戦後は終わり戦争の時代へ
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」61/通算493 2022/6/29/水】先週末から我が家に中型の柴犬(雌)「チーちゃん」と名無しのハムスターがやって来た。長男坊一家が夏休みで西表島へ出かけたので10日ほど面倒を見ることになったのだ。ハムスターは夜行性だから手間がかからないが、犬はそうはいかない。小生は6時から30分の朝の散歩を任された。夕方はカミサンか近所の次女が散歩させる。
我が家の愛犬ビーグル「トト」が大往生したのは2015年12月で、小生がペットロス?でアル中になって発狂し入院したのが翌年の10月末だった。犬や子供とはある程度距離を置かないと、先立たれたときに精神的ダメージで鬱病になりやすいのではないか。動物を飼うというのは癒しになるが、喪失リスクも伴う。
小生の通常の暮らしでは、春から秋なら毎朝5時起きでカーテンを開け、庭掃除や水遣り、6時には30分かけて調理した手製の餌を雀にやり、コーヒーを飲みながら一服して、「さあ、今日もアカを叩きまくるぞ!」とPCに向かうのだが、チーちゃんが来たので6年振りに犬との早朝散歩・・・
ところがたった30分歩いただけで「私はいけない、ワンコは元気」という、どうも情けない状態になってしまった。華麗なる加齢は難しい。
で、日々の日課である「チャリ散歩」は無理かと思っていたが、10時にはどうにか気力が回復し、1時間ほど隣町の迷路のような道を散策できた。しかし今一つスッキリ感、満足感がない。どうも70代になると心技体が急速に衰えてきて、「燃える闘魂」のような喜怒哀楽はもうないのかも知れない。「七十にして矩(のり、道理)をこえず」・・・道理を越えたくても、小生にはそのパワーが枯渇したような感じがする。
孔子先生は70歳で隠居、74歳没、同時期のお釈迦さまも80歳没だが、2500年前では大変な長寿だ。脳みそと肉体を動かすことは長生きの秘訣のひとつかも知れない。今は64歳あたりまでが「現役」のようだが、そのうち「69歳まで頑張ろう!」となりそうだ。「永らえば恥と薬多し」にならぬよう気を引き締めないといかんなあ。
岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克・・・皆60代前半である。この4氏を知っている人は軍事研究者や外交関係者、軍事オタクかも知れない。この4氏による対談「自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争――ウクライナの戦いから我々は何を学ぶべきか」(座談会は5月13日、新潮社Foresight掲載は2022/6/7)を読み始めたが、皆さん、すこぶる頭脳明晰。戦時になると男は勇武の血が騒ぐが、指揮官となると冷静かつ科学的に状況を分析するのだなあと、小生もそうありたいと大いに刺激的だった。以下、冒頭部分のみを転載する。
<【軍事大国ロシアによる隣国ウクライナへの全面侵攻は、国際社会に大きな衝撃を与えた。ウクライナ戦争は今後の国際秩序にどう影響するのか。同じくロシアと国境を接する日本は、ウクライナの戦いからいかなる教訓を得られるのか。陸海空自衛隊、そして国家安全保障局の元最高幹部が一堂に会して語り尽くした、“ウクライナ後”の安全保障論。※この座談会は5月13日に行われました】
・・・・・・・・・
岩田清文(元陸上幕僚長):これまで私たち4人は、日本の安全保障をテーマにした座談会を2度行い、それぞれ『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』という本にまとめました。今回、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、また同じメンバーに集まっていただきました。
本日のテーマは、「今日のウクライナを明日の台湾、日本にしないために」というものです。討論は大きく4部にわけて行います。
第1部は、ウクライナ戦争から我々が得るべき教訓は何か。第2部は、中国や北朝鮮に与えた影響について。第3部は、核戦略および台湾有事への影響について。そしてそれらを踏まえて、第4部では日本を含む西側諸国が今後とるべき進路について。この4点について、陸海空自衛隊、そして官邸や外務省、それぞれの立場から議論を深めていきたいと思います。
岩田:まず今回の戦争から得るべき教訓について。ロシアによる侵攻によって、もう半世紀、あるいは70年も時代を引き戻された感がありますが、そういう中で皆さんが認識している時代の変化と、その評価や教訓について語ってください。
