ドローンが戦争の主役になった
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」62/通算494 2022/7/1/金】涼しいうちにと早朝5時過ぎに犬の散歩に出かけたが、そういう犬散歩人がウジャウジャいて、皆ニコニコ顔で「おはようございまーす!」。世はこともなし・・・結構なことだが、「子供要らない、ワンコで十分」のようで、日本は大丈夫かなあと心配になる。
子供を産み育てるのは「老後の備え」でもあったが、今は「福祉」の名のもとに「子供がなくても国が面倒見ます」というようになってきたから、子供を持たない夫婦や、それ以前に結婚もしない人がずいぶん増えている。そういう“バラマキ福祉”政治を「大きな政府」と言うようだが、小生は伝統的な家中心の「小さな政府」の方が好きだ。
「揺り籠から墓場まで」国が関与する福祉政策は一見良さそうだが、やり過ぎると自尊自恃、自立の精神が弱まり、「努力しなくてもいいんだ」という国家依存症=怠け者だらけになり、結局は国家、国民を弱体化させ、最後は強国に併呑、支配されて奴隷や民族消滅に至るのではないか。
かつて列強の植民地にされた人々は、1945年以降の戦後に独立し自分たちの国家を創ったものの、国家経営が上手くいかずに、果ては内戦や紛争もあって生活に窮し、旧宗主国などへ逃げ出す人々が珍しくない。難民を装い、先進国の福祉政策をあてにしてボートピープルになり、働かなくても食えるという“この世の天国”を目指すパターンが多いようだ。
人は易きに流れやすい。一流の国でも二流、三流の国でも、自尊自立の気概が低下すると亡国になりやすい。家族を守る、一族を守る、部族・祖国・民族を守るというのは人間の土台である。それを持たないとか、持てない、あるいは失った人間や民族、国家は、結局は無縁仏のようになり消滅、絶滅するだけである。古代ギリシャ人のDNAは消えたよう・・・栄枯盛衰、世の倣いか。
現代ウクライナ人は今必死で軍事大国のロシアと戦っている。ウクライナは1917年のロシア共産主義独裁革命でソ連に併呑されたが、言語の違い、国家観の違い(小さな政府志向)もあってそれ以前の1700年頃から帝政ロシアからの独立願望を強めていったようだ。
1991年のソ連崩壊でウクライナはようやく赤色ロシアのクビキを離れて自立国家になったが、2000年代になると危機を脱したプーチン・ロシアは「衣食足りてソ連帝国の再興」を目指すようになり、ウクライナ奪還侵略戦争を始め、クリミア半島を強奪した(2014年)。国際社会はボーゼンとしてなす術もなかったが、それに味をしめて今、東部侵略を進めている。
我らは自由民主のロシアは大歓迎するが、軍事力で周辺国を併呑する赤色ロシア帝国には大反発する。プーチン・ロシア帝国は敵であり、永遠に葬るべし。勝つためには根性だけではなく、敵を知り、己を知り、武器を用意し、有志国が団結しなければならない。大変なことだが、やるしかない。
前回紹介した「自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争――ウクライナの戦いから我々は何を学ぶべきか」(新潮社Foresight掲載2022/6/7)の続きとして、現代の戦争で主役になりそうな「ドローン」やレーザー砲など最新兵器についての箇所を以下、転載する。
・・・・・・
尾上定正(元航空自衛隊補給本部長):(ウクライナの戦い)から学び取るべき教訓もあります。航空優勢の確保は、航空自衛隊が常に最優先の任務として追求してきたものですけれども、今回ロシア側は空軍力よりも、ほとんどミサイルや砲弾で攻撃してるわけです。それからドローンも使ってます。
ドローンやミサイルや砲弾で戦われる戦争において、「戦闘機がそのエリアを自由に飛び回れること」という「航空優勢」の定義そのものを、もう一度問い直さなければいけないのではないかと、考えています。
日本の防衛を考えたときに、ミサイル、ドローン、無人機を用いた攻撃をどうやって防御するのか。かなりイノベーティブに考えないと、今持っているSM3だとかペトリオットPAC3みたいな迎撃ミサイルだけでは、なかなか難しいと思います。
そもそも(迎撃ミサイルは)コストパフォーマンス(コスパ)がよくない。4月にイスラエルが、アイアンビームという高出力レーザー砲でドローンや巡航ミサイルを撃墜するのに成功しました。米海軍も太平洋上でトレイルブレイザーという同じく高出力レーザーでの撃墜試験に成功したと報道されています。
