ロシア人の表と裏(下)
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」114/通算546 2022/12/16/金】屋上庭園の防水&リニューアル作戦は12/14に南西側の花壇塗装を完了して基本的に終えた。台風後の9/27から3か月近くヒーヒー言いながらの悪戦苦闘の作業だったが、結構充実感はあったし、体を動かしていたから手足の筋肉がずいぶんガッチリし、食欲も旺盛になったきたので、この冬を乗り越える自信も高まってきた。
一連の営繕作業は“オーストラリアン・ハズバンド”、DIYで人件費ゼロだから随分安く済んだ。1.6リットルのペンキは1缶4000円として20缶だから8万円、刷毛や金物などを含めて12万円ほどか。単純な比較はできないが、10年ほど前に業者に頼んだら特注の「笠木/かさぎ」も使ったので200万円ほどかかった。人件費がないと随分安いもので、10分の1とか2でできることもあるわけだ。
小生の場合DIYは「遊び」でもあり、12万円で3か月近くも大いに楽しめたのは結構なことだった。あとはコマメにメンテナンスすればいい・・・ところが人間の性か、問題が発生しないと、つまり尻に火がつかないと行動しないのだ。平和がずーっと続くと思っている。多分大丈夫だろう、そのうち点検するか・・・なんていう調子。トラブルが起きるまで見ざる聞かざる言わざる、ノー天気。「先の心配していたらキリがない、第一辛気臭いよ、♪それよりボクと踊りませんか、ウフッフーッ!」。
大慌てで軍事力増強・・・3年後4年後には大丈夫だと思っているようだが、オリンピックやサッカー・ワールドカップじゃあるまいし中露北がそれを指くわえて待っているか? 第一、中露北も軍事力を増強するのだから「十分な軍事力、これで安心」なんてあるわけない。軍拡競争するなら安上がりの核兵器を開発したり買ったり借りたらいい。軍拡競争はカネがかかるから中露北は日本が脆弱な、兵器もキンタマ=根性も弾もちょっとしかない時を狙って襲うだろう。
プーチン・ロシアに侵略されたウクライナは必死で戦っているが、素人でも3か月ほど訓練すればまあまあ戦えるようだ。実戦の中で鍛えられ有能な戦士になっていくのだろう。ウクライナ人は300年間もロシアの強権独裁支配を受け、1917年のロシア革命の際にも独立を目指したが、残虐なレーニン、トロツキーに潰されてしまった。ロシアとの今の戦いを勝たなければ独立のチャンスは再び三度遠のくから必死である。
1991年のソ連崩壊の際にウクライナは表向きは独立したのだが、米英はウクライナに「危機の時は我々が守るから」と核兵器を放棄させた。プーチン・ロシアは2014年にウクライナからクリミア半島を強奪したが、米英は「危機の時は我々は逃げるから」になってしまった。プーチンは「米英は口先だけのヘタレ」と意を強くしたろう。
それから8年、米国では是々非々外交で何をしでかすか分からないトランプから、平気でアフガニスタンから逃げ出すほど軽佻浮薄なバイデンに政権が変わると、プーチンはウクライナ侵略の好機と判断したろう。米英はもとよりEUも日本も完全になめられたのだ。
営繕作業にキリがついて小生は久し振りにブックオフへ行ったら「おい、ヂイサン、俺を読め」と自己主張する本があった。「ロシアを決して信じるな」(新潮新書、2021年)だった。著者は中村逸郎氏。一気呵成に読破したが、とても分かりやすかった。ロシア研究者だが、情に流されずにロシア人を観察し、その屈折した生態、思考を愛憎交えて深く紹介している。WIKIによると氏の経歴は、
<1956年11月2日生まれ、国際政治学者。筑波大学名誉教授、島根県立大学客員教授、専門研究分野は現代ロシア政治、日露関係。博士。
