赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

欧州エネルギー事情――ガソリン車廃止の延期とロシア産LNGの輸入継続

2023-10-04 12:00:00 | 政治見解



欧州エネルギー事情
――ガソリン車廃止の延期とロシア産LNGの輸入継続 

:231004の2情報



前稿『洋上風力発電の諸問題』の関連として、最新の欧州のエネルギ-事情について経済学者の解説をお願いしました。


フランスではロシア産のLNG(液化天然ガス)をもっと輸入継続したら良いのではないかという話も出ています。要するに、カーボンニュートラルはうまくいかないという話が、現実に直面してそういう話になってきたということです。これは直近の話なのでテレビニュースでもご覧になった方が多いと思います。

イギリスのスナク首相が「ガソリン車とディーゼル車は2030年までに全部販売禁止にする」と言っていたのですが、それは無理だから2035年まで延ばすということを9月20日に変更しました。おそらく2035年になるというのも無理だということで、また先に延ばすと思いますが、そのときにはスナクは首相をやってないということでしょう。

とにかくカーボンニュートラルで二酸化炭素を毒ガスの如く忌み嫌っているイギリス保守党内閣は、新築住宅のガスボイラーも禁止すると言っていたのですが、延期することになりました。

しかし、温暖化ガス排出を2050年実質0にするという目標は堅持するということですが、多分これも無理でしょう。2035年のガソリン車禁止というのは、カリフォルニア州も欧州連合(EU)もやると言っていますが、おそらく両方とも無理でしょう。無理にやったらカリフォルニア州の人口が激減すると思います。

日本では35年に禁止するがハイブリッド車の販売を認めるということになっていて、要するにガソリン車だけ、ディーゼル車だけというのは2035年に禁止するそうですが、こういう馬鹿げたことは言わないようになってください。

イギリスは、そもそもジョンソン元首相のときに決めていました。あとは寒い国ですから、ガスボイラーも禁止されたら困るでしょう。それから石油のボイラーが送電網から外れたと言うのですが、石油ボイラーも2026年から新規設置禁止でしたけど、これも2035年に先送りすることになりました。

これに合わせて、飛行機が二酸化炭素をいっぱい排出するということで、飛行機旅行に対して特別税のようなものをかけるとスナク首相が言っていましたが、これも撤回していました。

ヨーロッパは未だに液化天然ガスをロシアから輸入しています。

EUはロシア産の石油と石炭の輸入を禁止しましたが、液化天然ガスの輸入は許されているのです。EUが輸入している天然ガスの10%から15%はロシア産の液化天然ガスであります。

フランスのエネルギー大手にトタルエナジーズという会社があります。これは元々あったトタルという会社とエルフ・アキテーヌという会社がありまして、これらの石油会社が一体になったのがトタルエナジーズと言うのですが、海外コネクションも持っているすごい会社です。

トタルエナジーズの社長(CEO)が9月19日に「EUがロシア産の液化天然ガスの輸入を2025年から26年より以前に禁止することは全く利に合わない。なぜならEUはそれだけの輸入量の代替を即座に見出すことができないから、もっと輸入して良いのではないのか」ということを言いました。このトタルは、そもそもロシアのノヴァテクという会社が持っているヤマルLNGというところにある液化天然ガスの合弁事業に20%も出資しているのです。だから当然ですが、こういう自制的な声が聞こえ始めたということになっているのでしょう。

ノルドストリーム1も2も破壊されてしまって維持できなくなってしまったわけですけれども、そういったところで苦しいときに代替が見つかれば、ロシアからのLNG輸入も諦めて良いけど、そうではないときに諦めるというのは無理だということです。2025年から2026年までに代替を見つけるのは無理だということを言っております。フランスとしても本音で言い始めたということでしょう。

ポーランドというのは石炭大国ですが、石炭火力発電をやっていればポーランドは大丈夫ですけど、みんなに意地悪されて「石炭はけしからん」と言われています。ポーランドの国有電力会社の幹部の1人が9月19日に「ポーランド国有電力が保有する石炭火力発電所を全てポーランド政府が買い取ってほしい。これが唯一この会社が生き残りを保証するために必要な手段だ」と言いました。

ポーランドも原発をどんどん作って補えば良いのではないかと言ったのですが、それも無理なのでポーランドは石炭火力を捨てられません。

原発を止めたドイツですが、原発を止められたのは未だに電力の30%を石炭火力発電でやっているからです。いわゆる普通の石炭だけではなく褐炭と言われる比較的質の悪い石炭まで使っていて、これが未だに30%の電力を補っています。これは簡単に石炭火力発電を捨てるわけにはいきません。