イスラエルのほうは一発500円でミサイルを落とせるという、非常にコスパのいいものらしいんですね。そういったイノベーティブな技術も、スピードとスケール感を持って導入していく必要があると思っています。
武居智久(元海上幕僚長):我々は今回のウクライナ戦争から(学んだ一つは)、無人航空システムを脅威と認識すべきだということです。
ウクライナ軍が使用しているトルコ製の無人機「バイラクタルTB2」(以下TB2)の価格に関する情報は公開されていませんが、一機約200万ドル(2.4億円)とも言われています。ウクライナ軍がTB2を使ってロシア海軍を夜間攻撃したときの映像がYouTubeで流れていましたが、この映像を見る限り、ロシア海軍はミサイルを撃たれた後に機関砲で反撃しています。つまり事前に探知できなかった。
TB2は全長6.5m全幅12m、アメリカの無人機MQ9リーパー(全長11m全幅20m)の2分の1のサイズで、両者とも中高度長時間滞空型無人機です。このMQ9リーパーのRCS(レーダー反射断面積)は小鳥程度の大きさと言われて、これは最新のステルス戦闘機であるF-35並みです。そうすると、バイラクタルTB2のRCSはもっと小さいと推定されます。
それが(高度)2万フィートぐらいで飛ぶと、おそらくレーダーでは容易に探知できないし、機関砲で落とすなんてことは不可能です。わずか時速70マイルぐらいの低速で飛ぶTB2でさえ探知が難しいということを考えてみると、無人機というのは我々にとってはかなり脅威になっていると思います。
しかも、先ほど尾上さんからもコスパの話がありましたけど、無人機って安いんですよね。2019年9月に、イエメンの反政府組織フーシ派がサウジアラビアの2つの油田をドローン10機で攻撃したというニュースがありましたが、あのドローンは1機が約1000ドル(12万円)前後と言われています。
これを迎撃するためにサウジはペトリオットミサイルを撃った。ペトリオットは1発3億~4億円です。この費用対効果ということを考えてみると、ドローンに効率的・効果的に対処する方法を考えないといけない。機関砲では、かなり低高度に来ないと落とせない。従って、世界中に溢れている無人機を我々は脅威として認識すべきだと思います>(以上)
ハイテク最前線の武器はカネのかかる重厚長大からお手軽な軽薄短小に移行し始めたのだ。CNET Japan 2022/4/15「ドローンが戦争のルールを変える――ウクライナで明らかになった実力」から。
<ウクライナの非営利組織Come Back Aliveは、ロシアの侵攻に抗戦する兵士のために弾薬、ライフルスタンド、無線機器などの調達を支援している。一方で、戦争に使うというより、むしろ迫力のある「YouTube」動画を撮影する機器も調達した。DJIのドローン「Mavic 3」を24台だ。
「ドローンはわれわれの目だ」と、ウクライナ陸軍士官は話す。士官は2015年からドローンを扱っており、兵士や民間人がドローンを使って、隣村の様子や、1km先の路上を偵察しているのだという。「ロシア軍が砲撃の準備に入ったら、民間人を避難させることができる。予防的攻撃に出れば、ウクライナの人々を救えるかもしれない」
商用のクワッドコプターから、固定翼型の軍用モデルまで、ドローンはウクライナにとって重要であることが明らかになってきた。火力で劣るウクライナ軍が、圧倒的なロシア軍を防げる可能性が少しでも高くなるからだ。
戦争が始まって間もない頃、民間のドローンチームが陸軍部隊と協力して、首都キーウに向かう装甲車両団を足止めする手助けをした。夜間になると、ドローンが先頭車両に小型の爆発物を投下し、地雷の効果もあわせて、玉突き事故を起こさせた。また、このチームは、ロシア軍がキーウ近郊の空港を占拠しようとした最初の試みを退けるのにも一役買っている。
広義の無人航空機が初めて戦争に使われたのは、はるか昔、1849年のことだった。第二次世界大戦中には、日本が太平洋を越えて米国まで風船爆弾を飛ばしている。「ドローン」という言葉は、General Atomicsの大型ドローン「MQ-1 Predator」と「MQ-9 Reaper」を米軍がアフガニスタンとイラクで戦線に投入してから、一般にも知られるようになった。2011年の時点で、米陸軍は巨額の費用を要するこの大型システムを1万1000機保有していた。
