2016年6月10日公開 アメリカ 99分
リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は財テク番組『マネーモンスター』のパーソナリティを務め、巧みな話術と軽妙なパフォーマンスを織り交ぜながら、株価予想や視聴者へのアドバイスで番組の看板スターとなっていた。いつもの通り、リーがプロデューサーのパティ(ジュリア・ロバーツ)の指示を無視して、ノリのいいアドリブで視聴者ウケを狙っていた生放送の最中、彼の背後に一人の男(ジャック・オコンネル)が現れる。その男、カイルは完全にテレビ画面にフレーム・インし、拳銃でリーを脅す。番組で語られた株式情報を鵜呑みにして全財産を失ったというカイルは、復讐のためリーを人質にとり、自分を嵌めた株式のカラクリを生放送内で明らかにしろとパティに指示する……。(Movie Walkerより)
ジョディ・フォスター監督作で、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツの共演となれば・・・観るっしょ
意図的な株の情報操作によって全財産を失ったと訴えるカイル。実は彼には妊娠している恋人がいますが、母親の遺産を全部継ぎこんだ挙句に失った逆恨みで、リーと彼が薦めたアイビス社のCEOウォルトを狙ったのです。ところがスタジオにはリーだけ。ウォルトは所在不明で株価暴落の理由もアルゴリズム取引のバグと言う説明から進展しません。アルゴリズム取引とはプログラムが自動で株の売買注文をしてくれるシステムのことで、売買スピードも一段と早く複雑になっているのが現状なんだとか

株の世界は全くわからないけど、要は機械のミスだと言いたいらしい。
最初はカイルの逆恨みに付き合ってられないという態度だったリーですが、自分も無自覚に誤った情報を発信していたことに気付き、気持ちに変化が現れます。
時間つなぎに自分とカイルとの幸福度比べをしますが、どちらも幸せとは言えない人生なのが面白いところ。途中、カイルの恋人と中継が繋がりますが、説得に当たらせようという警察の思惑を外れ、彼女はカイルを激しく罵倒します。曰く「母親の遺産を全部継ぎこんで失うなんて大ばか者!おまけにこんな事件を起こして、もう頭ぶち抜いて死んじゃえ!!」みたいな

おいおい

刺激してどうする


恋人の言葉にすっかり落ち込むカイルに同情したのか、リーの態度は励ましに転じます。
この状況を救うため、視聴者にアイビス社の株を買って欲しいと訴えるリーですが、逆に下げてしまう結果となるシビアな現実(視聴者にとってはあくまで他人事

)
一方、パティたちスタッフは事の真相を確かめようとアイビス社についての調査を始めます。それがリーを救うことにもなるからです。
狙撃犯がリーが装着させられている爆弾の起爆信号装置を彼もろとも撃とうとしていることを知ったパティは、アイビス社の疑惑と共にそのことをリーに伝えます。そこから先は、リーはカイルと共犯関係になっていきます。うろたえるカイルを自分の盾(装置を破壊させないため)にスタジオを出て、ウォルトがいる建物まで歩いていくのです。
プロデューサーのロン(クリストファー・デナム )は、リーから精力剤のモニターを命じられたり(しっかり実践に励むあたりは業界人イメージを忠実に映したキャラですね

)、パティにあちこち調査に行くよう命じられたりと無茶ぶりに翻弄されます。しまいに、リーへイヤホンを渡そうとして動揺したカイルに撃たれる始末・・命に別状はない設定がせめてもの温情?

(このキャラ、けっこう好きなんですが

)
アイビス社の広報担当のダイアン(カトリーナ・バルフ )はウォルトの愛人でもあるようですが、彼の不正を知るとパティに協力します。

実は株価暴落はアルゴリズム取引のバグではなく、南アの鉱山ストで8億ドルの損失を被ったウォルトがその穴埋めのために仕組んだことだったのです。

(株価操作のためストを起こさせたまでは良かったが、すぐに収束する目論見が指導者がウォルトの説得に応じなかったことで計算が狂ったわけね。)
狙撃警官が取り囲む中で、二人がウォルトと対峙する場面がクライマックス。法を犯してはいない、文句があるか!と言わんばかりのウォルトの不遜な態度は時節柄某元知事を連想させます。パティたちが用意した証拠を画面に映しながら追い詰めていくリーは最早人質ではなく、真相を追う記者のような堂々たる態度です。(元々は有能な証券スペシャリストなのよね)
道々、カイルはこの爆弾が模造品であることをリーに打ち明けています。でも世間も警察も気付いていません。ウォルトに爆弾ベストを装着させるシーンはちょっと笑えます。全てを知ったカイルがリーに見せた哀し気な顔が印象的。彼は自分の成すべきことが終わったことを悟り、自ら終止符を打ったのですね

もちろん、これだけの事件を起こしたのですから(ロンを撃ってしまたのははずみだとはいえ)お咎めなしというわけにはいかないでしょうし、アメリカ的にはこの展開しかないのでしょうけど、やっぱり可哀相に思えました。その瞬間TVを見ていた視聴者たちは言葉を失いますが・・・すぐに日常は戻ってきます。これもまた実にシュール
どうやらパティが転職を止めてリーとのコンビを継続しそうな雰囲気でエンディングとなりますが、どんな事件が起きても、それは一つの出来事でしかないのかな。
リーが学んだのは視聴者という他人の冷たさと、身内(スタッフ)の愛かしら

最後まで彼と行動を共にしたカメラマンの男性が一番ヒーローじゃない?
ちなみに、パティとリーの間で交わされる「サカジャヴィア」という単語。これは『ナイト ミュージアム』シリーズにも登場した白人に協力したインディアン女性の名前。どうして彼女の名前が出てくるのか意味がわからなかったので調べてみました。
彼女は探検家として有名ですが、私生活は幸福とは言えなかったらしく、劇中では「油断大敵」みたいな意味で使われているようです。その辺も字幕で説明があれば良かったのにな。