komaの こまごまひとりごと

気が向いたときに更新しています。ただいま「歌の力」カテゴリ工事中。すみません。

イラスト集(清水玲子・波津彬子)

2016年10月27日 | イラストなどなど

              

「ARIA」(清水玲子 1990年5月)

               

              

「WALTZ」(清水玲子 1995年7月)


 今回は「絵師」の名がふさわしいおふたりの画集を。
 まずは清水さんですが・・・ほんっとーにお上手ですね・・・それしか言えません。

 アリアが第一画集で「月の子」「ジャックとエレナシリーズ」がメインです。
 ワルツは第二画集で「輝夜姫」も半分くらい入ってきてます。

 清水さんといえば、最近はもちろんバリバリにハードな「秘密」でご活躍ですが、それしか知らない人がアリアを見たら、きっとびっくりしますよね。
 くらくらするほどロマンチックな画面。きらきら輝く少女マンガの世界。
 こういう世界はもう描かないのかなあ・・・。
 ご本人からすれば、きらきら画面は描き尽くした気分なのかもしれませんけど・・・。

 アリアのあとがき。
「デビューしたてで暇だった1982年と1983年に、10日に1枚ペースでカラーを描いた。あのころ山のように汚ない絵を描かなかったら、イラスト集なんて出すことはできなかったでしょう」というようなことが、書いてあります。
 なるほど、納得です。

 

              

「花色更紗」(波津彬子 1993年9月)

 

              

「彩織り幻想」(波津彬子 2001年11月)

 お次は波津さんですが・・・ほんっとーにお上手ですね・・・それしか言えません。
 2冊とも、雨柳堂などの自作マンガと小説イラストのお仕事とが、ミックスしてます。

 美男美女に加えて、文様のみごとさと色彩の上品さ。そっくりそのまま着物の柄にできそうでうっとりです。
 でもヨーロッパ調のイラストもすてきなんですよね。

 モノクロのイラストもいっぱい入っていますが、カラーと比べてなんの遜色もありません。
 清水さんもですが、まずはモノクロが上手、というのが私の中ではけっこう大事なポイントです。
 なんかイラスト集の表紙をのせるだけで、このブログの画面自体が格調高くなる気がしちゃいますね~(笑)。
 

 

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イラスト集(大島弓子・内田善美)

2016年10月19日 | イラストなどなど

              

「万葉のうた」大島弓子(1978年10月初版)

 わわ。1978年というと私は14歳、まだ中学生だ! 趣味がしぶい!
 これはたしか、私が大島弓子さんのファンだと聞いた叔母が、買ってきてくれた品だったような・・・ちょっとさだかではないんですが、人生ではじめて手に入れたイラスト集だということに、まちがいはないはず。

 大島さんが万葉集から選んだお気に入りの歌46首に、イラストをつけるという趣向の本です。
 いままでに描いたイラスト(マンガの表紙や見開きページなどなど)に、歌が添えられています。現代ものや外国ものの絵でも、ふしぎなことになんの違和感もないんですよね。
 たとえば「綿の国星」1作目ラストの見開き画面、あのすごくきれいなシーンについているのが

   あをによし 奈良の都は 咲く花の
    薫ふがごとく 今盛りなり


「綿の国星」1巻が1978年6月初版だから、そのあとに出た本じゃないかな。描き下ろしも何点かあり、こちらは和風でとても素敵です。

 
 

               

「聖パンプキンの呪文」内田善美(1978年10月初版)

 わわ! 万葉の歌と同じ年だ! 
 これは書店でみつけて自分で買いました。よく買った、中学生の私!
 内田さんの本、いまじゃほんとに手に入りませんよね。ああ、名作マンガの数々をちゃんと読んでおけばよかった。どうして読まなかったのか悔やまれるわ・・・。
 でも。イラスト集を持っているのは、はっきり言って自慢です。


              

 裏表紙のイラスト部分。素敵すぎます・・・。

 中身のほうは、こういう可愛い絵は案外少なくて、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」をイスラム風の絵物語にしたり、自作の童話みたいな話を二色刷り絵本風にしたり(これは可愛い)、ダークな味わいのモノクロ短編マンガなど。あ、美少年ももちろんあり。
 内田さん自身はダークなのがお好きで、かわいいのはサービスショットなのかな?とも思いますが・・・。

 文学界の鬼才寺山修司氏と、イラスト界の巨匠宇野亜喜良氏がエッセイを寄せています。なんてゴージャスなんでしょう。

 中を写すのは自粛しますが、お見せしたいです~。復刊されればいいですね!!

