戦争から平和が産まれる(2)
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」143/通算575 2023/2/27/月】朝夕はちょっと寒いが昼間は随分春めいてきた。有難いことだ。先日、ブログにも書いたが、川崎市役所に以下のメールを送った。
<【二か領用水沿いの桜伐採に反対します】川崎市多摩区宿河原の多摩沿線道路「新船島橋」と南武線鉄橋の間の二か領用水沿いの桜が5本ほど伐採されるようです。先人が60年もかけて育ててきた立派な桜は街の誇りであり、伐られるのは、とても残念です、云々>
25日に散歩から帰ったカミサンが「桜を伐るのは止めたみたいよ」と言うので26日に見に行くと、用水路を跨ぐ街灯用の送電線保守のため一本だけは伐採されるが、それ以外は存続する由。一件落着、ホッとした。日本は良い国だ。日本と同志国を守るべし、イザッ!
前回に続き、木元寛明著「戦術の本質 進化する『戦いの原則』をひも解く」(2022/10/4刊)の「戦略・作戦・戦術の視点から分析するウクライナ戦争」から引用、紹介する。(小生の意見・感想は★で示した)
<プーチン・ロシアの国家目標は、ウクライナのゼレンスキー政権を打倒して親ロシアの傀儡政権を立て、ウクライナのNATO加盟を阻止し、ウクライナをNATO圏とロシアの間の緩衝地帯にすることだ。そのために、
1)圧倒的な軍事力の誇示による威嚇、
2)首都キーウの占領、
3)ウクライナ軍の抵抗意志の破砕
が軍事目標になる。
国家が戦争を決意するとき、国家目標と軍事目標とのリンクは通常、統括作戦司令官が策定する「作戦計画」として具体化される。本戦争の進捗状況を見る限り、「ロシアは戦争準備間に状況判断・意思決定をまともに行ったのか?」という疑念が残る。
開戦当初、露軍は北、東、南の3方向から侵攻を始めたが、3正面の全部隊を統括する司令官が存在しなかった。「指揮の統一の原則」の無視である。露軍は5月6日にキーウ周辺(北正面)から撤退し、急遽、全部隊を統括する司令官を任命、ドンバス地域(東正面)に重点を変更したようだ。
戦争の推移は予断を許さないが、短期的に露軍が東部と南部を占領する可能性はある。しかし、中長期的視点から、ロシアが冷戦末期の経済破綻に陥り、1991年のソ連崩壊の二の前になる可能性は否定できない。
(★「3正面の全部隊を統括する司令官が存在しなかった」・・・なぜか? 統括司令の役割はプーチンだからだ。プーチンはKGB(国家保安委員会)のスパイ出身で、怪しい奴を暗殺するのは得意だが、戦争については素人である。しかしプーチンに対して「現場は私が指揮します、任せてください、あなたは君臨し、将兵を鼓舞し、政治・外交に努めてください」と側近の将軍・元帥などが提言しようものなら、プーチンは「こいつは俺を排除するつもりだ、危険だ、追放すべし」となる。独裁者は異論を許さない、聞く耳を持たない、だから独裁者なのだ。
日本でも大企業ながら派閥抗争や無能なのに創業者一族が君臨しているケースは珍しくないが、結果的にプーチンの周りにいるのは無能な者ばかりになっているのではないか・・・素人の小生の見立てかも知れないと思っていたらロイター2023/2/20も「それでも更迭されないロ国防相、背景にプーチン氏の『情』」とこう報じていた。
《ウクライナ侵攻開始から1年、ロシア軍は3度の屈辱的な撤退を経験し、米国当局の発表によれば20万人近くの兵士が死傷したとされる。だが、ロシア軍を統率する立場にあるショイグ国防相(67)は失脚していない。プーチン大統領が職にとどめている。
欧米当局やロシア政治を長年見てきた専門家、元欧米軍司令官によれば、プーチン氏がショイグ国防相を重用するのにはいくつかの理由があるという。ショイグ氏が「極端なほど従順」なことや、プーチン氏の大統領就任を助けてきたこと、ウクライナの軍事作戦に関してはショイグ氏一人の判断ではなかったことなどが挙げられる。
「プーチン氏の側近の中で重視されるのは、常に能力よりも忠誠心だ」と、カーネギー国際平和財団のアンドリュー・ワイス氏は分析する。ワイス氏は米国家安全保障会議(NSC)の戦略策定に携わってきたほか、プーチン氏に関する書籍も執筆している。
ワイス氏によれば、プーチン氏は過去に「人を解雇する決断は難しいもので、個人的な問題として考えることが多い」と公の場で認めたことがあるという。「ショイグ氏を含め、複数の高官は求められているほどの職務を果たしていない。あまり知られていないプーチン氏の『情にもろい』性格によって得している部分がある」
ゲラシモフ軍参謀総長は先月、ウクライナでの軍事作戦を現場指揮する最高司令官に任命された。ロシアメディアの間で「アルマゲドン将軍」とも呼ばれるセルゲイ・スロビキン氏はゲラシモフ氏に次ぐ副司令官に降格された》
