はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">スタジオジブリの「ゲド戦記」。</font>

2006-07-30 23:53:58 | さもないこと
東京帰り、思ったより早い新幹線に乗れたので、思いつきでスタジオジブリの映画「ゲド戦記」を観て参りました。
絵は綺麗で技術もすごい。
が、しかし、私にとってはあまり心に響かない作品でした。
原作は切り離して考えても、とにかく作品のトーンがばらばらに感じられて、見ていて何だか恥ずかしかったです。
悪くはないのですが、なんとも形容に困る作品だと思いました。



<font size="-3">東京遠征7/30。</font>

2006-07-30 23:33:42 | アートなど
上京最終日の今日は、美術関連の展示をふたつ見て参りました。

まずは、品川の原美術館で開催中の「束芋 ヨロヨロン」。(原美術館のサイトは→こちら 重いサイトなのでナローバンドの方は注意。)
先週トップランナーで取り上げられたためもあってか、開館時間直後だというのに大盛況のにぎわいでした。
代表作「日本の台所」をはじめ、新作「公衆便女」など、6つのインスタレーションと複数のドローイングが展示されていました。
日本の都市文化と身体へのグロテスクな視点が特徴的。非常に個性的なアニメーションが、これまた個性的な舞台装置の中で映写されている作品群は圧巻。
今回の展示を見て、5年前の横浜トリエンナーレ2001で赤レンガ倉庫会場にあった作品が束芋氏の作品「日本の通勤快速」であったことに今更ながら気付きました。当時は名前をまったく意識していませんでしたが、斬新な舞台装置が印象的だったことはよく憶えていたのです。
毒を含む表現も特徴の一つ。一度見たら忘れられないこと請け合いです。
ところで、この展示を見ていて感じたのが、束芋氏は生命をグロテスクなものとして捉えているのではないか、ということです。たとえば頻出する身体パーツのモチーフ。変容を伴い、常に過剰なほどに生々しく表現されています。この方の根源的な意識では身体組織は気味の悪いものとして理解されているのかな、という印象を受けました。
そこでふと思ったのが、生物学における生命現象の描写との対比です。たとえば日常的にナマの組織や臓器を扱っている臨床家にとっては、生体組織は『システマティックで驚きに満ちた柔軟で美しいもの』として認識されていることが多いと思います。術野メモなどもリアルはリアルなのですがどこか無機的な印象を受けること多々。生々しい現実の生体を見ている人間よりも、イメージとして生体を想像している人間のほうが過剰な生々しさを描いてしまう不思議。面白い逆転現象だと思いました。
生命の受け取り方も人それぞれなのだなと感じ、少々釈然としない気分になりました。

さて、次に訪れたのは丸の内の宮内庁三の丸尚蔵館で開催中の「江戸の花鳥画 若冲を中心に」第4期展示。
今期は伊藤若冲の動植綵絵30幅のうち6幅と、「旭日鳳凰図」、そして酒井抱一の「花鳥十二ヶ月絵」などが展示されていました。
「動植綵絵」6幅の内訳は以下の通り。
「老松白鳳図」「向日葵雄鶏図」「大鶏雌雄図」「群鶏図」「池辺群虫図」「貝甲図」。
前回の第3期展示でも圧巻!だった若冲ですが、今回の展示もまたひときわとんでもない描写の傑作揃い。
「群鶏図」では呆れるほどのディティールとデフォルメーションにクラクラし、これは絶対に生物そのもに興味を持っていないと描きようがないに違いない、と思っていたら、「池辺群虫図」で完全に不意打ちをくらいました。
昆虫、節足動物、両生類、爬虫類・・・・。
ありとあらゆる虫たちが配された画面。蝶やトンボ、バッタ、蛙はまあいいとしましょう。しかし、画面下に目をやれば、なんとハサミムシやカマドウマ、オケラやゲジゲジまでいるではありませんか。
これら目にした瞬間、思わず涙が出そうになりました。本気で感動してしまったからです。
いわゆる不快昆虫、害虫と称される生き物たち。しかしその描かれ方は精緻にして的確。気味悪さを強調するようなこともありません。華やかな昆虫たちと何ら差別されることなく対等に描かれています。
『これはもう、本物だ。』と思いました。生物への愛情と的確なまなざし。こんな視点を持って絵を描いている人間が日本にいたという事実にすっかり嬉しくなってしまいました。
生物学に携わるすべての人間は、若冲の「池辺群虫図」を見ておくべきだと思います。いや、冗談ごとではなく本当にそう思います。
四の五の悩む余地なくただ単純に、生命は驚異に満ちた素晴らしいものだ!ということがすこーんと伝わってきます。
束芋氏の作品を見て釈然としなくなっていた気分をいちどにひっくり返してくれました。
思いついて、作中の生物たちの種類をメモしてきました。
私が認識できた種を以下列挙。
ジョロウグモ、クロアゲハ、シャクトリムシ、タテハの幼虫、アゲハ(春タイプ)、クロイトトンボ、オニヤンマ、カナブン、アブラゼミ、アキアカネ、ヒョウタンムシ、ヤマカガシ、ショウリョウバッタ、トノサマガエル、ガマガエル、アマガエル(灰色に擬態したもの)、アカハライモリ、トカゲ、カナヘビ、カブトムシ、オタマジャクシ、ナメクジ、カタツムリ、スズメガの幼虫、キリギリス、ウマオイ、スイッチョン、カマキリ、ミノムシ、カマドウマ、コオロギ、ハサミムシ、ゲジゲジ、ヤスデ、ムカデ、ジグモ、オケラ、ミミズ、クロヤマアリ、アブ、ハエ、トノサマバッタ、マルハナバチ、ヒシバッタ、モンシロチョウ、ジガバチ、ホタル・・・・・。
このように、尋常じゃありません。
虫好き必見です。