 

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雑談その3 立ち読みのススメ

2016年10月17日 | イラストなどなど

             

          これ、プリントごっこをはじめて使って作った年賀状だという
          記憶があります(あ、背景は写真用に紙ナプキンね)。
          しかし日付をみたらなんと1993年。ひえ~、そんな大昔!?


 前回にひきつづき、おしゃべりです。
 私は中学からバスと電車通学だったんですが、乗り降りするバス停の近くに4件くらい本屋さんがありました。
 いまとちがって、当時は大型店舗じゃない街角の本屋さんがいっぱいあったんですよね。

 で、毎日のようにそれらをめぐっては、立ち読みして帰宅するのが日課だった私。
 そのうちの一件なんかその名も「たちよみ堂」で、そりゃもう名前に甘えて読みまくりましたとも。
 1時間くらい読んでたこともあった気がする、あっというまに時間が吹っ飛ぶから。
 で、そのあと家までの徒歩10分、作品の余韻にひたりながらのろのろ歩く時間の楽しかったこと。

 一応お店に対して良心がとがめてはいましたが・・・いま思うと寛大な大人たちが貧乏な女学生を黙認してくれてたんですよね。
 すみません、ろくに買いもせずに読みふけってしまって。

 そーんな楽しい機会がどんどん失われていったのは、就職したくらいからかなあ?
 引っ越したせいもありますが、理由はもちろん雑誌のビニ本化(笑)です。
 あれ、最初にやりはじめたのはコンビニじゃないかと思うんですが、またたくまに書店全般に広がりまして。
 いままでひもで閉じられていたのは「りぼん」「なかよし」くらいだったのに、あれよあれよと・・・。
 さようなら、立ち読みの日々。
 それと同時に、単行本を買う回数も明らかに減りました。

 だって私、立ち読みで作品レベルを確認してからじゃないと、単行本を買わない主義だったんです。
 ていうか、「雑誌で気に入り、ずっと手元に残しておきたい作品だと認定したから買う」というのが、私の中では単行本の位置づけであり、存在意義だったわけ。
 いくら人気作だからって、画面やストーリーもわからないまま単行本だけ買うなんてできません。
 いま私が持っている単行本の中で、中身を知らないのに買ったのは、作品すべてが信用できると思った大島弓子さんだけです。

 そして、マンガ界の動向もさっぱりわからなくなりました。もはや青田買いとも無縁に。昔は「この人うまくなる」って思った新人作家を追いかけたりもできたけど・・・。
 だいたい「りぼん」しか買ってなかった私が、なんでmimi(ちょっとお姉さん向け)の樹村みのりさんやスピリッツ(男性向け)の軽シンに出会うことができたのか。
 立ち読みしたからですよー、クラスメートでそんな雑誌買ってる子はいなかったから、立ち読みでみつけるしかないじゃないですか。
 でもその結果、裾野がすごく広がって、いろんなジャンル、いろんな作家さんの作品にふれることができました。

 そりゃ雑誌の売り上げだけを考えれば、立ち読みなんかできないほうがいいにきまってる。
 でもねー、マンガ界全体というか、マンガの未来というか・・・そういうもの考えるとどうなのかなあ。
 雑誌の中身にしても、たとえばかつての「りぼん」では田淵由美子さんと一条ゆかりさん(「有閑倶楽部」ではなく「砂の城」)が、両方巻頭カラーをとれていたわけ。
 それに比べていまの少女向けマンガ誌って、一冊まるごと同じ傾向、似た絵柄、似たりよったり設定・・・片寄りすぎでは?
 そういうことを続けていると、読み捨て読者とマニア(いろんな雑誌を買えるくらいのマンガ好き)の差が激しくなって、マンガ界の底上げにはまったくつながらないと思うんですが。

