杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

六人の嘘つきな大学生

2024年11月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年11月22日公開 113分 G

誰もが憧れるエンタテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用。
最終選考まで勝ち残った6人の就活生に課せられたのは“6人でチームを作り上げ、1か月後のグループディスカッションに臨むこと”だった。
全員での内定獲得を夢見て万全の準備で選考を迎えた6人だったが…急な課題の変更が通達される。
「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」
会議室という密室で、共に戦う仲間から1つの席を奪い合うライバルになった6人に追い打ちをかけるかのように6通の怪しい封筒が発見される。その中の1通を開けると…「・・・は人殺し」
そして次々と暴かれていく、6人の嘘と罪。誰もが疑心暗鬼になる異様な空気の中、1人の犯人と1人の合格者を出す形で最終選考は幕を閉じる。
悪夢の最終面接から8年が経ったある日、スピラリンクスに1通の手紙が届くことである事実が発覚する。それは、<犯人の死>。犯人が残したその手紙には、「犯人、・・・さんへ。」という告発めいた書き出しに続き、あの日のすべてを覆す衝撃的な内容が記されていた。残された5人は、真犯人の存在をあぶりだすため、再びあの密室に集結することに…嘘に次ぐ嘘の果てに明らかになる、 あの日の「真実」とは――(公式HPより)


浅倉秋成のミステリー小説の映画化で、監督は佐藤祐市、主題歌は 緑黄色社会「馬鹿の一つ覚え」です。

人気企業の最終選考を舞台に、6人の登場人物の裏の顔が暴かれていく“密室サスペンス”と、8年後にそれぞれの暴かれた嘘と罪の真相が判明する“青春ミステリー”が合わさっていて、犯人探しの息詰まるような緊迫感を味わった後に、思いがけない感情の揺さぶりがあって面白かったです。

最終選考に残った6人は、洞察力に優れた主人公・嶌衣織(浜辺美波)、まっすぐな性格でムードメーカーとなる波多野祥吾(赤楚衛二)、冷静で的確なリーダーシップをとる九賀蒼太(佐野勇斗)、語学力と人脈に自信を持つ矢代つばさ(山下美月)、口数が少なく分析力に優れた森久保公彦(倉悠貴)、スポーツマンでボランティアサークルの代表を務める袴田亮(西垣匠)です。

最終選考の結果次第では6人全員に内定を出すと言われ、全員内定を目指してグループディスカッションを重ねて事前準備に取り組む中で仲を深めていった6人でしたが、急に課題が変更されて戸惑います。

それは6人で話し合い内定者を1人だけ決めるというものでした。
当日、正六角形に配置されたテーブルを囲んだ6人は、自己PRを行いながら15分毎に投票し総得票数で内定者を決めることにします。
1回目の投票の後、怪しい封筒が置かれていることに気付いて中を覗くと、それぞれの宛名が書かれた封筒が入っていました。

最初に九賀が自分宛の封筒を開けると、袴田の高校時代のいじめ記事が入っていました。以後の投票で票を得ることができなくなり自暴自棄になった袴田は、それぞれの過去が暴かれることで相対的に自分にもチャンスが生まれると考えて、次の手紙を開けることを要求します。

九賀、矢代、森久保・・暴露される者が増えていく中、嶌がこの封筒は会社が置いたものではないのではと指摘したことで、封筒を置いた犯人探しが始まります。
録画されていたビデオを確認すると、森久保が置いたことがわかります。森久保の否定の言葉は聞き入れられず、投票は続いていきます。
全員の手紙の開封を望む既に暴露された4人に波多野は迎合せず、これまでの関係に戻ろうと説得した彼の熱弁に心を動かされ始めるメンバーでしたが、九賀が暴露写真の特徴(傷と撮影日)に気が付いたことで、撮影日に唯一予定がなかった波多野が犯人と断定します。波多野は自分が犯人だと認め、嶌には暴露するものがなかったので封筒の中身は空だと言います。
最後の投票で、嶌が票を集める結果となって、彼女が内定者に決定します。