来歴:島根県生まれ。1980年3月、学習院大学法学部政治学科卒業。1986年3月、同大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。1983年9月から1985年迄モスクワ国立大学、1988年9月から1990年迄ソ連邦科学アカデミー「国家と法研究所」に留学。
2000年4月、島根県立大学総合政策学部助教授、2001年4月、筑波大学社会科学系助教授、2007年7月、同大学人文社会系教授に昇進。2012年4月から2014年3月まで、同大学国際総合学類長。また、東京大学教養学部後期課程非常勤講師も担当。2022年3月、筑波大学を定年退職。2022年4月から島根県立大学客員教授。筑波大学名誉教授。
2022年5月、ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシア政府による日本への報復措置によって、ロシア連邦への入国を恒久的に禁止された。
著書:『東京発 モスクワ秘密文書』1995年、『ロシア市民 体制転換を生きる』1999年、『帝政民主主義国家ロシア プーチンの時代』2005年、『虚栄の帝国ロシア 闇に消える「黒い」外国人たち』2007年、『ロシアはどこに行くのか タンデム型デモクラシーの限界』2008年、『ろくでなしのロシア プーチンとロシア正教』2013年、『シベリア最深紀行 知られざる大地への七つの旅』2016年、『ロシアを決して信じるな』2021年>
「ロシアを決して信じるな」の版元・新潮社はこうアピールしている。
<北方領土は返ってこない。ロシア人は狡猾で、約束は厳禁である――。毎年、現地を踏査し、多くの知己をもつ、知の最前線に立つ著者にそこまで考察させるロシアとは、一体、どのような国なのか。
誤作動のため寸前で発射をまぬがれた核ミサイル。ありふれた出来事となった反体制者の暗殺。世界最悪の飲酒大国。悪魔への奇妙な共感。全土に流布する「プーチンは偽者」という説。さもしい大都市モスクワ……かの国の不条理に絶望し、怒り、戸惑い、ときに嗤いつつ描き、ロシアの本性を浮かび上がらせる。
魔窟のような隣国を知悉するために、現代史の貴重なスクープからスリリングな紀行まで、柔らかな筆致で綴る日本人必読の書。
序章 核ボタンはついに押されたのか!?/第一章 暗殺社会ロシア/第二章 「ひたすら祈る」―魔窟からの脱出/第三章 倒錯する日常生活/第四章 決して信じるな―ロシア人は嘘八百/第五章 「偽プーチン」説の真相/第六章 飲まずにはいられない―世界最悪の飲酒大国/第七章 祖国を愛せないロシア人の悲哀/第八章 ロシアの二枚舌外交―ウラジオストクの北朝鮮労働者/第九章 モスクワのわるいやつら―さもしさがあふれる都市/第十章 暴走する親切心/終章 絶望のロシア>
同書を読んで小生は「目からウロコ!」の連続だった。1990年代初期、バブル景気の余韻が残っていた頃だと思うが、NHKの「エルミタージュ美術館」番組の人気を受けて小生は「同美術館見学をハイライトにしたロシアツアーを煽ろう、視察してみるか」と考えていた。当時のロシアはソ連崩壊後でルーブルは安く、ドル稼ぎのために外国人の旅行を誘致していたので、上手くやれば人気が出るだろうと思ったのだ。ソ連崩壊でロシア人も自由民主人権法治の民になっているはずだ、という思いもあった。どうやらロシア人を甘く見ていた、無知だった、と教えてくれたのが「ロシアを決して信じるな」である。以下ざっくりと紹介するとこんな風。
【その1】<ミハイールは言うのだ。「相手を信じやすい人、つまり騙されやすい人はロシア人の恰好の的になる。このタイプには嘘の約束が効く。噓がばれても『そんなはずはない、何かの誤解だろう』と勝手に信じ込んでくれるからね。嘘に嘘を重ねて行けるし、何も実行しないでもいいので、まったく楽な相手だ」
私とミハイールは北方領土交渉について会話していたのだが、詳しいことを知らないミハイールは頭を抱えてしまい、一息ついてからそう言ったのだ。「嘘の約束を繰り返すのがロシア人の交渉術」と言わんばかりに得意気だったが、私はロシア人の毒性に触れたように感じた。