「貝甲図」もすごかった。若冲さん、なんでこの貝を知っているんですか?と問いたくなるような種類の貝までが、とにかくこと細かに描かれているのです。画面右端にツノガイを発見したときは、驚きを通り越して思わず笑ってしまいました。降参です。
陸前高田市の貝のミュージアムは、この「貝甲図」のレプリカを飾っておくべきだと思います(笑)。
そういえば、会場でたまたま一緒になった学生さんらしき二人連れ。自ら日本画を描かれるのでしょうか、単眼鏡で絵を観察しながらしきりに「すげー! 花の上の蜂、すっげー綺麗! 切れがある!」「あの羽根! ありえない! ありえない! おかしいよ、この人!」と絶賛していたのが印象的でした。この方々のコメントには私も同感です(笑)。

見るたびに新たな感動を生む若冲の「動植綵絵」。1期と2期を見逃したことが悔やまれてなりませんが、残りの第5期を楽しみにしたいと思います。
なお、「池辺群虫図」が見られる第4期は8月の6日まで。
少しでも興味のある方はぜひ足を運ぶべき! どうぞお見逃しなく!

ちなみに、ラーメンズの第11回公演「Cherry Blossom Front 345」のフライヤーに使われている絵は、この「池辺群虫図」をモチーフにしたパロディーだと思うのですが、言及されている方を見かけないので気になっています。どなたかご意見をお聞かせいただければ幸いです。

一昨日、上野の国立博物館でも若冲関連の展示(プライスコレクション)を見てきたわけなのですが、若冲の作品を見るのが目的ならば三の丸尚蔵館の展示に軍配を上げたいです。とにかくひとつひとつの作品の密度が濃い。不自然に混むこともありませんし環境も快適。
あまり宣伝されていませんので、本当に見たい人が見に来ているといった印象を受けます。
若冲のとんでもない絵をじっくり見たい方には上野よりもこちらがおすすめです。



<font size="-3">東京経由横浜遠征7/29。</font>

2006-07-30 01:15:03 | アートなど
昨日7月29日は、東京で芝居一つと横浜で展示を少し、そして友人との会食を楽しんで参りました。

まずは、東京下北沢駅前劇場で上演中の QC3000「脳内DISCO bug」14時公演。
オクイシュージ氏の放つ、アドリブと台本の境界融合を目指したコント集です。
私は久ヶ沢徹氏ご出演ということで足を運びましたが、期待以上の臨場感に満ちた舞台にニヤリ。どのようなゆらぎを持っていたのか、複数回見届けられないのが残念でなりません。
存在感のある空気を持った5人の役者さんたち。気になる存在が増えてしまいました。(そして、佐藤貴史氏はほんの少しだけ音尾琢真氏と似ているような気がしたのは私だけでしょうか。)
ところで最近、いろいろな創作物を見ていて感じるのが、都市生活に立脚した文脈が非常に多いということです。制作者が都市で生活している以上あたりまえのことなのかもしれませんが、なにか世の中の落とし穴を象徴しているようで釈然としない気分になります。もう少しひきつづき考えてみたい問題です。

