はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

札幌遠征3/29。(ポツネン『DROP』ネタバレ含)

2008-03-30 09:56:02 | アートなど
昨日3月29日土曜日は、札幌のかでる2.7で上演されている舞台「KENTARO KOBAYASHI SOLO LIVE POTSUNEN 『DROP』」の13時公演および18時公演を観て参りました。

短評はのちほど学会のほうへ上げるとして、とりあえず手短に雑感的総評。
以下、たたんでおきます。
ポツネン2005とポツネンmaruが連続したひとつづきのものを便宜的に区切った作品対であったとすると、今回の「DROP」は、別方向からの付け足し的な再話であると思えました。
具象としてのモノを多用するなど、今までとの方向性の違いを感じます。
技術的ハードルを上げていて、果敢なチャレンジ精神は感じられるものの、しかし、作品としての強度がそれに釣り合っていない印象を受けました。
一言でいうなら『もったいない』。
fun なおかしみはあるけれど、interest な面白さがモノに頼って影をひそめていたように思え、私にとっては残念でした。
比較すべきではないかもしれませんが、これでは先日観たフキコシ・ソロ・アクト・ライブに軍配を上げたくなります。

ちなみに、細かいモチーフや言葉運びは小林氏らしさにあふれたものであったかと思います。
ただ、作品を収斂させるポイントが見出せず散漫な印象がぬぐえないような気がしました。モノを媒体にした緩やかな連続性が提示されていましたので、ひょっとするとこれも『DROP』という題名の原義から導き出される演出の一部であったのかもしれません。
総じて今回の公演では小林賢太郎氏の「作品」に興味がある向きは物足りなさを感じるかもしれません。が、逆を言えば、今作は氏の作品のひとつの変遷過程として一見の価値があるのかもしれません。
全体的に新しい何かを模索している途上なのかと思える印象もあったので、次作が非常に楽しみです。



ユキチャン号勝利!

2008-03-29 15:40:44 | インポート
中央競馬会に所属する白毛の競走馬ユキチャン号が、本日29日中山第9レースで見事2勝目を上げたようです! やった!

なかなかの好成績。繁殖馬としての未来も夢じゃないかもしれません。

以上、嬉しすぎたので久々に携帯からお送りしてみました。 おそまつ。


「刑事の現場」に小松和重氏。

2008-03-15 22:46:00 | さもないこと
NHKで放映中の土曜ドラマ「刑事の現場」を見ていたところ、なんとサモアリの小松和重氏が出演!
突然の登場に驚くとともに、思わずなごんでしまいました。
録画していればよかったと後悔。
再放送は未定のようですが、気長に待ちたいと思います。
今回は第3話第2話。
全4話ゆえ残りは1話だけあと半分ですが、ドラマ自体も面白いのでなかなかのおすすめです。


イッセー尾形のとまらない生活2008 in 仙台。

2008-03-09 22:47:57 | 日記・エッセイ・コラム
昨日3月8日は、仙台市広瀬文化センターで上演されていた「イッセー尾形のとまらない生活2008 in 仙台」の19時公演を観て参りました。

私にとっての初イッセー尾形氏。想像どおりに良質の舞台でした。
強烈な個性を持った人々の日常を切り取った、抱腹絶倒ながらどこか人間の持つ業のようなもの悲しさも漂う一人芝居。老若男女7人を1人づつ演じ分けてゆくさまは、観ていて感心しきりでした。
巷には都市の理論に立脚した作品が多い中、イッセー氏の作品は日本国内どこでも通用するユニバーサルな視点を持っているように感じられ、その点においてとても嬉しく思えました。
おそらくこれは、十数分に濃縮された舞台が人間の個性そのものを見つめ、表現しているからではないかと推察されます。いっけんシチュエーションコメディのように見えますが、その人間のおかれた環境や文化的背景、育ってきた環境などが滲み出る内容でありながら、究極的には人間の置かれたシチュエーションを描いているのでなく、そこ描かれる人間の個性を描き出すにふさわしい状況を利用して人間そのものの性を提示しているのではないかという印象を受けました。
感得することの多い舞台。機会があればまたぜひ拝見したいです。

