グイン・サーガ122巻
栗本薫:著 早川書房:発行
ハゾスは、シルヴィアが生んだ赤子を殺すことができずロベルトに託し、公けには、王女は想像妊娠であったとして、赤子の存在を隠蔽した。そして、彼女の不祥事に関与した者たちを訊問し、事実関係を詳らかにしてゆく。苦悩するグインは、シルヴィアと話し合おうとするのだが、彼女からは憎しみに満ちた罵声を聞くばかりで、ついにグインは訣別の言葉を告げるのだった。
大部分は事態の収拾にあたったハゾスの視点で進んでいきます。
この愛妻家で堅実なケイロニアの宰相の目には、シルヴィアはとんでもない色情狂で王妃としても皇女としても全く失格の烙印を押す嫌悪すべき女性としか映りません。
しかし、盲目の選定侯ロベルトに語らせるという形で、王妃は心弱い人間ではあるけれど、その奥底にある悲しさや苦悩をも読者の前に映し出してみせるのです。
父からも母からも疎まれ愛されなかったという想い、妾腹とはいえ優秀な姉と比較される劣等感から周囲の人間への憎悪を募らせ、自分を徹底的に貶めることで復讐をしようとする彼女に、同情するというよりは憐れみの方が勝るのではありますが・・。
そして、そのような彼女を一番理解し、守りたいと思っていたのはグインよりむしろ下僕のパリスという男だったのではないかとも思えるほどに、この卑しい従僕の心の気高さの方に目が引き寄せられてしまいました。
シルヴィアをして破滅へと導いた夢の中の出来事は、たしか以前のエピソードにチラッと書かれていた気がするけれど、あまりにも長編なために、もう記憶がはっきりしません
前巻で現実から目を背けたように見えたグインは、最終章でその本質的な性格を取り戻し、どのような辛い真実にもきちんと対峙しようという姿勢を見せます。
けれど、シルヴィアの拒絶の言葉を受けたあとの決別の姿勢は、やはり女心をわからぬ朴念仁の態度と思えて何だかがっかり
愛を求め、愛する人に置き去りにされることを何より恐れているシルヴィアを結局グインは救えないままなのかしら
この巻は哀しく重いけれど、妙に心を引かれる読み応えのある内容でした
栗本薫:著 早川書房:発行
ハゾスは、シルヴィアが生んだ赤子を殺すことができずロベルトに託し、公けには、王女は想像妊娠であったとして、赤子の存在を隠蔽した。そして、彼女の不祥事に関与した者たちを訊問し、事実関係を詳らかにしてゆく。苦悩するグインは、シルヴィアと話し合おうとするのだが、彼女からは憎しみに満ちた罵声を聞くばかりで、ついにグインは訣別の言葉を告げるのだった。
大部分は事態の収拾にあたったハゾスの視点で進んでいきます。
この愛妻家で堅実なケイロニアの宰相の目には、シルヴィアはとんでもない色情狂で王妃としても皇女としても全く失格の烙印を押す嫌悪すべき女性としか映りません。
しかし、盲目の選定侯ロベルトに語らせるという形で、王妃は心弱い人間ではあるけれど、その奥底にある悲しさや苦悩をも読者の前に映し出してみせるのです。
父からも母からも疎まれ愛されなかったという想い、妾腹とはいえ優秀な姉と比較される劣等感から周囲の人間への憎悪を募らせ、自分を徹底的に貶めることで復讐をしようとする彼女に、同情するというよりは憐れみの方が勝るのではありますが・・。
そして、そのような彼女を一番理解し、守りたいと思っていたのはグインよりむしろ下僕のパリスという男だったのではないかとも思えるほどに、この卑しい従僕の心の気高さの方に目が引き寄せられてしまいました。
シルヴィアをして破滅へと導いた夢の中の出来事は、たしか以前のエピソードにチラッと書かれていた気がするけれど、あまりにも長編なために、もう記憶がはっきりしません

前巻で現実から目を背けたように見えたグインは、最終章でその本質的な性格を取り戻し、どのような辛い真実にもきちんと対峙しようという姿勢を見せます。
けれど、シルヴィアの拒絶の言葉を受けたあとの決別の姿勢は、やはり女心をわからぬ朴念仁の態度と思えて何だかがっかり

愛を求め、愛する人に置き去りにされることを何より恐れているシルヴィアを結局グインは救えないままなのかしら

この巻は哀しく重いけれど、妙に心を引かれる読み応えのある内容でした