難しい交渉には相手がおり、簡単には埒が明かないものだ。だから、まずは相手を油断させるために(相手に期待を持たせるような)嘘の約束を交わす。こうして交渉の主導権を密かに握る。バレると相手は激昂するが、お人好しの人間は「そんなはずはない」と積極的に乗り出してくるから、新しい嘘をつけば相手はほっとする。嘘に嘘を重ねていく・・・まさにロシア人に毒を盛られるのだ。
どんなにお人好しでもやがては不信感を抱き、交渉への熱意を喪失させる。しかしロシア人は「相手に非がある」と開き直る。ロシアの流儀は、交渉の初めに嘘をつき、嘘から交渉をスタートさせるというものだ>
★修一の感想:まるで安倍晋三と森喜朗の2人の元首相の必死の対露外交がなぜ上手く行かなかったを解いているような話だ。始めからプーチン・ロシアは北方領土を返還する気はなく、ちらちらと甘言を弄して日本から支援を引き出し、日米関係にヒビを入れられたら御の字というシナリオだったのだろう。「騙された方が悪い」、これがロシア流なのだ。
「ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト『サハリン2』をめぐるLNG(液化天然ガス)供給への不安も露呈し、日本のエネルギー調達の脆弱性が改めて浮き彫りになっている」(内田高史・東京ガス社長、2022/12/13マイナビニュース)。オソロシア・・・ロシアを信じてはいけない、常に警戒すべし。
【その2】<2014年にロシアがウクライナ領のクリミアを併合したことに端を発し、プーチン・ロシアに対する経済制裁は拡大する一方だ。大企業を中心に経営難に陥るケースが続出し、毎月のように銀行が営業停止に追い込まれている。2018年3月のロシア大統領選の直前に、モスクワ市の都心で街頭インタビューをすると、女子学生はこう率直に語った。
「大学で専門知識を取得しても就職先がない。スーパーの店員になるしかなく、プーチン大統領の再選には反対です。ソ連時代を過ごした母は当時、失業はなかったと回想し、今の若者は不幸な時代に生きていると同情してくれます」
ロシアの統計によれば、失業者は若者に多く、2017年9月時点で20~24歳の失業者は13.9%、15~19歳は25.7%に達する。
プーチン政権が発足してから2020年でまる20年にもなるが、反政府活動化が逮捕されたり毒殺されたりし、辛辣に社会批判する250人のジャーナリストが不審死しているという情報もある。友人のドミートリーとラリーサの夫妻はそのようなプーチン政権に不信感を募らせているが、彼らはこう本音を明かした。
ドミートリーは言う、「私たちの大統領は自分に歯向かう奴らを平気で殺すんだよね。すごい政治家だ。こんな指導者がいるのは世界中でもロシアだけだよ。ロシアはやはり強国だね」。私の解釈では「強国」は限りなく「恐国」に近いように思えた。ラリーサもこう語る。
「ロシアは予見できない国です。予想だにしなかった不思議なことが突然起きたり、時には他人の悪意による行いで生活が歪められたりします。思い通りに行かないことばかりで、他人への期待はいとも簡単に裏切られてしまいます。だからあなたはロシアでは、ビックリしたり失望したりすることばかりに見舞われます。そのため、逆に言えば、人間の倫理や善意を問う文学や哲学思想が多くなるのです」
ドミートリーは苦笑いしながらこう言い放った。「結局、ロシア人のいないところがいい場所なのです」・・・私は言葉を失った>
★修一の感想:強権独裁、それを支える国家テロによる残虐な毒殺事件が続くロシア。プーチンの政敵アレクセイ・ナワリヌイ氏は2020年8月20日、致死性の高い神経剤ノビチョクで毒殺攻撃を受け、一か月ほど死線をさまよった。