いざというときに、とても役に立つのが石炭火力発電です。火力発電というのは一般に出力を上げたり下げたりするのが急速にできます。

これから風力発電や太陽光発電は不安定な変動電力です。これが増えていくというのが時代の趨勢でしょうけれども、国内でできる電力という点では風力発電も太陽光発電も良いのです。いわば国産エネルギー・電力ですが、太陽光発電は単純に言って夜は電力ができないし、風力発電は風まかせだからアップ&ダウンが激しいので出てくる電力の生産量が一定しません。

そういうときに調整するのは原子力では無理です。原子力が得意なのは一定のレベルの電力を生産し続けることで有り、上げたり下げたりするのは難しく、それをしようとすると事故に結びついてしまいます。だから、変動電力に合わせて補完するためには火力発電というものが最も適しているのです。これしか有りません。

もし原発を使い続けるということにしても、原発は一定レベルの電力量を供給することには向いておりますけど、夏の昼間にクーラーをいっぱい使うようになってから電力が急に必要となったときにも急に増やすことはできないのです。

夜中も無駄だから減らしてくれと言っても減らすことができません。そのときに調整できるのが火力発電です。これは原子力を基盤にしたり、再生エネルギーや自然エネルギーの風や太陽光で発電したりしても補うのは、出力の調整が短期間でできる火力発電になります。

しかも、天然ガスは保存しておけなくて、2週間が限界だそうです。非常に低い温度にして保存しておかないといけないので、取っておくこと自体にもコストがかかります。コストが安いパイプラインはどうかと言ったら、取っておくことはできません。それこそ、ロシアから買って元栓を閉められたらおしまいということになります。

コスト的には天然ガス・パイプラインの方が良いのですが、取っておくわけにいかないから、災害のときに困ります。石炭だったら倉庫の中に山積みにしていてもすぐ使えるわけです。そして、石炭火力発電は出力を上げたり下げたりするのも非常に容易にできます。その点でも、石炭火力というものも捨てることはできない発電の手段です。

今はみんなが地球温暖化でCO2を増やすのはよくないから、特に石炭は駄目だというふうに洗脳されているだけです。現実を見れば人間の出したCO2で地球が温暖化している証拠は一つもありません。これは根本的な話ですけど、現実的に考えてみてCO2を減らすのも良いのですが、石炭火力を0にすることは非現実的ということを重ねて申し上げておきたいと思います。



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洋上風力発電の諸問題

2023-10-04 00:00:00 | 政治見解



洋上風力発電の諸問題 :231004情報


「洋上風力発電」と聞けば、秋本真利衆議院議員が受託収賄の容疑で逮捕された事件をすぐに思い出します。

この一件で、洋上風力発電はケチがついたと言えると思いますが、それでも朝日新聞などのメディアはあきらめきれないようで、

国土の75%を山地が占め、大規模な太陽光発電設備の設置が難しい日本では洋上風力がGX(脱炭素化)推進の「切り札」とされている。陸上より強い風が吹き、安定した発電が見込めるため、島国の利点を生かせるからだ”

などと「汚職を批判」する傍ら、なぜか洋上風力発電を擁護するようです。こういう場合、何がしの利権構造が発生していると見るべきかもしれません。

しかし、国際政治学者によると、「洋上風力発電はもうすでに死んでいる」と言い放っています。この間の事情を以下に述べていただきました。



洋上風力発電は死んでいる...報道されない現状とは?

北斗の拳のケンシロウの名台詞「お前はもう既に死んでいる」というのがありましたが、これを思い出してしまいます。

洋上風力はそもそもコストがかかり過ぎるため、陸上風力、太陽光発電、天然ガス発電、石炭火力発電などに比べても高いから無理です。そしたら、だんだんそういうことが明らかになってきて、地上風力よりもっと規模の大きい洋上風力の方が有望だと言っていますが、実際は有望ではありません。

これをイギリスのファイナンシャル・タイムズ、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズも堂々と書き始めました。ファイナンシャル・タイムズの9月7日の記事には「The era of cheap offshore wind is over in the UK(イギリスでは安価な洋上風力の時代は終わった)」と書かれているのです。同じ9月7日に「英国の洋上風力開発が危険にさらされている。補助金の入札は失敗に終わりそうだ」と書かれています。

これくらいの補助金を出すからこういった条件で発電してくださいということで入札して、8日に英国政府が発表したのですが洋上風力に関しては応札0でした。入札してくださいと言ったけど、入札してきてくれる会社が一つもなかったという結果です。