以下、軽く短評メモ。ネタバレになるので畳んでおきます。
題は勝手につけたもの。気が向いたら詳細を書き足します。

1 空港のカツカレー
 急遽熊本出張へ行くことになった中年男。空港のコーヒーショップでカツカレーを注文するが、たびたびかかってくる電話によって翻弄されるさまを描く。

2 喫茶フジ
 友人に頼まれて急遽喫茶店の店番をすることになった老婦人。モーニングセット目当てに来店する客との頓珍漢なやり取りを描く。

3 月見坂
 町内会の旅行で孫とともに中尊寺にやってきた老人。坂に難儀しながら登ってゆく道中、愚痴と挙げ足取りの人生をふいに見直すできごとが起こる。妄想と内省のあわいを描いた悲喜こもごもが展開。

4 白ギツネ
 ひなびた温泉ホテルに配置換えされた若者。田舎のギャップに愚痴をこぼしつつ客たちと交流するうち何かに目覚めるさまを描く。

5 ショータイム
 場末のバーで働く高齢ホステスヒトミちゃん。セメント工のヌズスさんに指名を受けて、客を楽しませようとあれこれ微妙なトークと特技を展開するさまを描く。芭蕉の俳句メドレーで歌い上げたブルース演歌が秀逸。

6 内田さん家
 素封家らしき内田家へ子供とともに招かれた、べらんめえな粗忽者荒川。荒川父の育ちのギャップと早とちりな性格から巻き起こる騒動を描く。

7 琵琶
 未婚女性の谷口。帰宅するなり会社でのストレスを琵琶に託して熱く歌い上げる。『天涯孤独の進化論』やエレキ的な奏法が鮮烈。

屈辱。

2008-03-07 07:23:00 | さもないこと
出張講義で出かけたら、本番直前にプロジェクターが故障。
スライド資料を配ると講義を受ける側の集中力が削がれるので、今まではいつも、内容についてストーリー立てをしたスライドで解説をし、最後に要点をまとめた資料を配る、という方式をとっていた。
こちらもスライド内容を見ながら時計を見つつフリースタイルで喋る、という方式。
つまり、逆に言えばスライドがないと喋れない状態。
しかたがないので40人ほどの受講者に近寄ってもらって12インチのiBook画面で講義をやった。
人生初。
見えない部分は喋りで補ったつもりではあるが、きちんと伝わったかどうか不安。
非常に悔しい。
スライド配布資料は保険として用意したほうが良いのかもしれないと思った。

それはそれとして、ノートパソコンで膝突き合わせて講義というのは相当笑える光景だったに違いない。
人数が少なかったのは唯一の救い。


実用のなかのクラクラ映像。

2008-03-05 19:46:20 | アートなど
津田道子氏のブログ2dalogで知った、NHKの動くカラーバー。
単なるチェック信号のはずなのに見ていてドキドキしてしまいます。
ある意味モーショングラフィック。クラクラです。
著作物性はないはずなので直接映像を貼り付けておきます。

</object>


なお、津田さんの作品もドキュメント映像として公開されているので、クラクラ映像が好きな方はそちらも併せてどうぞ。
http://www.2da.jp/2da/ja/work/ksad.html


フキコシ・ソロ・アクト・ライブ「『タイトル未定』-この公演のタイトルはタイトル未定です-」仙台公演。

2008-03-04 01:38:00 | アートなど
昨日3月3日は、仙台市民会館小ホールで上演されていた「フキコシ・ソロ・アクト・ライブ『タイトル未定』」19時公演を見て参りました。
俳優吹越満氏の独壇場ともいえる単独公演。ご本人曰く『不定期な定期公演』とのことですが、ここ数年は年に1回コンスタントに新作が上演されています。私は2年前に何となく見に行った17回公演「Mr.モーションピクチャー」のあまりの素晴らしさに衝撃を受け、それ以来毎回楽しみに足を運ぶようになりました。
前回の「XVIII」に続く今回。その公演タイトルはなんと「タイトル未定」。
しかも『この公演のタイトルはタイトル未定です』と副題のつく念の入れよう。
いったいどんな舞台になるかと思っていたところ、タイトルをふまえつつ、さらにその予想をはるかに上回る内容でございました。
場内感動と爆笑の嵐。毎度ながら少々の下ネタも含まれますが、文句なしで素晴らしい舞台でした。
詳細は後述しますが、見ていて今回ふと気付いたことを少々。