《命をとりとめたナワリヌイに協力した調査報道機関ベリングキャットは2020年12月14日、ロシアの独立系メディアであるザ・インサイダー、CNNなどとともにこの事件を取材し、容疑者としてロシア連邦保安庁(FSB)職員8人を公表した。これに対してプーチン大統領は同月17日の記者会見で、ナワリヌイが米国の情報機関から支援を受けていたとして、FSBによる監視を正当化しつつ、「毒を盛るなら、殺害していただろう」と述べてロシア政府が暗殺を試みたとの疑惑を否定した。この顛末はドキュメンタリー映画化された。
連邦刑務所局は2020年12月28日、ナワリヌイに対し帰国とモスクワにある当局事務所への出頭を命令、帰国しない場合は収監すると警告した。また、翌月12日にはナワリヌイが執行猶予の条件を破ったとして、当局が裁判所に同氏の収監許可を要求した。
ナワリヌイは2021年1月13日、同月17日に帰国すると発表、17日の夜にモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に到着するも当局に拘束された。ナワリヌイの弁護士を務めるオリガ・ミハイロバは、ナワリヌイが入国する前に拘束されたと明らかにした。ミハイロバによると拘束の際に当局はミハイロバの同行を認めなかった》(WIKI)
まるで狂犬のような独裁統治でプーチンはやりたい放題。有史以来、言論・報道の自由がないから国民の大多数は独裁者にマインドコントロールされているか、本音を隠して表は「従順な良き国民」を演じているのだろう。不満や疑問に思ったところで国民は報復を恐れて「触らぬ神に祟りなし」と自己保身で殻に閉じこもるか、祖国から逃げ出すしかない。それともウォッカをひっかけて憂さを晴らすのか。
現代ロシアの作家ドミトリー・ブイコフ曰く「ウォッカは、いわば潤滑剤だ。ロシア人と現実との間の緊張を和らげてくれる。ウォッカがなかったら、ロシア人の傷つきやすい魂と残酷な現実は、互いに傷つけ合ったことだろう」。
しかし、今年2月24日のロシアのウクライナ侵略はウォッカで癒せるものではなかった。翌日のラジオ局「モスクワのこだま」の持ち番組でブイコフはこう嘆いたという。
<今日の放送をしないで済むのなら、高い代償を払ってでもそうしたかった。自分の母親が亡くなった日と同じくらいの悲しみを抱え、それでも今日、逃げ出すことはできなかった。私たちが生きているあいだに、またもや戦争が起きた。
ロシアがどうやってこの戦争から抜け出すのか、そのときどうなっているのか、私にはわからない。おそらく、とても長い時間がかかるだろう。ロシアにとってこの戦争が、自国民との戦争にもなることは間違いない。すでにモスクワでも平和を訴えた人が1000人以上逮捕され、わずかに生き延びていた報道機関も制圧され、「戦争に反対する可能性がある」だけの人々の自宅にまで警察が押しかけて逮捕しようとしている・・・
いまのロシア政府はブレジネフ政権と比較にもならないほど、女だろうと子供だろうと自民族だろうと他民族だろうとどんな相手も敵に仕立てあげようとしている。周知のようにプーチンはなにか超越的というか、形而上学的といってもいいほどの憎悪にかられている。これは恐ろしいことだが、最も恐ろしいのはロシアがこの先長い時間をかけてその道を行こうとしていることだ・・・>(岩波書店のサイト「コロナの時代の想像力」2/25)
ロシア、中共、北朝鮮・・・21世紀の火薬庫だ。自由陣営は軍事力・防衛力を高め、露中北を包囲し、孤立させ、崩壊・自壊させるべし。備えあれば憂いなし、日本が核兵器を大量に持つだけでも大きな抑止力になる。世界は平時から戦時へ向かっている、日本も議論から行動へ大飛躍すべき秋だ。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
https://www.facebook.com/shuichi.ishii.14