 ああ、勝手なこと書いて書店や出版社から怒られてしまいそう・・・。
 まあ誰も読んでないブログでおばちゃんが呟いているだけだから許してくださいませ。

 呟きついでに言わせていただきますが、単行本の紙の質をあげてくださいよ○○社さん。かつて買った「動物のお医者さん」、劣化が激しすぎてとっておけませんでした。太古の昔に買った「わたり鳥は北へ」がいまだにピカピカ画面なのに!
 私、先に書きましたように単行本は長ーく保存したい場合のみ購入するんです。その場限りのものじゃないんです。考えてくださいってば、長期保存できるかどうか(涙)。
 あとね、中身の見えない単行本の売り上げをあげるために(たぶん)、いまどきの作家さんってみんなカラー表紙がものすごく上手ですよね。でも開けてびっくりモノクロは別人、なケース、けっこうありますよ。
 もちろんモノクロがうまい人もなかにはいるし、以前よりは皆さんお上手な気がします。しかしマンガ家っちゅーのはイラストレーターやアニメーターとはちがうんです。単体の絵がうまいことより、その絵が生きて動くか、吹き出しの中の台詞が声として届くか、コマ割の中にどれだけの概念を込められるか、のほうがよーっぽど大事なんです。そっちを考えてくださいってば、マンガ界のために。

 もーこのへんにしておきますが、少しすっきりしましたわ。
 次回は持っているイラスト集のご紹介の予定です。

 

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雑談その2 短編のススメ

2016年10月10日 | イラストなどなど

           

          2001年は巳年だったんですね。
          カメラの調子が悪くて謎の丸い影が・・・あとで
          差し替えるかも(といって差し替えた試しがないけど)。


 幾星霜の月日をへても心に残っているマンガ・・・ということで、高校までに出会った作品を18回に渡ってピックアップしてみました。
 短編が圧倒的に多いですね。メジャーな長期連載が全然ない。
 トーマや那由他は連載としては長期じゃないし、軽シンは長期だけど、ほんとに好きなのは4巻あたりまで。 
 とにかく「短編マンガ」「読み切りマンガ」のファンでした。


 かつての「りぼん」では、読み切りラブストーリーを各マンガ家さんが競い合う企画を、しょっちゅうやっていまして。
 トップバッターは田淵由美子さんか陸奥A子さんと決まってましたが、そのあとはいろいろ。
 清原なつのさんも、あとからそこに仲間入りしたんじゃないかな。
 あの企画が好きでね~。ハッピーエンドなかわいい恋物語とわかってはいても、皆さんやっぱり趣向を凝らして設定とか性格とかを変えてくるので、とても楽しみでした。今度はどんなムードでくるかなあって。


 ただ、だんだん連載マンガのほうが多くなってきちゃって・・・。
 読み切りだと、今回はいまいちでも次は、って期待できるけど、連載じゃそうはいきませんよね。
 だんだん対象年齢もさがってきて、高校生くらいの身近な恋愛が主流になり、結局「りぼん」とはお別れしました。
 そして身近でないマンガの宝庫だった「花とゆめ」「LaLa」に流れることに(笑)。


 マンガって、すごく短編向き、掌編向きのメディアだと思うんです。
 だって絵で訴えるから、作家が読者に伝えたいと思っているイメージを、ダイレクトに伝えることができる。
 読者のほうもひとめでイメージを受け取れる。ひとコマ見れば、たとえば泣いている顔がすごくよく描けていたりしたら、すぐに感情移入できる。

 小説だとそうはいきません。他人が書いた文字から自分の脳内イメージを造り出すには、かなりの情報量が必要。相性も必要。
 それにやっとイメージできても、記憶にとどまっている時間が短い気がします。いつまでも心に残る短編小説は、もちろんいっぱいありますが、私の場合ものすご~くその作家さんが好きでない限り、感情が長続きしません。
 でもマンガだと、無名の作家さんのものでもこれだけは好き、っていうのがけっこうあって。視覚イメージって強烈なんだなあと思います。