兼原信克(元国家安全保障局次長):今回の戦争の一番大きなショックは、国連の安保理常任理事国で、NPT(核兵器不拡散条約)体制における正当な核兵器保有国であるロシアが、隣国のウクライナを正面から侵略して、しかも核の恫喝を行っているということです。これは戦後国際秩序の根幹が崩れたということだと思います。
安全保障面からの教訓は、一つがサイバーです。サイバーに関して、今回ウクライナはすごく立派に戦っている。
2014年のクリミア併合の際は、ロシアのハイブリッド戦が効果的で、発電所、変電所、通信施設がみんなやられてしまった。電気がないと機械は動かないし、通信ができないので、ウクライナはいわば盲目の“座頭市”状態になって一瞬で負けた。
しかしその後、米軍の協力を得ながらサイバーセキュリティの増強を行い、今回はロシアのサイバー攻撃が完全にはね返されている。これは極めて大きいと思います。結果的に今ロシア軍は、第二次世界大戦さながらの破壊と前進という、100年前の陸軍の戦い方をしていて、これは裏を返すと、ウクライナのサイバーセキュリティがしっかり機能しているということだと思います。
ただ、これと同じことを日本ができるかというと、おそらく2014年のウクライナみたいな“座頭市”型になってしまう。日本もサイバー能力の増強が絶対に必要です。たしかに自衛隊の中にもサイバー防衛隊が立ち上がっていますが、まだまだ規模が小さい。
アメリカの元国家情報長官デニス・ブレア氏にアメリカではどうやっているのか聞いたところ、全体で1万人ぐらいの規模のサイバー部隊を抱えているそうです。その最前線では、6人組のハンティングチームというのを作ってある。内訳は2人が軍人、2人がハッカー専門家、2人がエンジニアですね。
この組み合わせで、米国政府などに侵入してくるマルウェアを追っかけ回しているんです。そして最終的に発信元を特定したら、スパコンの力を使って、マルウェアを発出する敵のコンピュータの中に、正当な権限を持って入り込んで警告する。
実は今回、ロシア軍の動きに関する情報は、サイバー空間からの情報が半分以上だといわれています。戦況を見てもわかるように、かなり正確に相手の動きを掴んでいる。こういった能力は、現在の日本には完全に欠落してる能力なので、すぐにスパコンを導入してハンティングチームを作って、岩田陸幕長が水陸機動団を作らせたように、今度はサイバー旅団というのを作らないといけないと思います。
そして自衛隊に政府と重要インフラを守らせる。あるいは、内閣サイバー情報セキュリティセンターを作って自衛官を大挙して送り込むことが不可決です。
それから核ですね。チンピラのような北朝鮮は別にして、核保有国同士では「最後の瞬間には互いに核を使うことになるから、はじめから戦争はしない」というのが暗黙の了解だった。
ところがP5(NPT*=核不拡散条約で核保有を認められた安保理常任理事国の米露英仏中5カ国)の一員であるロシアの大統領が、隣国に攻め込んだ上に「俺はいつキレるかわからないぜ」と言って核を恫喝に使っている。これは想定外で、「エスカレーション抑止」なんていうと聞こえはいいですけども、要するにチンピラがキレるぜと言って凄んでいるのと同じです。核はそういうふうに使うものではないというのが前提だったんです。*Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons(1970年発効)
他方、同じことをされたらどうなるかということは、日本も考えておく必要がある。ウクライナ戦争と台湾有事の決定的な違いは、NATO(北大西洋条約機構)圏外のウクライナにはアメリカは直接介入しないということです。だから介入の直前まで、寸止めで支援をしているわけですけども、ウクライナと違って台湾は西側の勢力圏に入っているので、正式な防衛義務こそないものの、台湾有事では直ちにアメリカが軍事支援に入る可能性がある。
そうなると、台湾と目と鼻の先にあって米軍基地のある日本も瞬時に巻き込まれるということが十分考えられます。その場合、習近平にとって一番効果的なのは、日本を戦線から離脱させることだと思うんですね。西側の鎖の中でそこが一番弱い環なので。日本が外れたらもうアメリカは戦えませんから、そこをブッ千切ればいいわけです。それが理由となって日本が核の恫喝に晒される可能性がある。