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」114/通算546 2022/12/16/金】屋上庭園の防水&リニューアル作戦は12/14に南西側の花壇塗装を完了して基本的に終えた。台風後の9/27から3か月近くヒーヒー言いながらの悪戦苦闘の作業だったが、結構充実感はあったし、体を動かしていたから手足の筋肉がずいぶんガッチリし、食欲も旺盛になったきたので、この冬を乗り越える自信も高まってきた。
一連の営繕作業は“オーストラリアン・ハズバンド”、DIYで人件費ゼロだから随分安く済んだ。1.6リットルのペンキは1缶4000円として20缶だから8万円、刷毛や金物などを含めて12万円ほどか。単純な比較はできないが、10年ほど前に業者に頼んだら特注の「笠木/かさぎ」も使ったので200万円ほどかかった。人件費がないと随分安いもので、10分の1とか2でできることもあるわけだ。
小生の場合DIYは「遊び」でもあり、12万円で3か月近くも大いに楽しめたのは結構なことだった。あとはコマメにメンテナンスすればいい・・・ところが人間の性か、問題が発生しないと、つまり尻に火がつかないと行動しないのだ。平和がずーっと続くと思っている。多分大丈夫だろう、そのうち点検するか・・・なんていう調子。トラブルが起きるまで見ざる聞かざる言わざる、ノー天気。「先の心配していたらキリがない、第一辛気臭いよ、♪それよりボクと踊りませんか、ウフッフーッ!」。
大慌てで軍事力増強・・・3年後4年後には大丈夫だと思っているようだが、オリンピックやサッカー・ワールドカップじゃあるまいし中露北がそれを指くわえて待っているか? 第一、中露北も軍事力を増強するのだから「十分な軍事力、これで安心」なんてあるわけない。軍拡競争するなら安上がりの核兵器を開発したり買ったり借りたらいい。軍拡競争はカネがかかるから中露北は日本が脆弱な、兵器もキンタマ=根性も弾もちょっとしかない時を狙って襲うだろう。
プーチン・ロシアに侵略されたウクライナは必死で戦っているが、素人でも3か月ほど訓練すればまあまあ戦えるようだ。実戦の中で鍛えられ有能な戦士になっていくのだろう。ウクライナ人は300年間もロシアの強権独裁支配を受け、1917年のロシア革命の際にも独立を目指したが、残虐なレーニン、トロツキーに潰されてしまった。ロシアとの今の戦いを勝たなければ独立のチャンスは再び三度遠のくから必死である。
1991年のソ連崩壊の際にウクライナは表向きは独立したのだが、米英はウクライナに「危機の時は我々が守るから」と核兵器を放棄させた。プーチン・ロシアは2014年にウクライナからクリミア半島を強奪したが、米英は「危機の時は我々は逃げるから」になってしまった。プーチンは「米英は口先だけのヘタレ」と意を強くしたろう。
それから8年、米国では是々非々外交で何をしでかすか分からないトランプから、平気でアフガニスタンから逃げ出すほど軽佻浮薄なバイデンに政権が変わると、プーチンはウクライナ侵略の好機と判断したろう。米英はもとよりEUも日本も完全になめられたのだ。
営繕作業にキリがついて小生は久し振りにブックオフへ行ったら「おい、ヂイサン、俺を読め」と自己主張する本があった。「ロシアを決して信じるな」(新潮新書、2021年)だった。著者は中村逸郎氏。一気呵成に読破したが、とても分かりやすかった。ロシア研究者だが、情に流されずにロシア人を観察し、その屈折した生態、思考を愛憎交えて深く紹介している。WIKIによると氏の経歴は、
<1956年11月2日生まれ、国際政治学者。筑波大学名誉教授、島根県立大学客員教授、専門研究分野は現代ロシア政治、日露関係。博士。
来歴:島根県生まれ。1980年3月、学習院大学法学部政治学科卒業。1986年3月、同大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。1983年9月から1985年迄モスクワ国立大学、1988年9月から1990年迄ソ連邦科学アカデミー「国家と法研究所」に留学。