この日までは熱い友情が育っていたように見えた6人が、内定を勝ち取るためにエゴを剥き出しにして互いを非難し合う姿が醜くも人間臭い温度で迫ってきます。まさに彼らの裏の顔が剥き出しになったかのようで迫力がありました。

ここで終わりかと思いきや、シーンは8年後に。
スピラリンクス社員として働く嶌を、波多野の妹・芳恵(中田青渚)が訪ねてきて、
兄が病死したことを伝え、遺品を整理していて見つけた「犯人、嶌衣織へ」と書かれた手紙とUSBメモリーを届けます。ここで真犯人は嶌?と誘導されるわけね。😒 

USBメモリーにはパスワードがかかっていて、ヒントは”犯人が愛したもの”となっていました。身に覚えのない嶌は、事件を調べ直すことにします。暴露写真の撮影時間と場所の矛盾点から、波多野が犯人ではないと気付いた彼女は、最終選考の録画ビデオを見直して、矢代と森久保の不審な動きを見つけます。こういう観察眼の鋭さは彼女の得意とするところですね。

あのときの4人を呼び出した嶌が、犯人に証拠を突きつけるのが最終展開です。
波多野のより明確な証拠暴露写真を使わなかったのは、「彼」がお酒を飲めな(知らな)かったからなのね。
真犯人の動機は何とも稚拙に感じました。だって尊敬する先輩がスピラリンクスに落ちたのは人事部の見る目が無かったからと決めつけ、最終選考に残った自分への自己評価の低さもあって、5人を巻き込んで人事部に復讐しようとしたのですから。

彼の告白の後で、嶌は彼の口癖だった“fair”を入力してUSBメモリーを開きます。そこに保存されていた音声ファイルを開いたことで全ての伏線が回収されていきます。

犯人扱いされたことに絶望した波多野は、メンバーの悪行を更に曝け出そうと、彼らに関わる人物を訪ねていました。しかし、そこでそれぞれの秘密や罪には事情があったことを知ることになります。(例えば袴田は苛められていた後輩を守るために学校に告発した結果、加害者が自殺しており、彼に責任はなかったなど。)

善人面していたように見えたメンバーたちは、本当は悪人ではなくそれぞれの正義や道徳があったことを知った波多野は同時に自分のしようとしていた行為の下劣さに気付いたと告白し、5年、10年後に再会した時に胸を張って生きていたいと残していました。

ラスト。波多野の妹と墓前に手を合わせた嶌は、これで終わりではなく、ここからスタートだと前を向きます。

企業への就職活動をしたことのない身には、彼らの切実さを共感することは難しいのですが、最終選考の場の極限の精神状態の中で繰り広げられる密室劇はヒリヒリした緊迫感が伝わってきて犯人探しのスリルと共に目が離せませんでしたが、裏の顔=悪人というわけではなかった結末に救いを感じました。
嶌の暴露が最後まで出なかったのが気になると言ったら己の野次馬的好奇心の醜さを曝すことになるのかな。そこまで考えての構成だとしたら見事です。

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11文字の殺人 新装版

2024年11月17日 | 
東野圭吾 (著)  光文社文庫

交際を始めて2か月が経ったある日、彼が海で亡くなった。彼は生前、「誰かが命を狙っている」と漏らしていた。女流推理作家のあたしは、彼の自宅から大切な資料が盗まれたと気付き、彼が参加したクルーズ旅行のメンバーを調べる。しかし次々と人が殺されてしまう事態に!
『無人島より殺意をこめて』――真犯人から届いたメッセージの意味とは⁉ 昭和だから起きた怪事件!(あらすじ紹介より)


1987年に発表されたようで、まだ初期の作品のようです。
ミステリー作家の「あたし」目線の視点での語りの合間に犯人の独白が挿入されているのがミスリードを誘う構成になっているのが面白かったです。