アメリカは米兵が殺されたら絶対にやり返すんですけど、日本が単独で守っている離島がやられたら、本当にやり返すかはわからないわけですよね。もしそうなったら、恫喝されるだけでおそらく総理官邸は腰が抜けます。
核兵器は、半分は心理戦用の兵器です。戦争が始まってから自衛隊を打ち負かすのではなく、始まる前に総理の腰を砕けばいい。核の恫喝に屈しないと言える総理はなかなかいないと思いますよ。ですから、核に対する抑止力をどう強化するか。日本は独自核が持てないので、アメリカの「核の傘」の信頼性をどう強化するかということは、これから真剣に考えていかなくちゃいけないと思います>云々
人類史で初めて核兵器2発を戦争で使用(=お試し動物実験)し日本(≒サル)を屈服させた米国は、西欧同様に白人以外は人間とは思っていなかった。黒人や有色人種を「人間認定」し始めたのは1965年あたりだからまだ半世紀たっただけである。このキリスト教臭い「白人至上主義=有色人種蔑視」が急速かつ顕著に広まったのは新大陸“発見”以降の1500年代からだろう。
<大航海時代以後の西欧人は近代的な軍隊により世界の大半を侵略、植民地化していった。植民地支配を正当化するため西欧人の優勢が主張され「白人が、非白人に文明を与えるのは義務である」とされた。この優位性は、「白人こそが最も進化した人類である」という価値観さえ生む結果となった。この考え方は次第に肥大し、学術分野においても各人種間に特徴的な差異を「一方の人種が劣っている証拠」とする説が発表され、優生学の名で正当化された。この中にあって進化論は大いに捻じ曲げられ、後の文化人類学発達を大きく妨げたと考えられる。
2015年には、欧州連合の人々の約17%がアジア人との仕事に不快感を覚え、約31%が、子供がアジア人を愛するようになると不快感を覚えたと報告した(EU「2015年のEUにおける差別」)。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東アジア人が差別的言動を受ける例も報告されている(swissinfo.ch 2020/3/13)>(WIKI)
白人至上主義の米国は「日本を100年間戦争のできない国」にするため、占領中で主権のない日本に「日本国憲法」を押し付けた。講和条約発効後、つまり戦争が正式に終わった後で米国製憲法を廃棄して新しい日本製の憲法を創ったら良さそうなものだが、憲法改定には国会議員の3分の2以上の賛成がないとできないという、高いハードルを設けていたから、未だに新憲法は実現していない。
表向きはそういうことになっているが、実は米国製憲法は日本にとって都合の良い部分、第9条の戦争放棄により軍事力に莫大なカネをつかわなくていい、軍事力は米国との安全保障条約に依存していればいい、無駄金をつかわずにひたすら経済発展を進めればいい、という、実にオイシイ決まりがあるから、多くの日本国民にとって「明日の憲法より今日のカネ」、かくして米国製憲法は75年も継承されているわけだ。
<第九条(戦争の放棄・平和主義・戦力不保持・交戦権否認)
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。>
今、戦後初めて日本は「戦争危機」を現実的に覚え始めたようである。榊原智氏「国民が抑止力を求める時代」産経2022/6/28はこう論じている。
<参院選の主な争点は、物価高対策と並んで安全保障だという。このような国政選挙は初めてだ。報道各社の世論調査では防衛費増額への支持が6~7割にも達している。
これが何を意味するかといえば、国民の多数が、平和を守るために抑止力を培う大切さを理解した―ということなのだろう。厳しい安全保障環境下の日本にとっては嘉(よみ)すべき、画期的、歴史的な変化だ。ウクライナは対露抑止に失敗して侵略されてしまったからだ>
同じ産経2022/6/28で岡田美月氏は「参院選『景気・経済』重視36% 改憲・コロナは低調」と伝えた。
<産経新聞社とFNNによる参院選の中盤情勢調査で、重視する政策・争点を尋ねたところ、「景気や経済対策」が36.0%で最多となった。2位以下は「年金など社会保障」(19.5%)、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響による「物価高対策」(10.3%)、「外交や安全保障」(10.0%)が続いた。岸田首相(自民党総裁)が実現を目指す憲法改正は3.9%で6位>
