杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023年06月30日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年6月30日公開 アメリカ 154分 G

考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)の前にヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)という女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)を相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる。(映画.comより)


「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作は前作から15年ぶり。
スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが製作総指揮を務め、監督はジェームズ・マンゴールド、音楽は引き続きジョン・ウィリアムズが担当しています。

1944年。考古学者のバジル・ショウ(トビー・ジョーンズ )と一緒に、ナチスから古代遺産「ロンギヌスの矢」を奪い返そうとしていたインディは捕まってしまい、首を吊られそうになりますが、連合軍の空爆により逃げ出すことに成功します。
ナチスを追いかけて列車に飛び乗ったインディは、ナチス将校の制服で兵士たちを欺いてロンギヌスの矢を見つけますが、それは偽物でした。捕まって列車に乗せられていたバジルを助けたインディは、数学者のユルゲン・フォラー博士が発見したアルキメデスの運命のダイヤル/アンティキティラ(半分に欠けている)を奪い、ウェーバー大佐(トーマス・クレッチマン )を倒して列車から運河に飛び込み難を逃れました。

1969年
インディは息子のマットが軍隊に入り戦死したことで妻マリオン(カレン・アレン )と不仲となり離婚協議中です。ハンター校の教授を定年引退 した日、彼の前にバジルの娘ヘレナが現れ、
運命のダイヤルに興味を持っていると話します。インディはかつてこのダイヤルに魂を奪われてしまったバジルからダイヤルを取り上げましたが、その際バジルからこれを必ず処分するよう頼まれていました。でも破壊せずに保存していたのね。
大学の倉庫で保管していた運命のダイヤルをヘレナに見せている最中に、CIAのメイソン捜査官(シャウネット・レネー・ウィルソ) とフォラー博士の部下に襲われます。馬に乗ってNYの町を駆け抜ける姿が往年のインディに重なります。(メイソンは後にあっさり殺されてしまうので存在意義が?でしたが。😔

「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」に登場した盟友サラー(ジョン・リス=デイビス)に助けられたインディは、ダイヤルを持って逃げたヘレナを追いモロッコに向かうと、ヘレナがダイヤルを競売にかけている場に乗り込みますが、同時にフォラー博士たちもやってきて、争奪戦の末、フォラーに奪われてしまいます。ヘレナが可愛がっている少年テディ(イーサン・イシドール )が加わり、トゥクトゥクでの追走劇が繰り広げられます。

運命のダイヤルの残り半分の手がかりを探してエーゲ海に向かった3人は、インディの旧友で潜水士のレナルド(アントニオ・バンデラス)に協力を求めて、深い海へ潜り沈没船から石板を見つけます。この時無数のウツボに襲われますが、蛇嫌いなインディが海でも災難に見舞われるんですね。
しかし、船に上がるとフォラーたちが待ち構えていて、レナルドが撃たれてしまいます。(アントニオ・バンデラスが演じていたとはエンドロールまで気付かなかった~!出番少ないしあっさり殺されちゃったしなぁ)石板の古代文字の謎解きをすると見せかけたヘレナが隙を見てダイナマイトに着火して爆発させ、混乱に乗じてインディたちはフォラーが乗ってきた船で脱出します。

蝋で覆われた石板に酒をかけて燃やして浮かび上がったのはシチリア島の洞窟です。3人はシチリア島へ到着しますが、テディがフォラーたちに捕まってしまいます。インディとヘレナは彼らより先にダイヤルを見つけようと洞窟へ向かい、ムカデや蜘蛛(シリーズに何度も登場しましたね)やメタンの罠を潜り抜けて奥の部屋に辿り着き、アルキメデスの遺体が入った棺を発見しますが、棺には飛行機のプロペラ様の模様が刻まれ、遺体の腕には腕時計がはめられていることに驚きます。それはダイヤルにより時を超えたことを意味していたからです。

そこにフォラーたちが現れてますが、隙を見て逃げ出していたテディが加勢するも、逃げる途中でインディが肩を撃たれ捕まり運命のダイヤルも奪われてしまいます。

負傷したインディを乗せた飛行機の中で、フォラー=ユルゲン(ナチの残党)は、二つのダイヤルを組み合わせて完全なものとします。運命のダイヤルとは、時空の歪み(ワープホール)を示す装置だったのです。ユルゲンの目的は、1939年に戻りナチスに勝利をもたらすことでした。この飛行機にヘレナも乗り込んでいました。(フォラーたちを追ってきたヘレナがバイクで離陸しようとしている飛行機の車輪に飛び乗るというアクロバットを披露しています)テディも小型機を運転して後を追います。(ヘレナが競売している場面で見張り役のテディが操縦の真似事をしているのが伏線になっていました)

時空の裂け目に突入しようとするユルゲンに、インディは「アルキメデスは大陸大移動を知らなかったから思い通りの年代には行けない」と指摘しますが、既に遅く飛行機は裂け目を抜け、紀元前218年のシチリア上空に。ローマ兵の攻撃をアルキメデスは投石器などの発明を駆使して対抗しています。飛行機をドラゴンと思い込んだローマ兵に攻撃され、飛行機は墜落。ユルゲンたちは死亡しますが、インディとヘレナはパラシュートを使って助かります。アルキメデスが死んだユルゲンから腕時計を外すのですが、この腕時計が洞窟の遺体が着けていたものです。

テディの操縦する小型機は無事で、一緒に帰ろうとするヘレナに、インディは考古学者の夢だと言ってここに残りたいと言い張ります。でも本心は、妻子のいない孤独から逃げ出したい気持ちもあるのよね。
そこへやってきたアルキメデスにも残りたいと言うインディを、ヘレナは「貴方の要る場所はここじゃない」と殴り倒して連れ帰ります。
(アルキメデスは予めこの年代に飛ぶよう設定していたようで、彼の狙い通りに飛行機がローマの艦隊を駆逐してくれました。)

意識を取り戻したインディは自室にいることに気付きます。そばにはヘレナやサラーがいて、テディとマリオンもやってきます。気を利かせたヘレナたちが部屋を出ていくと😁 、マリオンはインディに、肘や頭を指しながら「ここは痛くない」と言って、そこにキスさせますが、このエピソードは『レイダース/失われたアーク』でマリオンがインディにキスしていた逆バージョンですね。

他にもシリーズのオマージュがちょこちょこ登場して楽しませてくれました。テディの役割は、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』 のショートを連想させます。バイクで列車に飛び乗ったり、馬で地下鉄の線路を走ったり、モロッコでのカーチェイスなどアクションシーンもハラハラドキドキで、二時間半の長さを全く感じさせませんでした。

ラストで、干してあったインディの帽子がさっと部屋に消えますが、それは年を取り、息子を亡くし妻とも距離が出来て人生に飽いていた彼が再び生気を取り戻したこと=冒険家としての復活を意味しているのかな?😀 
とはいえ、これがシリーズ完結編になるのでしょうけれど。

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さだまさし50th Anniversary コンサートツアー2023~なつかしい未来~

2023年06月29日 | ライブ・コンサート他
一夜 「グレープナイト」 50年目のグレープの二人で、懐かしい曲も新曲も!
東京国際フォーラム ホールA 
開場 17:00 / 開演 18:00

グレープの頃からのファンではありますが、コンサートに行き始めたのはさださんがソロになってからなので、ゲストでサプライズ登場したのを除いてグレープとして初めて聴くコンサートでした。

ちなみに、この記念コンサートは第四夜まであります。(公式HPより)
ニ夜 「工務店ナイト」 ツアーバンド「さだ工務店」と楽しいステージ!
三夜 「管もナイト」  「さだ工務店」と管楽器で、きらびやかに!
四夜 「弦もナイト」  「さだ工務店」とストリングスで、バラードたっぷり! 

全てに参加する通し券の人はカード型のチケットのようですが、一夜だけの客は紙のチケットで、入場口も別でした。
(それにしても国際フォーラムのホール入場はいまだ地上階からだけで地下から入れないのが辛い😓

入り口には高見沢俊彦(会場にもいらしていたと紹介がありました)、小林幸子、服部隆之、平原綾香他、NHKなどTV関係、音楽関係から沢山の花輪が飾られていました。
後日、秋篠宮ご夫妻もお忍びで鑑賞されていたと報道ありましたね。

記念スタンプも長蛇の列で開演時間ギリギリにやっと押せて、席に着いた途端に本ベルとなりました。(あぶね~~!)

アルバムジャケットが並ぶステージ背景。
初めは二人だけで、あとから「さだ工務店」の倉田さんやキムチ(木村)さんたちも登場。第二夜は工務店フルメンバーだそうです。

・雪の朝
・紫陽花の詩
・蝉時雨
・殺風景
・春への幻想
・残像
・夢の名前
・天人菊
・花会式
・19才
・ひとり占い
・交響楽(シンフォニー)
・縁切寺
・無縁坂
AC
・精霊流し
・掌

マチャミは寡黙なイメージがありましたが、この夜はグレープ結成当時の話など、さださんに振られるたびに沢山話してくれました。ときには彼を心配するようなそぶりも随所に見られました。
さださん自身、妙にハイテンションで、「落ち着きのない子」がそのまま大人になったように、ステージを「徘徊」状態で、いつものコンサートとも明らかに異なっていたように感じました。

懐かしい曲の数々は、歌詞もメロディもすぐに頭の中で蘇り、知らず知らずにマスクの下でそっと口ずさんでいました。
マチャミの重みのある歌声と年を経たさださんの歌声が重なり見事なハーモニーを奏でて、これぞ「グレープ」な夜を堪能しました。

今回のチケットはいつもよりかなり高額ですが、シリアルナンバーの入ったプレミアムパンフレットがついています。これがまた昔のLPレコード風な作りで、レコードは入っていないけれど、ジャケットとライナーノート形式です。