だが、片や軍事予算の乏しいウクライナ、片や巨大な軍事力を擁するロシアというこの非対称戦争ほど、ドローンが重要な役割を果たしたことはなかった。小型化によって、商用ドローンのコスト、飛行時間、航続距離は向上した。一方、ウクライナは軍用ドローンを利用して、膨大な費用がかかるロシアの装甲車両に見事に対抗している。ドローンが、戦争のルールを書き換えつつあるのだ。
商用ドローンが活躍するのは主に偵察だが、ウクライナの軍用ドローン群は、実際の攻撃でも有用性を実証している。ロシアの弾薬補給車と地対空ミサイルランチャーの破壊には、トルコ製のTB2が使われた。ウクライナの企業が開発した「Punisher」は、目立ちにくい偵察ドローンだが、4ポンド(約1.8kg)の爆弾を運ぶこともできる。米国防省は小型の軍用ドローン「Switchblade」と「Puma」を100機以上ウクライナに輸出している。
トルコ製のTB2は翼幅約12m、GPSなしで飛行し、レーザー誘導の爆弾やロケット弾を搭載できる。費用は1機あたりおよそ100万ドル(約1億2500万円)。「TB2は、地上部隊に対してかなり破壊的な成果をあげており、ウクライナでは士気を鼓舞する代名詞のようになっている」そうだ。
ロシア軍を悩ませることに大きく成功していることからTB2を称賛するミュージックビデオまで登場した。「ロシアの無法者もバイラクタルTB2でおだぶつよ」。この曲の訳詞の一節だ>
「バイラクタルTB2」は軍事に疎い小生でも知っており、軍事ドローンの象徴的存在だ。2年ほど前に佐藤仁氏(学術研究員・著述家、著書に「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」など)のサイトでトルコ製「ドローン兵器」の色々を知ったが、まさか実戦の主役になるとは思いもよらなかった。しかし、氏の6/29の以下の記事によると撃墜されるドローンも多いようだ。
<ウクライナ軍がトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」を活用してロシア軍を多く攻撃している。そして爆破に成功するたびに上空からの動画をSNSで公開して世界中にアピールしている。このようなSNSや動画だけを見ていると、ウクライナ軍が優勢のように見えてしまう。だがこのように軍事ドローンで攻撃に成功する前にロシア軍に上空で撃墜されてしまうことも多い。TB2でも全戦全勝ではない。ロシア軍の地対空ミサイルに多くの軍事ドローンが撃墜されている>
ドローン兵器は画期的ではあるが絶対的な優位性を持っているわけではないということだ。西側諸国はウクライナにどんどん武器などを提供し続けプーチン・ロシアを叩き続けなければならない。そうしないと間違いなく習近平・中共までが暴れ出し、国際秩序は崩壊しかねない。
それにしても日本の兵器装備は最先端の戦争から遅れていないか。核兵器は持っていない、最先端のドローン兵器もない、そもそも敵基地攻撃能力の有無さえも怪しい。現代の戦争はハイブリッド戦、「正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせている戦争」だが、日本はそれへの対応がずいぶん遅れているようだ。前述の自衛隊最高幹部の座談会でも懸念が指摘されている。
・・・・・・・
武居智久(元海上幕僚長):ハイブリッド戦というのは、軍事力が背後にないとできません。ロシアのように、戦略核攻撃から情報戦まで様々な能力が欠落なくそろっていて、はじめて自由にハイブリッド戦ができる。
指摘したいのは、ロシアがハイブリッド戦に失敗した結果、戦争がホット・ウォーにエスカレートしたという点です。中国はロシア以上にバラエティに富んだ軍事力を持っていますから、仮に中国がハイブリッド戦を仕掛けるとき、常に中国がホット・ウォーにエスカレートさせる可能性がある。ですから、それに耐えられるような軍事力を必ず備えなければいけない。
ハイブリッド戦に勝つだけでいいと思ったら駄目で、その次には必ず核戦力の使用とか、通常戦力による戦いの可能性があると考えておかなければいけない。こうしたハイブリッド戦の本質について、改めて考えさせられました。
先ほど尾上さんから、抑止が全てであることを前提に色々学んでいくべきだという意見がありました。そのために軍事力をちゃんと持たなければいけないと。私は、特異な政治体質の国とか特異な意思決定をする国に対しては「抑止は効かない」という前提で準備をしておかなければ、たぶん心の持ち方が大きく違ってくるんじゃないかなと思うんですよ。