 たしかに短編を描くのは難しい。長編みたいにキャラの魅力を描き込んでいくというやり方は、ページ数不足で使えないし、よほど吟味した台詞でないと時間切れだし。
 ひとめで魅力的だとわかる画力。単にキャラが描きたいのではなく「これが伝えたいんだ。このテーマが描きたいんだ」っていう作家さんの意志。起承転結の構成力。
 難しいですねー。 
 でも両立すれば、小説よりも名作への道が近いんじゃないかと思うんだけどちがうでしょうか。


 というわけで、いまの少女マンガ誌に対してひとこと!
 連載が多すぎやしないですかね!? 
 しかも人気があるとページ数ふやして大ゴマ多くして、かえって画面の質がさがるし話の密度がうすれるし、そういうやりかたしていて大丈夫なの??
 長編ってのは本来、短編では描き切れないほど深くキャラを掘り下げるとか、多種多様なキャラが出るとか、事件がたくさん起きるとか、そういう理由があってはじめて成り立つべきものなんですよ。 
 そりゃ連載をふやすほうが雑誌の売れ行きは安定するかもしれないけど、少女マンガ界のクオリティのほうは反比例で不安定に。
 エンタメだから別にクオリティなんて、という考え方もありですが、エンタメだからこそ質がものを言うんじゃないのかなあ。


 マンガは世界に誇る日本文化、とか政府でも認知されつつあるようですが、そもそも、なんでそこまで注目されるようになったのか。
 大島弓子さんとか萩尾望都さんとか山岸涼子さんとか、掌編マンガでいうと初期の高野文子さんとか。
 そういうかたがたの超傑作があったからこそ、認められるようになったんじゃないんでしょうか。


 いまの少女マンガで第二の大島さんや萩尾さんが生まれるとは思えない。
 あ、もしかして青年誌のほうでは出るかもしれないけど、あの少女特有の感性というか美意識というか儚さというか・・・とにかくそういうものは、思春期の女性を対象とした雑誌だからこそ生まれ出たのではないかと・・・。


 ああ、最近の若いもんは、と嘆く老人の気持ちがよくわかるお年頃になってしまって残念だ。 
 しかしまだ言い足りないため、次回、も少し言わせてくださいねー。

 

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「軽井沢シンドローム」たがみよしひさ

2016年10月05日 | イラストなどなど

               


「軽井沢シンドローム」たがみよしひさ(ビッグコミックスピリッツ 1981年1月号~1985年18号)


 掲載雑誌が明らかに男性向けで、ストーリーもそのイメージを裏切らず、なんかもう男性の夢を実現してるかのような(笑)。
 にもかかわらず。当時いたいけな高校3年生だった私でも、平気で読めたという不思議。
 しかもほかの女性読者たちにも、とても人気があったと記憶しています。
 かなりアクが強いとは思うので、好き嫌いは分かれるかもしれないんですが、クラスメイトに貸したところ拒否反応を示した子は1人だけでした。
 ・・・って、こんなのを学校に持っていったんかい、私!?(一応お嬢さん女子校)


               


 はい、中表紙もどうぞ。ちなみに先に挙げた表紙の男性は、まんなかのグリーン頭と同一人物です。右側の人は彼の恋人。
 しかしよく見ると、なんてことしてんでしょうね。このブログでこんなの出すのは初めてだわ・・・。

 とにかくこんな感じで、八頭身のシリアスな絵と三頭身(左の人なんか二頭身ですらない)のコメディな絵とが、共存している作品です。
 シリアスな絵は本当にかっこよく、コメディな絵は本当にかわいい。画力の高いふたつの絵柄が、同じページの中にぎゅうぎゅう詰まっている。
 普通ならありえないと思うのに、たがみよしひささんの手にかかるとマジックみたいにオールオッケー。
 そしてこの絵柄で展開されるストーリーをご紹介すると・・・。


