コラム(145):政府は柔軟な計画の見直しを
安倍首相の安倍昭恵夫人が講演で、東日本大震災の被災地沿岸の防潮堤について、「いらないものは造らないでほしい」と訴えました。
2013年12月の自民党シンポジウムでも当時復興大臣政務官の小泉進次郎との対談でも「防潮堤反対運動をするつもりはないが、海が防潮堤に覆われて見えない復興でいいのか。きちんと精査して見直していただきたい」と主張していました。
地元の声
「400キロに及ぶ防潮堤は景観を破壊する」というのが地元の人の切実な声です。リアス式海岸地域で海と陸が隔てられると美しい景観が見られず、住民は味気ない生活になり、生態系が変わり、観光客の足が遠のきます。
また、津波の被害は木造家屋に集中していることから、巨大な防潮堤をつくるより、中高層の耐震構造の鉄筋コンクリート構造の建物を建てるほうがすぐ避難できるし、費用も安く済むという意見があります。
見直す勇気
震災直後は津波対策だけが重視され、住民や市町村の意見は国に押し切られる形で計画がどんどん進んでいきました。
昭恵夫人が総理大臣の妻であるにもかかわらず、国の方針に異議を唱えているのは、地元の人びとの現実の姿や、心情を深く理解したからにほかなりません。夫の立場などにこだわらず、意見を述べる姿勢は大変素晴らしいと思います。
震災直後のあわただしさの中で決定した計画を、現在の住民や地域自治体の冷静な視点で、景観や生活、そして地域資源の活用などのさまざまな観点から考え直すことは、賢明なことだと思います。
すでに決定された方針の転換は、手続きの面では難しいかもしれませんが、より良いものを作るのであれば、政治家は勇気を持ってもう一度見直す必要があります。その柔軟さがあってこそ国家は発展していくものだと思います。
続く
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