赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

トランプ人気の背景——米国民の心を揺るがす大演説

2023-10-16 00:00:00 | 政治見解



トランプ人気の背景——米国民の心を揺るがす大演説
:231016情報


(昨日の『トランプ優勢の支持率調査が明かす“ある変化”とは?』の続きです。国際政治学者の解説でお届けします。)


トランプ前大統領が良い演説を2回やりました。

9月27日にアメリカ自動車産業の中心地であるミシガン州のデトロイトに出かけてやった演説と、10月2日にアイオワ州(農業州)でやった演説は非常に大事なことを言っています。これはアメリカ国民の心に響くような演説です。

デトロイトは「ラストベルト」という言い方もありますが、かつての工業地帯の中心地であり、一方はアメリカの農業の中心地のアイオワでトウモロコシがアメリカで一番収穫できるところでやった演説でした。


9月27日水曜の夜、全米自動車労働組合(United Auto Workers:UAW)の全組織ではありませんが、ミシガン州でここがストライキをやっています。UAWは伝統的に民主党支持なので、バイデンもそこで演説をしました。トランプはUAWのトップからは嫌われているけど、現場の労働組合のメンバーたちに呼んでもらって、そこでDrake Enterprisesという自動車の部品メーカーの工場で演説をしております。これは経済ナショナリズムを訴える立派な演説でした。

第1期トランプ政権が何をやろうとしていたかというと、まさに経済ナショナリズムです。そのことを志半ばで不正選挙によって第2期目が閉ざされてしまったのですが、それを再度やらない限りUAWの労働組合員も救われません。今のように電気自動車を突き進めていくとアメリカの自動車産業が潰れてしまうという話をしております。

トランプは
「我が国の原動力は勤労者の皆さんです。私達の国を動かしているのは皆さんです。皆さんはそのことは知っていますよね。自分は生涯通じて、あなた方と同じアメリカ人の勤労者と肩を並べて、一緒に働いてきました。自分は今あなたたちのために戦うことに人生の全てを賭けており、この国の命・富・血を吸い取る腐敗した政治家階級から労働者階級を守るために、私は全てのリスクを一身に背負って戦っています」
と言ったのです。「USA!USA!」という聴衆の大歓声が起きました。

さらに続けて
「外国人労働者ではなく、アメリカ人労働者を擁護して、アメリカファーストの経済ナショナリズムの復活のビジョンを実行する。そしてバイデン政権の政策は経済ナショナリズムの代わりに極左グローバリズムであり、彼らはアメリカを憎んでいる。その結果、我が国の勤労者は、酷い目に遭わされている」
と訴えていました。これはその通りで、バイデンはアメリカを良くしようと思って政治をやっているのではなく、無国籍グローバルリストのために政治をやっていて、民主国家アメリカを破壊するために彼は大統領をやっているのです。それは国境政策一つ見れば明らかでしょう。

このUAWの現場の労働者の人たちはわかってくれるけど、そのリーダーたちに対してトランプは
「今、UAWが賃上げを要求しているのは良いが、このままだと賃上げどころか、アメリカの自動車産業がなくなってしまう。2年先にはアメリカの自動車産業が、環境保全(CO2排出)を理由にして、ガソリン車やディーゼル車は全て製造廃止されてしまう。そして電気自動車EVに全部移行してしまう。そういう政策を今のバイデン政権は進めている。そんなことをやったら、自動車の生産の中心はチャイナや他の国に移ってしまって、アメリカ自動車産業全体が完全に消滅してしまう。そうしたら、組合も消滅してしまう。だからUAWは組織を挙げて自分を応援・支持してほしい」
と言いました。

未だにUAWのトップのショーン・フェイン一はトランプを支持しておらず、伝統的にUAWは民主党支持です。27日は共和党の予備選大統領候補の第2回討論会が行なわれてペンス元副大統領を含む7人が出ておりますけど、トランプはそのようなものは問題にしないということで同日ミシガン州デトロイトに出向いてアメリカの労働者を励ます演説をやったということです。この演説については日本の新聞でも報道しています。大統領に返り咲いた初めの日にEVの義務化を撤回して、見たことがない大減税をやって景気を良くすると言いました。

しかし、この日本のメディアが伝えていない大事なことがあります。トランプは「大事な公約を二つする」と言ったのです。「自分が大統領に復帰したら、以下の二つのことをやります。

「一つはガソリン車、ディーゼル車の完全復活を認める。第2番目、子供の性転換手術は禁止する。それだけで十分で、こんなことは保守的かどうかという問題ではなく、常識があるかないかだけの問題です。なぜアメリカはこんなに狂ってしまったのか、また元に戻さなければならなりません」と言いました。

非常に大事なことで「子供=18歳未満」ということだと思いますが、性転換手術をしたい人は大人になって、よく考えてみて後悔しないということならやってもいいけれども、今のカリフォルニアとかアメリカのリベラルな教育でやっているのは性格転換手術を奨励するような、別にしなくてもいい人までその気にさせて、後で後悔させるようなことを言っています。手術をやってしまったら取り返しがつかないのですが、そのような酷いことが行なわれているのです。少なくとも子供の性転換手術を禁止し、ガソリン車やディーゼル車を復活させ、EV化の義務を撤回するという二つだと言っているのです。