さて、次に、横浜の新港地区で開催中の「OPEN STUDIO Vol.2」 のリベンジ鑑賞。前回見逃した数作品を滑り込みで拝見してきました。
気付いてみれば『なぜ前回気付かなかったのだろう』という映写位置。ひょっとすると、柱の出っ張りが前回の私の立ち位置からの視界を偶然塞いでいたのかもしれません。なお、見逃していたのはスライドショー作品3つ。以下ひとくち感想&勝手な解釈。
「bottom line」 : 視点対象の固定と周囲の変化。変わらないものと変わるもの。潔い。
「風景の箱」 : 風景をXYZ軸から捕捉し、直方体として表現。非常に面白い。とても好きな作品です。
「ビヴラート」 : 床面すれすれに映写される小さな小さな扉。まるで異界にでも通じていそうに見えてしまいます。縮尺が変わるだけでこんなにも印象が変わる不思議を実感。大好きな作品です。書庫の片隅にでもこっそり映写しておきたいなあと夢想してしまいました(笑)。

bottom lineにニヤリとし、風景の箱に感心し、ビヴラートに心をつかまれました。あぶなく見逃すところだったこれらの作品、出会えて本当に良かったと思います。
ふと思い返せば、私は極端な縮尺の、小さな作品が好きなようです。三重県立美術館で階段の隅にみかけた小さな小さな螺旋階段のオブジェ。横浜トリエンナーレ2001でみかけた小さな小さな扉。昨年のトリエンナーレ2005で観たさわひらき氏の映像作品「trail」。そして、今回拝見した扉の映写作品「ビヴラート」。いずれも、別世界や別の規範の気配を感じさせてくれるとでもいいましょうか。どこか懐かしさと憧れを惹起させるような心地良さを与えてくれる作品だと思うのです。
小動物たちを見ていても感じることですが、小さなものに宿る存在感は、独特の確固たる世界を築き得る要素なんではないかと思えます。

さて、最後に大学時代の友人と久々の会食。
話題は多岐に。以下、特に面白かったことだけキーワードで。
西ナイル熱と日本脳炎の抗体交差性について。
アメリカのBSEリスク評価の恣意性について。
プリオンの立体構造について。
鳥インフルエンザのバックミューテーションリスクと暴露群のポピュレーションについて。
パンダちゃん展について。
仔パンダの可愛らしさがズルすぎることについて。
クマの体重測定について。
イタリアのスリについて。
サラリーマンNEOについて。
ヨコハマEIZONEについて。

これだけ広範囲に話の通じる友人に感謝。
ごくごく個人的に嬉しいことも多く、たいそう充実した本日でした。



<font size="-3">4.5g × 39。(横浜小ネタ第3弾)</font>

2006-07-25 21:37:19 | さもないこと
みなとみらい線の馬車道駅構内の自販機で水を買いました。
140円の商品を買うため、540円を投入。
予想されるおつりは100円玉4枚。
ところが。
がたん、と商品が落ちるとともに、『かしゃん、かしゃん、かしゃん、かしゃん、かしゃん・・・・』と おつりの音。
ん? 十円玉が混じったか? と思っていましたが、音はいっこうに止む気配がありません。
待つこと数十秒。
結果はこのとおり。
Juuyenhazard01Juuyenhazard04
が~ん。
しかも、何だかおかしいと数えてみたところ、39枚しかありません。
10円足りない!
軽いショックを覚えながらふと自販機を見ると、商品取り出し口から何かが覗いています。
Juuyenhazard03むむっ、コントローラーではありませんか。
ひょっとしてメンテナンス不備かと思い、前面に記載されていたコールセンターへ問い合わせてみました。
「すみません、おつりが足りない場合の連絡先はこちらの番号でいいのでしょうか?」
「足りないのは10円だけなんですが・・・」
「540円を入れて140円の商品を買いましたら、おつりが390円しか・・・」
「ええと、全部十円玉で出てきまして・・・」
「それでよく見ると、商品取り出し口からリモコンのようなものが出ていまして・・・このマシン、制御は大丈夫なんでしょうか?」
オペレーターさん、面食らった様子で『至急技術者を向かわせます』とのこと。
足りない10円は現金書留で送る規定になっているそうで、不本意ながら大いなる浪費の片棒をかついでしまいました。
いやあしかし、こんなこともあるものなんですね。
驚きましたが、コントみたいでちょっぴり面白かったです。