戦争能力よりもプーチンへの忠誠心が大事・・・何となくロシアは末期症状。デキル人はプーチン・ロシアからどんどん逃げ出しているようだ)
ウクライナ軍(ウ軍)と露軍を比較すればウ軍は圧倒的に不利だが、予想以上に健闘し、一部では優勢に戦いを進めているようだ。1)露軍の侵攻を想定して事前準備ができていたこと、2)大統領を核心とする国民の一致団結、3)欧米各国からの軍事支援、が奏功している。
ウ軍は内戦作戦(自国内が戦場)の原則通り、首都キーウに露軍が最短距離で迫る北部に戦力を集中し、激しく抵抗、2022年5月6日に露軍をキーウ周辺から完全撤退に追い込んだ。
戦闘の様相は、ウ×露の枠を超えてNATO×露へと移っている。NATOの支援が続く限りウ軍の内戦作戦が破綻することはないだろう。
NATOの支援が続けば、ウ軍と露軍が攻守所を変える可能性があるかも知れない。マイケル・ハワード著/奥山真司監訳「クラウゼヴィッツ『戦争論』の思想」(勁草書房)から。
「防御側は、味方の領土内で補給線に沿って後退している。一方で、攻撃側は前進すればそれだけ補給の問題が深刻化し、戦闘力も弱まり、周囲の環境も敵意に満ちたものとなる。
それが続き、攻撃側の戦力が極限まで弱体化し、防御側が最大限の力を蓄積した瞬間に、攻撃側と防御側の優勢は逆転する。
この瞬間のことを、クラウゼヴィッツは「限界点」と表現した。それは、ギラついた刀を引き抜いて報復のために反撃に転じるべき時点のことだ。そして戦略家の最大の力量は、この瞬間の到来を正しく見極められるか否かという点にあるというのだ」
露軍のドクトリンは「縦深作戦理論=縦深突破理論」である。特色は全縦深同時打撃、包囲殲滅戦、火力重視、装甲機動力の発揮、空地協同など近代的機甲戦を特色としている。しかし、被弾すると戦車の砲塔が吹き飛ぶのはソ連時代以来の欠陥で、後継の露軍は「縦深作戦理論」を遂行できるだけの武器、練度に達していないようである>
・・・・・・・・・
以上で木元寛明氏の論稿紹介を終える。それにしてもロシア兵は戦場に出ると強盗団のように金目のものを盗み、非戦闘員の住民を殺しまくっているが、まるで1800年頃のナポレオン戦争時代のようだ。戦場では「殺しまくれ、奪いまくれ、お咎めなし」、これをロシアは今なお兵士のインセンティブにしている。兵士からすれば「それがあるから戦場に行く、なければ行かない」、これがロシア流なのだ。一種の蛮族。
フォーリンアフェアーズ2023年3月号のロバート・ケーガン/ブルッキングス研究所シニアフェロー著「国益と自由世界擁護の間――ウクライナとアメリカの国益」から。
<第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、(失敗があったにせよ)アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。
「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。関与しなければ「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。
アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている>
ロシアと中共・・・史上最悪最強の暴力団連合、ダーティペアである。自由陣営が結束して冷戦・熱戦で露中をつぶさないと我々の子供や孫たちは酷い目に遭うだろう。危機感を募らせて頑張ろうぜ、イザッ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
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まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」143/通算575 2023/2/27/月】朝夕はちょっと寒いが昼間は随分春めいてきた。有難いことだ。先日、ブログにも書いたが、川崎市役所に以下のメールを送った。
<【二か領用水沿いの桜伐採に反対します】川崎市多摩区宿河原の多摩沿線道路「新船島橋」と南武線鉄橋の間の二か領用水沿いの桜が5本ほど伐採されるようです。先人が60年もかけて育ててきた立派な桜は街の誇りであり、伐られるのは、とても残念です、云々>
25日に散歩から帰ったカミサンが「桜を伐るのは止めたみたいよ」と言うので26日に見に行くと、用水路を跨ぐ街灯用の送電線保守のため一本だけは伐採されるが、それ以外は存続する由。一件落着、ホッとした。日本は良い国だ。日本と同志国を守るべし、イザッ!