「昭和だから起きた怪事件!」とはどういうこと?と思ったけれど、作中で「あたし」の求めにスポーツプラザの従業員が簡単に応じてクルージングツアーの参加者名簿を渡すあたりが、個人情報に厳しい令和ではありえない点を見るとちょっと納得でした。😁 

恋人の雅之を殺された女流ミステリー作家の「あたし」は、彼のスケジュール帳を見たことでその死に疑問を抱き、担当編集者で親友の萩尾冬子と事件の真相解明に乗り出すのですが、それが引き金となったかのように、第2、第3の殺人事件が起こります。

調べるうち、恋人が参加したクルージングツアーで海難事故が起こり、参加者の一人・竹本が亡くなっていたことがわかります。山森と彼の家族、スポーツプラザの従業員や美由紀も参加者だったのです。

「あたし」は冬子と一緒にクルージングの参加者から話を聞こうとしますが、皆一様に口を閉ざします。

雅之の残した資料を狙って接触してきたカメラマンの美由紀に続いて役者の坂上豊が殺されたことで、いよいよ犯人が参加者の中にいると確信した「あたし」ですが、家に誰かが忍び込み「手を引かねば殺す」とPCに警告メッセージを残されたり、スポーツプラザで顔に濡れタオルを被せられバーベルを喉に押し付けられたりと危険に曝されてしまいます。

でも逆に闘志に火が付いた「あたし」は、目の不自由な山森の娘・由美と誘拐まがいの方法で接触し海難事故当日の有力な情報を得ます。これには山森も頭にきて、「あたし」の留守中に家に忍び込んで警告を与えます。実は最初に山森に会いにスポーツプラザに行った時にスイミングの体験を勧められているのですが、その際に合鍵を作られていたという😓 

山森から一周忌のクルージングツアーに誘われた「あたし」は冬子と参加するのですが、その夜、冬子が宿から抜け出したまま戻らず、翌朝遺体となって発見されます。

クルージングの参加者でもない彼女がなぜ?というところから、一気に事件が動きます。
「あたし」は由美の話と当夜の参加者たちの証言の矛盾に気付いて真相に辿り着きます。

クルージングで亡くなった竹本の恋人の復讐劇だったわけですが、犯人は参加者の中にいたわけではなかったのですね。竹本の人間性を非難したくなりますが、彼の恋人の考え方もある種独特でした。😔 

竹本と冬子を殺した犯人と、雅之ら3人を殺した犯人は別だったのです。

真実は「あたし」の胸の中に納められ、事件として世間に暴かれることはないというのは疑問が残りますが、最後に山森の「嘘」が雅之らが殺される発端になったという、どんでん返しもあって面白かったです。

相手のことを知っていると思っていても、実はその人の一面しか知らなかったというお話ですね。





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薬屋のひとりごと3

2024年11月13日 | 
日向夏(著)ヒーロー文庫

玉葉妃の妊娠により、再び後宮に戻ってきた猫猫(マオマオ)。 皇帝の寵妃ということもあって、それは秘密厳守。 しかし、女たちの腹の探り合いは日常茶飯事で、しかも、後宮内だけでなく外部からも怪しげな動きが見え隠れする。 それとともに、後宮外では壬氏たちが隣国の特使の要求に頭を悩ませていた。 特使たちは、数十年前にいたという妓女、それが見たいと無理難題を言ってきたのである。花街の事情に詳しい猫猫に相談を持ちかけてくるが、それは意外な人物であり――。 猫猫はその美女にかわる絶世の美人を用意することとなる。 茸中毒で死んだ妃、後宮内の廟の秘密、先帝がかかった呪い、その謎を解くにつれ、壬氏が宦官の枠を超えて扱われていることに猫猫は気が付く。 そして、猫猫はその壬氏の願いで、後宮を出て北の避暑地へと同行することになる。そこで待っていたのは、腹に一物持った高官たちと再び壬氏の命を狙う者たちだった。 猫猫たちは、無事、宮中に戻ることはできるのか!?(あらすじ紹介より)