<font size="-3">ハマのスズメ。(横浜小ネタ第2弾)</font>

2006-07-25 20:46:04 | さもないこと
Suzume03
ZAIM別館付近のカフェでみかけたスズメ。
警戒心の強いはずのスズメが、ここではありえないほど近くに寄ってきました。
ドバトと対抗して足下でパン屑拾い。

<script type="text/javascript" src="http://www.flipclip.net/js/85c2946917ac4561711ada699aa2560d" ></script><noscript>ハマのスズメ Powered by FlipClip</noscript>
ハマのスズメ
by aiwendil


テーブルの上のパン屑を取りにきた個体も。
ハトでもできない早業でした。
手を伸ばせば届くほどの距離。
都会への適応ぶりに驚きました。
健康な野生のスズメをこんなに間近で見たことがなかったので、すかさず撮影、撮影。
アップの表情にホクホクです。
(好きなんです、スズメ。)

Suzume02


<font size="-3">エスカレーターの中身。(横浜小ネタ第1弾)</font>

2006-07-25 20:24:14 | さもないこと
みなとみらい駅でみかけたエスカレーターです。
(音声つき。ご注意ください。)

<script type="text/javascript" src="http://www.flipclip.net/js/809e7b59ec82bb8dbd6e730b0a98c8ee" ></script><noscript>エスカレーターの中身 Powered by FlipClip</noscript>
エスカレーターの中身
by aiwendil


画像が粗くなってわかりにくいですが、中が透けて見えるので、エスカレーターのしくみがわかります。
登ってゆく段と裏側で下って来る段。その真ん中でぐるぐる回って段を動かしているモーター。
あたりまえのことなのですが、エスカレーターの裏側が人が乗る表側と同じ速度で逆向きに戻ってきている様子に妙に感動してしまいました。
今てっぺんにある段と乗る手前にある段はいつも一緒のペア。
ふたつの段がすれ違う場所もいつも一緒。
厳密に規定されている永遠の回転。
う~ん、なんだかクラクラしていまいます(笑)。