 フリーカメラマンの耕平ちゃんが、軽井沢に帰ってくる。そこには昔から彼に恋する薫さん(真面目で実直なタイプ)がいて、ふたりはすぐに恋人同士に。しかしその後にやってきたノン(かっこいいお姉さんタイプ)も彼に傾き、すぐに愛人関係に。その後やってきたまなみちゃん(しっとりタイプ)も愛人関係に。そのほか行く先々に「耕平ちゃんならいいわ」みたいな美女が何人も。それらをすべて薫さんは黙認。耕平ちゃんの暴走族時代の後輩である二郎は、絵里ちゃん(童顔タイプ)をひっかけるが本命はみるく(いいオンナタイプ)だった。薫の弟の純生くんは最初みるくと、次にまなみとつきあうけど、みるくの本命は二郎、まなみの本命は耕平だったため失恋、でも絵里ちゃんは純生のことが好きになって・・・。


 こ、こ、こーんなストーリーが、たがみさんの手にかかるとマジックみたいにオールオッケー・・・。
 なんで?? こんなストーリーなのにいいい。

 出てくる女性陣が「男性側から見て都合のいい女」でおわらず、ちゃんと個性的に描かれてるんですよね。
 少女マンガにも、美男子に囲まれるヒロインの図がよく出てくるけど、違いは異性の描き方でしょう。
 それと、ときどきすごく印象的な台詞があって。
「俺はみんなのことを抱きたいけど、抱かれたいのは薫だけ」という、いまだに覚えている耕平ちゃんの名台詞には、なんだかとても納得できました。
 ただし、こんな台詞をヘタなマンガ家さんが使おうもんなら、勝手なこと抜かすな~!ってなるのは当然です。 
 たがみマジックだからできるんです。


 そういうわけで。
 同じ話を別の人が描いたら絶対にこうはならない、というか、この話はこの人にしか描けない。
 そう思わせてくれるマンガの典型的な例として、とても心に残っているのが、この作品です。

 たがみさんのほかの作品では「我が名は狼(うるふ)」というのも1巻だけ持っていて、そっちも思い切り女好きな主役でした(笑)。
 でも途中から編集部の意向なのかテイストが変わってきたので、読むのをやめちゃって。
 軽シンも長期連載だったから、あとのほうはちょっと変わってきちゃったかな。
 残念ながら未読ですが、シリアス路線のSF作品もあって評価が高いみたいなので、いまからでも読んでみたいなあ。

 

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「へ・へ・への方程式」笈川かおる

2016年09月30日 | イラストなどなど

               

 「へ・へ・への方程式」笈川かおる(ぶ~け 1982年1~4月号)


 これを読んだ当時の私は高校3年生。
 すでにご紹介した「勝手にセレモニー」も女子寮、同時期くらいに流行っていた氷室冴子さんの「クララ白書」も女子寮。
 それと並んでこの作品も寮もので、すごく好きな作品でした。
 で、自分も女子大の寮に入ったのは既出のとおり。

 といってもこれの場合、そんなにストーリーにからんでいるわけではなくて、背景的な描き方ではあるんですが。
 ストーリーはライトなSFです。ファンタジーではなく(しつこい)。

 受験生の倫子の頭の中に、突然はいりこんできた、意識だけの宇宙人。
 その宇宙人には半身がいて、そちらはどうやら他校のイケメン秀才の頭の中にいるらしい。
 どうしたら半身同士が巡り合えて、ふたりの中から出て行ってくれるのか・・・もうすぐ受験だってのに~!

 アップテンポの小気味いい展開。骨格のしっかりしたストーリー。
 生き生きしたキャラクターたち。受験生の焦りや友情もちゃんと描写。
 キャラの名前が 陀持倫子(だじりんこ・ダージリン)、宮院真理(くいんまり・クイーンマリー)
 桐馬二郎(きりまじろう・キリマンジェロ)
 ストーリーとは無関係な遊び心も含めて・・・。

 ぜーんぶ好き。
「セレモニー」と同じく、あと連載一回分くらいページ数がほしかったなあ。描いていない裏設定がいっぱいある気がするので。
 やっぱり高橋由佳利さんと共通するんですが、キャラの性格がけっこう後ろ向きなんですよね。
 それなのに、仕上がりが明るい。生き生き、シャキシャキしている。
 同じ話を別の人が描いたら絶対にこうはならないだろうという、節回しを感じます。
 そういう個性のことを「魅力」って呼ぶんだと思います。


              


 連載初回表紙。絵柄にはそんなに個性がないというか、どちらかというと地味な部類かな。
 でも、このかたの描く男性キャラが好きでねー(ミーハー・笑)。
 表情とか、ちょっとした動きみたいなものに、とても惹かれるものがありました。

 かっこよく描いてるというわけではなく、むしろ、わざとかっこよさを外しているような気配を感じますが・・・。
 あ、高橋由佳利さんもそうだ。そういえば清原なつのさんも、そんな感じ。
 でも皆さん外しながらも、ほんとは素敵だってことがちゃんとわかる描き方なんですよね。
 昔の「りぼん」出身者は奥が深い!