どうなっているのか全然分からないが、榊原智氏は「こうあって欲しい」という願望を書き、岡田美月氏は調査報道で「現実はこうだ」と書いたわけだ。先人の「良い予感は外れる、悪い予感はよく当たる」の金言に従えば、「中露北のアジア武力支配に対して日本はなす術もなく屈する」ということ。黄色の信号なのに「75年も大丈夫だったのだからこれからも安保は問題なし! それより物価、生活が大事だ!」と大多数の国民は思っているのだ。
別に今の日本だけがノンビリしているわけではない。庶民は世界中一緒で、衣食住が安定し、面白おかしく日々を過ごせればいいのであり、戦争の危機を想定したり憂いたりするのはごく少数、精々人口の5~10%程でしかない。
「欧州戦争に介入し共産主義の祖国、ソ連を助けて世界共産主義革命へ前進するために、日本を挑発して最初の一発を撃たせなければならない、日本に真珠湾を攻撃させ、裏口から我々は欧州戦線へ乗り出すのだ」
これがFDRルーズベルトの作戦であったと小生は思っているが、深謀遠慮、実に狡猾で、日本は踏み台にされたのだ。その挙句、FDRの使嗾によりソ連に裏切られ、FDRの決定により2発の原爆をくらい、遂には主権を喪失して米国の属国になり、居心地がいいものだから今ではすっかり「一億総白痴化」(大宅壮一)になってしまった。
先進国を始め多くの国では日々を楽しく過ごす人々で溢れている。白痴もいるだろうが大多数は明るい明日を信じている善男善女だ。しかし、いずこの時代、いずこの国であっても、カナリアのように危機を察知する人々も少数ながらいる。
例えば戊辰戦争で新政府軍の戦力は12万あたりのようだが、人口3500万の3~4%ほどに過ぎないし、指導者だけなら1%未満だろう。それでも大回天をなした。たとえ少数派でも、FDRのように緻密で狡猾なやり方をすれば、厭戦だった米国世論は一気に「参戦」に傾いた。
日本も「有事」になればドタバタしながらを戦時モードに変わるだろう。第3次世界大戦に勝てば日本は「日出ずる国」日本を取り戻せる。危機はチャンスでもある。共産主義帝国の中露北を殲滅し、21世紀を平和な時代にしていこう。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
https://www.facebook.com/shuichi.ishii.14
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」61/通算493 2022/6/29/水】先週末から我が家に中型の柴犬(雌)「チーちゃん」と名無しのハムスターがやって来た。長男坊一家が夏休みで西表島へ出かけたので10日ほど面倒を見ることになったのだ。ハムスターは夜行性だから手間がかからないが、犬はそうはいかない。小生は6時から30分の朝の散歩を任された。夕方はカミサンか近所の次女が散歩させる。
我が家の愛犬ビーグル「トト」が大往生したのは2015年12月で、小生がペットロス?でアル中になって発狂し入院したのが翌年の10月末だった。犬や子供とはある程度距離を置かないと、先立たれたときに精神的ダメージで鬱病になりやすいのではないか。動物を飼うというのは癒しになるが、喪失リスクも伴う。
小生の通常の暮らしでは、春から秋なら毎朝5時起きでカーテンを開け、庭掃除や水遣り、6時には30分かけて調理した手製の餌を雀にやり、コーヒーを飲みながら一服して、「さあ、今日もアカを叩きまくるぞ!」とPCに向かうのだが、チーちゃんが来たので6年振りに犬との早朝散歩・・・
ところがたった30分歩いただけで「私はいけない、ワンコは元気」という、どうも情けない状態になってしまった。華麗なる加齢は難しい。
で、日々の日課である「チャリ散歩」は無理かと思っていたが、10時にはどうにか気力が回復し、1時間ほど隣町の迷路のような道を散策できた。しかし今一つスッキリ感、満足感がない。どうも70代になると心技体が急速に衰えてきて、「燃える闘魂」のような喜怒哀楽はもうないのかも知れない。「七十にして矩(のり、道理)をこえず」・・・道理を越えたくても、小生にはそのパワーが枯渇したような感じがする。
孔子先生は70歳で隠居、74歳没、同時期のお釈迦さまも80歳没だが、2500年前では大変な長寿だ。脳みそと肉体を動かすことは長生きの秘訣のひとつかも知れない。今は64歳あたりまでが「現役」のようだが、そのうち「69歳まで頑張ろう!」となりそうだ。「永らえば恥と薬多し」にならぬよう気を引き締めないといかんなあ。
岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克・・・皆60代前半である。この4氏を知っている人は軍事研究者や外交関係者、軍事オタクかも知れない。この4氏による対談「自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争――ウクライナの戦いから我々は何を学ぶべきか」(座談会は5月13日、新潮社Foresight掲載は2022/6/7)を読み始めたが、皆さん、すこぶる頭脳明晰。戦時になると男は勇武の血が騒ぐが、指揮官となると冷静かつ科学的に状況を分析するのだなあと、小生もそうありたいと大いに刺激的だった。以下、冒頭部分のみを転載する。
<【軍事大国ロシアによる隣国ウクライナへの全面侵攻は、国際社会に大きな衝撃を与えた。ウクライナ戦争は今後の国際秩序にどう影響するのか。同じくロシアと国境を接する日本は、ウクライナの戦いからいかなる教訓を得られるのか。陸海空自衛隊、そして国家安全保障局の元最高幹部が一堂に会して語り尽くした、“ウクライナ後”の安全保障論。※この座談会は5月13日に行われました】
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岩田清文(元陸上幕僚長):これまで私たち4人は、日本の安全保障をテーマにした座談会を2度行い、それぞれ『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』という本にまとめました。今回、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、また同じメンバーに集まっていただきました。
本日のテーマは、「今日のウクライナを明日の台湾、日本にしないために」というものです。討論は大きく4部にわけて行います。
第1部は、ウクライナ戦争から我々が得るべき教訓は何か。第2部は、中国や北朝鮮に与えた影響について。第3部は、核戦略および台湾有事への影響について。そしてそれらを踏まえて、第4部では日本を含む西側諸国が今後とるべき進路について。この4点について、陸海空自衛隊、そして官邸や外務省、それぞれの立場から議論を深めていきたいと思います。
岩田:まず今回の戦争から得るべき教訓について。ロシアによる侵攻によって、もう半世紀、あるいは70年も時代を引き戻された感がありますが、そういう中で皆さんが認識している時代の変化と、その評価や教訓について語ってください。
兼原信克(元国家安全保障局次長):今回の戦争の一番大きなショックは、国連の安保理常任理事国で、NPT(核兵器不拡散条約)体制における正当な核兵器保有国であるロシアが、隣国のウクライナを正面から侵略して、しかも核の恫喝を行っているということです。これは戦後国際秩序の根幹が崩れたということだと思います。
安全保障面からの教訓は、一つがサイバーです。サイバーに関して、今回ウクライナはすごく立派に戦っている。
2014年のクリミア併合の際は、ロシアのハイブリッド戦が効果的で、発電所、変電所、通信施設がみんなやられてしまった。電気がないと機械は動かないし、通信ができないので、ウクライナはいわば盲目の“座頭市”状態になって一瞬で負けた。
しかしその後、米軍の協力を得ながらサイバーセキュリティの増強を行い、今回はロシアのサイバー攻撃が完全にはね返されている。これは極めて大きいと思います。結果的に今ロシア軍は、第二次世界大戦さながらの破壊と前進という、100年前の陸軍の戦い方をしていて、これは裏を返すと、ウクライナのサイバーセキュリティがしっかり機能しているということだと思います。
ただ、これと同じことを日本ができるかというと、おそらく2014年のウクライナみたいな“座頭市”型になってしまう。日本もサイバー能力の増強が絶対に必要です。たしかに自衛隊の中にもサイバー防衛隊が立ち上がっていますが、まだまだ規模が小さい。
アメリカの元国家情報長官デニス・ブレア氏にアメリカではどうやっているのか聞いたところ、全体で1万人ぐらいの規模のサイバー部隊を抱えているそうです。その最前線では、6人組のハンティングチームというのを作ってある。内訳は2人が軍人、2人がハッカー専門家、2人がエンジニアですね。
この組み合わせで、米国政府などに侵入してくるマルウェアを追っかけ回しているんです。そして最終的に発信元を特定したら、スパコンの力を使って、マルウェアを発出する敵のコンピュータの中に、正当な権限を持って入り込んで警告する。