2000年4月、島根県立大学総合政策学部助教授、2001年4月、筑波大学社会科学系助教授、2007年7月、同大学人文社会系教授に昇進。2012年4月から2014年3月まで、同大学国際総合学類長。また、東京大学教養学部後期課程非常勤講師も担当。2022年3月、筑波大学を定年退職。2022年4月から島根県立大学客員教授。筑波大学名誉教授。
2022年5月、ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシア政府による日本への報復措置によって、ロシア連邦への入国を恒久的に禁止された。
著書:『東京発 モスクワ秘密文書』1995年、『ロシア市民 体制転換を生きる』1999年、『帝政民主主義国家ロシア プーチンの時代』2005年、『虚栄の帝国ロシア 闇に消える「黒い」外国人たち』2007年、『ロシアはどこに行くのか タンデム型デモクラシーの限界』2008年、『ろくでなしのロシア プーチンとロシア正教』2013年、『シベリア最深紀行 知られざる大地への七つの旅』2016年、『ロシアを決して信じるな』2021年>
「ロシアを決して信じるな」の版元・新潮社はこうアピールしている。
<北方領土は返ってこない。ロシア人は狡猾で、約束は厳禁である――。毎年、現地を踏査し、多くの知己をもつ、知の最前線に立つ著者にそこまで考察させるロシアとは、一体、どのような国なのか。
誤作動のため寸前で発射をまぬがれた核ミサイル。ありふれた出来事となった反体制者の暗殺。世界最悪の飲酒大国。悪魔への奇妙な共感。全土に流布する「プーチンは偽者」という説。さもしい大都市モスクワ……かの国の不条理に絶望し、怒り、戸惑い、ときに嗤いつつ描き、ロシアの本性を浮かび上がらせる。
魔窟のような隣国を知悉するために、現代史の貴重なスクープからスリリングな紀行まで、柔らかな筆致で綴る日本人必読の書。
序章 核ボタンはついに押されたのか!?/第一章 暗殺社会ロシア/第二章 「ひたすら祈る」―魔窟からの脱出/第三章 倒錯する日常生活/第四章 決して信じるな―ロシア人は嘘八百/第五章 「偽プーチン」説の真相/第六章 飲まずにはいられない―世界最悪の飲酒大国/第七章 祖国を愛せないロシア人の悲哀/第八章 ロシアの二枚舌外交―ウラジオストクの北朝鮮労働者/第九章 モスクワのわるいやつら―さもしさがあふれる都市/第十章 暴走する親切心/終章 絶望のロシア>
同書を読んで小生は「目からウロコ!」の連続だった。1990年代初期、バブル景気の余韻が残っていた頃だと思うが、NHKの「エルミタージュ美術館」番組の人気を受けて小生は「同美術館見学をハイライトにしたロシアツアーを煽ろう、視察してみるか」と考えていた。当時のロシアはソ連崩壊後でルーブルは安く、ドル稼ぎのために外国人の旅行を誘致していたので、上手くやれば人気が出るだろうと思ったのだ。ソ連崩壊でロシア人も自由民主人権法治の民になっているはずだ、という思いもあった。どうやらロシア人を甘く見ていた、無知だった、と教えてくれたのが「ロシアを決して信じるな」である。以下ざっくりと紹介するとこんな風。
【その1】<ミハイールは言うのだ。「相手を信じやすい人、つまり騙されやすい人はロシア人の恰好の的になる。このタイプには嘘の約束が効く。噓がばれても『そんなはずはない、何かの誤解だろう』と勝手に信じ込んでくれるからね。嘘に嘘を重ねて行けるし、何も実行しないでもいいので、まったく楽な相手だ」
私とミハイールは北方領土交渉について会話していたのだが、詳しいことを知らないミハイールは頭を抱えてしまい、一息ついてからそう言ったのだ。「嘘の約束を繰り返すのがロシア人の交渉術」と言わんばかりに得意気だったが、私はロシア人の毒性に触れたように感じた。