以前も申し上げましたが、自動車産業というのは様々な産業の集積です。ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのエンジンを作るということに対して、効率的で排気ガスも綺麗なエンジンを作るということに自動車産業の努力の大半が集中してきました。そして自動車産業を支えるのは鉄鋼業から様々な金属加工業、ガラス産業、ゴム産業、電気・電子技術などが集積して自動車というものができています。今の形の内燃機関と言われるガソリンエンジンやディーゼルエンジンによって動く自動車を全廃してしまうと、その国の製造業の工業力全体が一気に落ちてしまうのです。近代工業力の中心にある製造業の力が圧倒的に没落してしまいます。

アメリカにとって大事なことは日本にとっても大事ですけれども、軍事産業を支えている基盤になる産業の基礎力がそれによって大幅に削減されてしまうのです。工業基礎力というものが、それによって大幅にダウンしてしまい、自前の優れた戦車、戦闘機、爆撃、軍艦、潜水艦、ミサイルなどの兵器を造るといった能力全体が落ちてしまいます。これで軍事産業、製造業の没落に繋がることは間違いなく、自動車産業は非常に裾野の広い産業ですから、そういう自殺的な行為であるということです。

トランプはそこまで言っていませんが、そういうことを踏まえてガソリンエンジンやディーゼルエンジンの自動車を全廃することはとんでもないという話をしました。まさに正論です。



それから10月20日にトランプ10月2日にアイオワ州で演説しました。アイオワ州というと2013年の古い統計において、アメリカ国内のトウモロコシ生産量を見ますとトップがアイオワ州です。全米の生産量の15.5%を作っており、2番目がイリノイ州で15.0%となっています。アイオワというのは今までだと、ニューハンプシャーと並んで大統領予備選挙が早く行なわれる州です。民主党だとニューハンプシャー州は予備選挙の第1弾で、その前にやるのが共和党のいわゆる党員集会(コーカス)であり、民主党のオープンの予備選挙とは形が違いますがアイオワ州から始まります。そこがニューハンプシャーの前に確かやっていました。いずれにしろ、アイオワ州人口はそこまで多くはないですが大事な州です。

ここでトランプはどういう演説をしたと思いますか?デトロイトは工業地帯ですが、農業地帯のアイオワでどういうお話をしたかということをご紹介します。

「私は9月27日にミシガン州デトロイトで演説をしてきたばかりですが、電気自動車EVに関して、小型車は別にしても、トラックと農業用のトラクターは電気自動車では無理でしょう。それに電気自動車は300マイルしか走れない。いつも充電を気にしていなければ駄目だ。大型トラックは1回の給油で2000マイルも走れる。

バイデンはそのうち戦車も農業用のトラクターと同じでEVにする気だろう。戦争で絶対に負ける。農業用トラクターの場合、今日は充電してないので収穫は無理だと言うのだろうか。

トウモロコシから作るエタノール車もガンガン推進したのは私だった。フロリダのデサンティス知事は最初、そんなものはなくていいと言っていたけど、今やっとこれが実現しだしたら自分も賛成だと急に意見を変えている。せこいね。

自分はアイオワのトウモロコシをチャイナに大量に買わせようとしてチャイナと交渉して売った。口で言う政治家がいても、みんな何もせず10セント分のトウモロコシも売らなかっただろう。自分のように目標を掲げて実行する政治家はいただろうか。そこをぜひ見てほしい。

10年前なら裁判官が裁判所で木のハンマーを持って判決していたが、今後は女性のスポーツに男が出るのを禁止すると言うときが来るなんて信じられなかった。今後は子供の性転換を禁止するということまで言わないといけないほど、アメリカは狂ってしまった。

これからやらないといけなくなるのがだが、バイデンはボケているし、アイオワに来ているのにアイダホと間違えて言うかもしれない。またトウモロコシとポテトを間違うのではないのか」


という演説をしました。

これも大事なことで非常にわかりやすい言葉で、やらないといけないことを言っております。日本にもこういう政治家が出てほしいですが、残念ながら日本には今いなくなってしまいました。

アイオワ州はトウモロコシ生産がアメリカで1番なので、トウモロコシをエタノールに変えてディーゼルに混ぜて使うようにしています。このトウモロコシから作ったアルコールを混ぜて作られるバイオディーゼルの生産設備は5分の1がアイオワ州にあるそうです。アイオワ州の風力発電の電源構成比62%となっていて陸上風力も取れるところであるため、トランプはデトロイトと同じように非常に重要な話をしました。

確かにトランプは習近平と交渉して、貿易赤字を半分にしてほしいとチャイナに言ったのです。そのためには縮小均衡ではなく、アメリカの物や穀物をもっと買ってほしいと言って、ある程度この交渉はうまくいっていました。そういう方向で習近平が対応してれば、ここまで米中関係は酷いことにはならなかったと思いますが、現状はこういうことです。

2ヶ所ともトランプ節が炸裂して、単に聴衆が聞いていて気持ちがいいというだけではなく、本当に今アメリカがやらなければならないことを大衆に対して、非常にわかりやすい言葉で説明しています。そして、常識を取り戻そうということを訴えているわけですが、日本にもこういう政治が欲しいです。




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