杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

オール・イズ・ロスト 最後の手紙

2014年10月31日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月14日公開 アメリカ 106分

スマトラ海峡から3150キロ沖。“すべて失った……すまない”という男(ロバート・レッドフォード )のつぶやきが響く……。
ことの起こりは8日前。インド洋をヨットで単独航海中の男は水音で眠りから覚める。気が付けば、船室に浸水が。海上を漂流していたコンテナが激突し、ヨットに横穴が開いてしまったようだ。航法装置は故障し、無線もラップトップも水浸しで使い物にならない。しかし、この災難は始まりに過ぎなかった。
雨雲が迫り、雷鳴がとどろき、やがて襲いかかる暴風雨。嵐が去った後に、男は過酷な現実に直面する。ヨットは決定的なダメージを受け、浸水はもはや止めようがない。ヨットを捨てることを決意した男は食糧とサバイバルキットを持って救命ボートに避難する。ここはいったいどこなのか? 助けはやってくるのか? ボートへの浸水、サメの襲撃に加え、飲み水や食糧は底を突き、危機的な状況は続く。ギリギリまで踏ん張ったものの、望みは確実に断たれようとしていた。
運命に見放されようとしたとき、男は初めて自分自身の本当の気持ちと向き合う事になる。
そして、一番大切な人に向けて読まれるかどうかもわからない手紙に、偽りのない気持ちをつづり始める……。(公式HPより)


全編「男」がヨット(後に救命ボート)で漂流する様が描かれ、そこにはセリフもストーリーもありません。
このような内容だと事前に知っていたらレンタルはしなかったなぁ。この男が何故気儘なヨットの旅をしていたのか、誰にどのように詫びたかったのかなどもっとサイドストーリーを絡めてくれたらよかったのに制作陣としてはそういうことを想像しながら観て欲しかったのでしょうけどね。単純明快ストーリーを好む人には向いていないかな。

漂流中に何度か大型貨物船がすぐ傍を通りすぎますが、男の打ち上げた救難信号には気付かずに去り、食糧も底をつき、男の気力も体力も限界を超え、死を覚悟した男は別れの手紙をガラス瓶に入れて海に投げ込みます。(あれだけ大きな船がボートに全く気付かず去っていくのは疑問が残りますが、全てが機械化された巨大貨物船なんて自動操縦で乗組員も減らしているのが現状なのかも

ただひたすら生きるために必死な男の様子がいっそ冷淡なほどに描かれています。
小さな救命ボートを海中から透かして見るカットは時に小魚が群れをなして泳ぎ、それらを補食する中型の、そしてサメの姿へと変わっていきますが、それはまるで男のこれからの運命を現すかのようです。
また、嵐に翻弄されるヨットや救命ボートの描写はすさまじく、自然の前にいかに男が無力であるかを物語るかのようでした。気力も体力も限界に近づき、男は愛する人への懺悔の手紙をガラス瓶に入れて海に流します。

しかし遂にある夜、男は小さな灯を見出します。
救難信号も使い果たした彼はボートで焚火をして気付いてもらおうとするのですが、次第にその努力は狂気をはらみ、遂にはボート自体が燃え上がり男は海中に投げ出されてしまうのです。

あぁこの物語は悲劇に終わるのかと男がゆっくり海中に沈む様を観ていると、そこへボートに近づく船の影が(このシーンも水中からボートを見上げる形になっていて作品全体がこの構図へ収束している感がありました。)まさに全てを失くした後で希望(救い)が現れたというわけです。
必死に海上へ出た男の腕は船上の人にしっかり捕えられエンドロールへ。
全てを失って初めてこの男は生きることへの執着を取り戻したのかもね。

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ドラキュラZERO

2014年10月31日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年10月31日公開 アメリカ 92分

1462年。トルコ勢力下にあるトランシルヴァニア国の君主で“串刺し公”の異名を持つヴラド・ツェペシュ(ルーク・エヴァンス)は、妻子とともに平和に暮らしていた。そんなある日、ヨーロッパ侵略を狙うオスマン帝国の皇帝メフメト2世(ドミニク・クーパー )が彼の息子を含む1000人の少年の徴兵を要求してくる。自らも少年の頃に経験した訓練や殺りくを息子たちに行わせたくないと願うヴラドは、帝国との全面戦争を決意。愛する妻ミレーナ(サラ・ガドン)や息子インゲラス(アート・パーキンソン)と民を守り、迫りくる帝国の大軍に立ち向かうため、ひとり山に分け入り、古くから伝わる強大な闇の力(チャールズ・ダンス )と契約を結ぶ。超人的な戦闘能力を得たヴラドは大軍を打破し続けるが、力と引き換えに耐えがたい代償を支払わねばならなかった。


「その男、悪にして英雄。愛する者のため、悪にこの身を捧げよう―」とのキャッチコピーの通りのラブストーリー仕立てです。
古の悪の力をその身に取り込んででも愛する者たちを守り抜こうとするその意志の類まれな強さは、三日間血への渇望に耐えることができれば人間に戻れるというその間際まで敗れることはありませんでした。けれど、最愛の妻自身が、彼に息子と国を守ることを望んだ時、ヴラドはドラキュラとして永遠に生きる運命になるのです。

メフメト2世率いるオスマン帝国の大軍を滅ぼすために彼は臣下たちをドラキュラに変えますが、戦いが決着した後は自らが日の光を呼び、彼らと共に滅びます。これぞ英雄!な最期なのですが・・・そう簡単に闇の力は彼を天国へは送ってくれなかったようです。現代に現れたヴラドと妻そっくりな女性、そして「さぁゲームを始めようか」と嘯く古代ヴァンパイア。彼は永遠に愛を求めて彷徨い、歴史は延々と繰り返されてきたのだと示すエピローグですね

くるくる巻き毛のインゲラス君がめちゃ可愛いのですが、偉大なる大公の息子にしては軟弱過ぎない?