シリーズを順番通りに読めなかったため、今頃手に入った3巻の目玉は何と言っても「月精」(壬氏様の女装姿)と「そこそこの蛙」でしょう😍 
1巻のあと2,3巻を飛ばして4巻に行ってしまったため、その後も時々登場する「そこそこの蛙」の意味が何となくは想像できてもエピソード自体がわからずもやっとしていたのが解決しました😁 
子翠 が登場します。既に彼女の正体を(読んで)知っているため、色々勘ぐってしまうぞ。

序話
壬氏の幼い頃の夢の話のようです。彼にとって母は皇太后・安氏であり、父は先帝と認識されています。母と祖母、父の関係についても触れられています。

一話 書
やぶ医者の所で薔薇から香油を作っている猫猫を訪ねてきた壬氏に、実家(緑青館)から届いた荷物の中身を知られたことで、後宮の下女の識字率向上のために策が講じられることに。皇帝から妃に配られた小説が写本され下女たちが回し読みする中、小蘭は自分で読んでみたいと猫猫に字を習い始めます。まずは自分の名前からですが、猫猫が次に教えようとしたのが「葛根」「冬虫夏草」といった薬の名というのが受ける!

二話 猫
鈴麗公女と散歩中に拾ったのは猫の毛毛。子翠登場です。小蘭の知り合いの侍女ですが実は彼女の正体を既に知っているのでちょっと斜め上から見てしまうぞ。

三話 隊商
西の国からやってきた隊商に娯楽の少ない後宮の女性たちは沸き立ちます。妊娠を秘密にしていた玉葉妃に勧められた服が妊婦向けのものであることを猫猫は訝しみます。最終日に小蘭、子翠と買い物を楽しんだ猫猫はジャスミン茶を購入します。

四話 香油
隊商で売られていた香油が後宮で大流行しますが、妊婦に害がある薔薇や安息香、青桐 、乳香、桂皮といったその種類を不審に思った猫猫は、流行に敏感な水晶宮の梨花妃の侍女の服を剥いて壬氏に怒られます。
猫猫が飲もうとしていたジャスミン茶を飲みたそうにしていた壬氏に、これも堕胎薬になることや男性の不妊に効果があると言って飲ませようとしない猫猫。でも壬氏はちゃっかり飲んじゃうのね😄 

五・六話 冬人夏草 前・後編
壬氏から毒茸についての調査依頼を受ける猫猫。
中級妃・静妃の葬儀に紅娘と参列した猫猫は、妃の顔がただれていたのは毒茸が原因と推察します。紅娘が静妃を快く思っていないのは、以前玉葉妃が鈴麗公女妊娠の折に毒を盛ったのが静妃だと疑っていたからです。
女官の行方不明の噂との関連に気付いた猫猫はこれを見事に解決します。
実は、静妃は1年前に既に死亡していて、行方不明となった女官が身代わりを演じていましたが、彼女の任期が明けることに焦った侍女たちが共謀して毒殺し、その死体を静妃とし、女官は失踪したことにしていたのです。
静妃は下級妃と揉めたことで事故か事件かは不明ですが死亡し、元々その性格故か侍女たちにも嫌われていたため、その死を身代わりを立てることで隠していたわけね。本人の死体は毒茸が群生する地面の下に埋められていて、腐敗する臭いで発見に繋がったという。
壬氏は、静妃に毒茸を盛った者が玉葉妃の侍女の可能性も考慮していたと気付いた猫猫は玉葉妃に肩入れしているわけではなく公正に各妃を見ている壬氏を見直します。

七話 鏡
西の特使が玉葉妃ら上級妃に鏡を献上した理由について考える猫猫。これって女同士の張り合いか?
高順が壬氏の使いで胆嚢を持参しながら二人の箱入り娘の片方の妊娠の謎解きを頼んできます。鏡を使ったトリックでした。この娘たちがしていたという刺繍は西国人が好む趣味ということが後の伏線になっているようです。