<font size="-3">横浜遠征7/23。</font>

2006-07-23 23:57:16 | アートなど
昨日に引き続き、横浜で開催中のヨコハマEIZONEへ行って参りました。
まずはZAIM。
昨日購入したチケットで入館。
行ってみると、いろいろな展示が各階で行われているという、まるで文化祭のような形態でした。
印象に残っているものだけ以下抜粋で。
・伊藤有壱 I TOON'S CAFE クレイアニメーション作家として知られる伊藤氏の展示。実際に撮影に使われた造形物が惜しげなく並べられていました。「ニャッキ!」や「グラスホッパー物語」などのセットもあって、実物は思ったよりも大きいことを知りました。他にも伊藤氏の事務所I TOONが手がけたCMなど、映像作品を上映するコーナーもあって、なかなか贅沢な作りになっていたと思います。
・明和電機 製品プロモーション映像のカット割りコンテ展示と、その実例である「魚器図鑑」映像が上映されていました。一部の量販製品展示もあり。カット割りコンテは、音楽のタイムラインに沿って厳密に時間と映像が管理されている様子を知ることができ、とても面白かったです。画像イメージを書き込むの四角い枠、リズムや歌詞を書いゆく時間進行枠、カットにおける注意事項やテロップを書き込むノート枠。とても機能的な書式デザインです。作る映像によってカット割りを書き込んでゆく様式が微妙に変わっているのにも興味を覚えました。
・デジスタ・アウォード 歴代受賞作品展 その名のとおり、NHK BS2で放映されているデジタルスタジアムの受賞作を集めた作品展。選りすぐりだけあって、とても見ごたえがありました。嬉しかったのが、実物を見てみたかった鈴木太朗氏の「青の軌跡」を拝見できたこと。観客が他にほとんどいなかったので、ほぼ独占状態で見ることができました。今年の4月15日に京橋で「大気のかたち」を観に行ったとき、会場でこの「青の軌跡」の映像が流れていたのですが、ご本人もおっしゃっていたように映像と実物とでは見え方がまるっきり違うことを実感。やはり実物作品の持つ質感と繊細さは、映像では到底再現しきれるものではありません。ぜひぜひ多くの方に訪れて観ていただきたい作品だと思いました。
 他に度肝を抜かれたのが間瀬実郎、AC部、小松好幸3氏のコラボレートによる「3D Table Theater」。アクリル板の反射を利用し、4つの階層に分割した映像を遠近法的に重ね合わせることによって、驚くほど立体的な映像が立ち現れる作品です。しくみは明快ですが、そのしくみから生み出される表現には原理だけでは説明できない感動が生まれているように思います。殊に、モノクロで構成された映像がとても美しく、いつまでもぼおっと眺めていました。
 鈴木康広氏の「遊具の透視法」も衝撃的な美しさでした。見た目にも美しいけれど、なにより概念的に美しすぎます。物理的には存在しない球形のスクリーン。それなのにたしかに映像は存在する。いわば人間の脳内にのみ見える世界の呈示。真横から見た時の左右反転映像にもかなりドキドキしてしまいました。
 映像作品はひと通り見たのですが、多くが都市の理論で私情を綴ったもののように感じられてしまって、いまひとつ私の心には響きませんでした。そんな中で妙に惹かれたのが近藤聡乃氏の「電車かもしれない」。

(途中休筆。のちほど書き足します。)



<font size="-3">東京経由横浜遠征7/22。</font>

2006-07-22 23:55:17 | アートなど
本日は、東京銀座を経由し、横浜でアート関連の展示を2カ所観て参りました。
まず、銀座の「月光荘」へ。
水彩画材用ちびバッグの使い心地が良かったので、ふだんも使えるサイズのかばんを新調。
リュックにもなる肩掛けタイプを連れ帰りました。
唯一の欠点はA4版サイズの紙が入らないことですが、それを差し引いてもとても便利。
さっそく愛用しています。
これでポケットの無い服を着ることができます(笑)。
ユーモアカードの新作展示があったので、ギャラリーも拝見。
独特のトーンあふれるカードたちにニヤリ。

次に訪れたのは、横浜のみなとみらい21新港地区にある東京藝術大学大学院新港校舎。映像研究科のOPEN STUDIO Vol.2を見るためです。
横浜を舞台にした映像芸術の祭典「ヨコハマEIZONE」とタイアップする形で、催しの期間中にラボの研究成果が作品展示という形で広く一般公開されています。
正直、少々見くびっておりました。観賞時間は1~2時間あれば充分だろうと。
ところが。
フタを開けてみれば大間違い。
非常に『濃い』のです。
研究科を率いる教授陣4名と16名の学生さんたちが、科が開講されてからの3ヶ月間、どのようなことを学び、実践してきたか。授業のコンセプトや概要とともに、その成果としての作品群が惜しげも無く展示されておりました。
まず感心したのが、それぞれの教授の持ち味を活かした授業カリキュラム。
エントランスのギャラリーには、各教授の授業と演習の内容が時系列順に示されており、その概要を知ることができます。
藤幡氏→佐藤氏→桐山氏→桂氏と、順を追って呈示される授業内容は、まるで獣医学でいうところの「基礎→応用→臨床」学習プロセスのように合理的。考え抜かれた構成に納得するやら感心するやら。
その授業で生み出された作品の一部がテーマごとに展示され、中には実際に触れたり体験したりできるものもありました。藤幡氏の担当したメディアアート演習課題と佐藤氏の担当したメディアデザイン演習課題だけでも独特の面白さに満ちた作品が十数作。それに加えて圧巻なのが、桂氏の担当した「インタビュー映像を撮影しエンドユーザーに届ける」という課題。教授4名それぞれにインタビューを行い、それを1教授あたり15分間程度のインタビュー映像として編集したものが実際に公開されていたわけなのですが、そのクオリティが高いのなんの。課題作品であることも忘れて魅入ってしまい、ごくごく普通に教授たちの話を傾聴し、いろいろな感銘を受けてすっかりテンションが上がりきってしまいました。
桐山氏の担当するIT関連課題にも非常に興味をそそられました。GPSとXMLを組み合わせたシステムの持つ可能性にはただただ感心するばかり。他分野での応用も考えられそうで、いろいろと想像が広がってしまいました。
他にも、桐山研究室の中が公開されていたり、授業の様子を紹介した映像があったりと、大学院の一端を窺い知れるようなコーナーも。総じてたいへんエキサイティングな、そして、とてもフレンドリーで開放的雰囲気にあふれたラボ公開でした。
メディアアートや面白い物好きな方々には文句無くおすすめです。
加えてICCや佐藤雅彦氏に興味がある方はぜひ足を運ぶべし! と声を大にして言いたいです。
私の場合、展示を余すところなく拝見したところ、結局3時間ほどかかってしまいました。
お出かけの際はぜひ時間に余裕を持ってゆかれることをおすすめします。

