杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

人間失格 太宰治と3人の女たち

2020年04月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年9月13日公開 120分 R15+

1964年、人気作家として活躍していた太宰治(小栗旬)は、身重の妻・美知子(宮沢りえ)と2人の子どもがいながら、自分の支持者である静子(沢尻エリカ)と関係を持ち、彼女がつけていた日記をもとに「斜陽」を生み出す。「斜陽」はベストセラーとなり社会現象を巻き起こすが、文壇からは内容を批判され、太宰は“本当の傑作”を追求することに。そんなある日、未帰還の夫を待つ身の美容師・富栄(二階堂ふみ)と知り合った太宰は、彼女との関係にも溺れていく。身体は結核に蝕まれ、酒と女に溺れる自堕落な生活を続ける太宰を、妻の美知子は忍耐強く支え、やがて彼女の言葉が太宰を「人間失格」執筆へと駆り立てていく。(映画.comより)

 

小説「人間失格」の誕生秘話を、太宰を取り巻く3人の女性たちとの関係とともに描いたオリジナル作品です。

白い雪の上に喀血の赤が鮮やかなシーンなど、蜷川実花監督の視覚的に刺激的で独特の世界観は健在です。 

太宰作品はいくつか読んだことはありますが、好きな作家とは言えないので、フィクションということを割引いてもやっぱり共感はできないなぁ。こういう破天荒な生き方が生んだ作品にもね 

映画の中の太宰はでも、小心で迫られたら嫌と言えない気弱な人物に見えました。彼を取り巻く三人の女性たちの方がよほど強い

彼女たちが本当に愛したのは太宰自身なのか、それとも彼の文才なのか?という疑問も湧きました。

初めの入水自殺をし損ねた直後の「死ぬかと思った」というセリフこそが、この男の本音であり真実であるようにも感じました。

まさに生き急いだ人生。彼自身生への執着は薄かったのだろうなと。全身から色気を漂わせる太宰を小栗旬が好演しています。

他に坂口安吾役の藤原竜也、三島由紀夫役の高良健吾を始め、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史といった顔ぶれが登場。さすがイケメンばかりの配役も蜷川作品らしい・・か


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ラスト・クリスマス

2020年04月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年12月6日公開 アメリカ 103分

ロンドンのクリスマスショップで働くケイト(エミリア・クラーク)。華やかな店内で妖精エルフのコスチュームに身をまとうケイトは仕事に身が入らず、乱れがちな生活を送っていた。そんなある日、ケイトの前に不思議な青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が現れる。トムはケイトが抱えるさまざまな問題を見抜き、彼女に答えを導き出してくれた。そんなトムにケイトは心をときめかせるが、2人の距離は一向に縮まることはなかった。やがてケイトはトムの真実を知ることとなるが……。(映画.comより)

 

ホリデーシーズンを迎えたロンドンを舞台にしたロマンティック・コメディで、脚本はエマ・トンプソン。物語を盛り上げる音楽は、ワム!の「ラスト・クリスマス」をはじめ、ジョージ・マイケルの曲がふんだんにちりばめられています。

ヒロインの自分探しのお話ですが、命の尊さや他者への寄り添いの大切さを伝えています。とはいえ、前半のケイトは友人の家を転々として、男にだらしない女性でとても共感が持てるヒロインではありません。

映画の冒頭、クリスマスの礼拝でソロパートを歌う少女を見つめる一家が映りますが、この少女がケイトです。ケイトの一家はユーゴスラビア紛争を逃れてロンドンに移住してきたという背景があります。環境の変化を受け入れられない母親(エマ・トンプソン)の過干渉から逃れようと、ケイトは家を出ていることが徐々にわかってきます。姉のマルタ(リディア・レオナルド)も独立し、父親も家を出ているようです。ケイトの夢は歌手になることですが、オーデションはことごとく落ちています。

そんな事情を鑑みても、無気力で自堕落な生活を正当化することはできません。彼女が鍵をかけ忘れたことで、職場であるクリスマスショップが荒らされてしまいます。店長のサンタ(ミシェル・ヨー)はケイトのミスを庇います。保険のためという面はありますが、ケイトを信用したいという気持ちも伝わります。