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ぐうたらバンザイ! HDマスター版

2023年06月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
フランスのとある田舎町。ここにアレキサンドル(フィリップ・ノワレ)という農夫が住んでいた。彼は人並以上に体格もよく、力も強かったが生まれつきのなまけ者だった。が、彼の妻(フランソワーズ・ブリオン)は働き者で、ともするとなまけようとする夫を許しておかない。夫は朝寝が大好きなのに、朝早くから女房にたたき起こされ、食事もゆっくりさせてもらえぬまま、その日のいい渡されたスケジュールを消化するために家を飛び出さなければならなかった。遠くにいても、無電連絡によって少しもさぼれない。そうこうするうちに、アレキサンドルの生活を一変させるような大事件が起こった。あの口うるさい女房が交通事故でポックリ死んでしまったのだ。女房の野辺送りをすました彼は、ほっと息をつき早速ベッドにもぐり込み、そのまま深い眠りにおちた。三日後、一向にアレキサンドルが起きる様子がないので、親友のサンガン(ポール・ル・ペルソン)が訪れると、過去十年間の寝不足の償いをするのだという。その彼も、食べずに眠ってばかりもいられない。そこで考えたのはベッドの中で飲み食いする方法だった。買い物は愛犬にさせればいい。それから二カ月、アレキサンドルは一向に起きる様子がなかった。そのうちに、彼に共鳴して仕事を休む者が続出した。村会はこれを重視し、その対策と してアレキサンドルを兵糧攻めにすることにした。こうすれば彼はやがて降参するだろう。愛犬がいつも食料を買いにいくブイロー夫人の食料店に、アガタ(マルレーヌ・ジョベール)というセクシー・ガールがいた。彼女はアレキサンドルに大いに興味をもち、近づいた。ある日、アガタは食料を持ってアレキサンドルの家を訪ねた。そのうちにアレキサンドルがベッドから腰を上げ、外へ出る日がきた。村人にとり、それは奇跡だった。ことの起こりは、彼の愛犬が家出したからだった。彼は一日も犬なしでは暮せないのだ。アレキサンドルの親友サンガンを始め、村人たちはやっと愁眉を開いた。彼がいよいよ野良仕事を始めると思ったからだ。ところが、犬が見つかると釣にいったり散歩をしたり、三〇〇エーカーの畑は荒れるに任せっぱなしだった。そのうちにアレキサンドルとアガタが結婚することになった。教会での式も終わりに近づいた頃、花嫁アガタがふと示した仕草で急にアレキサンドルは、死んだ女房を思い出したからたまらない。恐れをなした彼は、教会の入口で待っていた愛犬を連れて表へ飛び出し、すたこらさっさと逃げ出した。 (Movie walkerより)


フランスの長閑な農村を舞台に、念願だったぐうたら生活を手に入れた男が巻き起こす珍騒動を描いたイヴ・ロベール監督のフレンチコメディです。

アレキサンドルは妻と結婚した翌日から10年間、朝から晩まで休みなく働かされ、犬を飼う事さえ一年以上かかって(サンガンのところで生まれた子犬をずっと預けっ放しだった)やっとお許しが出る始末で、鬱憤が溜まって爆発状態。何しろ妻は指パッチンで自在に夫を操り、夫の後をつけ回してさぼっていないか監視はするわ、自分がスピード違反で捕まった際に目にした警察の無線機をちゃっかり夫の監視に利用するわで恐妻ぶりを存分に発揮していましたのでね。

ところが、突然妻とその両親が事故死してしまいます。(きっかけを作ったのは彼の愛犬なんですけど😁 )葬儀を済ませた彼が惰眠を貪りたくなる気持ちもわかるというものです。この愛犬がまた実に賢く、アレキサンドルの世話を甲斐甲斐しくします。
でもものには限度というものがあります。心配したサンガンや村人たちが、外に出るよう説得しますが、アレキサンドルは聞く耳を持たず、愛犬に買い物をさせ、ベッドで全て事足りるようにして引き籠りを続けていました。

そのうち、彼と同じように働き詰めの農夫や、子供たちが彼の真似をするようになります。サンガンの中にも、本当は彼のようにぐうたらしたい気持ちがあるのですが、このまま皆がアレキサンドルのような生活をするようになれば、村の秩序は崩壊してしまうので、村長を巻き込み何とか彼を外に出そうとあれやこれやの手を尽くしますが、どうにもうまくいきません。

ところが、アレキサンドルに興味を示したアガタの登場で事態は好転。
突然いなくなった愛犬を探して外に出た彼は、やがてアガタと付き合うようになり遂に結婚を決意します。それを聞いたサンガンたちは大喜び。

ところが、結婚式当日、隣に並んだ花嫁の指パッチンの仕草に、前妻との生活を思い出したアレキサンドルは、まっぴらごめんと逃げ出してしまうのです。
アガタは彼が村の大地主だと知ると、更なる富を求めて彼を酷使しようと考えていたのだから、これはアレキサンドルに同情してしまうし、逃げ出して正解だと共感してしまうラストでした。

彼がずっと仕事をせずにぐうたらできるのは、地主であり、これまで働きづめで貯めたお金があるからです。定年後の日本人がのんびり老後を楽しめる時代は既に過去のものとなりつつあります。定年自体が延長され、このままでは死ぬまで働かなければ生活が成り立たないことにもなりかねません。その意味でもアレキサンドルの生き方はやり過ぎ感はありますが羨ましい限りです。

映画に登場する動物たちの、のんびりした姿に癒されます。
妻の目を盗んでキツツキや水鳥たちを眺めるアレキサンドルは実に羨ましそう。
妻たちの葬儀の後でアレキサンドルがまずしたのは、あひるやウサギ、牛を囲いから出すことでした。その後放し飼い状態の彼らが実にのびのび暮らしているのに癒されます。そして何より、愛犬の可愛さ、賢さがたまらなく最早主役と言ってもいいような存在感がありました😁

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シン・エヴァンゲリオン劇場版 EVANGELION:3.0+1.11 THRICE UPON A TIME

2023年06月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2020年製作 155分 G

ミサトの率いる反ネルフ組織ヴィレは、コア化で赤く染まったパリ旧市街にいた。旗艦AAAヴンダーから選抜隊が降下し、残された封印柱に取りつく。復元オペの作業可能時間はわずか720秒。決死の作戦遂行中、ネルフのEVAが大群で接近し、マリの改8号機が迎撃を開始した。一方、シンジ、アスカ、アヤナミレイ(仮称)の3人は日本の大地をさまよい歩いていた……。(あらすじ紹介より)


1995~96年放送のTVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」を再構築した、庵野秀明監督「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結編。
2007年公開第1部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(2007年公開)、第2部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(2009年公開)、第3部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(2012年公開)に続き、「新劇場版」シリーズの集大成となる作品です。テーマソングは、これまで同様宇多田ヒカル。

「3.0+1.11」とは2021年3月8日公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版EVANGELION:3.0+1.0 THRICE UPON A TIME』を一部調整した「3.0+1.01」バージョン(同年6月12日公開)を更に一部調整を重ねたバージョンだそうです。

今作のアヤナミは『序』『破』に登場したレイとは別個体のユイの複製体です。ヴィレと合流するため、リリン(人類)の活動可能領域を目指してコア化した大地を歩く3人。(正直、前作から時間が経ってるので内容うろ覚えです😞
倒れたシンジを助けたのは、大人になったトウジやケンスケたちかつての同級生でした。彼らはニアサードインパクトを生き残った人々の集落「第三村」で、ヴィレ設立の支援組織「クレイディト」の助力を得て暮らしていました。(トウジとヒカリは結婚して娘ツバメがいます。)
アスカとシンジはケンスケの、アヤナミはトウジたちの家で過ごすことになりますが、シンジは心を閉ざしたままでした。
一方、アヤナミは、村の仕事を手伝い、ヒカリたちとの心の交流をする中で、命令とは異なる生きることを学んでいきます。

アスカは、誰とも関わらず、食事すら摂ろうとせず殻に閉じこもり続けるシンジに怒りをぶつけますが、ケンスケはただ生きていてくれたことを喜び、励まします。

旧ネルフ施設の廃墟で独り過ごすシンジを訪ねたアヤナミは、シンジが落としたカセットプレーヤーを返そうとしますが、レイではない彼女をシンジは拒絶します。アヤナミはアスカから預かった食料だけを置いてその場を去ります。村での日々を送りながら、アヤナミはシンジに食料を届け続け、その様子をアスカは陰から見守ります。

アヤナミに本心を吐露したシンジは自分の殻に閉じこもるのを止めます。ケンスケの仕事(村周辺の環境調査)を手伝う中で、ニアサー後のトウジたちの苦労を知ったシンジに、ケンスケは「父親とちゃんと話せ」と諭します。

封印柱の復元実験場で、シンジはリョウジという少年に会います。彼はミサトと加持リョウジの子どもでした。ミサトが抱き続けているシンジやリョウジへの責任感を知ってシンジの心に変化が生じます。

肉体の異変を悟ったアヤナミは、ヒカリたちへ感謝の手紙を残し、シンジに会いにいきます。以前シンジに名前を付けて欲しいと頼んでいた彼女に、シンジは「アヤナミは、アヤナミだ」と答えます。アヤナミは村では生きられないけれど村が好きだったと話してカセットプレーヤーを渡し目の前で消滅してしまいます。

一度は脱走したヴンダーへ戻る決意をしたシンジをミサトたちは受け入れますが、ニアサーで家族を失ったミドリは不満を抱きます。
艦内の「種の保管室」でのミサトとリツコの会話。加持は地球上の全生命をリセットする「人類補完計画」から動植物を守るための“方舟”として、ネルフからヴンダーを強奪しましたが、彼亡き後、ミサトたちは“戦艦”へ改装していました。・・へぇぇ~~そうだったのか😓 
ゲンドウと冬月が目論むフォース・インパクトを阻止すべくヴィレも最後の決戦への準備を進めます。アスカは監禁中のシンジに面会して思いを伝えます。

エヴァ第13号機の無力化のため、「ヤマト作戦」を開始するヴィレは、南極のセカンド・インパクト爆心地にあるネルフ本部にヴンダーの大気圏外からの急降下突撃を敢行します。 
ネルフの空中戦艦群や無数のエヴァインフィニティを振り切り、エヴァ新2号機とエヴァ改8号機が出撃し、無数のエヴァMark.07群に苦戦しながらも、遂に第13号機に辿り着いたアスカは、「強制停止信号プラグ」で貫こうとしますが、自身の新2号機自身”のATフィールドに阻まれてしまいます。眼帯を外し左眼の封印柱を引き抜いて「第9使徒」の力を解放したアスカは自らを“使徒化”することで、新2号機のATフィールドの中和を試みますが、第13号機内に取り込まれてしまいます。

「地獄の門」が再び開き、ネルフが「アナザー・インパクト」の儀式を進めているのと気付くヴィレのメンバーの前にゲンドウが現れます。リツコは躊躇いなくゲンドウの頭に銃弾を撃ち込みますが、そこにあったのは「ネブカドネザルの鍵」により人を捨てた異貌でした。

かつてミサトの父が発案した人類補完計画の全容(人類の人類による進化と世界の浄化。進化の贄として用意された「アヤナミシリーズ」と「シキナミシリーズ」)に言及しながら初号機の返還を要求したゲンドウの前にシンジが現れますが、ゲンドウは呼びかけに答えず第13号機に取り込まれます。逃げ続けてきた責任を自らの意志で負う覚悟をしたシンジは、エヴァ初号機に搭乗して父を止めると告げます。彼の贖罪に納得できないミドリ、彼を止めようとするトウジの妹のサクラ、混乱する中、シンジを庇ったミサトが撃たれます。