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ペテロの葬列

2014年10月29日 | 
宮部みゆき(著)  集英社(発行)

今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。 (「BOOK」データベースより)

TVドラマ化の前に図書館で予約してようやく順番が回ってきました
既にドラマ見ちゃったので、ページをめくるたびにドラマのシーンとリンクしてしまうのですが、ほぼ原作通りの展開だったのだなぁと改めて確認してちょっと嬉しかったりします
(原作ではムロツヨシさんの役はないのですね。)

バスジャックの犯人の老人が提案した「慰謝料」が実際に送られてきたことで、人質だった7人それぞれの心にも波風が立ちます。「慰謝料」を受け取るべきか、警察に届けるべきかを相談した彼らは、まずは「慰謝料」の送り主や、犯人の老人の真意を探ることにします。そして佐藤と名乗った老人が「暮木一光」という名前でひっそり暮らしていたこと、さらに彼が昔マルチ詐欺商法の指南役と関わっていたことなどが判明します。老人が名指しした「三悪人」とは詐欺商法の被害者でありながら加害者でもある人物たちでした。詐欺の首謀者たちが捕まっても、彼らのような存在はお咎めなしの現実に、老人は一矢報いたかったのでしょうか。

しかし事件の波紋は人質にも及びます。坂本君は自らも詐欺商法に加担してしまっていたことを知って絶望のあまり、老人をなぞってバスジャック事件を起こしてしまうのです。
杉村自身も、今多コンツェルン本社から異動してきた井手正夫によるパワハラ・セクハラ問題に振り回され、以前のトラブル(名もなき毒参照)がきっかけで知り合った私立探偵・北見一郎のかつての依頼人・足立則生が容疑者となった殺人事件に関わるなど、家庭や本業そっちのけの状態が続きます。

こんな状態では、妻の菜穂子が浮気に走っても同情の余地がありそうですが(実際ドラマではそのような心理状態を示唆していましたが)、原作では三郎が自分と結婚したことで自由を失っていく様に耐えられなくなった印象を受けました。夫を解放し自由を与えるため、また自身の守られるだけの生き方を変えるために橋本を利用したとも言えます。それではあんまりよね~橋本さん
そして、意外なほどあっさりと離婚を選んだ杉村にちょっと幻滅
それほどまでに超えられない格差婚だったってのも何だかな~~。
会社でも今多家の親族にも微妙な立場だった杉村の心の闇も深かったってことかしらん?

もし続編があるなら、杉村は地方の小さな出版社で仕事しながら北見のような探偵をしてそうだね

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ヘラクレス

2014年10月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年10月24日公開 アメリカ 99分

全能の神ゼウスの落とし子ヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)は、強靭な肉体と怪力を誇り、多頭の蛇ヒュドラ、不死身のライオン、巨大なイノシシのエリュマントスなどの恐ろしい魔物を倒したとされ「12の難業」と呼ばれる伝説になっていた。しかし、それらは甥のイオラオス(リース・リッチー )によって広められたものに過ぎず、実際のヘラクレスは普通の人間だった。過去の事件から流れ者の傭兵に身を落としていたヘラクレスは、幼馴染のアウトリュコス(ルーファス・シーウェル)や預言者アムピアラオス(イアン・マクシェーン)ら仲間たちと共に、数多くの戦場を渡り歩いていたある日、トラキアの王女ユージニア(レベッカ・ファーガソン)に、父のコテュス王(ジョン・ハート)を、レーソス(トビアス・ザンテルマン)率いる反乱軍から救ってほしいと依頼される。体重分の金貨という多額の報酬に惹かれてトラキアへ向かっ一行だが、王の軍隊は農民の寄せ集めで反乱軍に太刀打ちできそうもない代物。兵士たちを一から鍛え直したヘラクレスは、反乱軍を一掃することに成功するが、その裏では恐るべき陰謀が・・・。


映画のヘラクレスは神がかりな超人ではなく、一人の人間として描かれているのが新鮮でした。妻子が惨殺された現場にいながらその記憶を喪っている彼は、それが自分のしたことなのかすらわからぬまま、追われるように祖国を出て傭兵として他国を渡り歩いています。その途中でアウトリュコス、テュデウス、アタランテ、イオラオスら仲間が出来たようです。悪夢にうなされ飛び起きるヘラクレスに仲間の一人で預言者であるアムビアラオスは試練に立ち向かうべきと助言します。

実はヘラクレスが成した偉業は仲間と共に達成したものでした。
冒頭でいかにも一人で倒したように冒険劇が語られるのですが、エンドロールでは仲間と共に戦う様子が影絵的に映し出されます
英雄は孤独ではなく、仲間がいたからこそ達成できた偉業だったというわけです
その辺も人間的でなんか良いなぁ

この仲間がまた個性派揃いで楽しめます。
紅一点のアタランテ(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は弓の名人で男勝り。テュデウス(アクセル・へニー)は野獣のようなと形容されてはいますが誠実なキャラです。短剣投げが得意なヘラクレスの友人アウトリュコスは、一度は仲間を離れますが、危機の際には戻ってきて共に戦います。イオラオスはヘラクレスの甥で腕力はからきしですが弁舌で役立ち、ヘラクレスのピンチを救う活躍もあってけっこうオイシイ役かも今回私のお気に入りは槍の使い手で預言者でもあるアムビアラオスですとぼけたおっさん風で狂言回し的な役割ですが味があって面白いの