 

 笈川さんの作品は「りぼん」時代のはいっぱい知っていて、短編ばかりですが、どれもはずれなし、の印象でした。
 そのあと「ぶ~け」に行き、その後「キャンドル」とか?(よく知らない)。
 残念ながら読んでいないんですが、一度ちらっとお見かけした「羽衣一景」という作品は、かなりシリアスで切ないムードでした。
 
 今回、検索していたら、その作品をとりあげたブログがふたつみつかって。
 ひとつは「このマンガ家はファンが期待するようにはマンガが好きではないんじゃないか。世の中が辛すぎて楽しく描けないんじゃないか」とかいう、すごいご意見。
 もうひとつは「大好き。泣けた。感動した」という正反対のご意見。
 うわー、同じ作品でこうも評価が割れるとは・・・どんな話なのかと興味がわきましたが、切ない系は読めない今日この頃の私だから、読むのはやめたほうがいいかな~。

 

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「那由他」佐々木淳子

2016年09月03日 | イラストなどなど

               

「那由他」佐々木淳子(週刊少女コミック 1982年6月~1983年1月)

 連載第1回目を読んだときのドキドキと、わくわく。
 ハンパないときめき感が、忘れられません。こんなのが読みたかった!って、心から思いました。

 

 ごくふつうの平凡な少女だった那由他。偶然出会った少年を家にかくまうが、彼が頭にはめている輪には不思議な力があった。
 那由他自身がその輪をはめたことにより、平凡な日常はこわされ、謎の宇宙人との闘いに、いやおうもなく巻き込まれ・・・。

 テレパシー、テレポートなどなど超能力満載。宇宙人、宇宙船、謎だらけの敵がうじゃうじゃ。
 頭にはめる輪っかのアイテムの魅力。超能力戦に加え、銃撃戦のアクションもあり。

 当時、流行していた要素を全部つめこんで、なおかつすごいのは、これが純粋なSFだってことです。
 キャラが描きたいための話ではなく、SFが描きたかったんだとわかる。
 ラストは宇宙規模まで話が進んでしまいます。
 これで単行本3冊ですからね・・・いまならぜったい、倍くらいいきそうですよね。

 

            


 こちら左側は「那由他」のキャラたち。右は別の連作長編で「ブレーメン5」。
 ブレーメンのほうは、残念ながらラストまで追ってなくて・・・どうなったか、気になるんですが。
 佐々木淳子さん、短編もいろいろ描いていますが、どれも本当にSFで、彼女にしか描けない話ばかりでした。

 

 しつこいようですが「ファンタジー」ではありません。いまはファンタジー全盛だけど、
「キャラ(の絵)が描きたいため(だけ)のファンタジー」
「かつて外国を舞台にしていた少女マンガが、異世界にお引っ越ししたファンタジー」
「SF考証、時代考証、取材なしでも、魔法があればすべてOKファンタジー」
 が、あまりに多い気がするのは、私だけでしょうか。

 なーんて言いつつ・・・。
 最初に、佐々木さんの作品を読み始めた理由が何かといいますと・・・。
 ずばり、男性キャラが好みだったから!(笑)

 もともと、荒けずりなタッチの絵が好きなんですよ。
 今回、久々に画面を見たら、当時はなんとも思ってなかった少年時代のキロにまで、ときめいたわ。
 リョータローくんのファンだったけど、河あきらさんの「わたり鳥は北へ」に出てくる次郎くんに感じが似ていると気づき、人のシュミっていくつになっても変わることがないのだと、あらためて知りおそろしかったわ。あわわ。



 ところで「那由他」というのはヒロインの名前ですが、ずいぶんインパクト大ですよね。
 これの意味を、子育て中にはじめて知った私。
 大きい数の単位だったんですね!