マイナス宇宙へ突入するシンジと初号機のシンクロ率は無限に至り、「カシウスの槍」(希望の槍)を持つ初号機と、「ロンギヌスの槍」(絶望の槍)を持つ第13号機の戦闘が始まります。
シンジの記憶から生み出される現実と虚構の境界が曖昧な光景の中、ゲンドウは現実と虚構世界の再構築を語ります。アディショナル・インパクトが始まり、頭部のないアヤナミレイへと変化していきます。

冬月はマリ=イスカリオテのマリアにエヴァMark.10〜12を譲るとLCL化し消滅します。ヴィレの槍が完成し、ミサトを残してヴィレメンバーが退避します。マリの改8号機はエヴァMark.10〜12やMark.9-Aを含む4体のエヴァを取り込んでシンジ救出に備えます。

暴走を続けるゲンドウに、シンジは「お父さんのことを知りたかった」と話しかけ、カセットレコーダー(元々父の愛用品だった)を返します。
ゲンドウは両親の愛情を知らずに育ち他者との関わりを恐れた少年時代や、ありのままを受け入れてくれた妻ユイとの出会いと喪失の苦しみの回想の中でユイの名を呼び続けますが彼女は現れません。自身の弱さ故に会えないのだと落胆するゲンドウに、シンジは自身の弱さを認めていないからだと答えます。この一言で彼が大人になったことがはっきり示されますね。

人の手で造られたヴィレの槍に込められたミサトの意志を受け取るシンジを見て息子の成長を思い知らされるゲンドウ。息子という存在が父である自分への罰と感じ恐れていたことを彼はシンジに謝ります。次の瞬間、シンジの心の中のユイと再会したゲンドウは全てを悟って去っていきます。

第13号機に取り込まれたアスカも、「シキナミシリーズ」の複製体として生まれた自身の過去を回想していました。
シンジの前に現れたカヲルは、彼との対話の中で、シンジにとっての幸せを誤解していたことに気付き、彼に全てを託すと自身のことを「渚司令」と呼ぶ加持と共に去っていきます。カヲルの正体は虚構と現実の狭間の「渚」にいる者だったのね。
最後にアヤナミと対面したシンジは、新しい人間が生きられる世界=エヴァの存在しない世界を願って、第13号機を初号機(に乗る自分)もろとも、ヴィレの槍で刺し貫こうとしますが、そこにユイが現れてその役目を引き受けます。
全てのエヴァが次々と槍に貫かれ消失し、全ての生命が元の魂の形へと戻っていきます。

青い海の浜辺に佇むシンジをマイナス宇宙への再突入に成功したマリが迎えに来ました。
場面は変わり、駅のホームに佇むシンジ。
エヴァの存在しない世界の創造により、彼は14年の時を経た大人になっています。
向かいのホームには、アヤナミやアスカ・カヲルら見知った人々の姿がありました。
マリとともに、駅の外に出たシンジの前には、エヴァの存在しない平穏な世界が広がっていました。

正直戦闘には興味がないので(おぃ!😓 )専ら人間模様に関心がありましたが、シンジのことを殻に閉じこもる臆病者だと思っていたけれど、実はゲンドウこそが臆病者だったという。😔 いわば壮大なる親子の断絶と和解のお話だったのね。


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大名倒産

2023年06月23日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年6月23日公開 120分 G

越後・丹生山にぶやま藩の鮭売り・小四郎(神木隆之介)はある日突然、父(小日向文世)から衝撃の事実を告げられる。なんと自分は、〈松平〉小四郎― 徳川家康の血を引く、大名の跡継ぎだと!庶民から一国の殿様へと、華麗なる転身…と思ったのもつかの間、実は借金25万両(100億円)を抱えるワケありビンボー藩だった!?
先代藩主・一狐斎(佐藤浩市)は藩を救う策として「大名倒産」つまり藩の計画倒産を小四郎に命じるが、実は全ての責任を押し付け、小四郎を切腹させようとしていた…!残された道は、100億返済か切腹のみ!
小四郎は幼馴染のさよ(杉咲花)や、兄の新次郎(松山ケンイチ)・喜三郎(桜田通)、家臣の平八郎らと共に節約プロジェクトを始めるが、江戸幕府に倒産を疑われ大ピンチ!果たして小四郎は100億を完済し、自らの命と、藩を救うことが出来るのか!?(公式HPより)


浅田次郎の同名時代小説を『老後の資金がありません!』『そして、バトンは渡された』の前田哲監督で映画化。

基本はコメディで、ちょっと遊び過ぎな感もあるのですが、肩の力を抜いて笑って観ていられます。「超高速参勤交代」や「引っ越し大名」に比べたら見劣りは否めませんが、エンドロールで演じている役者さんたちが楽しそうに踊っている姿が可愛かったので、まぁいいか😉 小四郎が小さい頃に流行り病で亡くなった母・なつ(宮崎あおい)がナレーションを務めています。

小四郎は父の作る塩鮭が自慢の心優しい青年でしたが、ある日突然藩主の息子だと言われ、有無を言わさず江戸の上屋敷に連れて来られ藩主を継ぐことに。先代藩主には小四郎の他に3人の息子がいるのですが、長男は家督を継いだ直後に落馬して死亡、次男は頭が弱く三男は病弱のため庶子の小四郎にお鉢が回ってきたのです。

中屋敷に住む次男の新次郎はうつけ者(常に鼻を垂らしているのは「忍たま」のしんべえ並み)ですが、庭造りにかけては天才的で、とても純粋な人です。旗本大番頭の小池(高田延彦)の娘のお初(藤間爽子)と惹かれ合っていますが、娘の幸せを願う父は貧乏藩のうつけに嫁ぐことに猛反対しています。
二人の兄たちは小四郎を歓迎し温かく迎え入れてくれます。

家督相続の挨拶に出向いた小四郎に、老中の板倉(勝村政信)と老中首座・仁科(石橋蓮司)は銀馬代が納められていないと告げます。慌てて家臣に尋ねると、家老の天野大膳(梶原善)はあっさり不払いを認めたばかりか、卑しい金の話などするなと窘める始末。お目付け役の磯貝平八郎(浅野忠信)と下屋敷の父を訪ねた小四郎に、父は藩と領民を救うためだと計画倒産をもちかけます。

町で水売りをしていたさよが、ならず者に絡まれているのを助けて再会した小四郎は、彼女に藩の窮状を打ち明けます。子供の頃から気の強い彼女に小四郎は助けられていました。一度は父の提案を受け入れたものの、次男からそれでは家臣や領民の一部しか救えないことを教えられた小四郎は、何とか皆を救う手段がないかと考え、さよと共に借金返済に奮闘することになります。

蔵に眠る武具や家財を売り払い(リサイクル)、不要な家も売り払って兄弟皆で上屋敷に暮らし(シェアハウス)、糞尿も肥やしとして売り(SDGs)、参勤交代では宿をとらずに野宿(キャンプ)と節約に励むうち、家臣たちも一丸となっていきます。

久々に国元に帰った小四郎が目にしたのは城下の寂れたありさまです。藩が借金をしている天元屋に牛耳られ、塩鮭作りが出来なくなって土木作業に従事させられている養父や、税の前払いを強要され逃げ出す領民が続出して城下は荒れ果てていました。そこへ江戸から老中の呼び出し状が届きます。大名倒産の計画が漏れたのです。急ぎ江戸へ引き返した小四郎は、莫大な借金の原因を探るべく勘定方の橋爪(小手伸也)を訪ねます。

一狐斎に命じられ小四郎を見張っていた平八郎ですが、彼の誠実な人柄を知り迷いが生じてきます。責任を感じた橋爪が首を吊ろうとした場面を目撃して思わず助けた彼は、小四郎に裏切っていたことを詫びます。

平八郎から両替商の天元屋タツ(キムラ緑子)との長年の因縁を聞いた小四郎は、藩の帳簿と橋爪が密かに書き留めていた帳簿を突き合わせて、天元屋が藩の借金25万のうち20万両を中取りしていたことを突き止めますが、動かぬ証拠である現物の在処がわかりません。

一狐斎の元を訪ねた小池(二人は旧知の仲)は、小四郎が若い頃の理想に燃えていた一狐斎とよく似ていると言い、お互い子に教えられると話しました。(お初もまた父親に自分の幸せは自分で決めると、新次郎との結婚を願い出ていました。)

板倉と仁科の前で天元屋の悪事を申し立てた小四郎ですが証拠がないと仁科に一蹴され、切腹を命じられてしまいます。その時火付盗賊改方の長谷川が駆け込んできて、天元屋の蔵から見つかった悪事の証拠(平八郎が真贋の区別のために全て齧った歯型がついている小判で、某五輪選手の金メダル事件を連想させます)が暴かれます。(前日に小四郎の元に天元屋の隠し財産の場所を教える文が投げ込まれ、それを使って平八郎が友人の長谷川に捜査させたようです)

仁科は一狐斎を自分の側の証人として呼び寄せていましたが、逆に罪を告発されてしまいます。庶子である小四郎を捨て駒にしようとしていた一狐斎でしたが、小池や平八郎らの進言に今一度昔の自分を思い出して全てを告白する決意をしていたのでした。

天元屋と仁科が藩を食い物にしてきた事実が暴露され、借金も無事完済できて、藩の財政確保のための案も認められたことで、倒産の件は不問に処されます。新次郎が小四郎を励まそうと握ってくれた塩鮭入りのおむすびに着想を得て、塩鮭と米を江戸に運んで売るというアイディアを思いついたのです。そのための船はお初の父が娘の結婚祝いとして調達してくれて、万々歳で幕を閉じます。

エンドロールの後、新次郎とお初の婚儀の模様が映し出され、小四郎とさよが良い雰囲気になって本当にTHE ENDでした。

原作小説とは設定が異なっている部分もあるようですが、コミカルさを前面に出しながら、人情に訴える場面もあって楽しめました。




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千夜、一夜

2023年06月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年10月7日公開 126分 G

北の離島の美しい港町。登美⼦(田中裕子)の夫・諭が突然姿を消してから30年の時が経った。彼はなぜいなくなったのか。⽣きているのかどうか、それすらわからない。漁師の春男が登美⼦に想いを寄せ続けるも、彼⼥は愛する⼈とのささやかな思い出を抱きしめながら、その帰りをずっと待っている。
そんな登美⼦のもとに、2年前に失踪した夫を探す奈美(尾野真千子)が現れる。
「理由が欲しいんです。彼がいなくなった理由。自分の中で何か決着がつけられればって」彼⼥は前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探していた。
奈美が登美子に問いかける。「悲しくないですか?待ってるのって」
「帰ってこない理由なんかないと思ってたけど、帰ってくる理由もないのかもしれない」と登美子。
しばらくして、奈美は新しい恋人ができたため、夫・洋司(安藤政信)と離婚したいという。そんなある⽇、登美⼦は街中で偶然、失踪した洋司を⾒かけて…。(公式HPより)