八話 月精
特使は二人の美女で、昔曽祖父から聞かされた「真珠の涙を持つ絶世の美女」に会ってみたいと無理難題を押し付けられた壬氏が猫猫に相談します。
その絶世の美女が緑青館のやり手婆なんですね。まさに時の流れは残酷です。
婆を呼んで改めて話を聞いた猫猫は彼女が持参した絵姿からヒントを導きだし、壬氏に女装をさせて見事に解決します。雄の蛾が雌の匂いに弾きつけられて集まる習性を利用していますが、蛾の雌雄判別や確保には虫好きの子翠の手を借りています。
壬氏にとっては災難ですが、この絶世の美女の描写はぜひともアニメで観たいものです。まさに月の精のような姿に衝撃を受ける特使(勝気な方)でしたが、彼女たちの目的は帝と皇弟を誘惑すること?

九話 診療所
風邪を引いた愛藍と診療所を訪れた猫猫は、深緑(後に猫猫が連れ去られる場にいたっけね~)と出会います。後宮の診療所は先帝のお手付きだったため後宮を出ることができない女性を集めた場所のようで、皇太后が作ったとされています。

十、十一話 みたび、水晶宮 前後編
梨花妃の侍女の容体を気にする深緑に頼まれ、やぶ医者と水晶宮を訪ねた猫猫は、物置に隔離されていた侍女を発見した際に侍女頭の杏が隠していた香油を見つけます。
杏の目的は堕胎薬を作って梨花妃を流産させることでした。(おそらくは誰かに入れ知恵されたもの)
梨花妃の従姉妹の杏は、自分が妃に選ばれなかったことを憎んでいました。
梨花妃は杏を庇って解雇という形で後宮を追い出します。本来なら極刑だよね。

十二話 選択の廟
小蘭が字を教わっている宦官から、国の成り立ちの話を聞いた猫猫は、その夜、主上の呼び出しを受け、壬氏と一緒に廟に入ることになります。色の異なる3つの扉から一つを選ぶ謎解きを解いた猫猫はゴールに辿り着きます。うん、これは色盲・色弱の遺伝が関係しているわけね。
国の祖である王母が、自分の血縁を繋ぐために考えた巧妙なからくりなのです。
男系皇族の主上は王母の血が薄れているため正解に辿り着けなかったわけ。でも濃くなり過ぎた血は、病気などのデメリットも出て来るわけで、廟を守る宦官は、血が薄まるのは避けられないなら猫猫のような聡明な者と血縁を結ぶのも良いのではと言います。彼は壬氏の正体も知っているようですね。

十三話 皇太后
診療所の前で皇太后を見かけた猫猫と子翠。
その後、玉葉妃を訪れた安氏から謎解きを依頼される猫猫。それは彼女が先帝に呪いをかけたのかという問いでした。安氏が先帝を嫌っていたことが示される回です。

十四話 先帝
先帝がロリコンだった原因は母への怖れから大人の女性に委縮したからのようです。
妾腹だった安氏は、童顔で初潮が早かったことから、父の思惑で侍女として後宮に送り込まれ、狙い通りに国母となります。10歳足らずで産んだ子が現帝で、帝王切開で取り上げたのが羅門でした。
成長した安氏に興味を失くした先帝を憎んでいた彼女は、弟帝を半ば強引に迫って孕みます。(その子は阿多妃 によって取り替えられ後に死亡)
安氏の言う「呪い」とは、死後1年経っても先帝の死体が腐らなかったからです。
猫猫は先帝が晩年を過ごした部屋に入って、絵を趣味としていた先帝が、絵具に含まれていた毒に冒されていたことを指摘します。
安氏は取り替え子と承知で壬氏に愛情を感じているようです。彼に「お気に入りは隠しておかないと、誰かに隠されてしまうわよ」と忠告したのも猫猫を気に入ったと同時に立場の危うさも知っていたからでしょうね。