前回に続き、木元寛明著「戦術の本質 進化する『戦いの原則』をひも解く」(2022/10/4刊)の「戦略・作戦・戦術の視点から分析するウクライナ戦争」から引用、紹介する。(小生の意見・感想は★で示した)
<プーチン・ロシアの国家目標は、ウクライナのゼレンスキー政権を打倒して親ロシアの傀儡政権を立て、ウクライナのNATO加盟を阻止し、ウクライナをNATO圏とロシアの間の緩衝地帯にすることだ。そのために、
1)圧倒的な軍事力の誇示による威嚇、
2)首都キーウの占領、
3)ウクライナ軍の抵抗意志の破砕
が軍事目標になる。
国家が戦争を決意するとき、国家目標と軍事目標とのリンクは通常、統括作戦司令官が策定する「作戦計画」として具体化される。本戦争の進捗状況を見る限り、「ロシアは戦争準備間に状況判断・意思決定をまともに行ったのか?」という疑念が残る。
開戦当初、露軍は北、東、南の3方向から侵攻を始めたが、3正面の全部隊を統括する司令官が存在しなかった。「指揮の統一の原則」の無視である。露軍は5月6日にキーウ周辺(北正面)から撤退し、急遽、全部隊を統括する司令官を任命、ドンバス地域(東正面)に重点を変更したようだ。
戦争の推移は予断を許さないが、短期的に露軍が東部と南部を占領する可能性はある。しかし、中長期的視点から、ロシアが冷戦末期の経済破綻に陥り、1991年のソ連崩壊の二の前になる可能性は否定できない。
(★「3正面の全部隊を統括する司令官が存在しなかった」・・・なぜか? 統括司令の役割はプーチンだからだ。プーチンはKGB(国家保安委員会)のスパイ出身で、怪しい奴を暗殺するのは得意だが、戦争については素人である。しかしプーチンに対して「現場は私が指揮します、任せてください、あなたは君臨し、将兵を鼓舞し、政治・外交に努めてください」と側近の将軍・元帥などが提言しようものなら、プーチンは「こいつは俺を排除するつもりだ、危険だ、追放すべし」となる。独裁者は異論を許さない、聞く耳を持たない、だから独裁者なのだ。
日本でも大企業ながら派閥抗争や無能なのに創業者一族が君臨しているケースは珍しくないが、結果的にプーチンの周りにいるのは無能な者ばかりになっているのではないか・・・素人の小生の見立てかも知れないと思っていたらロイター2023/2/20も「それでも更迭されないロ国防相、背景にプーチン氏の『情』」とこう報じていた。
《ウクライナ侵攻開始から1年、ロシア軍は3度の屈辱的な撤退を経験し、米国当局の発表によれば20万人近くの兵士が死傷したとされる。だが、ロシア軍を統率する立場にあるショイグ国防相(67)は失脚していない。プーチン大統領が職にとどめている。
欧米当局やロシア政治を長年見てきた専門家、元欧米軍司令官によれば、プーチン氏がショイグ国防相を重用するのにはいくつかの理由があるという。ショイグ氏が「極端なほど従順」なことや、プーチン氏の大統領就任を助けてきたこと、ウクライナの軍事作戦に関してはショイグ氏一人の判断ではなかったことなどが挙げられる。
「プーチン氏の側近の中で重視されるのは、常に能力よりも忠誠心だ」と、カーネギー国際平和財団のアンドリュー・ワイス氏は分析する。ワイス氏は米国家安全保障会議(NSC)の戦略策定に携わってきたほか、プーチン氏に関する書籍も執筆している。
ワイス氏によれば、プーチン氏は過去に「人を解雇する決断は難しいもので、個人的な問題として考えることが多い」と公の場で認めたことがあるという。「ショイグ氏を含め、複数の高官は求められているほどの職務を果たしていない。あまり知られていないプーチン氏の『情にもろい』性格によって得している部分がある」
ゲラシモフ軍参謀総長は先月、ウクライナでの軍事作戦を現場指揮する最高司令官に任命された。ロシアメディアの間で「アルマゲドン将軍」とも呼ばれるセルゲイ・スロビキン氏はゲラシモフ氏に次ぐ副司令官に降格された》