久保田直監督が、日本全国で年間約8万人にも及ぶという「失踪者リスト」に着想を得て制作したヒューマンドラマです。

ある日突然いなくなった夫を持つ登美子と奈美という二人の女性が登場しますが、個人的には奈美の方に共感できました。

水産加工場で働く登美子は、30年間という長い年月、夫を待ち続けているのですが、彼女の中で夫の面影は薄れつつあります。当初はビラ配りをするなど情報を求めて懸命に動いていましたが、今ではただ一日を無為に過ごすばかり。そんな自分を認めたくないという気持ちが登美子を意固地にさせているような気がしました。また、彼女自身が独り身を寂しいとか哀しいとか感じていないようにも見えます。だから夫と同じ漁師で幼馴染の春男(ダンカン)に好意を寄せられてもその気持ちに応えることはしません。ならばいっそきっぱり跳ねつけたら良いのにと、登美子の態度には不快感を覚えてしまいます。

夫の失踪から2年が経つ看護師の奈美は、夫が拉致された可能性も考えて元町長の入江を訪ね、登美子を紹介されます。奈美の話を淡々と聞いた登美子は、警察に連れて行って「身元不明の遺体の似顔絵」の閲覧をさせたりしますが、手掛かりはありません。そんな奈美を同僚の大賀が気遣い寄り添っていきます。

気持ちに区切りをつけて前に進もうと考えた奈美が、特定失踪者の届け出をして夫との関係を解消しようとしていることを知った登美子の気持ちが揺れます。奈美に夫の失踪当時の自分を重ねて協力していたのに、裏切られたような気持ちになったのかもしれません。奈美は登美子に特定失踪者問題調査会への夫の調査依頼書作成を頼んだことがここにきてようやくわかりました。単に失踪者を持つ先輩のアドバイスを受けにきたわけじゃなかったのね。😞 

登美子に手酷く振られた春男が、死んでやると言い捨て海に出たまま行方不明になります。春男の母・千代(白石加代子 )になじられても動じない登美子は憎らしくさえ映ります。いなくなった人を待つ身の辛さは登美子が一番知っている筈なのに・・。

夫の母の葬儀で彼の実家を訪れた登美子は夫の父(平泉成 )から、そろそろ気持ちの整理をしたらどうかと言われます。そんな時、街中で偶然奈美の夫・洋司を見かけた登美子は、帰ろうか迷っているという彼を半ば強引に奈美のところへ連れて行きます。奈美に新しい男がいると知っているのにです。まずは奈美に連絡して意向を確かめるべきなのに、いきなり大賀と暮らしている部屋に連れてくるなんて嫌がらせとしか見えません。当然奈美は二人に対して怒りを爆発させます。

奈美に追い出された洋司が雨の中ずぶぬれで登美子のところへやってきます。
「幸せの絶頂」にあった頃の会話を記録したカセットテープを何度も再生し、遂に切れてしまったテープを洋司が繋いでくれます。
夜中、登美子の話声に気付いた洋司は、彼女がそこにいない夫の諭と会話を交わしている独り言を聞きます。洋司を諭が帰ってきたと思い込む登美子に彼も話を合わせながら、自分がしてしまったことの罪深さを改めて思い知ることになるのです。

登美子に振られた(ちょっと違うけど)春夫が死んでやると言って海に出たまま行方不明になっていたのが無事に戻り、まだ諦めきれずに一緒になってくれと迫る春夫に、登美子は今のままでいいと浜辺をどこまでも歩いていくシーンで終わります。

春男が無事に戻ってきた知らせを聞いた登美子は、千代の家に飛んで行って知らせます。千代は待つ身がどれほど不安で苦しいのか身を持って知ったと言い、二人は抱き合って喜びます。登美子にもまだそういう優しさ?は残っていたのね。

「一緒になって欲しい」と諦めきれずに迫る春夫に、「今のままでいいの」と言いながら浜辺をどこまでも歩いていく登美子・・そしてエンドロール。

春男がどこまでも冴えない中年男で、若い頃の諭の男ぶりと比べあまりにも貧弱なこともあり、この男と一緒になるのは無理だ~と思わせてしまいます。苦労はさせないと言いながら、酒浸りで年老いた母親もいる彼との生活が楽しいとは思えないし。
ただ一点だけ同情の余地があるとすれば、それは彼が若い頃から登美子を想っていたことですね。でもだからこそ余計に可哀相でもありました。

「帰って来ない理由なんてないと思っていたけど、帰ってくる理由もないのかもしれない」劇中の登美子のセリフです。う~~ん、結局登美子は気持ちに整理をつけることができたのかしら?夫はもう死んでいると認めることが出来ずに長い夢の中にいる状態から抜け出せたのでしょうか?

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長ぐつをはいたネコと9つの命

2023年06月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年3月17日公開 アメリカ 104分 G

愛くるしいモフモフにして、心はワイルドでダンディ、しかも剣を持てば、キレッキレのスゴ腕の、長ぐつをはいたネコ:プス(声:アントニオ・バンデラス)。剣を片手に数々の冒険をし、恋もした。でも、気付いたら、9つあった命は、ラスト1つに。急に怖くなり、レジェンドの看板を下ろして家ネコになることにしたが、「賞金首」であるプスを、刺客たちはほうってはおかない。そんな時、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を聞き、再奮起。命のストックを求める旅の道中、プスが出会ったのは、ネコに変装したイヌ・ワンコ(ハーヴィー・ギレン)と、かつて結婚も考えた気まずい元カノ・キティ(サルマ・ハエック)。プスを狙う賞金稼ぎや、「願い星」の噂を聞きつけた手強い奴らもモチロンやってきて、前途多難な予感しかない。やれやれ、次死んだら、ほんとに終わりなのに。果たして、プスを待ち受ける[うっかり死ねない]大冒険の運命とは──!(公式HPより)


童話の『長靴をはいた猫』の映画化ではなく、「シュレック」シリーズから誕生したキャラの「長ぐつをはいたネコ」ことプスを主人公に描いた劇場アニメの第2弾です。監督はジョエル・クロフォード。
前作は「ハンプティ・ダンプティとキティ・フワフワーテを連れ、ジャックとジルという2人の悪党を相手に、大金持ちになれるという伝説の魔法の豆を手に入れるために戦うことになる。」(ウィキより)お話のようです(観てないけど)

大活躍だったらしい前作と違い、今作のプスは限りある命を知って怯えます。これまでの身勝手な傲慢さは影を潜め、死への恐怖が彼を虜にしますが、キティやわんことの出会いがプスに変化をもたらしていくのです。
「ハリー・ポッター」シリーズのヴォルデモートが分霊箱を作り、命を軽視していたのと似ている点がありますね。一つしかない限りある命だからこそ、悔いのないような生をまっとうしようと努力するという大切なことを教えてくれる作品になっています。
ウルフの描写は小さな子には少し怖すぎる気もしますが、だからこそインパクトを持って迫ってくるのだとも感じました。子供と大人、それぞれの視点で楽しめる映画です。

凄腕剣士のプスは皆の人気者。無断で総督の邸宅を占拠して陽気に歌い踊っている最中に主の総督が帰ってきて、彼を捕まえようと大騒ぎ。その音で森の奥深くで眠っていた巨人が目覚めて襲い掛かってきますが、ものともせずに華麗に倒します。観衆の声援に答えもう一度歌おうとした矢先に巨人が振り回していた鐘がプスの頭上に・・・目覚めたプスに村の医者が「君は死んだ」と告げます。「九つの命がある」と笑い飛ばすプスでしたが、医者はこれがラストだと言ってリタイアを勧め、ママ・ルナの住所を教えます。
バーにいたプスは賞金稼ぎらしいウルフ(ワグネル・モウラ)といつものように勇猛果敢に戦いますが、相手の圧倒的な強さを前に初めて全身総毛立つ恐怖を感じ逃げ出します。
装い一式を地面に埋めたプスはママ・ルナ家のドアを叩きます。飼い猫として暮らすうちに覇気を失っていったプスに、猫の振りをして紛れていた犬が無邪気に話しかけてきますが、無視します。キャットフードを皆で並んで顔を突っ込んで食べたり猫用トイレを使ったりの毎日に初めは抵抗感を示してもやがて慣れていく様子が何とも哀れさを醸し出します。

ところが、その家にプスの懸賞金を狙って3頭のクマを従えたゴルディ(フローレンス・ピュー)がやってきます。(「ゴルディと3びきのくま」というイギリスの童話が元ネタでそのゴルディが成長したキャラだそう)隠れていたプスは、パパベアたちが願い星の地図の話をしているのを聞いて、願い星を手に入れて再び9つの命を持とうと、後をついてきたわんこと一緒に再び冒険の旅に出ることになるのです。

地図を持つという魔法道具収集家のジャック・ホーナー(ジョン・ムレイニー)の屋敷に忍び込んだプスは、同じ目的で侵入した元カノのキティに邪魔をされます。ジャックのキャラもマザーグースの歌に登場するパイ好きなジャック・ホーナーが大人になった姿ということです。
ゴルディたちも加わった争奪戦を制して、キティと一緒に地図を手に入れ屋敷から逃げ出したたプスでしたが、ウルフも彼を狙っていると気付いて恐怖が襲います。

願い星の地図はそれを手にした者に相応しい試練を与え、それを乗り越えた先に願い星があります。プスやキティのそれが険しい道であるのに対してわんこの道は穏やかで楽しいので、プスはわんこに地図を持たせます。

ゴルディやジャックたちも執拗に追いかけてきて、地図の取り合いになりますが、ウルフの姿に怯えたプスが逃げ出してしまい、ゴルディが地図を手にします。パニックになったプスをキティが落ち着かせ、再びゴルディたちから地図を奪います。ゴルディたちが迷い込んでいたのは「懐かしの我が家」ささやかでも満ち足りた幸福の中なんですね。

地図を取り返したプスでしたが、わんこがゴルディたちに捕まり、プス自身も水晶の洞窟で自身の過去と対峙します。そこに現れたウルフの正体が死神と知り恐慌でパニックになったプスは、地図を持ったまま逃げ出します。