 かのEテレ「にほんごであそぼ」、あれでしょっちゅう歌われている
   ♪ なゆた ふかしぎ むりょうたいすう~ ♪

 聞くたびにこのマンガを思い出してしまいます。
 どうしてこんなネーミングを思いついたのか、佐々木淳子さんにうかがいたいくらいです。

 

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「海辺のカイン」樹村みのり

2016年07月22日 | イラストなどなど

             

 

「海辺のカイン」樹村みのり(mimi 1980年6、8、11月号 1981年1、3月号)
「カッコーの娘たち」   (mimi 1978年4、6月号)
 
 華やかな「りぼん」の世界から、急に地味な画風になりますが。
 あっちとこっち、私には両方の世界が大切でした。


 母親から思うような愛情をかけてもらえず、そのために自分自身の存在も、なかなか受け入れられない展子。
 海辺の町をふらりと訪れた彼女は、年上の女性デザイナーとの出会いを通して、自分のアイデンティティを獲得していく。
 これが「海辺のカイン」。
 もうひとつ「カッコーの娘たち」のほうは、やはり母親からの愛に飢えた少女ビリーを軸に、三人姉妹が彼女たちなりに世の中を渡っていく物語。


 どちらの作品も、たぶん母親は悪くない。母は母なりのやりかたで、ちゃんと娘を愛していた。
 そしてどちらの物語も、母との葛藤だけを描いているわけではなく、親子を超えた人間まるごと、人生まるごとを描こうとしている。
 甘くない余韻。
 それでいて感じる、深い人間愛、人生観。
 それを描き出す表現力、つまり画力と文章力。


 文章力と書きましたが、萩尾望都さんや大島弓子さんをみてもわかるとおり、良いマンガの条件は台詞がすばらしいってことですね。
 文が苦手だから絵、ではなくて、そのまま本にしてもおかしくないくらい、台詞だけでも読み応えがあります。
 画力についてはデッサン力や顔の表情は当然ですが、たとえばこれ。

        


 これはカインの冒頭ですが、俯瞰、人物、波、はだしの足元、脱いだスニーカーときて、わかりにくいですが左下は町並みの絵です。
 これで彼女が海でくつを脱いじゃうような少女であること、海から町に移動したことがわかるわけ。
 文字で説明してもいないのに、映画みたいなカメラワークでちゃんと伝えてるんですよね。


 しかし・・・樹村みのりさんのウィキを確認してみてびっくり。
 この2作を描いた年齢が、まだ30歳前後だなんて。
 シリアスだけじゃなく、アットホームなコメディもお上手ですが、すでに円熟味を感じます。
 私なんか50代になっても円熟の片りんもないっつーのに、プロはやっぱりちがうのね・・・。
 おそるべし、花の24年組!

 

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「勝手にセレモニー」高橋由佳利

2016年06月28日 | イラストなどなど

            

 

 「勝手にセレモニー」高橋由佳利(りぼん 1981年4~8月号)

 「りぼん」からもうひとつ、大好きだった連載を。
 映画監督の父親とうまくいかず、自分自身にも行き詰っている女子高生の二詩子(ふじこ)さん。
 謎の後援者のもと名門女学院に転入してみると、お嬢様のはずの生徒たちは、教師にかくれてバイトしながら自主映画作りに燃えていた・・・。


 とにかく生き生きしている。
 お嬢様たちのまぶしいこと。映画作りの楽しそうなこと。
 彼女たちに感化されて変わっていく二詩子さんの気持ちに、同感です。

 これだけのキャラたちなんだから、できればあと一回分くらい多く連載してもらいたかったなあ。
 作者本人だって、とくにラストのほう、もっとページ数や大ゴマをいっぱい使って描きたかっただろうと推測。もちろん筋立ての面白さをそこなうものではありませんが。


 女子校もの、女子寮ものに弱い私です。自分自身も中学からどっぷり女子校育ちの筋金いり。
 ちょうどこのころ、氷室冴子さんの「クララ白書」「アグネス白書」も流行っていて、寮生活にすごくあこがれました。
 そして大学では、なんと女子寮に入っちゃいました。