ところが、トムが現れたことで、ケイトの中で変化が生じてきます。ケイトはトムに自分の悩みを打ち明けます。彼女は心臓が悪かったので、ずっと「特別な子」として扱われてきました(母親の過干渉はそこから来ている?)が、ドナーからの心臓移植が成功した途端、普通を強いられ混乱していたのです。生きている実感の伴わないことが乱れた生活の原因だったというわけです。そんなケイトにトムは「日常の小さな行動がその人を作る」と諭します。心臓は借り物でも人格は自分で作っていけるのだと。

姉を傷つける発言(ルームメイトのアルバとの関係の暴露)をしてしまったケイトに、トムは自分を頼り過ぎないよう言います。突き放されたことでケイトは客観的に自分を見つめなおす機会を得ます。自ら考え行動することで、彼女は少しずつ変わっていきます。友人たちや姉に謝罪し、バスの中で「国へ帰れ」と暴言を吐かれた同郷人らしき男女に母国語で「ロンドンへようこそ」と話しかけ、サンタの大人の恋を後押しし・・・変化は彼女の瞳の輝きや表情の明るさ、果ては着こなしや振る舞いにも現れてきます。

姿を消したトムに会いたくて、思いきって彼の部屋を訪ねたケイトは、そこで驚くべき真実を知るのです。わかってみればなるほどなエピソードの数々。トムはせっかく新しい命を得たのに人生に悩み苦しんでいたケイトを見かねて姿を現した救世主というわけですね。

二年後、彼女がボランティアを続けるホームレスシェルターでのクリスマスショーを見守る家族(アルバもいます)の前で、ケイトは生きていることへの感謝と助け合い思い遣ることの大切さを語りかけます。

単純なロマコメではなく、移民への排他主義、格差社会、セクシャルマイノリティといった社会問題を織り交ぜられていて、その中でヒロイン・ケイトが他者への思いやりを持つことで、生きる喜びを見出していく姿が丁寧に描かれていて、初めに持ったケイトへの反感は綺麗に消えていました。

 

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帰ってきたムッソリーニ

2020年04月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年9月20日公開 イタリア 96分

独裁者ムッソリーニ(マッシオ・ポポリツィオ)が現代ローマに生き返った!売れない映像作家カナレッティ(フランク・マターノ)が、復活したムッソリーニを偶然カメラに収めたことから、一発逆転をかけてムッソリーニのドキュメンタリー作品の制作を思い立ち、2人でイタリア全土の撮影旅行がスタートする。そっくりさんだと思った若者に気軽にスマホを向けられると、戸惑いながらも撮影に応じ、市民の中に飛び込んで、不満はないか?と問いかけると、移民問題や政府に期待していない生の声が溢れ出てくる。その様子が動画サイトに投稿されると、再生回数がどんどん増えて拡散していき、遂にはTV出演でのカリスマ的演説が視聴者の心をつかみ高視聴率を叩き出し、TV製作者は大喜び。人気は絶大なものとなっていくにしたがい、ムッソリーニは再び国を征服する野望を抱くが……。

 

映画化もされたドイツのベストセラー小説「帰ってきたヒトラー」をベースに、舞台をイタリアに置き換えてのブラックコメディです。話の展開もドイツ版とほぼ同じなので、どうしても二番煎じの感は拭えませんが、これはこれで面白かったです。

イタリアの独裁者として悪名高いムッソリーニですが、ヒトラーに比べるとやや知名度は落ちる気が。 彼が亡くなった1945年から70年の時を経て蘇った、この男のスキンヘッドに軍服を着た姿に、そっくりさんと思い込んで笑っていた人々が、次第に彼の演説に魅了されていく様子は、ドイツ版と同じ。どちらの国も抱えている問題は一緒であり、それは世界に視点を広げても共通であることが、ブラックジョークの根底にあります。

コメディですから、ムッソリーニの立ち居振る舞いは、「らしく」あればあるほど滑稽に映ります。しかし、TV番組に出演するあたりから次第に危険な匂いを発散させ、カナレッティのGFの祖母(彼女が経験した壮絶な過去の物語にも戦慄を覚えました)が、彼を本物と見抜いて激しく非難し追い出した後の彼の言動に、その本質がまざまざと浮かび上がり背中が寒くなりました。

カナレッティが、彼が本物だと気付き絶縁したのとは逆に、上昇志向のTV局制作者のカティア(ステファニア・ロッカ)がムッソリーニに近づき利用しようとします。彼女にとっては出世の駒の一つに過ぎないけれど、実は利用されているのは彼女の方だという