実は今回、ロシア軍の動きに関する情報は、サイバー空間からの情報が半分以上だといわれています。戦況を見てもわかるように、かなり正確に相手の動きを掴んでいる。こういった能力は、現在の日本には完全に欠落してる能力なので、すぐにスパコンを導入してハンティングチームを作って、岩田陸幕長が水陸機動団を作らせたように、今度はサイバー旅団というのを作らないといけないと思います。
そして自衛隊に政府と重要インフラを守らせる。あるいは、内閣サイバー情報セキュリティセンターを作って自衛官を大挙して送り込むことが不可決です。
それから核ですね。チンピラのような北朝鮮は別にして、核保有国同士では「最後の瞬間には互いに核を使うことになるから、はじめから戦争はしない」というのが暗黙の了解だった。
ところがP5(NPT*=核不拡散条約で核保有を認められた安保理常任理事国の米露英仏中5カ国)の一員であるロシアの大統領が、隣国に攻め込んだ上に「俺はいつキレるかわからないぜ」と言って核を恫喝に使っている。これは想定外で、「エスカレーション抑止」なんていうと聞こえはいいですけども、要するにチンピラがキレるぜと言って凄んでいるのと同じです。核はそういうふうに使うものではないというのが前提だったんです。*Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons(1970年発効)
他方、同じことをされたらどうなるかということは、日本も考えておく必要がある。ウクライナ戦争と台湾有事の決定的な違いは、NATO(北大西洋条約機構)圏外のウクライナにはアメリカは直接介入しないということです。だから介入の直前まで、寸止めで支援をしているわけですけども、ウクライナと違って台湾は西側の勢力圏に入っているので、正式な防衛義務こそないものの、台湾有事では直ちにアメリカが軍事支援に入る可能性がある。
そうなると、台湾と目と鼻の先にあって米軍基地のある日本も瞬時に巻き込まれるということが十分考えられます。その場合、習近平にとって一番効果的なのは、日本を戦線から離脱させることだと思うんですね。西側の鎖の中でそこが一番弱い環なので。日本が外れたらもうアメリカは戦えませんから、そこをブッ千切ればいいわけです。それが理由となって日本が核の恫喝に晒される可能性がある。
アメリカは米兵が殺されたら絶対にやり返すんですけど、日本が単独で守っている離島がやられたら、本当にやり返すかはわからないわけですよね。もしそうなったら、恫喝されるだけでおそらく総理官邸は腰が抜けます。
核兵器は、半分は心理戦用の兵器です。戦争が始まってから自衛隊を打ち負かすのではなく、始まる前に総理の腰を砕けばいい。核の恫喝に屈しないと言える総理はなかなかいないと思いますよ。ですから、核に対する抑止力をどう強化するか。日本は独自核が持てないので、アメリカの「核の傘」の信頼性をどう強化するかということは、これから真剣に考えていかなくちゃいけないと思います>云々
人類史で初めて核兵器2発を戦争で使用(=お試し動物実験)し日本(≒サル)を屈服させた米国は、西欧同様に白人以外は人間とは思っていなかった。黒人や有色人種を「人間認定」し始めたのは1965年あたりだからまだ半世紀たっただけである。このキリスト教臭い「白人至上主義=有色人種蔑視」が急速かつ顕著に広まったのは新大陸“発見”以降の1500年代からだろう。
<大航海時代以後の西欧人は近代的な軍隊により世界の大半を侵略、植民地化していった。植民地支配を正当化するため西欧人の優勢が主張され「白人が、非白人に文明を与えるのは義務である」とされた。この優位性は、「白人こそが最も進化した人類である」という価値観さえ生む結果となった。この考え方は次第に肥大し、学術分野においても各人種間に特徴的な差異を「一方の人種が劣っている証拠」とする説が発表され、優生学の名で正当化された。この中にあって進化論は大いに捻じ曲げられ、後の文化人類学発達を大きく妨げたと考えられる。
2015年には、欧州連合の人々の約17%がアジア人との仕事に不快感を覚え、約31%が、子供がアジア人を愛するようになると不快感を覚えたと報告した(EU「2015年のEUにおける差別」)。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東アジア人が差別的言動を受ける例も報告されている(swissinfo.ch 2020/3/13)>(WIKI)
白人至上主義の米国は「日本を100年間戦争のできない国」にするため、占領中で主権のない日本に「日本国憲法」を押し付けた。講和条約発効後、つまり戦争が正式に終わった後で米国製憲法を廃棄して新しい日本製の憲法を創ったら良さそうなものだが、憲法改定には国会議員の3分の2以上の賛成がないとできないという、高いハードルを設けていたから、未だに新憲法は実現していない。