ゴルディたちが言い争いをしている姿を見て、わんこは「なんでも言い合える家族がいて良いな」と無邪気に話しかけます。実はゴルディの願いは本当の家族に会うことで、それを知った弟ベア(サムソン・ケイオ)は自分たちは違うのかと怒りますが、ママベアは優しく受容し、ゴルディの願いを叶えようとします。まさに母の無償の愛だなぁ。😄 

願い星のところへ辿り着いたプスを、わんこを助け出したキティが追いついて逃げたことを責めます。プスは結婚式当日にキティから逃げ出した過去があるんですね。「貴方が好きなのは自分自身だけ」と言うキティに返す言葉のないプスは、自分がキティを傷つけてきたことに気付きます。

そこへ、ジャック、ゴルディたちが現れて、再び地図を巡った争奪戦が始まります。弟ベアの窮地にゴルディは地図より「家族」を選びます。ジャックをカバンに詰め込み、最後にプスとウルフの対決です。死神はプスが命が複数あることに慢心して粗末に扱ってきたことに憤っていたのですが、プスが命を失う恐怖に打ち勝ち、限りある命を大切に生きる覚悟を知ると、今殺す価値はなくなったと立ち去ります。

そこへ魔法の力(不思議の国のアリスのカード?)で巨大化したジャックが現れて、地図を奪います。わんこがジャックの気を引いて時間を稼ぎ、プスやキティ、ゴルディたちが協力して地図を破ります。願い星が崩壊し始め、逃げ遅れたジャックは地図の破片と一緒に消滅します。魔法道具で出現していたジャックの良心のバッタ(ピノキオに登場しますね)が彼に愛想を尽かして不死鳥の炎で地図を焼いてしまうのですが、これは良心が勝ったというよりしっぺ返しをくった形かな?😔 

全てが終わり、プスはキティとわんこと一緒に総督の船を盗んで海へ出ます。キティに次の冒険の行先を聞かれ、古い友達に会いに行くと答えるプス。船の前方には「遠い遠い国」が見えます。「シュレック」の続編にも繋がっていくのかな?😁 

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切り裂きジャックの告白

2023年06月16日 | 
中山七里(著) 角川書店(発行)

東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。マスコミが扇情的に報道し世間が動揺するなか、第二、第三の事件が発生。やがて被害者は同じドナーから臓器提供を受けていたという共通点が明らかになる。同時にそのドナーの母親が行方不明になっていた―。警視庁捜査一課の犬養隼人は、自身も臓器移植を控える娘を抱え、刑事と父親の狭間で揺れながら犯人を追い詰めていくが…。果たして「ジャック」は誰なのか?その狙いは何か?憎悪と愛情が交錯するとき、予測不能の結末が明らかになる。(「BOOKデータベースより)

警察医療ミステリー「刑事犬養隼人シリーズ」の第1作でドラマ化もされたそうです。「ヒポクラテスシリーズ」に登場する古手川刑事とのバディものになっていて、光崎藤次郎教授もチラッと出てきます。犬養と同じく暴走気味な古手川とのバディですが、娘の主治医である医師と病院を相手に腰が引けがちな犬養に代わり古手川が前面にでる場面も多く、案外良いコンビなのかもと思わせます。

六郷由美香という女性の臓器を抜かれた死体が発見されることから始まります。見事なY字切開から犯人が医学に精通している人間と警察は推察します。ほどなく新聞社に「ジャック」と名乗る人物から声明文が送りつけられ、次の犠牲者となった半崎桐子の遺体が埼玉で発見され、広域捜査となり、警視庁の犬養と埼玉県警の古手川がバディを組んで捜査にあたることになります。
被害者の共通点を探るうち、移植コーディネーターの高野千春の存在が浮かびます。
更に3番目の被害者の具志堅悟の遺体が発見されるに至り、警察は被害者全員とコンタクトをとる立場にいた高野を容疑者としてマークします。
犬養たちは、何かを隠している様子の高野に疑惑の目を向けますが、腎臓移植を待つ娘を持つ犬養は、レシピエントたちのためにドナーの親族の説得をし、命のバトンを繋ごうと懸命に働く彼女が殺人を犯すだろうかと迷います。

高野は、「ドナーの遺族に、レシピエントの情報を伝えてはならない」という職業上決して破ってはならないルールを侵し、ドナーの母の鬼子母涼子に伝えてしまったことで、彼女を犯行に駆り立てたのではないかと考え怯えていました。

高野の告白から涼子の息子の心臓を移植されたのは三田村敬介という高校生とわかり、彼の住所に向かった犬養と古手川は、鬼子母涼子を発見して身柄を確保しますが、重要参考人として取り調べを行う中で、犯人ではないと感じ始めます。
涼子の行動が合間合間に挿入されるのでいかにもな感を抱かせますが、ごく普通の母親に出来る犯行とは考えられず、これはミスリードだということはすぐに思い浮かびますね😁

犯人は別にいると判断した警察は、犯人から「ドナーの情報を知りたいか」という電話を受けた敬介に囮捜査に協力してもらい犯人確保に乗り出します。公衆電話から携帯に乗り換え、指定した場所を変更して警察の裏をかいて敬介に迫る犯人を間一髪で阻止した犬養たちは、ジャック=真境名医師を捕らえます。

脳死移植手術推進派の筆頭である真境名医師は、犯行の動機を手術時に使用したメスがピロリ菌に侵されていたことを隠すためだと言います。これも俄かに信じられない理由だなぁと思っていると、妻で麻酔医の陽子がバッグに毒入りの注射器を隠して夫に面会しようとしたのを犬養たちが見抜いて止めるんですね。😰 

その行動に不審を抱いた犬養は、最初の被害者の犯行時刻時に真境名医師にアリバイがあることを思い出します。そして本当のジャックは妻の陽子であり、それに気づいた真境名医師が、罪を被ろうとしたのだとわかります。
陽子は、誤って別の麻酔薬(臓器毒性を持つ)を使用してしまい、それを隠そうと犯行に及んでいたのです。彼女にとって、何より恐ろしいのは夫の叱責だったのです。文中で彼女が夫からの精神的なハラスメントを受け続けていたことが明かされています。でも真境名医師が身代わりになろうとした理由は、妻を庇うことではなく、自らの名誉が傷つくことが怖かったからだと言うのだから、そのプライドの高さには呆れてしまいますね。結局自分が可愛いだけなんだというのが情けないし、ピロリ菌感染と毒性のある麻酔薬、どちらがより悪いのかも判然としないんですが。

被害者の状況から、医療関係者、それもメスを持つ熟練者以外ありえない設定なのですが、意外な犯人という意味では期待を裏切りません。しかしその動機があまりにも稚拙でちょっとがっかり。でも案外人間の本質をついているのかもしれませんが。😔 

事件解決後、トランペットを吹く敬介をそっと見守っていた鬼子母涼子に気付いた彼との会話が挿入されます。敬介の好意で胸に耳を当てさせてもらい、心臓の力強い音を聞いて息子がそこに生き続けていることがただただ嬉しい涼子の姿が印象的なラストです。

文中にも書かれているように、脳死の概念は西洋と日本では差があるように思えます。心臓が動いているのに「死」と認めるのは家族にはハードルが高いし、誰かの役に立つことが慰めになるのかも個々の価値観に寄ります。
脳死判定の際の様々な「検査」の描写や、ドナーから内臓を取り出す際に麻酔をするなどを読むと、何だか恐ろしくなってきます。
ドナーカードで意思表示しているとはいえ、真摯に考えた末の署名なのかと問えば、全てがそうだとも言い切れない。それなのに本人の意思を強調することが果たして善なのか。まして移植という利権に群がる存在を思えば手放しで賛成とはいきません。

そんな複雑な感情が湧いてきますが、それはそれとして、この物語に関してはラストのエピソードが救いになっていると思いました。

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バビロン

2023年06月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年2月10日公開 アメリカ 189分 R15+

1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして3人の夢が迎える結末は…?(公式HPより)


ゴージャスでクレイジーなハリウッド黄金時代の豪華なファッション、ド派手なパーティ、規格外の映画撮影や熱狂的ジャズミュージックが、とても刺激的な作品です。昔からの映画好きにはたまらないと思うのですが、3時間は長いぞ😩 

1926年のロサンゼルスはサイレント映画の黄金期。映画製作会社・キノスコープ社の重役ドン・ワラック(ジェフ・ガーリン )の使用人として働くメキシコ系アメリカ人のマニーは、映画業界のパーティに潜り込もうとした新人女優ネリーを助け会場へ招き入れます。ネリーと
ドラッグをキメながら互いの夢を語り合います。
歌手フェイ(リー・ジュン・リー)や、黒人トランペッターのシドニー(ジョヴァン・アデポ)らが場を盛り上げて白熱していく会場で、踊り狂うネリーはドン・ワラックの目にとまり代役のチャンスを掴みます。マニーも泥酔したジャックを介抱したことがきっかけとなり付き人として雇われます。

端役の娼婦を演じたネリーは、持ち前の色気と涙を操る演技力で主役の座を奪い取り、マニーも現場をピンチから救ったことで周囲の信頼を得て出世していきます。
映画業界の中でそれぞれ活躍していく2人でしたが、サイレント映画に代わり、トーキー映画が現れます。長編トーキー映画『ジャズ・シンガー』を観たマニーは、ジャックに「時代が変わる」と興奮しながら報告します。
新たな可能性を見出したジャックは、トーキー映画に意欲的に取り組むようになります。

トーキー映画でミュージカル映画が注目を浴びるようになり、マニーはシドニーたち演奏者を前面に出した映画製作で高評価を得て、キノスコープから重役待遇で迎え入れられます。その一方で、意に染まぬ状況を是としないシドニーは映画業界を去りジャズクラブへ戻っていきます。

大女優となっていたネリーでしたが、トーキー映画のセリフの暗唱や声の出し方に苦労して次第に自信を失い、酒やドラッグに溺れるようになります。ネリーを再び輝かせようと、マニーは売り込みのために上流階級のパーティに出席させますが、逆効果となってしまいます。上辺だけの気取った世界に我慢の限界がきたネリーは暴言を吐いたばかりでなく実際にゲロっちゃうんですね。😞 業界の嫌われ者誕生ってわけです。