ムッソリーニがこのまま思い通りに事を進めることができるかどうかは、国民の歴史に学び真実を見抜く目にかかっているでしょう。このような独裁者はいつの世もどこの国でも登場する可能性があり、それに踊らせられない賢さが求められているのだと、改めて思います。


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ジェミニマン

2020年04月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年10月25日公開 アメリカ 117分

史上最強とうたわれるスナイパーのヘンリー(ウィル・スミス)は政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きをすべて把握し、神出鬼没な謎の襲撃者の正体は、秘密裏に作られた若い頃のヘンリーのクローン(ウィル・スミス)だった。その衝撃の事実を知ったヘンリーは、アメリカ国防情報局の捜査官ダニー(メアリー・エリザベス・ウィンスレット)の協力を得ながら、政府を巻き込む巨大な陰謀の渦中へと身を投じていく。(映画.comより)

 

ウィル・スミスが51歳のスナイパーと、23歳の若いクローンの暗殺者の2役を演じたことでも話題となった作品です。クローンの方は、最新のデジタル技術によりスミスの外見を若返らせて作られたとのこと。技術の進歩はここまできたか!

基本的には、クローン技術により生み出された「自分」と協力して「敵」を倒すお話です。

ヘンリーは自らの能力の衰えを自覚し、長年抱いてきた、国家のための殺人への疑問もあり、引退を決意します。旧友のジャック・ウィリス(ダグラス・ホッジ)に引退を伝えにやってきたヘンリーは、今回暗殺した人物がテロリストではなかったことを知らされ、情報屋のユーリ(イリア・ヴォロック)が真相を知っていると聞かされます。自分が監視されていることに気付いたヘンリーは、監視者であるダニーを問い詰め、彼女がDIAのジャネット・ラシター(リンダ・エモンド)の部下だと知ります。

これらの会話を盗聴していたジャネットと秘密組織GEMINIのクレイ・ヴァリス(クライヴ・オーウェン)は、”GEMINI計画”(クローン人間の作製)の存在を知られることを懸念し、ヘンリーとヘンリーに関わる者に暗殺部隊を送り込むんですね。巻き込まれたダニーと共に、隠された真相を追うヘンリーの前に現れた謎の暗殺者が、若い頃の自分に瓜二つだと気付き、真相に近づいていくヘンリーとダニー。正体を知ったヘンリーは「彼」を殺そうとはしない、まぁ当たり前の反応ではありますね。

ヘンリーの協力者としてもう一人、旧友で凄腕パイロットのバロン(ベネディクト・ウォン)が登場します。気の良いおっさん然とした彼が消されてしまったのは残念だったな~

コロンビアの市街地でのバイクチェイスのシーンが見所です。 ブダペストでユーリと会い、事の真相を知る二人でしたが、「彼」の方も自らの存在意義について悩んでいます。若さと体力では上回っても、経験不足な「彼」は何度挑んでもヘンリーに勝てない 自分の出征の秘密を知らされ動揺し、「父」のヴァリスを問い詰める場面は、「あれ?これって近未来アクションものだったよな?」と思うほど、人情話にすり替えられていてちょっと違和感がありました。悪役の筈のヴァリスにも、選択は決定的に間違っていたけれど、彼なりの強い信念があり、「息子=ジュニア」への愛もあったというオチでした 

GEMINI計画を潰した後、「彼」は普通の大学生としての人生を歩み始め、ダニーは昇進、ヘンリーも引退生活を楽しんでいるラストはいかにもアメリカ的ハッピーエンド

それにしてもクローンに人権はないのかよ? ヴァリスにとって、「ジュニア」は息子そのものだけど、その改良型(痛みも感情もない)は人ではないという矛盾が気になりました。


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ブルー・ダイヤモンド

2020年04月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月30日公開 カナダ=アメリカ 105分 R15+