戦争能力よりもプーチンへの忠誠心が大事・・・何となくロシアは末期症状。デキル人はプーチン・ロシアからどんどん逃げ出しているようだ)
ウクライナ軍(ウ軍)と露軍を比較すればウ軍は圧倒的に不利だが、予想以上に健闘し、一部では優勢に戦いを進めているようだ。1)露軍の侵攻を想定して事前準備ができていたこと、2)大統領を核心とする国民の一致団結、3)欧米各国からの軍事支援、が奏功している。
ウ軍は内戦作戦(自国内が戦場)の原則通り、首都キーウに露軍が最短距離で迫る北部に戦力を集中し、激しく抵抗、2022年5月6日に露軍をキーウ周辺から完全撤退に追い込んだ。
戦闘の様相は、ウ×露の枠を超えてNATO×露へと移っている。NATOの支援が続く限りウ軍の内戦作戦が破綻することはないだろう。
NATOの支援が続けば、ウ軍と露軍が攻守所を変える可能性があるかも知れない。マイケル・ハワード著/奥山真司監訳「クラウゼヴィッツ『戦争論』の思想」(勁草書房)から。
「防御側は、味方の領土内で補給線に沿って後退している。一方で、攻撃側は前進すればそれだけ補給の問題が深刻化し、戦闘力も弱まり、周囲の環境も敵意に満ちたものとなる。
それが続き、攻撃側の戦力が極限まで弱体化し、防御側が最大限の力を蓄積した瞬間に、攻撃側と防御側の優勢は逆転する。
この瞬間のことを、クラウゼヴィッツは「限界点」と表現した。それは、ギラついた刀を引き抜いて報復のために反撃に転じるべき時点のことだ。そして戦略家の最大の力量は、この瞬間の到来を正しく見極められるか否かという点にあるというのだ」
露軍のドクトリンは「縦深作戦理論=縦深突破理論」である。特色は全縦深同時打撃、包囲殲滅戦、火力重視、装甲機動力の発揮、空地協同など近代的機甲戦を特色としている。しかし、被弾すると戦車の砲塔が吹き飛ぶのはソ連時代以来の欠陥で、後継の露軍は「縦深作戦理論」を遂行できるだけの武器、練度に達していないようである>
・・・・・・・・・
以上で木元寛明氏の論稿紹介を終える。それにしてもロシア兵は戦場に出ると強盗団のように金目のものを盗み、非戦闘員の住民を殺しまくっているが、まるで1800年頃のナポレオン戦争時代のようだ。戦場では「殺しまくれ、奪いまくれ、お咎めなし」、これをロシアは今なお兵士のインセンティブにしている。兵士からすれば「それがあるから戦場に行く、なければ行かない」、これがロシア流なのだ。一種の蛮族。
フォーリンアフェアーズ2023年3月号のロバート・ケーガン/ブルッキングス研究所シニアフェロー著「国益と自由世界擁護の間――ウクライナとアメリカの国益」から。
<第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、(失敗があったにせよ)アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。
「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。関与しなければ「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。
アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている>
ロシアと中共・・・史上最悪最強の暴力団連合、ダーティペアである。自由陣営が結束して冷戦・熱戦で露中をつぶさないと我々の子供や孫たちは酷い目に遭うだろう。危機感を募らせて頑張ろうぜ、イザッ!
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目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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