トーキー映画にチャレンジしたジャックでしたが、観客からは演技を馬鹿にされ嗤われ、自分が最早大スターではなくなりつつあるのを肌で感じます。長い付き合いのゴシップ・コラムニストのエリノア(ジーン・スマート)が書いた自分を酷評する記事を読んで激怒し彼女に詰め寄ったジャックに、彼女は「貴方の時代は終わったけれど、私と違って死んだ後でもその姿は映画に残り続ける」と言います。彼女なりのジャックへの引導と労わりの言葉ですね😊 

駄作のオファーしか来なくなっても受け入れる努力をしていたジャックでしたが、親友のジョージ(ルーカス・ハース )の自殺(女性に振られるたびに衝動的に自殺しようとするジョージをジャックは何度も止めていて、その様子がコミカルだったのですが、最後に間に合わなかったわけですね。)を知って完全に打ちのめされてホテルの部屋で拳銃自殺をしてしまいます。

一方、業界に居場所がなくなってますます酒やドラッグ、賭博に溺れていたネリーは、賭博で大負けして8万ドルの借金を負い、マニーに泣きつきます。キノスコープから借りた8万ドルを持ちギャングのボスのマッケイ(トビー・マグワイア)のもとへ向かったマニーに、マッケイは脚本のアイディアを上機嫌に語ります。でもそのお金は小道具係が作った偽札だったのです。強引に連れていかれた秘密のパーティで偽札がバレて、怒りを買ったマニーは、ネリーを連れてメキシコへ逃げようとします。
でも途中でネリーは彼の元から消えてしまいます。(愛を打ち明けた彼を受け入れたように見えたネリーですが、自分といたら彼は不幸になると考えて自ら身を引いたように見えました。)後日、ネリーがホテルで遺体となって発見されたと報じられました。

時は流れ 1952年。NYでラジオショップを営んでいたマニーは妻子とハリウッドを訪れます。『雨に唄えば』がかかる映画館で独り、ネリーやジャック、シドニーやフェイたちと過ごしたサイレント時代の日々を思い出して感極まり涙を流すマニーなのでした。

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リトル・マーメイド

2023年06月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年6月9日公開 アメリカ 135分 G

海の王国を司るトリトン王(ハビエル・バルデム)の末娘で、世界で最も美しい声を持つ人魚姫アリエル(ハリー・ベイリー)。まだ見ぬ人間界に憧れる彼女は、嵐に巻き込まれた人間のエリック王子(ジョナ・ハウアー=キング)を救うため陸に上がる。人間界への思いを抑えきれなくなったアリエルは、海の魔女アースラ(メリッサ・マッカーシー)に提案され恐ろしい取引を交わす。その内容は、3日間だけ人間の姿になる代わりに、美しい声をアースラに差し出すというものだった。(映画.comより)


アンデルセン童話を原作とする1989年製作のディズニーアニメをロブ・マーシャル監督で実写化したミュージカル映画で、アニメ映画版も手がけたアラン・メンケンと、「モアナと伝説の海」のリン=マニュエル・ミランダが音楽を担当しています。

人魚は嵐を呼んで人間を海に引きずり込むと噂され、船乗りたちに恐れられていました。また、陸に住む人間たちも海の神を恐れていました。

海の神トリトン王には7人の娘がいて、‟七つの海”に一人ずつ遣わされ海の平和と秩序を保っています。末娘のアリエルは姉たちと違い冒険好きで好奇心旺盛で、特に人間に興味を抱いていました。魚のフランダー(アニメ版の可愛らしさが消えているのが辛いかも)とカツオドリのスカットルはアニエルと仲良しです。難破船の中から人間の持ち物を持ち出しては秘密の洞窟に運び込み、人間の生活を空想するアリエルは、陸に行きたくて仕方ありません。そんな娘を心配したトリトン王は、人間や彼らの世界に関わるものに近づかないよう警告し 、執事長のセバスチャンをお目付け役にします。(フランダーやセバスチャンはリアルさ重視なのか、可愛さに欠けるのが難点。)

ある夜、不思議な光に引き寄せられ海上に出たアリエルは、船上でエリック王子の誕生日を祝う人間たちの様子を見ます。その時突然嵐となり、船が岩に衝突して炎上し、王子が海に投げ出されてしまいます。アリエルはエリックを抱えて波打ち際まで行き、美しい声で歌いながらエリックの住む世界に思いを馳せます。セバンスチャンに促され海に戻ったアリエルは、王子が忘れられず気もそぞろ。王子の方も自分を助けて消えた歌声の主に恋焦がれます。そんな娘の様子に気付いたトリトン王はセバスチャンを問い詰め、嵐の夜のことを知ると激怒して、アリエルの洞窟に行き、コレクションを破壊します。

失意のアリエルに海の魔女アースラが助けてあげると話しかけてきます。(かつてトリトン王により王宮を追放され薄暗い洞穴で暮らすアースラは、トリトン王に恨みを抱いていて、アリエルの望みを利用して王座を奪おうと考えています。) アリエルの声と引き換えに人間に変えてくれるというのです。でも3日目の日没までに王子と真実のキスをしなければ、人魚に戻され自由を失ってしまいます。
アリエルは自分のウロコを1枚渡して取引は成約し、ヒレの代わりに足が生えて水中で呼吸が出来なくなったアリエルは、急いで海上へ出ます。セバスチャンやフランダー、スカットルが見守る中、陸へと泳ぎ出したアリエルは、漁師の網に絡まってしまいます。親切な漁師は彼女を城へ連れて行き、声が出ない遭難者の可哀想な娘としてエリック王子と再会しますが、王子はアリエルが命の恩人だと気が付きません。しかもアースラの策略でアリエルはキスの事を忘れさせられていました。

冒険好きで興味あるものを集めている王子と興味が一致した2人はすぐに打ち解けて仲良くなります。2日目。王子は宮殿を抜け出してアリエルに島を案内します。セバスチャンは、真実のキスのためのロマンチックな夜を仲間たちと演出します。2人の距離が縮まりキスをしようとした瞬間、アースラの手下の電気ウナギたちの邪魔が入ります。この様子を見ていたアースラは新たな罠を仕掛けます。

3日目の朝。エリック王子を助けたという女性が現れ、その女性と王子が結婚すると知ったアリエルは嘆き悲しみます。スカットルが女性の正体がアースラだと突き止め仲間とアリエルに知らせます。婚約パーティーに乱入したスカットルと犬のマックスがアースラに襲い掛かる隙に、アリエルは声が封じ込められたアースラのネックレスを壊して自分の声を取り戻しました。アリエルこそが自分を救ってくれた女性だとわかり、2人は自然にキスしようとしますが、日没がきてしまいます。人魚の姿に戻ったアリエルを攫ってアースラは海に引きずり込みました。そこに立ちはだかったトリトン王は、アリエルの自由と引き換えに、海の支配者の権限をアースラに渡し力を喪います。
無敵となったアースラに、アリエルの後を追ってきたエリック王子と一緒に戦いを挑んだアリエルは、大きな渦に巻き込まれそうになりながらも難破船の船首でアースラを貫き倒しました。復活したトリトン王は、アリエルの願いを叶えて人間にしてあげます。

結婚式のあとでまだ見ぬ世界を探検する為、船出しようとする2人をトリトン王と姉たちを含む人魚たちや人間たちが祝福します。海と陸の世界は、アリエルとエリック王子により強く結びつきました。

アリエル役が白人ではないことで賛否両論がありますが、舞台がヨーロッパではなくカリブあたりの南国っぽいのも含めてこれはこれでありかも。個人的にはトリトン王役のハビエル・バルデムが良かったな😍 

ミュージカル映画ですからお馴染みの歌たちが登場し、特に『アンダー・ザ・シー』 では海の生物たちの賑やかで華やかなダンスに魅了されます。

アンデルセンの童話は悲劇ですが、アニメ&実写版は冒険心旺盛で陸の世界に憧れるヒロインが人間の王子に恋をして苦難の末に夢を叶えます。まさに現代の御伽噺ですね。

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PLAN 75

2023年06月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年6月17日公開 日本=フランス=フィリピン=カタール 112分

夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子(河合優実)は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送る。
果たして、<プラン75>に翻弄される人々が最後に見出した答えとは―――。(公式HPより)


是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を早川千絵監督自ら長編化した作品で、年齢による命の線引きという制度を、当事者である高齢者や若い世代はどう受けとめ、何を選択し、どう生きていくのかを問いかけています。

2025年。高齢者が国の財政を圧迫して皺寄せがきていると恨む若者による老人襲撃事件が相次ぐ事態を受け、満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行されます。物議を醸す一方、超高齢化問題の解決策として受け入れられていきます。

ある日、同僚の同年代の女性たちと健康診断に行ったミチは、〈プラン75〉のCM広告を目にします。病院や役所など至る所に〈プラン75〉を推奨する広告が貼られています。 同僚の一人が孫のために腹を括って〈プラン75〉を申請するともらえる10万円で最期に贅沢をしたいと話すのを聞いて、独り身のミチと稲子(大方斐紗子)は複雑です。
娘家族と疎遠で「寂しいだけが人生だ」と言っていた稲子が、ホテルの清掃突然倒れ病院に運ばれたことがきっかけで、ミチたち高齢女性が年齢を理由に解雇されます。
突然職を失ったミチは、家の立ち退きを迫られて不動産屋を何軒も回りますが、部屋は見つかりません。やっと見つかった職は夜の交通整備の仕事で、寒空の下の仕事はこたえます。退院した稲子と連絡がつかず不安になったミチが家を訪ねると稲子が孤独死していました。仕事、住む場所、友人を次々失ったミチが<プラン75>に目を向けるようになる過程が淡々と描かれていき、切なさと世間の冷たさへの憤りがこみあげてきます。

娘の手術費用を必要としていたマリアは、仲間から高額の報酬が貰える〈プラン75〉の関連施設の仕事を紹介されます。それは〈プラン75〉に応じた人の遺品整理の仕事でした。同僚が遺品を着服しているところを目撃したマリアに、同僚は死人はもう使わないと言ってマリアにも遺品を差し出し彼女は受け取ります。

〈プラン75〉の申請窓口で働くヒロムの前に、叔父が〈プラン75〉の申請にやってきます。長年音信不通だった叔父(たかお鷹)との再会に動揺を隠せないヒロム。上司からは3親等内は担当できないと外されてしまいます。

〈プラン75〉の申請をしたミチは、連絡してきたコールセンターのと夫の話などを嬉しそうに話します。支給された10万円で、ミチは夫との思い出の場所に行こうと思い、瑤子に付き合ってほしいと頼みます。会うことは禁じられましたが言わなければバレないと瑤子は快く了承してくれました。
ボウリング場で夫とのデートで飲んだクリームソーダを飲み、ボウリング楽しむミチを見ているうち、情が移ってしまった瑤子は、ミチとの最後の電話で涙声になりながら心変わりしたら止めることもできることを再度伝えますが、ミチは「話せて本当に楽しかった、おばあちゃんの長話に付き合ってくれてありがとう」と伝え、翌朝施設に向かいます。