今回は本当に良いものを見せていただきました。日程を追加してまで行って良かったと心底思います。
お礼がわり(笑)に、以下憶えている限りの一作一感想+勝手な解釈コメントを。
1 入射角と反射角 : 物理運動の美しさが綺麗に視覚化されていたように思います。
2 音の原理 : いっけん不明な装置ですが、よく構造を見て理解し、さらに体験して驚くことで、強烈な印象を与える作品だと思います。シンプルかつハイクオリティ。すばらしいです。
3 振り子の原理 : 着眼点が非常に面白いと思いました。ただ、実際の映像ではタイムラグが出来てしまうのが唯一かつ最大の弱点ではないかとも思いました。惜しい。ぜひ改良版を見てみたいです。
4 train : 構造の持つ面白さが遺憾なく発揮された小品だと思います。どことなく漂う可愛らしさも微笑ましい。紙と線だけでこれだけの面白さが創出できる事実に勇気づけられた気がしました。
5 太陽と地球 : 視点の変換。鳥肌が立ちました。視点が変わる時のクラクラ感(まさに、コペルニクス的回転の具現化!)もさることながら、月視点のときの星々の軌跡がもう美しくて美しくて。大好きな作品です。
6 mouself : 切り離された要素。不思議な断絶感と同時に妙なユーモアを感じました。私には完全には理解しきれていないかもしれません。
7 台直しカンナ : 論理構造の視覚化。どこか騙されたような気になるのはきっと気のせい?
8 Blank : 純粋に面白いと思いました。あれだけで何なのかがかわかってしまうという事実。人間の認識がいかに上下方向に依存しているかの実例かもしれないと、何となく考えました。
9 指 : これも純粋に面白いと思った作品。音情報で映像選択性がはたらくことに驚きました。音とのシンクロで脳が勝手に映像を抽出してしまうという現象。非常に興味深いです。
10 前のまうしろ : 理解するのに頭の中を一回転させられたような気分になった映像です(笑)。反転の前後ろ。不思議なクラクラ感がありました。
11 Artificial Light : 配置位置が絶妙。驚きとともに目を惹き付けられ、しばらく見入ってしまいました。
12 ノート : 空白と補充。相対的な意味の変化。あらかじめ仕組みは解ってはいるのだけれど、実際に体験することでたしかに新鮮な驚きを味わいました。視覚情報が身体に与える影響について考えさせられました。
13 注視する鏡 : これも、解ってはいるけれど体験するとドキッとする映像だと思います。
14 dropping shadow : 位置情報の対応が醸し出す空気が面白い。なぜだか目が離せなくなりました。
16 風景の窓 : どこにあったのでしょう? 見つけられませんでした。残念。
19 「あ」 は iPod の 「あ」 : 同じく見つけられず。残念。
20 infloat : 文化的な価値・意味もさることながら、「浮遊する情報」のイメージに感動を覚えました。すばらしい技術、すばらしい概念だと思います。
21 ことば事典 : これから求められてゆく情報のフォーマットを呈示されているようで、不思議な感慨を覚えました。
22 パネル展示 : 心拍データを記録したプロジェクトがとても面白いと思いました。生命活動の情報を取り込むことで、データの中に独特の現実感が立ち現れるような気がします。
23 彩・二式 : 分解された色情報が、遠目には混合して元の色に再現するんだなあ、と、本質とは別のところで感心してしまいました。
教授陣のインタビュー映像 : もはや課題作品ということを忘れて見ていました。メッセージ、しっかりと届いていたと思います。
学生のインタビュー映像 : まっすぐだったり微笑ましかったり。「面接で『仲間を捜しに来た』と言って先生たちに爆笑された」と述べていた方のことが忘れられません(笑)。
授業の紹介映像 : こっそりハイクオリティ。小さなモニタで流しておくのがもったいないくらいの内容だと思います。学内の日常を切り取った映像は、見ていてドキドキが止まりませんでした。