トラキアの王女の要請で傭兵として王側についたヘラクレスたちは、農民を兵士として鍛え上げ、内乱を制圧に導きます。盾の陣形などは「アキレス」などの作品でも見られるような美しく機能的なもので見応えがありました。また負傷者を介護する王女やヘラクレスに憧れる王女の息子のアリウス(アイザック・アンドリュース)に亡き家族を重ねるようなヘラクレスの慈しみの視線が印象的です。
しかし実はコテュス王こそが謀反人であり王位簒奪者だったのです。それまでは善人面の王が、捕えられ縄打たれた内乱の首謀者レーソスへ冷酷な仕打ちをする場面で観客は「おや?」と思わされますそれ以後、王の無慈悲で悪魔のような所業(娘や孫まで殺そうとする)には物語とわかっていても怒りがこみあげてくるのですから、これは脚本が上手いというべきでしょうか

さらに、ヘラクレスの妻子を惨殺したのは、彼の人気を妬み恐れたエウリュステウス王(ジョセフ・ファインズ )の仕業であったことが判明(この王も残忍で卑怯極まりない人物として描かれていて、せっかくの美形が醜く見えてしまう)、王女が殺されようとする場面に及んでヘラクレスのパワーが全開繋がれた鎖を壁から引きちぎり王女を助け、ここからまさに英雄的活躍が始まるのでした。
そしてここでもアムビアラオスの効果的な「煽り」がヘラクレスを奮い立たせます。過去と決着をつけ、仲間と共に信念を持って戦うヘラクレスは、まさに神話の英雄へと変貌を遂げたのでした

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ロボコップ

2014年10月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月14日公開 アメリカ 117分

2028年デトロイト。巨大多国籍企業『オムニコープ社』は、軍事用ロボットを世界各国に配備して莫大な利益を得ていたが、本国アメリカではロボット配備を規制する『ドレイファス法』の前に販路拡大を阻まれていた。心を持たないロボットに人間の生殺を任せることに反発する世論を味方に付けるため、CEOのレイモンド・セラーズ(マイケル・キートン)は、サイボーグ技術の権威であるデネット・ノートン博士(ゲイリー・オールドマン)を使い、機械のボディに人間の頭脳を融合させた『ロボコップ』計画を立ち上げる。被験者として選ばれたのは、相棒のジャック(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)と武器密輸組織の内偵中に同僚の汚職刑事の仕掛けた爆弾により、重度の火傷と手足の切断という重傷を負ったアレックス・マーフィ刑事(ジョエル・キナマン)だった。彼の妻クララ(アビー・コーニッシュ)の同意を得てロボコップとして蘇ったアレックスだが、性能テストの結果ロボットより判断が遅れるという欠陥が見つかる。
性能アップのために感情を抑制されたアレックスは、妻子や相棒を見ても機械的な対応しか出来ない文字通りのロボットとなり、次々と凶悪犯を捕らえて市民から熱烈な支持を得ていく。世論もドレイファス法の撤廃へと傾いていくが、クララと再会した事で、アレックスの感情が蘇り、自らの意思でプログラムを書き換えた彼は、自分が重傷を負った事件の犯人を一掃し警察内部の汚職をも暴き出してしまう。この事態に、法撤廃の目的を達した後に彼が社のお荷物になり都合の悪い汚職まで暴かれかねないと案じたセラースは、ロボコップを停止させ葬り去ろうとする。その企みに気付いたノートン博士の助けでラボを脱出したアレックスは、家族を守るために決死の反攻を開始、ジャックの援護を受け、片腕を失い満身創痍になりながらもセラーズを倒すのだった。


1987年製作の『ロボコップ』のリメイクだそうです。
主人公はロボコップだと思っていたのですが、そうでもないような
むしろノートン博士の方が主役なんじゃなかろうか

オムニコープ社の広告塔のような存在でTV番組司会者のパット・ノヴァック(サミュエル・L・ジャクソン)が度々登場して、いかにオムニ社のロボットが優れているかを宣伝し世論を誘導しようとする場面が出てきます。そのあからさまなオムニ社賛美の姿勢が逆に胡散臭さを醸し出していて観る側に逆説的な説得力を与えています。特にラストでの感情的なセリフには、権力側の驕りが込められていて痛快な皮肉でした

重傷を負ったアレックスは頭・心臓・肺と片手以外は全て器械です。意識が戻った彼はいっそ死をと願うのですが、博士に妻子のために生きろと説得されロボコップとして働くことを了承します。
その博士は、自分の研究が応用されることに戸惑いながらも科学者としての好奇心の方が勝っているように感じられました。問題があっても納期(記者会見)に間に合わせるよう強制された際にはアレックスの感情を抑制させるなどは、彼を人として扱っていれば到底許容できないことだと思います。未知の領域への関心やデータへの興味が博士を駆り立てていたのでしょう。しかし、アレックスを抹殺するよう示唆されて、表向きは了承しながらも、彼は初めてセラーズに逆らってアレックスを逃がすのです。それは博士の人間としての良心からでしょう。感情を抑制されて家族にも無関心になってしまったアレックスを見て、博士の中に疑問や迷いが生じていたのかもしれませんね。

アレックスのプログラムは、セラーズら社の幹部を攻撃できないよう設定されていましたが、セラーズが妻子に銃を向けた時、彼の感情がプログラムを破ります。それは人が機械に勝った瞬間です。どんなにコントロールしようとしても人間の感情ほど扱いにくいものはないのだと強調しているようにも見えました。

いったんはドレイファス法を破棄した議会ですが、この件を受けて大統領は法案破棄を棄却します。それはどんなに機械が優れていても、人の社会(治安)を任せるべきは人であるという決定でもあります。
しかしねぇ・・・アメリカでダメなものは他の国でもダメってことじゃないのかしらん?
自国さえ安全ならそれでいいのかい?