今まで我々は防衛力を抑止力の観点から述べる機会が多かったのですが、「抑止は効かないから戦争に備える」という前提で準備するのと、「抑止が破綻したら戦争になる」と考えるのとでは、少なからず現場の緊張感が違ってくる。我々は後者の視点で考えてきましたが、特異な政治体質で独裁的なリーダーのいる国を相手にする場合は、想定外の事態が起きるという前提で準備をすべきだと思いました。
尾上定正(元航空自衛隊補給本部長):やはり「抑止のパラドックス」というものを我々はよく理解しておく必要があると思います。抑止は破綻してはじめて効かなかったということがわかる、ということです。抑止を効かせるためには、いま武居さんがおっしゃったような、核抑止から通常戦の抑止、それからハイブリッド戦の中での効果的な対処、そういったものが総合的にバランスよく準備されておかなければいけない。やはり最終的には火力だと思います。爆弾に勝つには相手を上回る爆弾しかないないのだろうと。だから、最終的にはそれをしっかり整えておくということが必要です。(以上)
・・・・・・・・
「戦争は学んだ者、狡猾な者が勝つのである、最上策は戦わずして勝つ、である」と孫子は言っている。核兵器の開発・配備、ハイブリッド戦への対応など、拙速だろうがどんどん進めるべきだ。学ばざれば昏し、備えあれべ憂いなし。中露北は米国の軍事力を恐れているから対日台侵略を今のところ控えているが、米軍が健在のうちに日台は核開発を含め戦力を向上させなくてはならない。
次期大戦で自由陣営は、敵である中露北の赤色独裁帝国が二度と侵略できないまでに叩くことは当然だが、占領に際しては徹底的に国体を変えなければならない。これは難しい話ではない。天からの贈り物である素晴らしい平和憲法を与えるだけでいいのだ。ゴロツキの中露北でも80年ほどは大人しくなる。これは実験済み、効果抜群だから採用すべし。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
https://www.facebook.com/shuichi.ishii.14
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」62/通算494 2022/7/1/金】涼しいうちにと早朝5時過ぎに犬の散歩に出かけたが、そういう犬散歩人がウジャウジャいて、皆ニコニコ顔で「おはようございまーす!」。世はこともなし・・・結構なことだが、「子供要らない、ワンコで十分」のようで、日本は大丈夫かなあと心配になる。
子供を産み育てるのは「老後の備え」でもあったが、今は「福祉」の名のもとに「子供がなくても国が面倒見ます」というようになってきたから、子供を持たない夫婦や、それ以前に結婚もしない人がずいぶん増えている。そういう“バラマキ福祉”政治を「大きな政府」と言うようだが、小生は伝統的な家中心の「小さな政府」の方が好きだ。
「揺り籠から墓場まで」国が関与する福祉政策は一見良さそうだが、やり過ぎると自尊自恃、自立の精神が弱まり、「努力しなくてもいいんだ」という国家依存症=怠け者だらけになり、結局は国家、国民を弱体化させ、最後は強国に併呑、支配されて奴隷や民族消滅に至るのではないか。
かつて列強の植民地にされた人々は、1945年以降の戦後に独立し自分たちの国家を創ったものの、国家経営が上手くいかずに、果ては内戦や紛争もあって生活に窮し、旧宗主国などへ逃げ出す人々が珍しくない。難民を装い、先進国の福祉政策をあてにしてボートピープルになり、働かなくても食えるという“この世の天国”を目指すパターンが多いようだ。
人は易きに流れやすい。一流の国でも二流、三流の国でも、自尊自立の気概が低下すると亡国になりやすい。家族を守る、一族を守る、部族・祖国・民族を守るというのは人間の土台である。それを持たないとか、持てない、あるいは失った人間や民族、国家は、結局は無縁仏のようになり消滅、絶滅するだけである。古代ギリシャ人のDNAは消えたよう・・・栄枯盛衰、世の倣いか。
現代ウクライナ人は今必死で軍事大国のロシアと戦っている。ウクライナは1917年のロシア共産主義独裁革命でソ連に併呑されたが、言語の違い、国家観の違い(小さな政府志向)もあってそれ以前の1700年頃から帝政ロシアからの独立願望を強めていったようだ。
