融機関UBSのコレクションから構成された企画展。どういった展示になるのか、森美術館のディレクションに興味津々。

5 六本木 21_21 DESIGN SIGHT「21_21 DESIGN SIGHT + パートナー企業『200∞年 目玉商品』展」1月26日(土) ~3月16日(日)
 21_21 DESIGN SIGHTとパートナー企業との共同企画展。今回は「目」がテーマとのこと。
 ここの展示はいつも切り口が面白いので、まずは行ってみたいところ。

6 新宿初台 東京オペラシティーアートギャラリー「池田満寿夫 知られざる全貌 展」1月26日(土)~3月23日(日)
 版画、陶芸など幅広い制作活動を行っていた池田満寿夫氏の回顧展。
 ここの企画展は手堅いので結局毎回足を運んでいます。併催の所蔵展示も充実しているのでお得感満載。


他にもいろいろあったような気がするのですがまずはここまで。
気が付いたら書き足します。


ダイモン。(大門ではなく)

2008-02-10 14:06:00 | さもないこと
フィリップ・プルマン作の児童文学「ライラの冒険」が映画化されると知ってから数年。
ふと気付けば日本でも公開目前。いつの間にか公式サイト等もできておりました。
ところでこの「ライラの冒険」の物語世界を特徴付けるもののひとつがダイモンという存在です。
ダイモンはこの物語世界の人間が必ず持って生まれてくるその人の分身のような存在で、動物や虫の姿をしています。子供の頃は気分に応じて様々に姿を変えますが、長じるにつれてその人の本質を表すような形に固定されます。いわば魂が身体の外に現れたもの。心理学でいうところのアニマやアニムスといったものを彷彿とさせる、実に魅力的な設定です。
件の映画のサイトに、なんと、このダイモンを調べようというコーナーがありました。
簡単な性格分析から被験者を31種に分類し、対応した生物へあてはめようという企画です。
作中のダイモンはもっと多様ですが、これはこれでなかなか面白い。
試してみたところ、私はユキヒョウでした。名前はアポロニオスだそうです。
Emailhdr_int1php
端正な絵柄と凝った造りが美しい。
さらにもう一度試してみたところ今度はライオン。名前はファイロン。
Emailhdr_intphp
他にもちょっとした回答差でヤマネコやオオヤマネコが出ました。
どうやら私はまだダイモンの姿の定まらない子供らしい(笑)。
いずれにせよ性格的にはネコ科猛獣っぽいイメージのようです。

プログパーツもあったのでユキヒョウを貼り付けてみます。
リンクから診断サイトへ飛べますので興味のある方はどうぞ遊んでみてください。
<script type="text/javascript" src="http://deamon.tempdomainname.com/daemon.js"></script>
<script type="text/javascript">

</script>

(おっと、ocnはこのブログパーツをサポートしていない模様。
興味のある方はブログパーツのサイト→http://daemon.gyao.jp/blogseal/list/
もしくは公式サイトの該当ページ↓ へどうぞ。
http://www.goldencompassmovie.com/?&start=daemons
少し重いサイトなのでナローバンドの方は注意。)

なかなか力の入った「ライラの冒険」映画宣伝。
肝心の第1部「黄金の羅針盤」本編は日本では3月1日公開とのこと。
どういった作品になっているのか興味深いので、できれば足を運んでみたいと思います。

ちなみに、この3部作原作はかなりの大風呂敷なうえ、キリスト教文化圏では物議を醸しそうな内容をはらんでいるため、万人に諸手を上げておすすめとは言えないのですが、とりあえず読書好きで英国児童文学好きなら読んで損はないと思います。

ところで、せっかくなので昔書いた書評を掘り出してみました。
以下、2001年に書いたブックレビュー。読んでみようかという方は参考にどうぞ。

**************************************
フィリップ・プルマン著 (1992~1999)
〈ライラの冒険シリーズ〉 ☆おすすめ☆ カーネギー賞受賞作。
1「黄金の羅針盤」 2「神秘の短剣」 3「琥珀の望遠鏡」
His dark materials との副題の着いた三部作。第一部は我々の世界と少し異なる世界、第二部は我々自身の世界からはじまる。第三部は各世界間を移動する。
心の一部が動物(ダイモンという)の形をとって現れる世界に住む孤児の少女ライラは、ある日のいたずらを機に思わぬ陰謀と冒険に巻き込まれる。子どもに降り注ぐ光の粒子「ダスト」の秘密やダイモンの不思議をめぐって謎は謎を呼ぶ。真理計に導かれ、母を名乗る怪しい女性や美しき魔女、気球乗りの冒険家や誇り高き熊の王などに出会い、ライラは次第に運命の渦へ巻き込まれてゆく…。(第一部)
児童文学の形を借りていながら、実は非常に過激な問題作。特にキリスト教の文化圏にとっては…。
スケールの大きな世界観と強烈な登場人物達。息もつかせぬストーリーテリング。読んで損はありません。一巻ラストと最終巻では思わず涙しました。完結したのは最近ですが、おそらく児童文学の歴史に残る大作でしょう。
一部、二部を読んだ時点で、もし三部でコケてもすべて許せる! と思わせるくらい魅力的だったのがダイモンという存在。生まれた時からくっついてくる分身のような存在で、動物や虫の形をしています。話し相手にもなるし、けっこう減らず口だったりも…。子どもの頃は自由に姿を変えますが、大人になるとその人の本質を表わすような姿に固定され、もう変わることはありません。自分にダイモンがいたらどんな姿をしているのか、と考えるのもまた一興。おすすめです。
*************************************


横浜遠征1月27日(ZAIM「東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了制作展」、IKEA港北店)

2008-02-05 02:36:38 | アートなど
先週、1月27日は、横浜で1つの展示と1つの店舗に行って参りました。

まずは行ったものメモ。のちほど書き足します。

・ZAIM「東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了制作展」
 東京藝術大学大学院の美術研究科、先端芸術表現専攻の修了制作展。学部生の卒業制作展同様、はじめての横浜での展示とのこと。28名による多彩な表現が提示されていました。修士課程だけあって作品表現の作家性が確立されている展示が多かったように感じました。
 こちらものちほど短評メモを書き足します。

・IKEA港北店
 北欧の家具メーカーIKEAの横浜港北店。新横浜駅からシャトルバスあり。
 前々から行ってみたかったので、ここぞとばかりに足を運びました。
 店舗スタイルとスケールの大きさに度肝を抜かれ、量産商品の機能的デザインや考え抜かれた店内システムに感心。
 今回は時間がなくて駆け足でしたが、一度ゆっくり一日かけて訪れてみたいと思いました。
 東北(特に宮城あたり)にも進出してくれることを期待。