9月7日のウォール・ストリート・ジャーナルでは「米国の洋上風力革命はもう終わりだ」とズバリ言っております。それからニューヨーク・タイムズが9月9日には「英国の洋上風力発電は、オークションで入札者なし」と書かれているのです。9月8日に英国政府が「補助金を出しますから、他の発電方法もあるのですが洋上風力もやりませんか」という好評をしましたが、洋上風力に関して入札に参加した会社が一つもありませんでした。

つまり、洋上風力発電はコストが高くつくし、メンテナンスコストが高いです。万が一、壊れたときの修復にも物凄いお金がかかるというので、初めは補助金を若干もらってもペイしないことがわかってきています。


しかし、日本人を騙して洋上風力発電に日本を巻き込もうという様々なプロジェクト・謀略が行なわれていて、呼びかけ人が2人の大使閣下です。駐日イギリス大使と駐日オランダ大使が相次いで、そういうことを言っております。

2023年4月14日付の日経朝刊に駐日英国大使が「洋上風力発電で日本とイギリスは協力すべきだ」と言っているのです。それからオランダ大使が6月16日に都内で行なった講演の趣旨が、6月21日付けの電気新聞の記事で紹介されております。この2人とも言っていることは共通していて「石炭火力の全廃」「大事な洋上風力発電によって水素を製造して水素社会にしましょう」と言っているのです。

確かに水素は燃えても水(H2O)にしかなりませんから、二酸化炭素を排出しません。しかし、その水素を作るために天然ガスや石油を使うので目的に反して脱炭素にならないし、二酸化炭素(CO2)が出てしまいます。だから、いわゆるグリーン水素という自然エネルギーにおいても、特に洋上風力は出力が大きいので洋上風力発電で電気分解をして水素を作ればクリーンエナジーであるのと同時に、自然環境にも最適なグリーンなエネルギーではないかということを2人とも言っているのです。

しかし、この洋上風力発電自身がコスト的に見合わないということは明確になってきています。しかも、洋上風力発電は死んでいるということは英米の経済誌が認めました。


「日英協力」原発、洋上風力...英国との協力が危険な理由

洋上風力発電に対して岸田政権は前のめりになっています。西村経済産業大臣が9月6日にイギリスに行き、日英協力の文書にサインしました。日米共同声明において「日英戦略経済貿易政策対話」と呼ばれておりますけれども、そこでは「太陽光・原子力・洋上風力などのクリーンエネルギー技術の導入で協力をいたします。半導体AI分野でも協力します」ということが謳われているのです。

これと合わせて日本経済新聞が紹介しているところでは「9月2日、日英次世代原発で覚書を結び、高温ガス炉・実証炉の建設を視野に入れる」と書いてあるのと同時に発電と合わせて水素も製造できると記事に出ております。二つ目の英国の日本絡めとりのネタは「イギリスは旧植民地もあるし、アフリカに強いので鉱物資源開発を一緒にやりましょう」と言っているのです。

この記事によりますと「日英両政府はアフリカなどで重要鉱物への共同投資に乗り出す。経済安全保障について協議する閣僚級の対話の枠組みも創設し(省略)、両国で協力して巨額の費用とリスクへの対処を求められる鉱山開発を進めて安定供給を狙う」と書いてあります。

かつてのアフリカでイギリスは旧植民地のコネクションが沢山あって影響力もあったのですが、昨今ニジェールでもクーデターがありました。これはロシアのワグネルのバックの支持を得てやった反フランスクーデターです。アフリカではフランスの影響力もイギリスの影響力も崩れています。こういうところに頼っても、うまくいくプロジェクトはあまりないのではないでしょうか。しかし、西村経済産業大臣は岸田首相の意思を受けて、9月6日に「一緒にやりましょう」と言っている文書に署名しました。

よく考えてみたら次世代原発というのも、今イギリスで運用されている原子力発電所は全て国営フランス電力が運営しているのです。イギリスが独自に運営している原発は一つもありません。それから新規に作っている原発がイギリスにありますけど、これも国営フランスがやっている建設中の新しい原発です。かつては先進国だったイギリスに原発技術は現在ありません。そこにイギリスと協力する意味があるのでしょうか。

技術もお金もないイギリス側からすれば、他人のふんどしで相撲を取るということでしかありません。鉱物資源の方では、それなりのことはあるかもしれませんが、それにしても危ないです。

イギリスの原発、洋上風力、アフリカの鉱物開発に関して、私はイギリスのハッタリビジネスとしか思えません。これがイギリス守旧派・旧植民地利権派がやっていることの実態ではないかと思います。イギリスから言われると日本人は弱いです。かつての日英同盟にできた古いイギリスの強くて逞しい技術は既に存在しません。そのことをはっきり認識しておくべきだと思います。


(午後に関連の『欧州エネルギー事情――ガソリン車廃止の延期とロシア産LNGの輸入継続」をお届けします。)


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