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―表彰の森― 聖職者ジャン・メリエの悲劇
ジャン・メリエ-1644~1729-、フランス北東部アルデンヌ地方の寒村で、一介の司祭としてなんの波風もなく40年間の長きを務めあげた彼は、その陰で「すべての宗教は誤謬とまやかしとペテンにすぎない」といった驚くべき文書を営々と綴っていた。
神々と宗教の虚妄なることを論証したこの遺言の書というべきこの手稿は、全8章からなる長大なもので、その死後、彼が属した教区裁判所の文書課に託されたのだが、非合法の地下文書として秘かに流布していく。早くも1730年代にはその写本をヴォルテールの知るところとなり、後-‘61-2年-に、彼によってその抜粋「ジャン・メリエの見解抜粋」が秘密出版され、部分的ながらその思想が知られるようになっていく。
全8章の章立ては以下の如く-
1. 宗教は人間の発明である
2. 「盲目の信心」である信仰とは、誤りと幻想と詐欺の原理である
3. 「見神」や「啓示」と称されるものの誤謬
4. 旧約聖書における預言と称するものの虚栄と誤謬
5. キリスト教の教義と道徳の誤謬
6. キリスト教は権力者の悪習と暴政を許す
7. 「神々」の存在の虚偽
8. 霊性の概念と魂の不滅の虚偽
表面的にはあくまでも忠実なる神の僕として寒村の一司祭の役割を生きるしかなかった彼が、その陰で黙々と書き綴った無神論或いは先駆的唯物論の書、その全訳書は「ジャン・メリエ遺言書-すべての神々と宗教は虚妄なることの証明」として、’06年に法政大学出版局から刊行されている。なんと1365頁の大部の書で、税込31,500円也だ。
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―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-220
8月17日、やつぱりいけない、捨鉢気分で飲んだ、その酒の苦さ、そしてその酔の下らなさ。
小郡から電話がかかる、Jさんから、Kさんから、-来る、来るといつて来なかつた。
また飲む、かういう酒しか飲めないとは悲しい宿命である。
此句には多少の自身がある、それは断じて自惚れぢやない、あてもないに難がないことはあるまいけれど-あてもないは何処まで行く、何処へ行かう、何処へも行けないのに行かなければならない、といつたやうな複雑な意味を含んでゐるのである-。
※表題句の外、句作なし
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Photo/北の旅-2000㎞から―津別の森の散歩道-’11.07.27
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