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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

2014年10月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月28日公開 アメリカ 115分

100万ドルが当たったという、いかにも古典的でインチキな手紙をすっかり信じてしまったウディ(ブルース・ダーン)は、モンタナからはるか遠く離れたネブラスカまで歩いてでも賞金を取りに行くと言ってきかない。大酒飲みで頑固なウディとは距離を置いていた息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)だが、そんな父親を見兼ねて無駄骨と知りながらも、父を車に乗せて4州をまたぐ旅に出る。途中立ち寄ったウディの故郷で賞金をめぐる騒動に巻きこまれる中、デイビッドは両親の意外な過去を知る。


頑固者の父親と、そんな父と距離を置いて生きてきた息子が、旅を通して心を通わせるロードムービーです。

ウディはどうも呆けが入ってきているように見えます。そんな夫に妻のケイト(ジューン・スキッブ)は文句ばかり。兄のロス(ボブ・オデンカーク)は母親の味方です。
昔から大酒のみで家族に迷惑をかけていたウディに同情の余地はないように思えるのですが、何故か疎遠(とはいえ、父親が迷惑をかけるたびに引き受けに行く程度には家族仲は悪くはないようです)にしていたデイビッドが彼を連れてネブラスカまで行くと言い出すのです。それはデイビッド自身が自らの生き方に自信を持てずにいたことと無関係ではなさそうです。彼は同棲していた彼女に別れを切り出され、仕事に情熱も持てず、今の環境に窒息しそうになっていたのでしょう。無駄とわかりきっているネブラスカ行きに同行するのも、そんな日常からの逃避的要素の方が強かったのではないかしら。

旅の途中にある両親の故郷の田舎町に住むマーサ伯母さん( マリー・ルイーズ・ウィルソン)の家に寄った二人を追いかけてケイトとロスもやってきます。
しかしこのオヤジ、ちょっと目を離すとすぐに飲んだくれるし、秘密にしろと言われても「100万ドル当たった」と吹聴して騒ぎを巻き起こすわでロクな親父じゃない
マーサ一家(彼女の息子たちはオツムの弱そうな腕力バカ)はウディの話を真に受けて、賞金を分けろと迫ります。それはウディの友人で共同経営者だったエド・ピグラム(ステイシー・キーチ)も同様です。昔散々ウディの人の好さに付け込んだのに、まだたかろうとするなんてサイテー
母のケイトのキャラがまた強烈で、昔自分がいかにモテたかを息子たちに赤裸々に自慢するその神経が理解できないぞその姿は老醜そのものですが、きっと本人は露ほどもそれが品性に欠けている行為だとは思ってないんだろうなぁ

それでも、真実を知ってあざ笑ったエドに一発お見舞いし、あくまでネブラスカに行こうとするウディを結局は送っていくデイビッドや、マーサたちに小気味よい啖呵を切り倒れたウディにそっとキスするケイトの姿を見ると「あぁ家族なんだなぁ」と何だかホッとするのです。
コンプレッサーを借りたまま返さないエドの家の納屋からそれを盗み出そうとする兄弟の姿に笑い、そこが別人の家だとのほほんとのたまう両親にのけ反り・・この笑いのセンスが作品の持ち味かも/hand_goo/}

手紙にあった住所を訪れて「ハズレ」を確認したウディはそれで気が済んだのか大人しく帰ろうとします。旅の中で、父の本当の「夢」(息子たちに何かを遺してやりたかった)を知ったデイビッドは彼のためにトラックとコンプレッサーを購入し、故郷の町の道を(免許を取り上げられている)父親に運転させます。頭には景品にもらった「当選者」の帽子を被った姿でねそれは父のプライドを守る彼なりの最高の親孝行なのでした。

彼らにとって、この旅は決して無駄ではなかったのですね

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グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

2014年10月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年10月18日公開 103分 フランス

1956年、オスカー女優のグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、モナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚。1961年12月、二人の子供に恵まれるも王室の中で孤立していたグレースの前に、脚本を手にしたヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が現れる。「マーニー」という新作映画の出演依頼に訪れたのだ。そんな中、モナコ公国に危機が降りかかる。アルジェリアの独立戦争で戦費が必要になったフランスが、無税の国モナコに移転したフランス企業から税金を徴収して支払うよう要求、「従わなければモナコをフランス領とする」と声明を出したのだ。もし戦争になれば、軍隊もない小国モナコは、一瞬で占領されてしまう。政治で頭がいっぱいのレーニエに無視され、ますます居場所を見失ったグレースはハリウッド復帰を望むが、国家の危機的状況に発表は控えられる。だが宮殿から情報が漏れ大々的に報道、グレースの相談役で後見人のタッカー神父(フランク・ランジェラ)は、フランスのスパイがいると警戒する。1962年7月。国民の公妃への不満が高まる中、励ましてくれるのは義姉のアントワネット(ジェラルディン・ソマーヴィル)と、オナシス(ロバート・リンゼイ)の愛人マリア・カラス(パス・ベガ)だけだった。やがてレーニエはフランス企業への課税を了承。しかしド・ゴールは、モナコ企業にも課税してフランスに収めろと脅し同然の要求を突き付ける。レーニエは行き場の無い怒りをグレースにぶつけ、映画界からの引退を迫る。結婚式の記録映像を見ながら離婚を考え、涙にくれるグレースの傍らで優しく見守る神父は「人生最高の役を演じるためにモナコに来たはずだ」と諭す。数日後、神父はグレースを外交儀礼の専門家であるデリエール伯爵(デレク・ジャコビ)の元へ連れて行く。モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチ――グレースの夏は厳しい特訓で過ぎていった。9月22日、レーニエはヨーロッパ諸国の代表に軍事支援を募るサミットを開くが、ド・ゴール暗殺未遂の報せが入り失敗。さらに王室内の裏切り者が判明し、レーニエとグレースは深い衝撃を受け、二人は絶望の中で長らく眠っていた互いの愛を確認し合う。翌朝、グレースはヒッチコックに電話をかけて出演を断り、国際赤十字の舞踏会開催を発表、世界中の要人に招待状を発送する。1962年10月9日、侵攻を目前にモナコで開かれたパーティは大変な盛況を博し、そこにはド・ゴールの姿もあった。マリア・カラスの魂を震わす歌の後、主催者のグレースが舞台に上がり、この日のために練り上げた一世一代のスピーチが始まった……。(Movie Walkerより)