同じ日、叔父に頼まれ、葛藤を抱えながらも引き止められずに車で施設まで送り届けたヒロムでしたが、帰り道、車を止めると引き返します。施設で叔父を探すヒロムは、途中で目が覚めてしまったミチと目が合います。隣のベッドに既に息を引き取った叔父の姿を見て取り乱したヒロムは、叔父を抱えて施設から出て行こうとするところを、マリアが通りかかり手助けしてくれます。
叔父を乗せて火葬場に急ぐ途中、スピードを出し過ぎたヒロムはパトカーに止められます。一方、目を覚ましてしまったミチは、施設を抜け出して夕日を見つめます。それは生きようと決意したかのような表情でした。

後期高齢化が進むにつれ、世間の不寛容さも加速していっています。定年引き下げで労働人口を増やそうとする動きもありますが、長生きは歓迎されない時代になりつつあります。

健康診断のシーンで、稲子が、「こういうところに来るのは肩身が狭いね、いつまでも長生きしたいみたいで」と言っていたり、稲子の家にミチが泊まった際「今日は用心棒がいるから泥棒も来ない」と言うシーンがありましたが、高齢者に向ける世間の冷たい視線を端的に表現していたと思います。

2016年に起きた障害者施設殺傷事件の犯人は、人の命を生産性で語り社会の役に立たない人間は生きている価値がない考えていましたが、このような考え方が徐々に社会に蔓延してきているのです。政治家や著名人の差別的発言の根底にも通じている気がします。でも、家族や経済的に恵まれた高齢者はまず選択しないだろうし、結局は弱者の「姥捨て山」になるのではないでしょうか。経済格差が広がる中、〈プラン75〉が現実となる日が来ないと言い切れない現状を憂えます。

しかし、個人的には「尊厳死」と絡めて、その選択が国の思惑ではなく全くの個人の意思であるなら、許容したい気持ちもあるのを認めざるを得ません。何をもって「生きる」とするのかは、まさに個人に任されて然るべきだと思うからです。

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土を喰らう十二ヵ月

2023年06月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年11月11日公開 111分 G


(立春)
作家のツトム(沢田研二)は、人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょと13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などを使って作る料理は日々の楽しみのひとつだ。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。皮を少し残して囲炉裏であぶった子芋を、「あちち」と頬張る真知子。「おいしい。皮のところがいいわ」と喜ぶ姿に、ツトムは嬉しそうだ。
(立夏)
山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らしている。時折様子を見に来るツトムを、チエは山盛りの白飯、たくあんと味噌汁でもてなした。八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられた。帰りには自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされた。
(小暑)
塩漬けした梅を天日干しにする季節、ツトムの山荘に文子(檀ふみ)が訪ねてくる。彼女は、ツトムが世話になった禅寺の住職の娘。住職に習った梅酢ジュースを飲みながらの昔話。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に漬けた梅干しを持参していた。「母は、もしツトムさんに会うたらお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。夜、ひとりになったツトムは、作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味に泣いた。
(処暑)
チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトムは、大工(火野正平)に棺桶と祭壇を頼み、写真屋(瀧川鯉八)に遺影を頼みと、通夜の支度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。
夜、思いがけなくたくさん集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供えた。
葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮でねぎらったツトムは、「ここに住まないか」と持ち掛ける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくして、ふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こる――。(公式HPより)




作家・水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二カ月」を原案に、原作の豊かな世界観に着想を得たオリジナルの物語だそうです。料理研究家の土井善晴が、劇中に登場する料理の数々を手がけています。食いしん坊で天真爛漫な真知子がツトムの料理を本当に美味しそうにパクつく姿に思わずお腹が鳴りそうになりました。

長野の人里離れた山荘で1人で暮らす作家のツトムは、山で採れた実やキノコ、畑で育てた野菜などを料理して、四季の移り変わりを実感しながら悠々自適な暮らしを送っています。彼は13年前に他界した妻の遺骨を墓に納めることができずにいるのですが、その理由は特に語られません。


チエの葬儀の後で、義弟夫婦はチエの遺骨をツトムに押し付けます。チエは確かに癖のある人物ですが、義弟の妻はことのほか煙たがっていたようで、夫が頭が上がらないのをいいことに面倒な事は全部ツトムにやらせようとして、凄く嫌な感じ。八重子とチエ母娘の遺骨が並ぶ部屋でツトムは真知子に一緒に住まないかと申し出ますが、彼女は魅力的ねと言いながらも考えさせてと返事を保留します。八重子は真知子にとって仕事の先輩で本を作る面白さを教えてくれた人でした。複雑な気持ち、なんかわかるな~~😔


(白露)
散歩中に剥き出しになった地層を見て、土で自分の骨壺を焼いてみようと思い立ったツトムですが、窯の中で心筋梗塞で倒れてしまいます。たまたま訪れた真知子に発見され病院に運ばれて、ツトムは一命を取り留めます。
(秋分)
退院したツトムに真知子は一緒に住むと伝えますが、死に直面して生きたいと思ったツトムは、死について独りでじっくり考えてみたいと断ります。
(寒露)
死んだつもりになって眠りについたツトム。森のざわめきや動物の鳴き声がやがて鎮まり朝が来てツトムは目覚めます。生きていることを実感した彼は、明日も明後日も生きたいと欲張るから辛くなる、今日一日を生きていればそれでいいと思い、湖に舟を出すと、粉々に砕いた骨を水中に撒きました。これはきっと二人分ですね。
(霜降)
なめこ採りに出かけたツトムは、途中で真知子に会って誘います。好きな人と一緒に食べるご飯が一番うまいと話す彼に、真知子はツトムも知る作家と結婚することを伝えます。ツトムは「良かったじゃないか」と言い、真知子は去って行きます。二人の関係は年が離れていることもあり、生々しさは全くなくていわゆる大人の関係といった風です。
(立冬)
木枯らしが吹き、寒さ身に染みる中、書いて食べて寝る日々が続きます。
(冬至)玄関に置かれていた白菜とみかん。有難く頂戴して早速白菜を樽に漬けます。大根を掘り出しふろふき大根を作り柚子味噌を乗せ、ご飯、梅干し、みそ汁の食卓ができあがります。これで十分!また一年が始まります。「いただきます」


タイトルの「土を喰らう」とは旬を喰らうこと。小芋の網焼きを頬張りながら真知子が嬉しそうに言う「この良い香りは土の匂いなのね」が印象的です。
「四季の移ろいの中で、自然が恵んでくれる食物を有り難く頂くという食に向き合う精神は、今この瞬間を大切に生きることを意味している。自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べられることに感謝する日々を送る男の姿を通して、丁寧な生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかけている。」(公式HPより)


こんな風に生きられたらそれはそれで幸せだとは思うけれど、肉や魚を摂らない精進料理の毎日は無理だ~~😣 それでも旬なものを感謝して味わう気持ちは忘れたくないと思いました。

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ハッピーニューイヤー

2023年06月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年12月9日公開 韓国 138分 G

高級ホテル〈エムロス〉は、クリスマスと新年を祝うホリデームードに満ち溢れていた。 15年間も男友達への告白をためらっているホテルのマネージャー(ハン・ジミン )。 イケメンで優秀、だけどちょっぴりクセのあるCEO。 公務員試験に落ち続け、恋人にもフラれた就活生。 新米ハウスキーパーとして働く、夢破れたミュージカル女優。 下積みを経てついにスターの座へ登り詰めた、人気アーティスト(ソ・ガンジュン )。 仕事で出会い、超スピード婚へと突き進むラジオプロデューサー(キム・ヨングァン )とピアニスト(コ・ソンヒ )。 毎週土曜日、ホテルのラウンジでお見合いをする整形外科医。 初恋の相手と40年ぶりに再会したドアマン(チョン・ジニョン )。 友人たちの告白チャレンジゲームに巻き込まれた高校生カップル。 数時間後に“ニューイヤー”が迫るなか、次から次へと舞い込んでくるドタバタ&ドキドキの数々。 果たして彼らのロマンスは“ハッピー”な来年を迎えられるのか!?(公式HPより)


大みそかの夜の高級ホテル「エムロス」で繰り広げられる年齢も職業も異なる14人の男女それぞれの恋愛模様を描いた群像劇です。こういう設定は洋の東西を問わず年末の定番みたいなものです、登場人物が多いのでキャラを把握するまで少し時間はかかるのが難点ですが、そこを超えたらあとは結末が予想できるから安心して観ていられるのよね😁 

ソジンは〈エムロス〉のマネージャーで、仕事は優秀だけど恋愛は不器用です。15年来の親友スンヒョに片思いの彼女は占い師から「今年告白される」と言われて期待しますが、突然彼から婚約者のヨンジュとの結婚を告げられ動揺します。ジャズピアニストとして活躍するヨンジュにスンヒョからのプロポーズが未だだと相談されたソジンは、スンヒョに「プロポーズで相手に引かれる」やり方を教えるのですが、逆に成功してしまいます。心から愛し合う姿を見ていて、ソジンは素直に二人を祝福する気持ちになります。

ビジネスウーマンのヨンジュの母キャサリン(イ・ヘヨン )は、娘の結婚式のために韓国を訪れ、ドアマンのサンギュに出会います。彼は初恋の相手で、40年前の約束を思い出して胸をときめかせるの。40年ぶりの再会に戸惑うサンギュも、次第に彼女への想いが募っていきます。政治活動で受刑した彼に別れを告げた時、再会した時互いに独りだったら結婚しようと言ったキャサリン。でもサンギュは亡き妻と来世でも一緒になろうと約束していました。それを聞いたキャサリンは彼の妻とある約束をしたと言います。大晦日に雪が降ったら再婚を許すと。そして大晦日当日、予報を裏切って雪が降ってくるのです。😍 

スンヒョがプロデューサーを務める人気ラジオ番組「イ・ガンの音楽日記」のDJとして活躍する人気絶頂のシンガーソングライター【イ・ガン】は、長年のマネージャー、サンフン(イ・グァンス )との契約満了と、〈エムロス〉での年末コンサートを控えています。サンフンは無名時代のガンを支えて苦楽を共にしてきましたが、スターとなったガンに大手事務所からの契約の話が来ている状況を見守ることしかできずにいます。でも大丈夫、ガンは売れなかった時の大手の冷たい態度を覚えていて、その話を蹴ります。涙もろいサンフンが何かにつけてすぐに泣くのが(おじさんだけど)可愛かったです。