 いえ、たまたま付属の大学が自宅から遠かったため、大学敷地内にある寮に必然的に入るしかなかったんですが・・・。
 でも臆病な私が迷うことなく寮に行けたのは、マンガや小説のパワーのおかげだと思います。
 ちなみにリアル寮生活は、大学生ともなるとみなさん自立しているため、高校生みたいに濃厚な関係は皆無でありました。
 ちょっと残念(笑)。でもそれなりに楽しかったですけどね。
 

            


 こちらは「倫敦階段をおりて」という読み切り。
 雑誌から切り取ったものなので、年月があらわれてますね~。いったい何十年前なのか(苦笑)。
 でもこれほど時がたってから読み返してみても、変わらず魅力的なお話でした。

 何が魅力って、カラッとしたユーモア感覚、ドライな読み心地、これがとても気持ちいい。
 主役の性格がカラッとしているわけではなく、むしろネガティブで切ない事情やコンプレックスもいろいろあるんです。
 それなのに、仕上がりはカラッと陽性。湿気がない。
 だから主役に共感しつつも、楽しく前向きに読めちゃう。


 これは高橋さんのどの作品にも共通の、得難い個性ですね。
 ウェットな悩みをウェットに描くのは、きっとかんたんなんですよ。それをドライに表現できるのは、心が強いからじゃないでしょうか。
 以前の記事で「昔のマンガは切なくて読み返せない」なんて書いた私が、平気で読み返せるのもそのおかげ。
 つまり切なくない。もちろん、ほめ言葉ですよ。


 高橋さんはその後、なんとトルコのかたとご結婚、ご出産。
 その体験談をエッセイにして大人気になりました。いまは日本にいらっしゃるようで、ブログによるとご主人はトルコ料理店を営んでいるみたいです。
 なるほど・・・あの湿気のなさが、もしかして大陸的な恋愛を引きつけたのかなあ、なんて、勝手に思ったりしています。

 

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「りぼんオリジナル表紙」(田淵由美子)

2016年06月16日 | イラストなどなど

         

        

 

 すてきですよねー。カラーセンス抜群。すばらしい!

「りぼんオリジナル」というのは、1981年から2006年まで(ウィキによれば)発刊されていた雑誌です。
「りぼん」よりちょっとお姉さんっぽいテイストで創刊されて、田淵由美子さんが毎号表紙を飾っていました。
 いま持っているイラストは5枚だけ。切り取らなかったのか、別の人の表紙に変わったのか忘れちゃったんですが・・・。

 清原なつのさんの「真珠とり」とかも、たしかこの雑誌にのっていたと思います。
 一条ゆかりさんの「それすらも日々の果て」とかね。「りぼん」本誌がもはや幼すぎてつまらなくなっていたので、この雑誌の創刊は魅力的でした。
 
  

         

 こちらは「百日目のひゃくにちそう」という作品の冒頭です。
 このページの後に見開き表紙がきますが、表紙よりもこっちのページに感心したのでのせてみました。
 配色のバランスがよくて、うまいなあ・・・。少ない色数で(立原あゆみさんといい、どうも私はそういうのが好みらしい)すごく上品ですね。


 これは本誌のほうだったかもしれないけど、田淵さんの作品の中では主人公がちょっと大人っぽくて、お気に入りでした。
 で、作品まるごと雑誌から切り取り・・・いえ、当時はせっせとそういうことしてまして(笑)。いつ単行本が出るかわかんなかったし・・・。
 それがなんと、いまだに部屋の奥に残っているのを、先日発掘。カラーページは画質がおちないですね。白黒のほうはほとんどわら半紙なので、ひどいですが。

 田淵さんのイラスト集、出ないかなあ。
 なつかしくて買う人たくさんいると思うし、いまの若い子にだって受けると思うんだけど、集英社さん、いかがでしょうか。

 

               つづきます

         ところで、Gooブログが強制的に(?)メンテされたら
         活字サイズが大きくなってしまい、太字で書いてた
         過去記事がうっとうしいことに・・・。
         何なの、いったい。とりあえず今回は細い字で書いてみました。
 

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