わたしの愛する彼には、今年5歳になるお子さんがいて。
別れた、元奥さんとの関係は良好だ。
ただ、その隔たりの間には、愛がないだけだ。
彼女は彼をひとりにして、愛する息子と、新しい夫と共に幸せに暮らしている。
その隔たりの愛のなかに、彼の入る隙間はない。
最初から。
そこには彼の入る隙間はない。
地球が生まれたときから。
彼の入ることのできる隔たりは、彼を喪い続けている。
一体だれが生まれてきたのだろうか。
個の存在しない、その子宮に。
顔のないDNAたちが、空気泡のなかを昇ってゆくように。
個のない支配者たちが、鉄の滑り台を滑り落ちてゆくように。
iは、ぼくらを残念に想う。
iは、その階段を上ってゆく。
iは、何度と、電気をつけようとする。
iは、階段を下ってゆく。
iは、何度と、灯りをつけようとする。
でも点かない。点けることができない。
iは、悲しい顔でぼくらを想う。
iは、雲のなかに。
iは、雲のなかに。
iは階段を上りゆく。
降りることのできない。
地に浮かび上がるX。
波が分かれるとき。
海の底に沈んでゆく家々。
iが終わり、彼が始まる場所で。
彼女は彼を一人で残した。
すべてが終わり、降りることのできない場所へ。
iは彼のすべてを生きたまま食べる。
iは彼のすべてを食べて生きる。
もう嘘はない。
これ以上嘘は。
Radiohead - Where I End and You Begin. (The Sky is Falling in.)