1991年のソ連崩壊でウクライナはようやく赤色ロシアのクビキを離れて自立国家になったが、2000年代になると危機を脱したプーチン・ロシアは「衣食足りてソ連帝国の再興」を目指すようになり、ウクライナ奪還侵略戦争を始め、クリミア半島を強奪した(2014年)。国際社会はボーゼンとしてなす術もなかったが、それに味をしめて今、東部侵略を進めている。
我らは自由民主のロシアは大歓迎するが、軍事力で周辺国を併呑する赤色ロシア帝国には大反発する。プーチン・ロシア帝国は敵であり、永遠に葬るべし。勝つためには根性だけではなく、敵を知り、己を知り、武器を用意し、有志国が団結しなければならない。大変なことだが、やるしかない。
前回紹介した「自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争――ウクライナの戦いから我々は何を学ぶべきか」(新潮社Foresight掲載2022/6/7)の続きとして、現代の戦争で主役になりそうな「ドローン」やレーザー砲など最新兵器についての箇所を以下、転載する。
・・・・・・
尾上定正(元航空自衛隊補給本部長):(ウクライナの戦い)から学び取るべき教訓もあります。航空優勢の確保は、航空自衛隊が常に最優先の任務として追求してきたものですけれども、今回ロシア側は空軍力よりも、ほとんどミサイルや砲弾で攻撃してるわけです。それからドローンも使ってます。
ドローンやミサイルや砲弾で戦われる戦争において、「戦闘機がそのエリアを自由に飛び回れること」という「航空優勢」の定義そのものを、もう一度問い直さなければいけないのではないかと、考えています。
日本の防衛を考えたときに、ミサイル、ドローン、無人機を用いた攻撃をどうやって防御するのか。かなりイノベーティブに考えないと、今持っているSM3だとかペトリオットPAC3みたいな迎撃ミサイルだけでは、なかなか難しいと思います。
そもそも(迎撃ミサイルは)コストパフォーマンス(コスパ)がよくない。4月にイスラエルが、アイアンビームという高出力レーザー砲でドローンや巡航ミサイルを撃墜するのに成功しました。米海軍も太平洋上でトレイルブレイザーという同じく高出力レーザーでの撃墜試験に成功したと報道されています。
イスラエルのほうは一発500円でミサイルを落とせるという、非常にコスパのいいものらしいんですね。そういったイノベーティブな技術も、スピードとスケール感を持って導入していく必要があると思っています。
武居智久(元海上幕僚長):我々は今回のウクライナ戦争から(学んだ一つは)、無人航空システムを脅威と認識すべきだということです。
ウクライナ軍が使用しているトルコ製の無人機「バイラクタルTB2」(以下TB2)の価格に関する情報は公開されていませんが、一機約200万ドル(2.4億円)とも言われています。ウクライナ軍がTB2を使ってロシア海軍を夜間攻撃したときの映像がYouTubeで流れていましたが、この映像を見る限り、ロシア海軍はミサイルを撃たれた後に機関砲で反撃しています。つまり事前に探知できなかった。
TB2は全長6.5m全幅12m、アメリカの無人機MQ9リーパー(全長11m全幅20m)の2分の1のサイズで、両者とも中高度長時間滞空型無人機です。このMQ9リーパーのRCS(レーダー反射断面積)は小鳥程度の大きさと言われて、これは最新のステルス戦闘機であるF-35並みです。そうすると、バイラクタルTB2のRCSはもっと小さいと推定されます。
それが(高度)2万フィートぐらいで飛ぶと、おそらくレーダーでは容易に探知できないし、機関砲で落とすなんてことは不可能です。わずか時速70マイルぐらいの低速で飛ぶTB2でさえ探知が難しいということを考えてみると、無人機というのは我々にとってはかなり脅威になっていると思います。
しかも、先ほど尾上さんからもコスパの話がありましたけど、無人機って安いんですよね。2019年9月に、イエメンの反政府組織フーシ派がサウジアラビアの2つの油田をドローン10機で攻撃したというニュースがありましたが、あのドローンは1機が約1000ドル(12万円)前後と言われています。
これを迎撃するためにサウジはペトリオットミサイルを撃った。ペトリオットは1発3億~4億円です。この費用対効果ということを考えてみると、ドローンに効率的・効果的に対処する方法を考えないといけない。機関砲では、かなり低高度に来ないと落とせない。従って、世界中に溢れている無人機を我々は脅威として認識すべきだと思います>(以上)