表向きはそういうことになっているが、実は米国製憲法は日本にとって都合の良い部分、第9条の戦争放棄により軍事力に莫大なカネをつかわなくていい、軍事力は米国との安全保障条約に依存していればいい、無駄金をつかわずにひたすら経済発展を進めればいい、という、実にオイシイ決まりがあるから、多くの日本国民にとって「明日の憲法より今日のカネ」、かくして米国製憲法は75年も継承されているわけだ。
<第九条(戦争の放棄・平和主義・戦力不保持・交戦権否認)
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。>
今、戦後初めて日本は「戦争危機」を現実的に覚え始めたようである。榊原智氏「国民が抑止力を求める時代」産経2022/6/28はこう論じている。
<参院選の主な争点は、物価高対策と並んで安全保障だという。このような国政選挙は初めてだ。報道各社の世論調査では防衛費増額への支持が6~7割にも達している。
これが何を意味するかといえば、国民の多数が、平和を守るために抑止力を培う大切さを理解した―ということなのだろう。厳しい安全保障環境下の日本にとっては嘉(よみ)すべき、画期的、歴史的な変化だ。ウクライナは対露抑止に失敗して侵略されてしまったからだ>
同じ産経2022/6/28で岡田美月氏は「参院選『景気・経済』重視36% 改憲・コロナは低調」と伝えた。
<産経新聞社とFNNによる参院選の中盤情勢調査で、重視する政策・争点を尋ねたところ、「景気や経済対策」が36.0%で最多となった。2位以下は「年金など社会保障」(19.5%)、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響による「物価高対策」(10.3%)、「外交や安全保障」(10.0%)が続いた。岸田首相(自民党総裁)が実現を目指す憲法改正は3.9%で6位>
どうなっているのか全然分からないが、榊原智氏は「こうあって欲しい」という願望を書き、岡田美月氏は調査報道で「現実はこうだ」と書いたわけだ。先人の「良い予感は外れる、悪い予感はよく当たる」の金言に従えば、「中露北のアジア武力支配に対して日本はなす術もなく屈する」ということ。黄色の信号なのに「75年も大丈夫だったのだからこれからも安保は問題なし! それより物価、生活が大事だ!」と大多数の国民は思っているのだ。
別に今の日本だけがノンビリしているわけではない。庶民は世界中一緒で、衣食住が安定し、面白おかしく日々を過ごせればいいのであり、戦争の危機を想定したり憂いたりするのはごく少数、精々人口の5~10%程でしかない。
「欧州戦争に介入し共産主義の祖国、ソ連を助けて世界共産主義革命へ前進するために、日本を挑発して最初の一発を撃たせなければならない、日本に真珠湾を攻撃させ、裏口から我々は欧州戦線へ乗り出すのだ」
これがFDRルーズベルトの作戦であったと小生は思っているが、深謀遠慮、実に狡猾で、日本は踏み台にされたのだ。その挙句、FDRの使嗾によりソ連に裏切られ、FDRの決定により2発の原爆をくらい、遂には主権を喪失して米国の属国になり、居心地がいいものだから今ではすっかり「一億総白痴化」(大宅壮一)になってしまった。
先進国を始め多くの国では日々を楽しく過ごす人々で溢れている。白痴もいるだろうが大多数は明るい明日を信じている善男善女だ。しかし、いずこの時代、いずこの国であっても、カナリアのように危機を察知する人々も少数ながらいる。
例えば戊辰戦争で新政府軍の戦力は12万あたりのようだが、人口3500万の3~4%ほどに過ぎないし、指導者だけなら1%未満だろう。それでも大回天をなした。たとえ少数派でも、FDRのように緻密で狡猾なやり方をすれば、厭戦だった米国世論は一気に「参戦」に傾いた。
日本も「有事」になればドタバタしながらを戦時モードに変わるだろう。第3次世界大戦に勝てば日本は「日出ずる国」日本を取り戻せる。危機はチャンスでもある。共産主義帝国の中露北を殲滅し、21世紀を平和な時代にしていこう。
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目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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