見ていていつも思うのが、このフキコシ・ソロ・アクト・ライブは、もはやインスタレーションアートなのではないかということです。
殊に毎回趣向を変えて繰り出してくるオープニングの舞台装置は完全に光のインスタレーションとして成立していると思います。
プロジェクションやキャプチャ、レイヤースクリーン、CG、スライドショー、映像との同期、などなど、多くのメディア映像技術を取り入れつつ、しかし、あくまで身体表現や日常目線にこだわっていることを考えると、吹越満氏は映像と身体表現との接点を模索している表現者なのではないかという印象を受けました。

老若男女問わず楽しめる舞台です。笑い嗜好の方、芝居好きの方、パントマイム好きの方、くだらないモノ好きの方、メディアアート好きの方、マジック好きの方には特におすすめです。
コンドルズ、ラーメンズ、水と油、piper、後藤ひろひと、これらの名前にひとつでもピンときた方はぜひとも一度観ておくことをおすすめしたいです(笑)。
仙台の後は大阪(3/5)、名古屋(3/6)、札幌(3/17)、焼津(3/21)、広島(3/24)、松山(3/26)、福岡(3/28)と全国各地を回る模様ですので、お近くの方はぜひ。おすすめです。
なお、公演詳細はこちらのサイトhttp://www.stage-mura.jp/archives/category/stage/fukikoshi/でご確認を。

そういえば、会場では昨年の公演『XVIII』のDVDが販売されていました。
amazonで引いたらヒットしたので上げておきます。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000UYBLM2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

ついでに一昨年の『Mr.モーションピクチャー』も。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000ICLNOW&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
映像に収録されていない内容もありますが、フキコシ・ソロ・アクト・ライブに興味のある方はぜひ。

以下、今回公演の短評メモ。完全なネタバレですので未見の方はご注意を。
とりあえず一覧。のちほど書き足します。

1 ケータイ注意~オープニング~タイトル決定
 薄布による2枚のレイヤースクリーンと鏡、前後二方向からの光源によるアナログなキャプション投影。まるでインスタレーション。
 客席側からの照明を鏡に反射した光がフロントスクリーンを照らし、そこだけ鏡の形そのままにスポットライトが当たっているような効果が得られる。その鏡にマーカーで文字を書くことで、文字部分だけが光を反射しなくなり、文字がそのまま影=キャプションとして写し出される。
 この舞台装置上で以下のシークエンスが展開する。

a. ケータイ切った?というメッセージを文末から逆に提示。加えて、遅刻者へ『すわった?』『プンプんよ!!』などと揶揄。
b. 鏡で反射した光の文字を舞台側から客席側へスクリーン照射→その文字をキャプチャした映像を前面から奥へと投影→元からあった文字とぴったり重ねて、鏡の文字と入れ替える、という操作を繰り返しながらタイトル等を示してゆく。
c. 『タイトル未定』という芝居を見に行った男が困る寸劇を展開→タイトルが必要なので決めます、と宣言。会場の2人に好きな食べ物を訊ね、そのうち一方をタイトルにする。仙台公演タイトルは「さかな」。考えてくれた人はホンゴウさん。(対抗案は「肉じゃが」)
d. 決定タイトルを鏡に手書きし、それをふたたびスクリーンへ投影。

2 無対象の世界
 『表現』することではじめて対象が存在する世界に暮らす家族をひとりで演じたコント。
 パントマイムのように身体や音声で物体を表現するとそれが『無対象』として具現化する世界に住む3人家族の、何気ない朝の風景を描く。
 『表現することでそう見える』のではなく、あくまで『目には見えないけれど表現した通りに対象がそこへ生じている』のが無対象の世界。ややこしくも可笑しくて面白い。
 そのややこしい世界で父母息子の3役を演じ分けつつ『無対象』を表現する吹越氏にはただただ脱帽。