女優からプリンセスへ、お伽話を体現した女性というイメージしかなかったグレース・ケリーという人の素顔を垣間見たような気になる作品です。あくまでフィクションということですが、それでも彼女が何を思い何を成し遂げたのかに触れたような錯覚に陥りました。

ニコール・キッドマンが演じているのですが、個人的にはちょっとイメージが違うなぁ。
でも「クールビューティ」と称されたというグレースの気品を体現するには彼女は適任かも

モナコでグレースが心を許せるのは、大公を除くとごくごく限られた人しかいません。
タッカー神父は二人の結婚を後押しした人物のようです。何かにつけ悩みを相談するグレースは、神父に父親の庇護を重ねていたのかもと思いました。

秘されていた女優復帰の件が宮殿側から漏れて苦境に立たされた彼女が、実家の母に電話するシーンで、彼女が肉親の愛情に飢えていたのではと推察される会話があります。世間体を気にする母親に「普通の母娘の会話がしたかった」と電話を切るグレースの孤独が胸に迫りました。女優として成功し、シンデレラストーリーを生きても、彼女の心は満たされませんでした。彼女が本当に欲していたのは名声や豪華な暮らしではなく、自分を必要とし愛してくれる存在だったからです。

広すぎる宮殿で、いつしかすれ違っていく大公との距離に悩むグレースに、神父はデリエール伯爵を紹介します。自分の置かれた立場で輝くために成すべきことをせよという神父の配慮です。批判よりまず受容せよという教えでもあるのかも

さて、義姉のアントワネットは家族として優しく接してくれていましたが、実は彼女こそがド・ゴールと結託し政情不安に陥れた張本人
スパイとして真っ先に疑われた、公妃のお目付け役?のマッジはアントワネットの計画を知り証拠を集めていたという筋書きで、実は味方でした
義姉の裏切りを知り、証拠を突きつけるグレースは迫力がありました。

窮地に陥ったモナコを救うために彼女の取った秘策とは、舞踏会の主催です。
赤十字の名目でド・ゴールを含む各国指導者を招いた舞踏会の場で、彼女は完璧な公妃を演じきります。彼女のスピーチにド・ゴールその人ですら感銘を受けるのです。

シンプルに言えば、自分の生き方に迷っていた女性が、進むべき道を見出して踏み出していく姿を描いた物語なのですが、そこに一国の危機や宮殿の中の陰謀のサスペンスを加え、華やかな舞踏会や美しい衣装で魅せてくれます。

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アイム・ソー・エキサイテッド!

2014年10月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年1月25日公開 スペイン 90分

スペイン・マドリッドからメキシコへ向かう飛行機が着陸不能の状態に陥り、目的地へ向かわず旋回し続けていた。エコノミークラスの客と乗務員を薬で眠らせたビジネスクラス担当のセラ(ハビエル・カマラ)、ファハス(カルロス・アレセス)、ウジョア(ラウル・アレバロ)らオネエ客室乗務員3人組は、乗客を和ませようと歌やダンスを披露しメスカリン入りのオリジナルカクテルを提供しはじめる。ホセラと妻との三角関係に悩む機長のアレックス(アントニオ・デ・ラ・トーレ)始め、ビジネスクラスの相当に個性的な乗客たちの素性が次第に明らかになっていき機内はとんでもない騒ぎになる。


たぶんバンちゃん(バンデラス)が出てるからレンタルしたんだろうな~~
でも冒頭の数分のみで、機体故障の伏線で登場するだけでした。

自分的には受け付けないタイプのコメディ。
もし実際にあんな客室乗務員やパイロットだったら絶対乗りたくないし、エコノミーの客はまるで無視されてるし主要キャストがやりたい放題の印象です

それでもキャラ的には楽しめる作品。
いきなりコックピットに乗り込んできたのは不吉な予言をするブルーノ(ロラ・ドゥエニャス)。処女を捨てたいとパイロットたちを誘惑する彼女にホセラは機長との関係を告白、副機長までがバイ疑惑で一気に「この飛行機大丈夫かぁ?」な不安を煽ります
延々と苦情を言うSM女王ノルマ(セシリア・ロス)に、愛人(パス・ベガ)と元カノ(ブランカ・スアレス)が気になる元人気俳優リカルド(ギレルモ・トレド)、不祥事を働いた銀行頭取マス(ホゼ・ルイス・トリーホ)、怪しげな雰囲気の黒服の男など、ビジネスクラスの乗客たちのまぁ強烈なこと!そんな彼らにも様々な事情があって、緊急電話を通じて浮かび上がるのはちょっと心がほんわかする挿話だったりします。馬鹿げたやりとりの間に挟むから余計に和むのかもね。

しかし何といってもオネエ三人組の個性には負けちゃいますが

頭空っぽにして見る作品です



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大統領の料理人

2014年10月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年9月7日公開 フランス 94分

片田舎で小さなレストランを営むオルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)がスカウトを受け、連れて来られた新しい勤務先はエリゼ宮。そこはなんとフランス大統領官邸のプライベートキッチンだった。
堅苦しいメニューと規律と縛られた食事スタイル、嫉妬うずまく官邸料理人たちの中で、彼女が作り出すのは「美味しい」の本当の意味を追求した料理の数々。
当初、値踏みするような目で遠巻きに眺めていた同僚たちも、いつしか彼女の料理の腕と情熱に刺激され、彼女のペースに巻き込まれ、官邸の厨房には、少しずつ新しい風が吹き始める。
やがて、大統領のお皿に食べ残しがなくなってきたある日、彼女に直接声をかけてきたミッテラン大統領(ジャン・ドルメッソン)の口から意外な話が飛び出す-。 (公式HPより)