難しい交渉には相手がおり、簡単には埒が明かないものだ。だから、まずは相手を油断させるために(相手に期待を持たせるような)嘘の約束を交わす。こうして交渉の主導権を密かに握る。バレると相手は激昂するが、お人好しの人間は「そんなはずはない」と積極的に乗り出してくるから、新しい嘘をつけば相手はほっとする。嘘に嘘を重ねていく・・・まさにロシア人に毒を盛られるのだ。
どんなにお人好しでもやがては不信感を抱き、交渉への熱意を喪失させる。しかしロシア人は「相手に非がある」と開き直る。ロシアの流儀は、交渉の初めに嘘をつき、嘘から交渉をスタートさせるというものだ>
★修一の感想:まるで安倍晋三と森喜朗の2人の元首相の必死の対露外交がなぜ上手く行かなかったを解いているような話だ。始めからプーチン・ロシアは北方領土を返還する気はなく、ちらちらと甘言を弄して日本から支援を引き出し、日米関係にヒビを入れられたら御の字というシナリオだったのだろう。「騙された方が悪い」、これがロシア流なのだ。
「ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト『サハリン2』をめぐるLNG(液化天然ガス)供給への不安も露呈し、日本のエネルギー調達の脆弱性が改めて浮き彫りになっている」(内田高史・東京ガス社長、2022/12/13マイナビニュース)。オソロシア・・・ロシアを信じてはいけない、常に警戒すべし。
【その2】<2014年にロシアがウクライナ領のクリミアを併合したことに端を発し、プーチン・ロシアに対する経済制裁は拡大する一方だ。大企業を中心に経営難に陥るケースが続出し、毎月のように銀行が営業停止に追い込まれている。2018年3月のロシア大統領選の直前に、モスクワ市の都心で街頭インタビューをすると、女子学生はこう率直に語った。
「大学で専門知識を取得しても就職先がない。スーパーの店員になるしかなく、プーチン大統領の再選には反対です。ソ連時代を過ごした母は当時、失業はなかったと回想し、今の若者は不幸な時代に生きていると同情してくれます」
ロシアの統計によれば、失業者は若者に多く、2017年9月時点で20~24歳の失業者は13.9%、15~19歳は25.7%に達する。
プーチン政権が発足してから2020年でまる20年にもなるが、反政府活動化が逮捕されたり毒殺されたりし、辛辣に社会批判する250人のジャーナリストが不審死しているという情報もある。友人のドミートリーとラリーサの夫妻はそのようなプーチン政権に不信感を募らせているが、彼らはこう本音を明かした。
ドミートリーは言う、「私たちの大統領は自分に歯向かう奴らを平気で殺すんだよね。すごい政治家だ。こんな指導者がいるのは世界中でもロシアだけだよ。ロシアはやはり強国だね」。私の解釈では「強国」は限りなく「恐国」に近いように思えた。ラリーサもこう語る。
「ロシアは予見できない国です。予想だにしなかった不思議なことが突然起きたり、時には他人の悪意による行いで生活が歪められたりします。思い通りに行かないことばかりで、他人への期待はいとも簡単に裏切られてしまいます。だからあなたはロシアでは、ビックリしたり失望したりすることばかりに見舞われます。そのため、逆に言えば、人間の倫理や善意を問う文学や哲学思想が多くなるのです」
ドミートリーは苦笑いしながらこう言い放った。「結局、ロシア人のいないところがいい場所なのです」・・・私は言葉を失った>
★修一の感想:強権独裁、それを支える国家テロによる残虐な毒殺事件が続くロシア。プーチンの政敵アレクセイ・ナワリヌイ氏は2020年8月20日、致死性の高い神経剤ノビチョクで毒殺攻撃を受け、一か月ほど死線をさまよった。