十五話 怪談
小休止の回かな?
紅娘に誘われ怪談会に参加した猫猫。子翠も参加していて、彼女が語った話は後に起こる「蝗害」を示唆するような内容でした。
禁じられた森に入った母子の話の謎解きを子翠に解説する猫猫。毒茸が関わっていました。

十六話 避暑地
子昌(楼蘭妃の父)の招きで狩りのため避暑地に行く壬氏に同行する猫猫。
冒頭で玉葉妃と猫猫を返して問答が繰り広げられるのが愉快。完全にからかわれているのが見え見えな壬氏、可愛い。
覆面を被り「香泉」と名乗る壬氏。護衛は馬閃で、高順は宦官の壬氏の名代として参加しています。状況がいまいち呑み込めない猫猫ですが、そこは敢えてスルーを決め込みます。馬閃は馬の一族は代々皇族に仕える一族だと話します。護衛として来ていた李白は狩猟犬と仲良くなっています。この犬が後で大活躍です。
香泉に供された食事は強壮剤がてんこ盛り。猫猫は平気ですが、馬閃は撃沈😓 

十七~十九話 狩り 前・中・後編
食事も水も摂らず覆面を外さないせいで熱中症になりかけた壬氏は宴席を離れ森へ。異変に気付いた猫猫が後を追いますが、突如鉄砲で狙われ、危険を察した壬氏は猫猫を抱きかかえ滝へダイビング。泳ぎが不得意な猫猫は溺れかけますが、壬氏が(おそらくは人工呼吸と心肺蘇生 )助けます。濡れた着物を脱いで絞る描写で既に何かが起きる前兆を感じさせます。
滝の裏の洞窟からの脱出方法を探る中のアクシデントで壬氏が宦官でないことに気付いた猫猫ですが、それ以上のことを知ることを拒んだ彼女は真実を話そうとする壬氏をはぐらかします。これが「そこそこの蛙」のエピソードですね。
そこそこを強調された壬氏が熱くなって猫猫に迫ったタイミングで、猫猫の指笛に反応した例のわんこが降って来るのはある意味お約束ですね。

宴席に戻ってこない壬氏たちを捜索していた馬閃たちは、暗殺者の正体を暴くために一計を案じます。うん、壬氏が狙われたのは銃であって矢ではないものね。😁 
李白に助けられた猫猫は、わんこを使っての犯人探しを提案し、無事犯人を捕まえます。この暗殺未遂事件は表沙汰にされることなく終わるのですが、後の子一族の反乱に繋がっていきます。そもそも祭祀を行う壬氏を事故に見せかけて殺そうとしたのも今回の銃を使った暗殺未遂も子昌が背後にいるのよね。😨 

壬氏は猫猫に改めて身分を明かそうとしますが、先に牛黄を渡したのが間違い!興奮した猫猫の耳にはただの雑音でしかないという。可哀相な壬氏様。

終話 
高順は壬氏に付き合うため、表向き「馬」の名を剥奪されたことになっているようです。皇弟が無能と判断し、次の東宮の後ろ盾となりそうな者に胡麻を擦ろうとする
宦たちを横目に月を愛でる高順の胸中やいかに。

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室井慎次 生き続ける者

2024年11月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年11月8日 先行上映
2024年11月15日公開 117分

警察を辞めて故郷の秋田に戻り、事件被害者・加害者家族の支援をしたいという思いから、タカ(齋藤潤)とリク(前山くうが・こうが)という2人の少年を引き取り、暮らしていた室井慎次(柳葉敏郎)。しかし、彼の家のそばで他殺死体が発見され、さらにかつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・日向杏(福本莉子)が現れたことから、穏やかな日常は徐々に変化していく。かつての同僚であり今は秋田県警本部長になっていた新城(筧利夫)に頼まれ、警視庁捜査一家の若手刑事・桜(松下洸平)とともに捜査に協力することになった室井。そんな彼のもとに、服役を経て出所してきたリクの父親が訪ねてくる。(映画.comより)