「フランス最後の国父」と称されるフランソワ・ミッテラン大統領に仕えた、仏官邸史上唯一の女性料理人ダニエル・デルプエシュの実話が基になっています。

チラシから受けるイメージやキャッチコピーと内容にずれを感じたというのが観終わった第一印象です。もっと明るく前向きなコメディータッチなのかと勝手に想像していたら肩透かしでした。
エリゼ宮で大統領のプライベートシェフに抜擢された「庶民的な」料理を作る女性料理人の話ですが、いわゆる「おふくろの味」にしてはトリュフや厳選された高級食材をふんだんに取り入れたメニューの数々は決して質素なものとは言えません。まぁ、質素と素朴は違うのですけれどね手の込んだ華やかな格式料理とは趣は違うけれど、一国の大統領とその近しい人々が食するものだから、本当の意味での家庭料理とは自ずと異なるんじゃないかなぁ彼女自身、すでにある程度の成功を収めた料理家でもあるし、一介の主婦とは違いますもんね

エリゼ宮の厨房と南極越冬隊の厨房の様子が交互に登場しながら進んでいきます。
彼女が大統領の料理人を辞した理由は主厨房のシェフたち(伝統)との軋轢に疲れたのだろうと察することができますが、南極に来た理由はラストまで明かされません。大統領の料理人だったという過去を知り興味を持って取材対象として追いかけまわしたオーストラリア人記者にその真の理由を語ったのは、彼女がこれから向かう地域の人間だったから?しつこく付きまとわれて嫌がっていたのに何故?との疑問が湧きましたが、過去に踏ん切りをつけ、未来に向かって歩き出したからってことですかね

フランス流のジョークなのでしょうけれど、南極基地を去る最後の晩に隊員たちが彼女に見せた寸劇の内容がけっこうキツイ風刺で、これを笑いにしてしまう感覚が理解できませんでした。こういうシーンは私にとってフランス映画のちょっと苦手な部分です。

主厨房のシェフたちが彼女をデュ・バリー夫人(ルイ15世の公妾)と陰口をたたき、大統領付きの人たちが彼女を厄介な人物として見る一方、彼女の助手のニコラ(アルチュール・デュポン)や食事を運ぶ給仕人たちとの交流は親しみに満ちて穏やかなものです。
大統領自身が素朴な郷土料理を好み彼女の起用を求めたくらいですから、二人の間には料理という絆がありました。周囲から疎まれる彼女を心配した大統領がさり気なく励ます夜の厨房でのシーンに味わいがありました

それにしてもフランスの大統領ってあんなに素敵な宮殿住まいなのねえ
美味しそうな数々のメニューとともに堪能しました

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蜩ノ記

2014年10月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年10月4日公開 129分

城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎(岡田准一)は、家老・中根兵右衛門の温情で切腹を免れたものの、7年前に藩主の側室・お由の方(寺島しのぶ)との不義密通の罪で10年後の夏に切腹すること、及びその日までに藩の歴史である「家譜」を完成させることを命じられて向山村に幽閉されている戸田秋谷(役所広司)の監視の命を受ける。秋谷が7年前の事件を家譜にどう記しているかを確認して報告し、もし彼が逃亡するようなら家族もろとも斬り捨てよとの密命を受け任に就いた庄三郎だが、秋谷一家と共に生活し、家譜の編纂を手伝いながら秋谷の誠実な人柄を目の当たりにするうちに、秋谷に敬愛の念を抱き始める。次第に秋谷の無実を確信するようになった庄三郎は、秋谷が切腹を命じられる原因となった側室襲撃事件の裏に隠された、もう1人の側室の出自に関する重大な疑惑に辿り着く。

題名は戸田秋谷がつけていた日記の名であり、日暮しのごとく一日一日を懸命に生きるという意図が込められているとか。
派手な斬り合いや大きな出来事が起こるわけではないですが、静かな展開の中に武士としての誇りや守るべき信念といった良い意味での武士道を感じることのできる作品です。

命の期限を切られ、名誉を捨てさせられてなお、心静かに日々を過ごすことが出来るかと問われれば自分には無理
戸田は主君に「お家のため」と請われて敢えて濡れ衣を着ます。それは臣下の鑑といえる生き様ではありますが、現代感覚からすると違和感があります。彼の心の奥底に若き日のお由への秘めた想いがあったからこそ、その汚名を敢えて着たのかもしれませんが、そう考えると奥方が可哀相な気もして、なんだか複雑

戸田一家の生活は慎ましい中にも武士としての誇りに満ちたものです。妻の織江(原田美枝子子)も娘の薫(堀北真希)も戸田を尊敬し慕い、従順に状況を受け入れています。
戸田は村の子供たちを集めて寺子屋を開き、百姓衆にも偉ぶることなく相談に乗ったり、一揆を企む者を諌め諭したりしています。寺の慶仙和尚(井川比佐志)とは懇意で、彼は事件の真相を知っているようです。

映画では三者三様の友情についてのエピソードがあります。
戸田の息子・郁太郎(吉田晴登)は百姓の息子の源吉と親友ですが、その源吉が村人を庇って拷問の末に殺されたことに憤り、家老に直談判しようとします。現実的には、そのような行動が許される筈もなく、庄三郎が止めるどころかそれを助けるのも変ですが、物語としては大きな山場となります。サブ的エピソードとして登場する郁太郎と源吉の最後の会話などは、本筋を食う勢いの胸に浸みるものでした。

庄三郎は親友である水上信吾(青木崇高)との諍いから刃傷事件を起こしたのですが、それでも二人の間の友情は損なわれていません。家老の中根兵右衛門(串田和美)は、水上が子供のいない彼の甥であることから二人に温情をかけて事件を大事にしなかったのです。