3 物の状態に関する質問
 舞台上に不可解な状況が示され、その状況に至った経緯を解釈して寸劇で表現する課題が吹越氏に課せられるという趣向。
 不正解だとブザー音、正解するとチャイム音が鳴り響く。
 今回の課題は「テーブルの上にトレッキングシューズが片足分だけ倒れて置かれている」という状況。
 『あした天気になあれ』と飛ばした靴が乗ってしまった(不正解)
 崖につかまっている男の手を踏んでいる足に向かって『俺をここから落すつもりか!』(不正解)
 黙秘を続ける容疑者に証拠の靴を持ってきた刑事(不正解)
 ゴキブリたたき(不正解)
 火星着陸(不正解のブザー連呼)
 よっぱらいがお土産と間違って持ってきた(正解)
 
4 幕間(逃げる帽子とペットボトル)
 帽子をかぶってペットボトルのお茶を飲む、という動作の途中に一瞬照明が消えると、その間に帽子やペットボトルが想定外の位置へ移動している。その様子がまるで帽子やペットボトルに逃げられているように見える、というパフォーマンス。
 間に闇をはさむことで、連続していないことがらがあたかも連続しているように見える。コマ撮りアニメの原理をそのまま身体と照明を使って舞台上で再現した表現。シンプルながら秀逸。

5 仕草をデコレーションする装飾店

6 物の状態に関する質問 第2問

7 物の状態に関する質問 第3問

8 白鳥の湖 掃除の情景

9 不完全なタイトル

10 劇団名前

11 命をかけた芝居

12 エンディング

おまけ ボツネタコーナー

「ライラの冒険 黄金の羅針盤」。

2008-03-02 02:01:09 | アートなど
昨日3月1日は映画を1本観て参りました。

ふと気付いたらこの日は1st Day。映画1000円均一の日です。
せっかくなのでこの日封切りの「ライラの冒険 黄金の羅針盤」を観ようと外に出てみればあいにくの猛吹雪。
一瞬気を削がれたものの、やはり行っておこうとホワイトアウトした道を運転しながら映画館へ遠征しました。

プルマンの原作は3部作とも読んだことがあり、それなりに評価してはおりますが、それほど思い入れはないほうです。(ダイモンという概念には大いに惹かれていますが:笑)ゆえにそれほど構えることなく映画を観ることができました。

感想はといえば、一言で言うなら「無難」。
冒険物語としての側面がわかりやすく強調されており、特に子供たちを意識して作られたのかなといった印象を受けました。感情を揺さぶられるような部分がすっぽり抜け落ちている感じです。そのためか、主人公であるはずのライラの主体性が全般的に希薄になっている印象。殊に、原作では衝撃的悲劇の中からの再起、という形で終了した第1部が、映画ではハッピーエンドで締めくくられていたため、ライラの選択が示されず、次作への期待感がそれほど惹起されませんでした。この先どうなるの?というワクワク感がない、とでもいいましょうか。
ダストや教権やダイモンその他もろもろの謎が前面に押し出されなかったのも残念。謎がなければこの作品の魅力と牽引力は半減してしまいそうな気がして、ちょっと残念に思えました。
いっぽうで、映像的な部分は文句無く素晴らしい。
殊にダイモンの描き方がとても自然で好感が持てました。
また、頻出する動物たちの造形と動力機械の美術センスが最高。
動物好きや古典的な機械好きなら、これを観られるだけでも損はないかもしれません。
冒頭で第3部まであることが明言されるのも好印象。
あまりにも大風呂敷な原作をうまくまとめ上げるのはそもそもハードルが高すぎるので、ストーリー構成に対しては期待していませんが、これからの2作ぶんあわせてぜひ最後まで見届けてみたい映画だと思いました。

ところで、事前情報を仕入れずに観たのでイオレクの声がサー・イアン・マッケランだとは知らず。
何だか聞き覚えのある声だなあと思っていたところ、エンドロールでのけぞりました(笑)。