ソジンの弟のセジク(チョ・ジュニョン )は高校生で水泳選手。フィギュアスケーターで学校一の人気者のアヨン(ウォン・ジアン )に片思いしている彼は、友人たちにけしかけられて告白することになります。照れ屋で意地っ張りなセジクより彼の告白を辛抱強く待っているアヨンの方が大人だね。
姉に頼まれたセジクが溺れた振りをしてジェヨンに人工呼吸された時のセジクの反応がメチャ可笑しかったです。そりゃ~ファーストキスを知らない男に奪われたんだから超迷惑な話ですよね。

5年連続で公務員試験に落ち、恋人にもフラれたジェヨン(カン・ハヌル)は、自殺しようと決意して〈エムロス〉にやってきます。睡眠薬や農薬のことを聞いては店主から「死ねないし後遺症に苦しむことになる」と一笑された彼は高級ホテルで人生最後の時間を過ごして大晦日に自殺しようと考えるのですが、間違えて電話をかけたホテルのモーニングコール担当のスヨン(ユナ)と毎日のように話をするようになり、ハウスキーパーのイヨン(ウォン・ジナ )が、ジェヨンの書き損じの遺書を見つけたことからホテルスタッフが自殺を思いとどまらせようとあれこれ仕掛けて思いがけず楽しい時間を過ごすことになります。ホテル側の作戦を気付かれて、屋上から飛び降りようとしたジェヨンにスヨンが近づき、思いがけない行動に出ます。変化のない人生に悩んでいた彼女はジェヨンの優しさに救われたと言います。
ジェヨンの行動は多分にコメディチックで楽しませてくれました。ダメ男だけど、母性をくすぐるタイプですね。😁 

偶数に拘るという強迫症を持つホテル〈エムロス〉のCEOヨンジン(イ・ドンウク)は、自宅のボイラーが故障してスイートルームに滞在することになりますが、ミュージカル女優を夢見るイヨンが彼の部屋を掃除中にオーディションの練習をする姿を 見て興味を惹かれます。勤務中の彼女を強引に連れ出してオーデションを受けさせたりするのはCEOとしてはどうよ!と突っ込みたいところですが、恋愛要素としては大事かも😛 イヨンの影響を受けて偶数脅迫症も克服しそうだし、自分が本当にやりたかったことを見つけることもできて万々歳な感じですね。

毎週土曜に〈エムロス〉でお見合いをする整形外科医ジンホ(イ・ジヌク)は、相手の女性になぜかことごとく断られていて、従業員たちの間で「イケメンでハイスペックなのに、なぜ?」と思われています。彼が断わられる理由については最後にソジンの口から説明されますが、その前に彼がソジンに好意を持っていたからというのもありですね。

登場するのは3組のカップル(ヨンジン&イヨン、スンヒョ&ヨンジュ、キャサリン&サンギュ)とカップルとして成立の予感のジャヨン&スヨン、セジク&アヨン、それにソジン&ジンホの3組です。それからイ・ガンとサンユンの男の友情も😀 

淡い初恋もあれば、熟年の恋もあり、ベタな格差ロマンスやコメディタッチのものまで幅広いロマンスが繰り広げられ、予想通り全てがハッピーな結末を迎えます。

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彼らは世界にはなればなれに立っている

2023年06月03日 | 
太田愛(著) KADOKAWA (出版)

“始まりの町”の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、“羽虫”と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやって来た日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレの一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。「相棒」の人気脚本家がいま私たちに突きつける、現代の黙示録!(「BOOK」データベースより)


『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』に続く第四作ですが、これまでとは全く毛色の違う作品です。架空の時代、架空の町に住む住人の物語で、ファンタジー色が濃いけれど、差別や自由の剥奪といった根源的な問題を鋭く突いていて、とても深くて重い内容になっています。

「塔の地・始まりの町」の住民たちは、昔の栄華と自分がこの町の人間であることを何よりも誇りに思っています。一方で、この町の生まれではない他所の地からやってきた者たちを「羽虫」と呼んで蔑み差別していました。

第一章 始まりの町の少年が語る羽虫の物語
第二章 なまけ者のマリが語るふたつの足音の物語
第三章 鳥打ち帽の葉巻屋が語る覗き穴と叛乱の物語
第四章 窟の魔術師が語る奇跡と私たちの物語

トゥーレの父は「町の人間」で母は「羽虫」でした。20年ぶりにやってきた客船の歓迎の祭りの夜、母が失踪します。この事件をトゥーレ、映画館の受付のマリ、鳥打ち帽を被っている葉巻屋、窟に住む魔術師の4人それぞれの視点で語られる物語は、町の、ひいてはこの世界の歪んだ状況を映し出していきます。

「始まりの町」から中央府が移り、鉄道が廃線となり、「日報」が「週報」となり・・と町が確実に廃れていく中で、住民たちは過去の栄光をよすがに「羽虫」を差別することで己の矜持を保っているように見えます。
トゥーレの母アレンカは、市場の食料品に手を触れることを許されず、お針子の腕は誰よりも上なのに低賃金に甘んじており、トゥーレ自身「羽虫の子」と虐められ、中等科に進むより働こうかと迷っています。父親はそんな母子の状況を気付かぬ振り、というか認めたくないように見えます。

祭りの夜の出来事がアレンカに町を出ることを決意させます。トゥーレは船の甲板に母の晴れ着姿を見て彼女の決意を知り黙認することを選びます。母は息子を守るために、息子は母を守るために選んだのです。しかしこの夜の真相はずっと悲惨で惨たらしいものだったのです。

噓つきのマリ、怠け者のマリと呼ばれた彼女は褐色の肌をしていたため「色付きの羽虫」と蔑まれてきました。実はマリは町の権力者である先代の伯爵が他所の地で産ませた子供で当主の義妹にあたるのですが、それは秘密とされ、羽虫の孤児としてずっと虐げられて育ちます。無実の罪を着せられそうになって監獄に入れられ、看守や判事・警察署長から酷い扱いを受け、映画館の受付となってからもその地獄は続いていました。マリの記憶の中の唯一の安らぎは雪の思い出と曲芸団の小人との思い出です。雪の降る夜に惨たらしい最期を迎えるマリですが、幸せな記憶を抱えたまま逝ったのかもと思えることが救いです。

葉巻屋は、アレンカが亡くなっていることやマリの秘密も知っていますが口を閉ざします。伯爵の養女(実質は愛人)のコンテッサに協力して、彼女の秘密も知ることになるのですが、彼はあくまで傍観者の立場を崩さず、コンテッサの計画が実行される前日に町を去ります。コンテッサは中央府の意図に危惧を抱き羽虫のための町を作ろうと画策して、怪力を抱き込んで伯爵の殺害を企てますが、密告により二人とも命を落としてしまいます。後日葉巻屋は青年になったトゥーレから二人の死を知らされます。彼女は破滅に進んでいく現状を感じ取り抵抗を試みて失敗したのです。

魔術師は、トゥーレや町の人からは仕掛けがバレバレの奇術師と認識されています。彼が中央府が禁書とする書物を町の人から「破棄する」と言って貰い受けた本を、トゥーレは子供の頃から借り受けては読んでいました。マリや葉巻屋も彼の窟を度々訪れており、魔術師こそは物語全体を把握する人物です。幼い頃、恐ろしい悪事の片棒を担がされ彷徨っていた彼を拾って一座に加えてくれたのは砂時計の絵の荷馬車の座長のフォアティマでした。座員のシャム双生児や小人、髭女に棘男、骸骨男たちは、異様な外見をしていますが、中身はよほど人らしい心を持っています。一座の中で束の間の幸せな時間を過ごしたものの、別れの時が訪れます。贖罪の旅に出た彼は、ある時死人を生き返らせるという決して許されない罪を犯し、罰として不死を与えられたのでした。死者からの切迫した願いの声が聞こえる魔術師は、アレンカの願いを叶えるため、怪力に協力を求めていました。コンテッサや葉巻屋も気付いていました。アレンカの死に深く関わっていたのは義弟であるスベン(トゥーレの父の弟)です。恨みや憎しみがどんなに醜く人を変えるのかを体現したようなキャラでした。

戦争が始まり、初めに羽虫たちが、遂には町の若者が徴兵されていきます。町(中央府)への忠誠心を育てるための種はずっと前から蒔かれていて、気付かぬうちに住民の心を支配していました。このくらい大したことではないと譲歩を続けるうちにがんじがらめの状況が作り出されていったのです。トゥーレも、彼の友人のカイも出征し何年か過ぎたある日、魔術師の窟をカイが訪れ「トゥーレもおっつけ戻る」と話し、中央府で拾った羽虫の子ナリクの面倒を魔術師に頼みます。ここまで読んで、カイはもう生きていないのだなと気付くことになります。
そして序章のトゥーレの描写を思い出して彼もまた亡くなっているのだとわかるのです。

お祭りの夜の写真に写っていた中で、生き残っているのは町から逃げ出した葉巻屋と魔術師の二人だけです。伯爵は敵方に捕まり憤死、トゥーレの一家も、マリ、コンテッサ、怪力、パラソルの婆さん(この人も若い頃に夫を殺され羽虫となっています)、赤毛のハットラ一家(父親が羽虫)、カイ(マリを慕っていた彼は自分の父親がマリに行っている所業を知り苦しみました)
爆撃で破壊された町に戻ったトゥーレの魂は、母が眠る場所へと向かいます。

小説自体は架空の世界の物語であるのに、描かれているのはまさに私たちの社会そのものに思えてきます。
「羽虫」に「部落民」と呼ばれ差別されてきた人々を重ねた時、出自という理不尽な差別や偏見を当然のように受容してきた歴史を思い、それが今なお生き続けていることに恐怖すら覚えます。身分差別は時の為政者が、平民の不満や絶望の捌け口に利用してきたことは疑いようもない事実です。そのような歪んだ権力に対して、人々は見て見ぬふりをしてきました。自分や家族を守るための諦めでもあり、逆らわずに従う方が遥に楽な道だったから。

経済が停滞する今、貧富の差が確実に広がっている今、安い賃金の労働力に圧迫される今、この社会の中でも密やかな憎悪が芽吹いているように思えます。犯罪という形でなくとも、心の奥底に潜む他者への憎悪は増幅されているように思えてなりません。でもだからこそ、諦めずに声を上げ続けること、唯々諾々と従うことを良しとすることから立ち止まって考えることが必要なのだと思います。

この物語の中で、唯一希望と感じられるのはナリクの存在です。魔術師と共に町を出る彼の未来に光があることを願わずにはいられません。


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