ハイテク最前線の武器はカネのかかる重厚長大からお手軽な軽薄短小に移行し始めたのだ。CNET Japan 2022/4/15「ドローンが戦争のルールを変える――ウクライナで明らかになった実力」から。
<ウクライナの非営利組織Come Back Aliveは、ロシアの侵攻に抗戦する兵士のために弾薬、ライフルスタンド、無線機器などの調達を支援している。一方で、戦争に使うというより、むしろ迫力のある「YouTube」動画を撮影する機器も調達した。DJIのドローン「Mavic 3」を24台だ。
「ドローンはわれわれの目だ」と、ウクライナ陸軍士官は話す。士官は2015年からドローンを扱っており、兵士や民間人がドローンを使って、隣村の様子や、1km先の路上を偵察しているのだという。「ロシア軍が砲撃の準備に入ったら、民間人を避難させることができる。予防的攻撃に出れば、ウクライナの人々を救えるかもしれない」
商用のクワッドコプターから、固定翼型の軍用モデルまで、ドローンはウクライナにとって重要であることが明らかになってきた。火力で劣るウクライナ軍が、圧倒的なロシア軍を防げる可能性が少しでも高くなるからだ。
戦争が始まって間もない頃、民間のドローンチームが陸軍部隊と協力して、首都キーウに向かう装甲車両団を足止めする手助けをした。夜間になると、ドローンが先頭車両に小型の爆発物を投下し、地雷の効果もあわせて、玉突き事故を起こさせた。また、このチームは、ロシア軍がキーウ近郊の空港を占拠しようとした最初の試みを退けるのにも一役買っている。
広義の無人航空機が初めて戦争に使われたのは、はるか昔、1849年のことだった。第二次世界大戦中には、日本が太平洋を越えて米国まで風船爆弾を飛ばしている。「ドローン」という言葉は、General Atomicsの大型ドローン「MQ-1 Predator」と「MQ-9 Reaper」を米軍がアフガニスタンとイラクで戦線に投入してから、一般にも知られるようになった。2011年の時点で、米陸軍は巨額の費用を要するこの大型システムを1万1000機保有していた。
だが、片や軍事予算の乏しいウクライナ、片や巨大な軍事力を擁するロシアというこの非対称戦争ほど、ドローンが重要な役割を果たしたことはなかった。小型化によって、商用ドローンのコスト、飛行時間、航続距離は向上した。一方、ウクライナは軍用ドローンを利用して、膨大な費用がかかるロシアの装甲車両に見事に対抗している。ドローンが、戦争のルールを書き換えつつあるのだ。
商用ドローンが活躍するのは主に偵察だが、ウクライナの軍用ドローン群は、実際の攻撃でも有用性を実証している。ロシアの弾薬補給車と地対空ミサイルランチャーの破壊には、トルコ製のTB2が使われた。ウクライナの企業が開発した「Punisher」は、目立ちにくい偵察ドローンだが、4ポンド(約1.8kg)の爆弾を運ぶこともできる。米国防省は小型の軍用ドローン「Switchblade」と「Puma」を100機以上ウクライナに輸出している。
トルコ製のTB2は翼幅約12m、GPSなしで飛行し、レーザー誘導の爆弾やロケット弾を搭載できる。費用は1機あたりおよそ100万ドル(約1億2500万円)。「TB2は、地上部隊に対してかなり破壊的な成果をあげており、ウクライナでは士気を鼓舞する代名詞のようになっている」そうだ。
ロシア軍を悩ませることに大きく成功していることからTB2を称賛するミュージックビデオまで登場した。「ロシアの無法者もバイラクタルTB2でおだぶつよ」。この曲の訳詞の一節だ>
「バイラクタルTB2」は軍事に疎い小生でも知っており、軍事ドローンの象徴的存在だ。2年ほど前に佐藤仁氏(学術研究員・著述家、著書に「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」など)のサイトでトルコ製「ドローン兵器」の色々を知ったが、まさか実戦の主役になるとは思いもよらなかった。しかし、氏の6/29の以下の記事によると撃墜されるドローンも多いようだ。
<ウクライナ軍がトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」を活用してロシア軍を多く攻撃している。そして爆破に成功するたびに上空からの動画をSNSで公開して世界中にアピールしている。このようなSNSや動画だけを見ていると、ウクライナ軍が優勢のように見えてしまう。だがこのように軍事ドローンで攻撃に成功する前にロシア軍に上空で撃墜されてしまうことも多い。TB2でも全戦全勝ではない。ロシア軍の地対空ミサイルに多くの軍事ドローンが撃墜されている>