希少な最高純度の青い宝石ブルー・ダイヤモンドの取引のためにロシア・サンクトペテルブルクを訪れたアメリカ人宝石商ルーカス・ヒル(キアヌ・リーヴス)。しかし、ダイヤを所持していたビジネスパートナーのピョートルとの連絡が途絶え、ルーカスは彼が残した伝言を頼りにシベリアへと飛ぶ。現地のカフェの女主人カティア(アナ・ウラル)を巻き込みながら、ルーカスは苦労の末にダイヤを見つけ出すが、それは巧妙に作られた偽物だった。そんななか、カティアとの刹那の恋に燃え上がるルーカス。だがロシアンマフィア(パシャ・D・リチニコフ)との取引の期日が刻々と近づいていた……。(MovieWalkerより)

 

キアヌが演じるのは、美女とマフィアに翻弄される宝石ディーラーです。 もう少しアクションとかスリリングな展開を期待してたんですが・・・

そもそもがマフィア相手の商売なんて、「普通」じゃない世界で生きている割に、相棒からの連絡が途絶えた時点で危険を察知して逃げられなかったのかよ!という突っ込みをしたくなるのだけれど、だからこそ、必死にブツを確保しようとしたというわけかな

必死さに比例するかのように、妻帯者なのに、ロシア美女のカティアに惹かれていくルーカスには共感などできないけれど、行先に待つ死を嗅ぎ取った男の、生=性への渇望という捉え方もできるかと。それにしてもSEXシーン多すぎ どちらにしても全く縁のない世界ですけど


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毒殺協奏曲

2020年04月12日 | 

著者:有栖川有栖、小林泰三、篠田真由美、柴田よしき、永嶋恵美、新津きよみ、松村比呂美、光原百合 著/アミの会(仮) 編

PHP文芸文庫

合唱部の女性顧問の「毒殺未遂事件」。学校側は事故と主張するが、生徒たちは犯人捜しを始めて……(「伴奏者」)、作家が開いた鍋パーティーで、ある書店員の様子が急変して……(「猫は毒殺に関与しない」)、ネットで知り合い、意気投合した自殺志願の男女。服毒自殺を図るも、事態は思わぬ展開に――(「劇的な幕切れ」)。サスペンス、心理戦、謎解き、どんでん返し……。人気作家8人による「毒殺」縛りの多彩な傑作アンソロジー!

 

アミの会(仮)とは、たまに集まってご飯を食べたり、お酒を飲んだりすることを目的に結成された女性作家の集まりなんだとか。アミはフランス語の友達、または網のように広がる交友関、ネットを通じて近況報告や、意見交換をしながら一冊の本を編んでいく過程をさしているようです。テーマを統一しているのも特徴で、2冊目のテーマは毒殺というわけです。今回は男性作家も参加しています。

柴田よしき繋がりで検索した時に見つけた本ですが、知らなかった作家さんの作品にも触れることができて面白かったです。

毒→薬の連想からか、主人公や身内が薬剤師の話が複数あったのも興味深かったけれど、医師は出てきませんでしたね

男性作家の作品は以下の二作。

・劇的な幕切れ(有栖川有栖)

「火村~」で知った作家さん。今時のネットでの自殺サイトネタに主人公の妄想やどんでん返しを加えた展開ですが、そもそも自殺願望者の設定自体が好みではないので、個人的にはイマイチ。

・吹雪の朝(小林泰三)

妻の嫉妬が生んだ殺人だけど、彼女に殺す意図はなくて、ただ懲らしめたかっただけという 

中途半端な知識が招いた悲劇ではあるけれど、果たして彼女の中に殺意はみじんもなかったと言えるのかしら

 

・伴奏者(永嶋恵美)

題名は「共犯者」の意味もあるのだと読了して気付きました。中学生を子供だと侮ると・・・恐い それにしても被害者である女教師には同情する余地が見当たらないな

・猫は毒殺に関与しない(柴田よしき)

犯人捜しの鍋パーティが、発起人の思惑とは別の犯人による復讐劇になっているのは意表をついています。真犯人が追い詰められる最後がコメディチックでもあり、面白かったかな。恨みを買う人物って本人には全く悪意がなかったりするんだよね~~

・罪を認めてください(新津きよみ)

正義感の強さが災いして職を二度も追われたヒロインが最期に選択したのは・・・それを大人になったと言い換えるのは簡単だし、間違いとは言わないけれど、だったらそれまでの貴女の生き方に対してどうなのよ!と言いたい気持ちにはなるかな

・ナザル(松村比呂美)