「踊る大捜査線」シリーズの中心人物のひとりである室井慎次を主人公に描いた映画2部作の後編です。

前編がなかなか見応えがあったので、事件解決を含め期待して観た後編でしたが・・・正直なんじゃそれ!!でした。
思いっきりネタバレになりますが、室井さんの死は百歩譲って有りとしても、その死に方はないんじゃないの?
秋田出身で冬山の寒さ、厳しさは身に沁みている筈なのに飼い犬探して遭難死はあり得ないと怒りさえ覚えてしまったぞ。😡 そもそも、飼い犬なんだから、戻って来るでしょ、普通は。狭心症を抱える彼が危険を承知で出たのなら自殺行為であり、子供たちとの将来を楽し気に語った姿とは矛盾するんですよね。納得いかんぞ。

前編の遺体の顛末についても、桜が室井に自分の推理を語ったあと、本庁があっさり犯人を捕まえるし、黙秘する犯人に一般人となっている室井が取調室で語り掛けたことで自供を引き出すという展開は「昭和の刑事かよ!」と突っ込みを入れたくなりました。被害者も加害者家族も深い傷を負っているって、それ今更ですか😓 

リクの暴力父親(加藤浩次)のせいでひと悶着(杏が猟銃持ち出す)が起きた後、飼い犬を探しに出たまま戻って来ない室井を、それまで彼に否定的に接していた住民が総出で捜索する様子はまるで大々的な犯人捜査に似ていて深刻なシーンなのに失笑してしまいました。それにしても今回も駐在所のおまわりさん(矢本悠馬)のキャラがあまりにも軽くて腹が立つ~。

ともあれ、この作品のテーマが室井個人の生き方ということであれば、この後編の見方も変わってきます。
青島との約束を果たせず失意のまま警察を辞めて故郷に戻ってきた室井は、事件関係者の子どもを引き取ることで希望を見出していきます。前編ではタカの、後編ではリクのことを守り通した彼は、杏に対しても正面から向き合います。
商店の店主(いしだあゆみ)の「子供は皆愛されたい」という言が室井に杏の行動の真意を気付かせるんですね。このエピソードは良かった💛

彼をよそ者として否定していた住民たちでしたが、彼の死後、その思いを知り、子供たちを受け容れ見守り変わっていきます。ちょっと出来過ぎな気もしますが・・・。
「親」がいなくなったのですから、一般的には養護施設に引き取られると思うのですが、本作では子供たちはそのままあの家で住民たちに見守られながら生きていくことを選んだようです。あれ?タカの進学はどうなったんだ??💦

警察関係はどうなったかといえば、新城が室井の思いを受け継ぎ、沖田(真矢ミキ)の後押しを受けて「秋田モデル」として進めていくようです。同期の3人の立場は変わっても思いは受け継がれていくということですね。

そしてラストで室井の家を訪ねていく青島が!
でも呼び出しがかかりUターン。え?帰っちゃうの?そもそも彼は室井の死を知って訪ねたのかそうでないのか・・・

室井はいなくなっても「踊る~」は続くのかもという期待を持たせて幕を閉じたわけです。

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つくもがみ笑います

2024年11月03日 | 
畠中恵(著) 角川書店

人から百年以上大事にされた品物は、人ならぬ、つくもがみになるという。
江戸は深川で損料屋を営む出雲屋では、主人の清次と妻のお紅、跡取りの十夜とともに、そんなつくもがみたちが仲良く賑やかに暮らしていた。ひょんなことから、大江戸屏風に迷い込み、二百年前にタイムスリップしたり、旗本屋敷の幽霊退治にかり出されたり。退屈しらずのつくもがみたちが、今日も大奮闘!(内容紹介より)


