あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

われめ

2017-05-20 14:29:38 | 
嗚呼、生きているんだな・・・・・・
涙が出る、生きているということが。
わたしはいつでも、死んだ者と会話をしている。
わたしにとって、死んでいることが、生きることだった。
彼女は「自分が生きているかどうかわからない」と言った。
わたしはその感覚こそが、生きていることだと言った。
どんなに喜びを感じても、どんなに恍惚を与えられても、
わたしの時間はあの日から止まったままのようだ。
母を喪った、三十一年まえから。
そうわたしが言うと、人々は喜んだり悲しんだり嘲ったりしたが、
わたしを最も愛する存在こそが、最も喜びながら悲しんでいた。
彼はいつもわたしにこう言っている。
「もっともっと悲しみなさい。もっともっと苦しみなさい。人は悲しみの深海にいるとき、もっとも美しいのです。人は苦しみのどん底にいるとき、もっとも眩いのです。どうかわたしに、あなたの悲しみを見せてください。あなたの絶望する美しい顔を、わたしに見せてください。わたしはあなたの美しい顔を見ることができるなら、何をも耐える」

あなたは忘れているのだろうか。
あなたのわれめから垂れた、白い緒が、あの日からずっとわたしの首を絞めつづけているのです。












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