初めに語られる希江の視点から、疑われる瞳の視点に変わるあたりから、毒とは希江自身を指すのではないかと思ってしまいました。彼女は自分の境遇に対する不満を、瞳や周囲の人間へのマウンティングで晴らしている、野次馬根性丸出しのお節介おばさんで、嫉妬心の強い女性として描かれているけれど、見渡せば身近にもいそうな人物です。

ナザルとはインドの言い伝えにある厄災除けのお守り代わりのほくろのことだそう。毒殺の真犯人は瞳ではなく・・という展開は冒頭のナザルの描写に繋がっていって、うまく話しがまとまっていました。

今回の8作品の中で一番印象に残る話でした。

・完璧な蒐集(篠田真由美)

江戸川乱歩風の印象です。蒐集家というのはどこか風変りな人種な気がしますが、それが高じるとこんな人物もいるかもという静かな怖さがあります。

・三人の女の物語(光原百合)

クレオパトラや白雪姫の話を、主を崇拝する奴隷や悪役扱いの継母の視点で語るとこういう話もできますって感じな「ある女王の物語」「ある姫君の物語」と、愛する人に殺されたい妻と、愛する人を殺したい夫を書いた「ある人妻の物語」の3つの物語です。ある意味大人のファンタジー。


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ヒンディー・ミディアム

2020年04月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年9月6日公開 インド 132分

デリーの下町で洋品店を営むラージ・バトラ(イルファン・カーン)と妻のミータ(サバー・カマル)は、娘を進学校に入れることを考えていたが、親の教育水準や居住地までが合否に影響することを知り、高級住宅地への引っ越しを決める。しかし、その努力もむなしく受験の結果は全滅。肩を落とす2人に、ある進学校が低所得者層のために入学の優先枠を設けているという話が舞い込む。追いつめられたラージとミータは優先枠での入学を狙うために貧民街への引っ越しを決行するが……。

 

現代インドのお受験事情を笑いと涙を交えて描いたハートウォーミングドラマということですが、どちらかというとブラックコメディな印象。

ちなみに、題名の「ヒンディー・ミディアム」は、ヒンディー語で授業を行う公立学校のことだそうです。学歴社会のインドでは英語が重要で、英語で授業を行う私立の名門校「イングリッシュ・ミディアム」に入学させることは、人生の成功の不可欠条件というわけで、親たちは真剣そのもの。妻大好きなラージは、愛する妻のために、渋々ながらお受験道に突き進むことになります。塾は当たり前で、懇願されれば慣れ親しんだ下町を出て高級住宅街へのお引越しまでしてしまいます。

ラージの家は代々続く老舗洋品店という設定ですが、所詮下町の商店主なわけで・・・どんだけ金持ちなんだ??なお金の使いぶりは首を傾げてしまいます。低所得者を装うために貧民街で暮らす間、店の経営はどうなってたの?とか突っ込み処も多々あるのだけれど、それは置いといて・・

合格のためには他人を蹴落とすのも辞さない覚悟でしたが、貧民街で思いがけず善意の塊のような隣人と出会い、夫婦の中で価値観が揺らいでいきます。

偽装願書が認められ、優先枠のくじ引きでやっと娘のピアの合格を得るのですが、隣人の息子は外れてしまい、自分たちが彼の権利を奪ったとの罪悪感が生じます。せめて公立小学校の環境整備に篤志家として寄付することで払拭しようとしますが、この隣人がお礼をしようと訪ねてきたことで、夫婦の正体がばれちゃうんですね。怒った隣人はピアが通う進学校に告発しようと出かけるのですが、無邪気なピアを目にして断念します。彼を阻止すべく追いかけてきたラージですが、それを見て考えを改めるんですね。

妻の我儘に振り回される夫の図がここで崩れます。最後は夫の決断に妻も従い、ハッピーエンド?な結末。

一番振り回されていたのは娘のピアだと思いますが、娘の視点では一切描かれていなかったのが少し不満かな。 

英語の綴りも知らないラージが願書に悪戦苦闘するさまや、進学校の品位に相応しい服装をはき違えた成金趣味なブランドで固めて登場した夫婦に塾の先生があ然としたり、慣れない日雇い労働で失敗を重ねたりと、細かなエピソードで笑わせながら、お受験事情をチクリと風刺してみせる展開です。