「つくもがみ貸します」「つくもがみ、遊ぼうよ」に続く第三弾。
野鉄(.蝙蝠の根付け)・月夜見(.掛け軸)・お姫(姫さま人形)・うさぎ(櫛)・猫神(.猫の根付け)ら付喪神 (長い年月を経た道具などに魂が宿ったもの )と人である古道具屋兼損料屋の出雲屋清次とお紅 の息子・十夜らの交流と彼らが巻き起こす騒動を描いた物語です。今回は.両国の口入屋の主人・阿久徳屋(久徳屋阿喜夜)と養子の春夜、旗本の篠崎、山白伊勢守ら侍たちも絡んできます。
付喪神たちは他にそう六(絵双六)、 黄君(琥珀の帯留)、唐草(金唐革の紙入れ)、
青海波(守袋)など。

語り手は野鉄
・つくもがみ戦います
語り手は野鉄
出雲屋のつくもがみたちは、かどわかされた先で久徳屋のつくもがみの安真刀(脇差)、文字茶(茶碗)、青馬(陶器)と知り合います。出雲屋の付喪神の噂を聞いた悪徳屋が、もっと付喪神を増やそうと彼らを攫ったのですが、大人しく言う事を聞く彼らではありませんから、逃げ出そうとして騒ぎになるんですね😁 彼らを探しにきた出雲屋清次と十夜の前に現れた春夜は十夜に「兄さん」と呼びかけます。

・二百年前
語り手は猫神
付喪神となっていた”大江戸屏風”の中に阿久徳屋と出雲屋の付喪神たちが入り込んで騒ぎとなります。 屏風の持ち主の飼い猫に追いかけられた利休鼠.(鼠の根付け)を助けようと屏風に入り込んだ出雲屋の付喪神たちは、200年前と今の違いを調べるよう言われた阿久徳屋の付喪神たちと再会します。月夜見に教えられ、阿久徳屋の付喪神たちは、相棒だった加羅刀(大刀)と寿々女(扇子)を取り戻すことができました。

・悪の親玉
語り手は再び野鉄
阿久徳屋が春夜を伴って出雲屋を訪ねてきます。十夜の名の由来を話し、本当の親の手掛かりを餌に頼み事をしようとしてきっぱり断られますが、その後行方知れずとなってしまった彼を探す羽目になるんですね。旗本・山白家の幽霊騒ぎを解決したのは当の阿久徳屋と付喪神たちでした。自らを悪徳屋と称する阿久徳屋ですが、実はけっこう善い人のようです。

・見つかった
語り手は五位(煙管)
付喪神たちが屏風から持ち出した大判の噂が広まったことでまたまた騒ぎとなります。捨て子だった十夜や春夜の親と名乗る者が続々現れるのですが、出雲屋が大判を持っているという噂が武家に広まったのが理由でした。また阿久徳屋自身も加羅刀、安真刀と共に捨てられていたことがわかります。自分も飛べるのに仲間たちがいつも野鉄を頼るのが面白くない五位でしたが、徐々に彼の活躍の場も増えてきました。😀 

・つくもがみ笑います
阿久徳屋親子と春夜が武家に襲われ、その後阿久徳屋が殺されかけたのは、彼の出自に関係があるのではと、縁のあった伊勢守を訪ねます。そこで”百年君”の噂の事を知った彼らは自分たちの身の安全を守るため、その行方を探すことになります。九曜紋の殿様も巻き込んだ末に大江戸屏風と家紋の難儀にけりをつけた後、百年君が上野・寛永寺にあると推測した十夜たちは殿様を通じて寺に参拝に出かけ、堂宇の部屋全体に描かれた絵が全て付喪神になっていることを知ります。

語り手は五位
今回殆ど出番がなかった十夜の幼馴染みの小間物屋・すおう屋の三男・市助と、料理屋鶴屋のこゆりですが、こゆりに縁談がきたことで関係が微妙に変化しそうです。十夜と市助はこゆりが好きなようですが、そこに阿久徳屋がこゆりは他に好きな男がいると言ったものだから二人は落ち込んでしまいます。そこで二人を慰めようと宴会が始まり付喪神たちもわいわいと・・・😁 

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