ところで、今回拝見したインタビュー映像では先生たちのお話にいろいろ感得するところが大きかったわけですが、私にはとりわけ3つの言葉が心に残りました。
まず、佐藤氏の「本当はつまらないのに笑っているような現状、嘘ばっかりになっている世の中に、納得できる何かを呈示して体制内改革してゆきたい」という趣旨の言葉。ドキッとするほどの真っ当な言葉に思わず感動を覚えました。
二つ目は桐山氏の「各教授が持つ特色を組み合わせるための技術を提供してゆきたい」という趣旨の言葉。確かな技術を持つ者の、自信と謙虚さを兼ね備えた言葉に思えました。技術屋としての我が身を振り返りハッとさせられました。
最後に、藤幡氏の「job と work」をめぐる言葉。jobに追われてworkをリタイヤしてしまった自分のことに思い至り、やはりこれではいけない、と奮い立つような気持ちになりました。
いろいろな、本当にいろいろな意味で良い刺激をもらったOPEN STUDIO Vol.2。私にとっては限りなく貴重な体験だったと思います。

さて、最後にBankARTで開催中のEIZONE参加イベントEIZONE Media ART Marketおよび「地球」展。
EIZONE Media ART Marketは映像作品の販売市です。この会場とZAIMとの共通チケット(500円)で入場することができます。販売市が有料というと違和感を覚えるかもしれませんが、チケットには500円分の商品割引券がついてきますし、「地球」展や別会場の入場料も兼ねていますので、じつはものすごくお得なのです。
また、この会場では同時に「緑陰銀行Bamboo Bank 松本秋則展」という展示も公開されています。これ、竹で作られた不思議な楽器たちが竹林のようにそびえ、ときおり繊細で心地良い音色を響かせるというもの。これが非常に面白い。かしこに休憩スペースもあり、竹林を縫って壁に向かって投影されたプロジェクター映像の陰影をぼおっと見ているだけでも楽しい時間が過ごせました。
2階と3階の「地球」展はごくごくあっさり観てしまいましたが、地球と言語と境(ボーダー)を意識させる映像作品が6点。プライベートに立脚した作品は時間がなくてじっくり観ることができませんでしたが、メディア芸術祭で展示されていた作品と、インタラクティブ要素を加えた地軸操作作品が圧巻で興味を引かれました。
ふたたびArt Marketに戻ると、オープニングパーティーが始まっていて、なんとドリンクと立食形式の軽食が無料でふるまわれていました。私も少々ご相伴にあずかりました。
最後に、児玉裕一氏が関わるクラゲの映像と、山口情報芸術センターの日常カレンダーを購入。
ようやく馬車道を後にしたのは20時近く。都合7時間ほどの、密度の濃~い横浜滞在でした。
肝心のZAIMはまだ未見。あと1日でEIZONEを制覇できるのか不安ではありますが、明日も横浜を満喫しようと思います。



<font size="-3">「ハウルの動く城」に思うこと。</font>

2006-07-21 23:49:12 | さもないこと
テレビで放映されていた「ハウルの動く城」を漫然と観ました。
劇場で一度見て以来、2回目の観賞です。
あらてめて思ったのが、あまりに日本的・ジブリ的な文脈で作られた作品だなあということ。
国内で流通するぶんには申しぶんないと思うのですが、これが海外に対して輸出されることを考えるとちょっと恥ずかしいなと思ってしまいます。
英国のジョーンズファンに対して申し訳ないなあ、と、妙にいたたまれない気持ちになりました。
「原作」ではなく「原案」という表記にとどめることはできなかったのかなあと、次回作のゲド戦記のことを含め釈然としない気分です。



