今は極道なんて流行らない時代だが、優作は日本で名の知れた特定暴力団の
組長なのだ。この時勢、反社会的勢力といわれかつ傘下の組事務所などは住民の
反対で閉鎖を余儀なくされるなど、武闘派といわれた優作は50歳だが10年程
お勤め*注1をしていたのだ。それに警察の捜査4課といわれる建て前上は
暴力団取り締まりを掲げている部署の刑事とは持ちつ持たれつだったのだが、
それは裏では金で買収したり、中には金目当ての刑事もいるなど持ちつ持たれつの関係
があった。彼らは地下に潜られるのを警戒しているだけなのだ。(*注2
資金源はやはり薬の売買なのだ。経済やくざという比喩は当てはまらない。
優作は幾つもの薬局をおさえておりそこから純度の高いしゃぶを仕入れているのだ。
このルートは警察も知り得ないルートだし組の中でも数人が知るだけなのだ。
昔のように肩で風をきって歩くいかにもやくざでござるそんな恰好はしない。
そんなある日、対立している組の人間だろうか、気が付いた時にはチャカ(注3で
で撃たれていた。護衛についているものが盾になり幸い軽症で済んだ
反撃しようとするのを抑えさせて、すぐに駆け付けた車で病院に。医師は傷口と
入れ墨をみて「困るんです・・・」といった。
「てめぇ人の命を救うのが医者だろう見た目で判断するんじゃねぇ。処置をしたら
引き上げるそれでもできないなら」とすごんだ。
「判りました・・処置と処方箋は出しましますので今回限りで」と
漸く理解させた。「やくざもんにあんたの名前の処方箋は書かなくていいから、
必要な薬と処置だけ書いてくれ、それでどうだ」優作は処置が終わるのを待ち
薬(やく)を買っている薬局の やくざいしに、処方された薬を伝えた。
おわり
*注1 お勤め=業界用語で刑務所に服役していることをこういう
*注2 比喩 かつて左翼などが用いた言葉で動きを見せないこと
*注3 業界用語で拳銃の事
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