そして戸田と中根も昔机を並べた親友同士でした。家老の立場は、初めは陰謀の黒幕的な悪役かと思いましたが、中根の真意も藩の安泰にあることを戸田は感じていたからこそ、敢えて助命を請わず死を受け入れる代わりに中根に藩を良き方向に導くことを託したのですね。

友情を主軸とすれば、庄三郎と薫の恋模様は、互いに惹かれあう様もさり気なく、かなりあっさりと描かれます。戸田と織江については、切腹に向かう朝の会話に集約されるでしょう。
深く心が結びついているからこそとはいえ、あのように潔く送り出せるのは武士の妻の鑑です。
でも・・・どんなに美しい生き方でも・・・そんな生き方は嫌だ~~~
やはり物語だからこそ許容できるんだと思うわ。

山村の四季折々の美しい風景に過ぎ行く時を重ねていて、あと二年、一年、あぁもう次の季節はないのねと切なさが増していくその手法もでした。


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ハミングバード

2014年10月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月7日公開 100分 イギリス

ジョゼフ・スミス(ジェイソン・ステイサム)はかつて特殊部隊を率いる軍曹だったが、戦場で犯した罪により心に傷を抱え、家族や社会から逃れてロンドンの片隅でホームレスとして息を潜めて暮らしていた。ある晩、唯一心を通わせた少女が拉致されたことで、彼の人生が大きく動き出す。彼女を救うために他人になりすまし、裏社会でのし上がっていくジョゼフ。しかし、少女の残酷な運命を知ったとき、彼の怒りは決壊、復讐の炎と化す。過去に犯した罪、そして自らの人生にも決着をつけるため、ジョゼフが最後に下した決断とは──?


これ、どうしてチョイスしたのか覚えていなかったのですが、きちゃないホームレスの男が長期留守している金持ちの部屋に入り込んで髪を切ったら・・・ジェイソン・ステイサムじゃないですかぁだからレンタルしたんだ!とこの時点でやっと気づく自分に呆れるそういえば、冒頭の兵士のシーンでチラッと映ってたんだった
それにしても「トランスポーター」の白いワイシャツとスーツが似合う俳優さんだねぇ。

題名からファンタジー色がしたんだけど、戦争でトラウマを抱えた脱走兵が、ロンドンの片隅で生きることにもがく姿を描いた重い作品でした。「イースタン・プロミス」の脚本家スティーブン・ナイトの初監督作品だそうです。なんか・・・納得
とはいえ、知り合った修道女に束の間の安らぎを見出すあたりはファンタジーと言えなくもないか?

ロンドンのホームレスの一割は元兵士だとか
ジョゼフは戦場での体験により元の生活に適応出来なくなり苦しんでいます。
ハミングバードとは、アフガニスタンで使用された、無人偵察機の通称ですが、映画の中では“全てを見通す目”の象徴となっています。戦場でしてきた非道な行いを彼自身の良心が咎めていて、それがフラッシュバックとなって現れ、彼を苦しめます。

懇意にしていた少女が浚われ、彼女の行方を捜すために他人になりすまし、金を貯め情報を求める彼は、束の間生きる目的を見出したかのようです。売春婦にさせられていた少女を悲惨な最期をに追いやった犯人をパーティ会場のビルの屋上からいきなり突き落したやり方には驚きましたが、彼なりの罰し方なのでしょう

炊き出しの奉仕活動をしているシスター・クリスティナ(アガタ・ブゼク)とは心に傷を負っ
た者同士、ある種の絆のようなものを感じて急接近していくのですが、最後に彼が下した決断は結局は自分自身で過去に向き合わなければならないというものでした。

冴えない修道女姿から一転、ジョゼフが贈った真っ赤なドレス姿のクリスティナは溜息のでそうな美しさです彼女の犯した罪は正当防衛(過剰ではあるけれど)と呼べるもので、そのことで人生そのものを捨てる生き方には賛同しかねますが、信仰に逃れた彼女がさらに自らを罰するような選択をするのも、ジョゼフがホームレスに戻ることを選んだのも根っこは同じ考え方なんだろうなぁと思いました。

ジョゼフは裏社会の仕事で稼いだお金を残してきた妻子に渡し、クリスティナに撮ってもらった「普通の」姿の自分の写真を娘に渡します。それは彼のけじめであり愛情の示し方だったのでしょう。なりすましていた男性の部屋にも使い込んだお金と家賃相当の金額を返すあたりに本来の律儀な性格が出ているんじゃないかしらん
彼が本当の意味で罪を償い自分を許せる日は来るのかな?

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シャドウハンター

2014年10月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年4月19日公開 アメリカ=ドイツ 130分

ニューヨークで母と暮らすクラリー(リリー・コリンズ)は、BFのサイモン(ロバート・シーハン)と訪れたクラブである事件を目撃したことをきっかけに、この世には吸血鬼や人狼、妖魔といった地下世界の住人=ダウンワールダーが存在することを知る。彼らを狩る「シャドウハンター」のジェイス(ジェイミー・キャンベル・バウアー)と出会ったクラリーは、母のジョスリン(レナ・ヘディ)もまた、ハンターで、強大な力を授けるとされる聖杯を闇の存在から隠し守っていることを知らされショックを受ける。その母が聖杯を狙う反逆者ヴァレンタイン(ジョナサン・リス・マイヤーズ)の仲間にさらわれたことから、クラリーは母を救い、聖杯を探すため戦う決意をする。


カサンドラ・クレアの小説「シャドウハンター 骨の街」を実写化したアドベンチャー作品。
「白雪姫と鏡の女王」のリリー・コリンズと「ハリー・ポッターと死の秘宝」「トワイライト・サーガ」のジェイミー・キャンベルバウワー共演ということで、いかにもティーン向けのファンタジーアドベンチャーの趣です
彫りの深い美少年のジェイミーはキャラにうってつけだね