ドローン兵器は画期的ではあるが絶対的な優位性を持っているわけではないということだ。西側諸国はウクライナにどんどん武器などを提供し続けプーチン・ロシアを叩き続けなければならない。そうしないと間違いなく習近平・中共までが暴れ出し、国際秩序は崩壊しかねない。
それにしても日本の兵器装備は最先端の戦争から遅れていないか。核兵器は持っていない、最先端のドローン兵器もない、そもそも敵基地攻撃能力の有無さえも怪しい。現代の戦争はハイブリッド戦、「正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせている戦争」だが、日本はそれへの対応がずいぶん遅れているようだ。前述の自衛隊最高幹部の座談会でも懸念が指摘されている。
・・・・・・・
武居智久(元海上幕僚長):ハイブリッド戦というのは、軍事力が背後にないとできません。ロシアのように、戦略核攻撃から情報戦まで様々な能力が欠落なくそろっていて、はじめて自由にハイブリッド戦ができる。
指摘したいのは、ロシアがハイブリッド戦に失敗した結果、戦争がホット・ウォーにエスカレートしたという点です。中国はロシア以上にバラエティに富んだ軍事力を持っていますから、仮に中国がハイブリッド戦を仕掛けるとき、常に中国がホット・ウォーにエスカレートさせる可能性がある。ですから、それに耐えられるような軍事力を必ず備えなければいけない。
ハイブリッド戦に勝つだけでいいと思ったら駄目で、その次には必ず核戦力の使用とか、通常戦力による戦いの可能性があると考えておかなければいけない。こうしたハイブリッド戦の本質について、改めて考えさせられました。
先ほど尾上さんから、抑止が全てであることを前提に色々学んでいくべきだという意見がありました。そのために軍事力をちゃんと持たなければいけないと。私は、特異な政治体質の国とか特異な意思決定をする国に対しては「抑止は効かない」という前提で準備をしておかなければ、たぶん心の持ち方が大きく違ってくるんじゃないかなと思うんですよ。
今まで我々は防衛力を抑止力の観点から述べる機会が多かったのですが、「抑止は効かないから戦争に備える」という前提で準備するのと、「抑止が破綻したら戦争になる」と考えるのとでは、少なからず現場の緊張感が違ってくる。我々は後者の視点で考えてきましたが、特異な政治体質で独裁的なリーダーのいる国を相手にする場合は、想定外の事態が起きるという前提で準備をすべきだと思いました。
尾上定正(元航空自衛隊補給本部長):やはり「抑止のパラドックス」というものを我々はよく理解しておく必要があると思います。抑止は破綻してはじめて効かなかったということがわかる、ということです。抑止を効かせるためには、いま武居さんがおっしゃったような、核抑止から通常戦の抑止、それからハイブリッド戦の中での効果的な対処、そういったものが総合的にバランスよく準備されておかなければいけない。やはり最終的には火力だと思います。爆弾に勝つには相手を上回る爆弾しかないないのだろうと。だから、最終的にはそれをしっかり整えておくということが必要です。(以上)
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「戦争は学んだ者、狡猾な者が勝つのである、最上策は戦わずして勝つ、である」と孫子は言っている。核兵器の開発・配備、ハイブリッド戦への対応など、拙速だろうがどんどん進めるべきだ。学ばざれば昏し、備えあれべ憂いなし。中露北は米国の軍事力を恐れているから対日台侵略を今のところ控えているが、米軍が健在のうちに日台は核開発を含め戦力を向上させなくてはならない。
次期大戦で自由陣営は、敵である中露北の赤色独裁帝国が二度と侵略できないまでに叩くことは当然だが、占領に際しては徹底的に国体を変えなければならない。これは難しい話ではない。天からの贈り物である素晴らしい平和憲法を与えるだけでいいのだ。ゴロツキの中露北でも80年ほどは大人しくなる。これは実験済み、効果抜群だから採用すべし。
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