<font size="-3">フジテレビ「ニューデザインパラダイス」。</font>

2006-07-21 21:18:50 | お知らせ
いつもこっそり覗いているtsuru-turuさまの「Grass*Hopper」で教えていただいた情報です。
フジテレビで、こんな素敵番組が放映されていたようです。
その名も「ニューデザインパラダイス」。
(公式サイトは→こちら )
モノのデザインをテーマに毎回ゲストを迎えて日常品を新たな視点からデザインし直すという、いわばRe-Design番組とでもいいましょうか。
毎週金曜日深夜1時05分からの30分番組だそうです。
そして、紹介サイトを見てみれば、今回のゲストはOpenSky Projectでも知られる八谷和彦氏とのこと!
慌ててテレビ番組表を確認いたしました。
が。
が~ん。宮城県(仙台放送)での放映は無いようです。
・・・これはつまりフジテレビのローカル番組ということなのでしょうか。
ということで、首都圏にお住まいでデザインに興味のある向きは私の代わりにぜひ(笑)。
そして感想をお聞かせいただければ幸いです(笑)。



<font size="-3">文化庁メディア芸術祭10周年記念アンケート。</font>

2006-07-21 01:53:10 | お知らせ
文化庁メディア芸術祭は2007年に10周年を迎えるそうです。
その関連で10周年記念アンケートとして「日本のメディア芸術100選」が募集されています。
ひとり10作品まで投票可能。
たとえばアート部門ではリストにある作品だけ見てもすごいラインナップ。
岩井俊雄さんの作品だけでも5つもあります!
明和電機や藤幡正樹氏、佐藤慶次郎氏、中ザワヒデキ氏、クワクボリョウタ氏、八谷和彦氏、古橋悌二氏、児玉幸子氏・・・・・大好きな名前がずらり。
他にもアニメーション部門やエンターテインメント部門、マンガ部門なんてのもあります。
エンタテインメント部門ではゲームやCM映像も網羅。佐藤雅彦氏の名前も頻出です。
各部門をどうやって10作品にしぼったものか真剣に悩んでしまいそうです。
メディアアートに限らず、さまざまな表現媒体に興味のある向きにはちょっとおすすめ。
興める方は下のリンクから様子をうかがってみてください(笑)。
(なお、アンケート回答者のうち抽選で100名に10周年記念カタログがプレゼントされるそうです。)

文化庁メディア芸術祭10周年企画アンケート 日本のメディア芸術100選


<font size="-3">「片桐仁のモジャモジャ モヤモヤ モワモワ」。</font>

2006-07-20 19:40:51 | お知らせ
片桐仁氏がふたたびweb連載をはじめた模様です。
東京書簡というコラムサイトの1コーナー。
題名は「片桐仁のモジャモジャ モヤモヤ モワモワ」。
こちら
シアターパークの時と同様、片桐氏らしい素敵ストレートな文章が非常に微笑ましい。
もはや定番とも言える写真掲載も嬉しい限り。
トップ写真とPHOTO 01が素敵過ぎます。
またひとつ楽しみが増えました。
今後の展開が楽しみです。



<font size="-3">佐藤雅彦氏新刊「Fが通過します」。</font>

2006-07-19 20:23:51 | お知らせ
TOPICSのサイトで知った情報です。
佐藤雅彦氏の本が新たに刊行されるようです。題名は「Fが通過します」。
情報ページ(TOPICS OF TOPICS)を開いた瞬間、思わず『うわあ!』と小さく叫んでしまいました。
なんて素敵なんだろう。
ドキドキします。
「本」の限界、本の概念の極限に挑戦したかのようなラディカルさは佐藤氏のつくるものならでは。
どんなものかは敢えてここには詳しく記しません。
気になる方はぜひ ご自分の目で!
詳細は下のリンクからご覧になってみてください。
佐藤氏の事務所TOPICSの情報ページ→TOPICS OF TOPICS
紀伊國屋書店の書籍紹介ページ→紀伊國屋書店BookWeb

おそらく、この書籍は以前連載されていた「はじっこジャック」をまとめて加筆したものだと思われます。
7月に紀伊国屋書店から発売予定とのこと。
まだ具体的な日程は発表されていませんが、発売日が楽しみでなりません。