営利主義な塾や進学校の校長は、きっとどこにでもあるお受験の現実の一コマでしょう。校長が今回のことで考えを変えることもなさそうです。 だって社会が学歴社会中心に成り立っているんですものね。その中で、幸せの基準を他人と比べないこと、自分たちの生き方・考え方を変えることで幸せは手に入ることを夫婦を通して伝えている気がしました。


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ダンスウィズミー

2020年04月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月16日公開 103分

一流商社で働く勝ち組OLで、幼いころの苦い思い出からミュージカルを毛嫌いする鈴木静香(三吉彩花)は、ある日、姪っ子と訪れた遊園地で怪しげな催眠術師のショーを見学し、そこで「曲が流れると歌って踊らずにいられない」という“ミュージカルスターの催眠術”にかかってしまう。その日から、静香は街中に流れるちょっとしたメロディや携帯の着信音など、あらゆる音楽に反応するように。術を解いてもらおうと再び催眠術師のもとを訪れた静香だったが、そこは既にもぬけの殻。困り果てた彼女は、催眠術師の助手をしていた千絵(やしろ優)とともに、催眠術師の行方を捜すが……。(映画.comより)

 

「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」の矢口史靖監督・脚本のミュージカルコメディです。ヒロイン役を演じた三吉彩花はミュージカルシーンの全ての歌とダンスを吹き替えなしで演じたそうですが、なかなか上手でした。

勝ち組OLの設定なので、憧れの男性社員(三浦貴大)に頼まれた仕事を期日までに仕上げる能力もありますが、子供の頃のトラウマが催眠術にかかってしまう原因として描かれています。

怪しげな催眠術師役の宝田明さん、懐かしい~~!といったら失礼かな

彼を追って新潟・秋田・青森・函館と北上していく中での出会いや騒動がコミカルに展開していきます。

元カレの結婚披露宴に乱入する女(chay)や、催眠術師の助手(サクラ役)の千絵との珍道中は楽しく、怪しげな興信所の男(ムロツヨシ)や、借金取りの三人組とのやりとりも笑えます。

ところどころ挿入されるミュージカルシーンは、凄く上手というわけじゃないけど、なんだか楽しくなってきます。

旅の終わりに静香が選んだ「答え」は予想がつきましたが、本人が満足ならそれでいいんじゃない?

気楽に楽しめるコメディでした


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アングリーバード2

2020年04月01日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年1月31日公開 96分 フィンランド=アメリカ

ピギー・アイランドとの“戦い”から数年。怒りんぼうのレッド(声:坂上忍)は、あの日以来バード・アイランドのヒーローとして、親友のチャック、ボムと一緒に、島の平和を守ってきた。ところがある日、ピッグ軍団のリーダーであるレオナルドが休戦を申し出る。ブタたちを素直に信用できないレッドだったが、レオナルドによると、第3の島「イーグル・アイランド」に住むイーグルたちが、スーパー兵器を使って2つの島を滅ぼそうとしているという!これまで敵同士だったレッドとレオナルドは、力を合わせてお互いの島を守ることができるのか!?(公式HPより)

 

ゲームアプリを長編アニメーション映画化した「アングリーバード」のシリーズ第2作です。あれ?一作目って観たっけ 

前作では、仲間外れで独りぼっちだった怒りんぼうのレッドが、ブタのピッグ軍団に盗まれたタマゴを取り返そうと、怒りを勇気に変えて立ち上がりヒーローとなったらしい。 今作では、そのピッグ軍団と手を組んで新たな敵に立ち向かいます。 

また独りぼっちになるのを恐れ、自分がヒーローであり続けたいレッドは、ピッグ軍団のレオナルドやチャックの妹のシルヴァーを信用せずに自分の意見を通そうとしますが、徐々に仲間たちを信頼し、協力することを学んでいきます。

物理オタクなシルヴァーは、頭脳明晰で明るいキャラ。頑ななレッドの心を融かしていくとともにな雰囲気も

イーグルたちの女ボスが、バード・アイランドに住むイーグルに、過去に結婚をドタキャンされた恨みが原因でしたが、日本で製作したら絶対ないだろうという子供オチにはびっくりでした。

子供といえば、ベイビーバードたちがめちゃ可愛い 可愛いけど行動は大胆で無邪気で、レッドたち顔負けの活躍もみせてくれます。

お子様向けと侮っていましたが、けっこう楽しめました。


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