ここは、国のバイオ関係の研究機関である。あの有名なノーベル科学賞受賞者を
輩出したかと思えば、スタッフ細胞はありますという研究者もいたりするところ
だった。
良く言えば同等の設備をもつ民間の会社とは違い自由な、悪く言えば結果を出さねば
ならないというプレッシャーがないのと素人が見ても何の研究なのかがわからなくても
かまわないのである。そういえば、完全な誤報だったのに先走ってネイチャー誌に
インチキ論文を発表したねいちゃんも、相変わらずそのまま勤務している。
それはさておき、研究者にとっては盆も正月も関係ないのだが、いつの間にか
門松が飾られている事に気が付き、年の初めに気が付く有り様だ。
そんな中で篠田チームと名付けられた先端医療の為の菌を開発している班があった。
篠田の口癖は「既成概念の打破」科学者は腺病質な人が多いのだが、彼の豪快な
親分肌の性格と研究方法に惹かれる学者が多いのだ。そして彼らのチームは、
ある特性を持った菌の培養を遺伝子レベルで培養する事に成功しつつあった。
それは、例えばがん細胞等あらゆる疾患の悪玉細胞と闘う特性を持つものだった。
これに成功すれば人間は病と決別できる画期的なものなのだ。マウスによる試験では
85%という高スコアで病の治癒に成功している。篠田班の誰もが高まる鼓動を
感じていた。しかし、発表するまでは完全な極秘事項として扱われていた。あっと
いう間に1年が過ぎ、再び門松が飾られて新年を迎える時期になった。篠田は、
国際的な学会の場で世界中の先端科学者達の前で、自らのチームが作成したものに
ついて説明を始めていた。
ー我々が今回発表したものは、人間の病についてその悪性分子を細胞レベルで破壊する
菌つまり、これを注射で体内に入れれば、菌が信念をもって病態を起こすものを
狙い撃ちにしてくれるものです。つまり、菌が信念・・・・。
お終い
追記 たちまちこの研究の成果は実用化し、病気に苦しむひとは少なくなった。
しかし、人類が長寿になり150歳が平均年齢の世界となったとか。
しかし老いは進行する。5世代家族が標準となり、地球の資源をめぐる
争いは過激になった。
好評につき 後編追加