吸血鬼に人狼、魔法使いや妖魔が登場する物語は「トワイライト・サーガ」や「ハリー・ポッター」の世界とかぶっていて、二番煎じの感は否めませんが、ファンタジーとしての質はそこそこ保っていると思います。
クラリーが連れて行かれた「研究所」の扉などはまさにホグワーツ城を連想させる施錠シーンだし、「Xメン」の設定とも似ているなぁ
サイモンとジェイス双方から好意を寄せられるヒロインは「トワイライト~」と一緒一方で、ジェイスの仲間のアレク(ケビン・ゼガーズ)がジェイスのことを好きだったり、アレクの妹イザベル(ジェマイマ・ウェスト)のファッションなどに現代若者世相が反映されています。

ジョスリンは偉大な魔法使いマグナス・ベイン(ゴッドフリー・ガオ)にクラリーの記憶を封印してもらっていたのですが、その記憶こそが聖杯の場所を示す手がかりでした。そしてクラリーの父がヴァレンタインであるということも明かされます。

サイモンが吸血鬼たちにさらわれたり、隣人の魔法使いマダム・ドロシア(CCH・パウンダー)が妖魔に乗っ取られて聖杯を奪おうとしたりといった展開のあと、いよいよヴァレンタインとの闘いが始まるのですが、その前にハンターたちの保護者的存在のホッジ(ジャレッド・ハリス)の裏切りや、ジェイスがクラリーの兄だという嘘の計略という落とし穴があって波乱万丈

ヴァレンタインを倒すため、ジョイスとクラリー母子を見守ってきたルーク(エイダン・ターナー)率いる人狼たちも強力しての総力戦と、クラリーの引き出された能力により、無事聖杯を守りヴァレンタインを倒しますが・・・ジェイスとクラリーが兄妹であるという嘘はまだ解かれていません。小説はシリーズになっているようなので、後日談が出てきそう
サイモンはクラリーに振られちゃいますが、イザベルとくっつきそうだな~

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るろうに剣心 伝説の最期編

2014年10月01日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年9月13日公開 135分

海を漂流し流れ着いたところを、剣術の師匠である比古清十郎(福山雅治)に助けられた緋村剣心(佐藤健)は、山中に居を構え陶器作りに励む師匠に飛天御剣流の奥義を教えてほしいと懇願する。一方、甲鉄艦・煉獄に搭載した大砲で一つの村を襲撃した志々雄真実(藤原竜也)は、政府に対して剣心を指名手配し、捕らえて処刑するように求める。 (シネマトゥデイより)


「るろうに剣心」シリーズ完結編です。
公開日が同じで観たい作品が複数あったため、人気を見込めて長く上映しそうなこの作品を一番最後にしていましたそしたら自分の中でちょっと熱が冷めていたというか、前編以上に闘いのシーンが多かったためか、前より感動が薄かった
前後編に分けずに3時間程度でまとめてくれたら良かったのにな

比古清十郎のもとで剣術修行をする場面では、剣心(健くん)より清十郎の方が思いっきり存在感あります福山さんてば美味しいとこどりもいいところ
清十郎は、幼い剣心(当時の名は心太)が敵の亡骸をも葬る優しさに目を留め、剣心という名を与えて剣客として育てますが、二人の出会いのシーンを剣心の見た夢という形で描いています。今の自分に欠けているものが生きようとする意志だと気付いた剣心は遂に奥義を会得し、駆けつけた操(土屋太鳳)と共に師匠に別れを告げて京都へ向かいます。

志々雄は伊藤博文(小澤征悦)ら政府重役を呼びつけ、伊藤以外を惨殺。剣心を指名手配して殺せと脅します。黙って従う政府のありように、武士の誇りを忘れたのかと呆れ去っていく斉藤一( 江口洋介)!(相変わらずカッコイイ~

一方、京都「葵屋」で待つ左之助(青木崇高)と弥彦(大八木凱斗)は、病院に収容されていた薫(武井咲)を見つけ、剣心の指名手配を知ると東京に戻っていきます。
入れ違いに京都入りした剣心は、御庭番衆の抜け道を教えられ東京へ急ぎますが、そこへ待ち伏せしていた蒼紫がボロボロの身体で先回りして止めようとする翁(田中泯)を足蹴にする蒼紫ってば超憎たらしい。剣心との対決はもちろん剣心が勝ちますが「殺さず」ですからねぇこりゃ「鶴の恩返し」状態だろうと予測したら大当たりな展開に思わずニヤリ

東京で警察によって捕えられた剣心は伊藤から生け贄になって貰うと言われ、志々雄に近づければ勝機はあるともちかけます。海岸で処刑されんとしたまさにその時・・・あれ?処刑人のシルエットってば斎藤さんじゃん立ち姿が綺麗すぎるのもこういう時は不便かも

一気に戦闘開始な展開になり、剣心と左之助は煉獄に乗り込み大暴れ。左之助は坊主の悠久山安慈(丸山智己)と、剣心は宗次郎(神木隆之介)と対決の末これを倒して、ラスボス・志々雄とは斎藤・蒼紫も加わり4人がかりで総力戦。強すぎでしょ!志々雄。でもウルトラマンじゃないけど15分という限界を超え、自らの体内から発火し燃え尽きてしまう壮絶な最期を遂げるのでありました
そんな戦いの最中に伊藤の命令で砲撃が始まり・・・ほんと身勝手なんだから、政治家は!
伊藤博文のイメージダウンでございます

とりあえず、剣心の仲間は誰一人命を落とさず(あの修羅場でそれはすごいことじゃない?)穏やかに幕を閉じますめでたしめでたし

今回もメチャクチャスピード感のある殺陣で、生身の人間にあそこまで要求する過酷さに個人的には引いてしまうのですが、殺陣好きにはたまらない作品かもね。

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