《命をとりとめたナワリヌイに協力した調査報道機関ベリングキャットは2020年12月14日、ロシアの独立系メディアであるザ・インサイダー、CNNなどとともにこの事件を取材し、容疑者としてロシア連邦保安庁(FSB)職員8人を公表した。これに対してプーチン大統領は同月17日の記者会見で、ナワリヌイが米国の情報機関から支援を受けていたとして、FSBによる監視を正当化しつつ、「毒を盛るなら、殺害していただろう」と述べてロシア政府が暗殺を試みたとの疑惑を否定した。この顛末はドキュメンタリー映画化された。
連邦刑務所局は2020年12月28日、ナワリヌイに対し帰国とモスクワにある当局事務所への出頭を命令、帰国しない場合は収監すると警告した。また、翌月12日にはナワリヌイが執行猶予の条件を破ったとして、当局が裁判所に同氏の収監許可を要求した。
ナワリヌイは2021年1月13日、同月17日に帰国すると発表、17日の夜にモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に到着するも当局に拘束された。ナワリヌイの弁護士を務めるオリガ・ミハイロバは、ナワリヌイが入国する前に拘束されたと明らかにした。ミハイロバによると拘束の際に当局はミハイロバの同行を認めなかった》(WIKI)
まるで狂犬のような独裁統治でプーチンはやりたい放題。有史以来、言論・報道の自由がないから国民の大多数は独裁者にマインドコントロールされているか、本音を隠して表は「従順な良き国民」を演じているのだろう。不満や疑問に思ったところで国民は報復を恐れて「触らぬ神に祟りなし」と自己保身で殻に閉じこもるか、祖国から逃げ出すしかない。それともウォッカをひっかけて憂さを晴らすのか。
現代ロシアの作家ドミトリー・ブイコフ曰く「ウォッカは、いわば潤滑剤だ。ロシア人と現実との間の緊張を和らげてくれる。ウォッカがなかったら、ロシア人の傷つきやすい魂と残酷な現実は、互いに傷つけ合ったことだろう」。
しかし、今年2月24日のロシアのウクライナ侵略はウォッカで癒せるものではなかった。翌日のラジオ局「モスクワのこだま」の持ち番組でブイコフはこう嘆いたという。
<今日の放送をしないで済むのなら、高い代償を払ってでもそうしたかった。自分の母親が亡くなった日と同じくらいの悲しみを抱え、それでも今日、逃げ出すことはできなかった。私たちが生きているあいだに、またもや戦争が起きた。
ロシアがどうやってこの戦争から抜け出すのか、そのときどうなっているのか、私にはわからない。おそらく、とても長い時間がかかるだろう。ロシアにとってこの戦争が、自国民との戦争にもなることは間違いない。すでにモスクワでも平和を訴えた人が1000人以上逮捕され、わずかに生き延びていた報道機関も制圧され、「戦争に反対する可能性がある」だけの人々の自宅にまで警察が押しかけて逮捕しようとしている・・・
いまのロシア政府はブレジネフ政権と比較にもならないほど、女だろうと子供だろうと自民族だろうと他民族だろうとどんな相手も敵に仕立てあげようとしている。周知のようにプーチンはなにか超越的というか、形而上学的といってもいいほどの憎悪にかられている。これは恐ろしいことだが、最も恐ろしいのはロシアがこの先長い時間をかけてその道を行こうとしていることだ・・・>(岩波書店のサイト「コロナの時代の想像力」2/25)
ロシア、中共、北朝鮮・・・21世紀の火薬庫だ。自由陣営は軍事力・防衛力を高め、露中北を包囲し、孤立させ、崩壊・自壊させるべし。備えあれば憂いなし、日本が核兵器を大量に持つだけでも大きな抑止力になる。世界は平時から戦時へ向かっている、日本も議論から行動へ大飛躍すべき秋だ。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
https://www.facebook.com/shuichi.ishii.14
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」